ゴブリン退治(IN森)

■ショートシナリオ


担当:みそか

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 97 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月27日〜08月06日

リプレイ公開日:2004年08月03日

●オープニング

 急募!

 キャメロットから片道四日ほど離れた場所に狩場となっている森があるのだが、最近そこにゴブリンが住みつき狩人を襲ったり狩場を荒らしたりして困っている。その森は近くの村に住む私たち狩人の重大な生活源となっている場所なので、ぜひ早急にゴブリンを退治してほしい。ゴブリンは五匹程度存在し、穴倉を住居にしている。可能ならもうゴブリンが戻ってこないようにその穴倉を発見してつぶしてほしい。
 ぜひとも腕のたつ冒険者を募集する。

      依頼主:○△村、狩人一同



「‥‥ま、見たとおりゴブリン退治の依頼だな。『腕のたつ』とか書いてあるが、情報だと住み着いているゴブリンは五匹程度らしいから駆け出しの冒険者でも十分撃退可能だろう。どうだ、引き受けてみないか?」
 冒険者ギルドの係員の言葉に冒険者達はしばし腕を組んで考え、そしてゆっくりと頷くと、今回の依頼であるゴブリン退治のより詳細な依頼内容を係員に確認するのであった。

●今回の参加者

 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0414 カイン・アークブレイド(32歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0664 ゼファー・ハノーヴァー(35歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1115 ラスター・トゥーゲント(23歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2634 クロノ・ストール(32歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2871 イーディス・ウィンタブロット(24歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3827 ウォル・レヴィン(19歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●一幕(物語は唐突に一人称にて始まる)
「うわぁ〜〜〜」
 ラスター・トゥーゲント(ea1115)の声が森の中に響き渡る。
 そもそも『うわぁ〜〜』とは冒険小説においてはひどくありふれた三文文句であり、冒険者が窮地に追い込まれ、悲鳴をあげる時などによく用いられる。だが、望むのならば勘違いして欲しくはないこの私が綴る(つづる)物語を読んで下さっている賢明な読者諸君よ! ラスター少年は何も森に入った途端に窮地に陥ったわけではなければ、そのような状況に追い込まれて情けなく悲鳴をあげるような人物でも(少なくとも私の知る限りでは)ない。
「すげぇな〜〜。なんとなく宝物がありそうな雰囲気がするっ!」
 ‥‥随分と説明が遠回りしてしまった。要するにラスター少年は森に入るなりにその天真爛漫な好奇心を惜しむことなく発揮させ、感嘆の声をあげたのだ。そう、ラスター少年がまだこの世界の毒気に犯されていないからこそ口から出る言葉であろう。
「コラコラ、あんまり大きな声を出すんじゃないよ。ゴブゴブに見つかりでもしたら骨だからねぇ。第一、こんなところに宝なんてあるわけないだろう。あの辺の岩場は狩人が狩りをするために利用しているのさ」
 ラスター少年の声を遮るようにして放たれた中年の‥‥失礼、人生経験に満ち溢れた淑女であるパトリアンナ・ケイジ(ea0353)の声はたゆみきっていたパーティー内の緊張の糸の端をほんの少し引っ張った。
 そして彼女のいっている言葉は間違いなく正しい。私の目の前にいる冒険者達は何もこんな森までわざわざピクニックにやってきているわけではないのだ。しかも今回赴いている場所はほかならぬ森である! 森とは冒険者にとってありふれた飯の種、つまりは依頼場所である一方、同時にその命すらも落としかねない危険な場所でもある。
 いかに浅い森であろうとも、一歩道を間違えて深い樹海にまで迷い込んでしまったのならもう生還する術は残されていないのだ。後は弱肉強食、もしくは食物連鎖などというチンケな四文字熟語の名のもとに、強力なモンスターの栄養素となってしまうのが関の山なのだ。したがって、ラスター少年の声がゴブリンに聞こえようと聞こえまいと、ことさら森の中においては集中力を切らさず、頼りない地図を頼りにしながら着実に任務を遂行することが重要なのである。
「了解〜〜。そろそろゴブリンがよく出るって効いていた場所だから静かにするよ」
 ラスター少年もその言葉を聞いてか、あるいは彼も冒険者の端くれである。最初からそんなことは分かっていたのか、元気一杯にその手を挙げると、目先を鋭く尖らせて一歩一歩僅かな足音しか立てずに(地面を見渡せば木の葉ばかりの森の中をである!)進んでいく。かさばりがちな荷物を最小限にまとめ、歩く音を出さないようにすることも冒険者の技能なのだなどこの少年に不覚にも感心させられてしまった。
「さて、この頼りない地図だとゴブゴブが出るっていうのはこの辺りなんだけどねぇ‥‥なるほど、こりゃひどく荒らされてるな」
 パトリアンナ‥‥嬢、は狩人が即興で書いたらしい地図をもとに何とか狩場までたどり着くと、ゴブリンの手ですっかり荒らされてしまった状況を目にして大きくため息を吐いた。彼女も元を正せば森の恵みを受けて暮らしていた人物である。このように人工的(あえてこの言葉を使おう)に荒らされてしまった狩場では、動物は寄り付こうとしないということを重々理解しているのだ。
「パトリアンナ殿、心中はお察しするが‥‥‥‥!」
 落ち込む仲間を勇気付けようとしたのか、典型的な、まるで吟遊詩人が語る騎士物語の新人騎士をそのままかたどったかのような、正義感満ち溢れる騎士クロノ・ストール(ea2634)青年は彼女のもとへ近づき、そして自ら言葉を遮って僅かに揺れる樹木を凝視する。一般人であれば気付かないようなほんの僅かな変化‥‥それを彼の鋭敏な視覚は見逃さない。
「どうやらここからがホネみたいだね。ここから私語は厳禁だ。きっちり尾行して巣穴まで案内してもらおうじゃないか。しばらく地味〜〜〜な作業になると思うから、みんな体力でも温存しておいておくれ」
 パトリアンナ‥‥嬢は潜めた声で冒険者たちへ注意を促すと、上体をかがめながらまだ見えぬ方向へと歩いていった。

 ‥‥だが彼らのそんな努力を無駄にするかのように、それから間もなくして森の浅い場所から冒険者達の大声が轟いた。

●二幕
「これで依頼は五つ目か‥‥仕事にも慣れ、心に油断や慢心が入り込みやすい時期でもある。相手がゴブリンとはいえ気を引き締めねばな」
 ゼファー・ハノーヴァー(ea0664)は普段からの冷静沈着なその行動に自分自身が慢心することがないように自らにしか聞こえない程度の小声で注意の言葉を言い聞かせる。彼女の呟きが嘘でないと判断するなら(自分にしか聞こえない声で自分に嘘をつくような御仁もまさかいないとは思うが)彼女は新米から一歩抜け出した新人、もしくは若手冒険者といっても差し障りのない経験と実力を持っていることになる。ゆえに、今更ゴブリンの五匹程度考慮に及ぶまでもないと思いがちであるが、そんな油断が自らに『死』という一文字にして最大の結末を招きかねないということを忘れるほど彼女は愚かではなかった。
「‥‥‥‥‥‥」
 だが、慎重な行動は確かに奨励されるべきであるが、慎重すぎる行動となると話は別である。冒険者とはいえ彼女たちも人間なのだ。そこまで持続的に集中力が続くわけもなく、冒険者一行は集中力を取り戻すために少し早めの休憩をとることにした。
「ふう、ずいぶん歩いたような気がしますね。‥‥ルーウィンさん、今がどの辺りか分かりますか?」
 休憩時間中、水筒から水を取り出して保存食を頬張りながら口を開いたカイン・アークブレイド(ea0414)は、まだ冒険に慣れていないという緊張からか、少し強張った声で狩人に書いてもらった地図を広げているルーウィン・ルクレール(ea1364)に質問を投げかける。
「‥‥まだそこまでは来ていないと思うんですけどね。少し慎重になりすぎたかもしれませんね。休憩が終わったら少し歩くはやさを‥‥‥‥!!!!」
 会話が途切れたのが先か、それとも殺気を感じ取ったルーウィンのシールドが背後から放たれた一撃を受け止めたのが先か‥‥。鈍い音が団らんの雰囲気を瞬く間に弾き飛ばし、冒険者達は目の前に現れた敵を察知するや否や自らの得物を瞬く間に構える。
「ゴブリンごときに、負けて‥‥‥‥」
 ルーウィンはあらん限りの力を左腕に込めるが、いかに相手が非力なゴブリンとはいえども体勢が不十分な上に、敵の武器は重量感のある棍棒ときている。程なくして彼の左腕は震え始め、支える腕が悲鳴をあげる。
「森を荒らす奴は許さないぜ!!」
 だが、もちろん冒険者たちも仲間の窮地を黙ってみているわけではない。ウォル・レヴィン(ea3827)はサイドステップでゴブリンの側面に移動すると、地面に足がつかないままの体勢で、右手に握られたダガーを投擲する!
『イイィイ!!』
 響いたのはゴブリンの甲高い悲鳴、そして命中することなく枯れ木に突き刺さったダガー!! レヴィンは舌打ちをしながら左手のダガーを握り締める。
「負けて‥‥‥‥たまるかぁ!!」
 ダガーよりも早く風を斬ったのはルーウィンのマントであった。チェーンヘルムがカチリと音をたてたのとほぼ同時、力に任せて突き出された盾がゴブリンを転倒させ、ルーウィンは立ち上がる。
「もらったああぁあ!!」
 そしてゴブリンが転倒した隙を見逃す冒険者たちではない。カインのロングソードがオーラパワーの力を帯びて淡く光り、その切っ先はゴブリンが突き出した、古びた棍棒を砕いて敵の眉間に傷をつける。ゴブリンは絶叫ともとれる悲鳴をあげ、森の奥へと一目散に逃げていった。
「止めは刺さなくていい! このまま一気に穴倉まで案内してもらうぞ!! ‥‥ウォル、ダガーを回収するのなら早くしろ」
 自らも(紛失防止のために)紐を結わえたダガーを投擲する準備をしていたゼファーは、予想外に好転した事態を冷静に判断し、追跡を決断する。若干一名が多少出遅れることとなったが、四人の冒険者は自らの装備品を手早く担ぎ上げると、ゴブリンを見失わぬように道なき道を疾走していった。

●三幕
「か弱きレディに仕え、お守りするのが騎士の勤めであり誉れ。イーディス嬢、ここは私に任せておいてください」
 別働隊のゴブリンとの接触による大声を聞きつけたクロノとイーディス・ウィンタブロット(ea2871)であったが、追跡していたゴブリンをそのまま看過するわけにもいかず、咄嗟の機転で森に慣れているパトリアンナとラスターを救援に向かわせ、自分たちはこの場にいるゴブリンとの戦闘を選択した。
 クロノはノーマルソードを正面に構えると、そのままの姿勢で二匹いたゴブリンを睨みつける。その姿は彼の騎士道精神を如実に表していると言えよう。
「頑張ってね。私は後衛で援護するから」
 もっとも、イーディスもただの非力なレディでは断じてない。自らに炎の力を付与させて万一の場合に備えることを怠らない。
「ご安心を‥‥我が魂の輝きを剣に! 目の前の敵を滅っせん!!」
 騎士というものは時に伊達男になるものである。それからのクロノの活躍は目を見張るものがあった。初撃に放たれたチャージング攻撃はゴブリンを樹木まで弾き飛ばし、側面からの攻撃はシールドで弾く。そして間髪入れずに突き出された剣は‥‥‥‥敵の腹部に風穴を開けた。
 それはまさに舞台を連想させるほど完璧な立ち振る舞いであった!!
 ‥‥‥‥もっとも、敵は他ならぬ弱小モンスター、ゴブリンなのだが。

●終幕(文章は途中から唐突に一人称へ移行する)
「ふっ、巣穴まで案内したのがあんたらの運の尽きさ。このパティのスープレックスの餌食になりな!! 『‥‥ふおおぉおお!!』」
 パトリアンナは別班と合流後、ゴブリンに彼らの巣穴まで案内させると、何故か悪人口調を誇示してゴブリンの脳天をスープレックスで大地に叩きつけた。
「これで‥‥‥‥合計五匹か。依頼達成というわけだな」
 今自分たちの目の前に倒れているゴブリンと、別班からの情報で聞いたゴブリンの数を頭の中で数え合わせ、満足げな微笑を浮かべる。
「さあっ、あとは巣穴を頑張って埋めるだけだね! よ〜〜〜‥‥‥‥」
 ‥‥ラスター少年の言葉はここで唐突に終わった。私が邪推するにその先の言葉は『〜〜し、頑張るぞ〜〜〜』という類の言葉であったのだろうが、人は新たな現実を前にして時に言葉を失うのだ。彼らがやれやれと巣穴をつぶすために借り受けたスコップを持ち上げたとき、既に誰もないはずの巣穴から『ゾロゾロ』とゴブリンが湧き出てきたのだ。その数は五匹。
 ‥‥冒険者たちの顔の落胆ぶりというか、いいかげんな情報を流してくれた怒りというか、とにかくそんな複雑な感情が入り混じった表情と、それからの顛末をここで粗細逃さず記述することもできるが‥‥蛇足になりそうなのでやめておこう。

 好奇心旺盛なる読者諸君のために結論だけ述べておくが、その場にいた冒険者達は不平不満を述べ、疲労感でへとへとになりながらも追加注文のように現れた敵を退散させ、巣穴を潰すことに成功した。
 依頼を何とか達成した彼らが向かった先は‥‥‥‥決まっている。まずは依頼達成の報告をすべく‥‥‥‥‥‥依頼主のもとへ赴くというのがこの世界では常識である。

 ‥‥ただ、その際多少怒り顔であるかどうかというのはまた別問題であるが。


●おまけ
 紳士的かつ長時間に渡る交渉の末、冒険者達は道中で消費した保存食を依頼人負担とすることで決着をつけたのであった。

 めでたしめでたし。