成敗!?

■ショートシナリオ


担当:みそか

対応レベル:6〜10lv

難易度:易しい

成功報酬:3 G 22 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月18日〜03月26日

リプレイ公開日:2005年03月27日

●オープニング

<某所>
「はっはっは、笑いが止まらぬとはまさにこのこと。今ごろはアンドレの奴も海の底に沈んでいる頃であろう」
「まったくもってその通りでございます。しかしダイカン様もわるぅございますな」
「何を言うオウミヤ。おぬしには負けるわ。ハハ、しかし愉快愉快。ハーハッハハ!!」
「ハーーハッハハハ!!」

<冒険者ギルド>
「クロウレイ地方アレブカリフのとある町に住んでいる男、ダイカンはその部下であるオウミヤと組み、人身売買や殺人など極悪の限りを尽くしているらしい。今回の依頼はその二人と手下を倒して欲しいとのことなんだが‥‥‥‥依頼人が変わっているらしくてな。幾つか変な条件があるんだ。ちょっとこれを見てくれ」
 ギルド職員は冒険者達にそう告げると、依頼書の隅に書いてある箇条書きの文を冒険者達に見せる。そこには何とも珍妙な条件が書いてあった。

一:決して『冒険者』として赴いてはならない。必ず別の存在を演じながら倒すこと。
二:倒す順番は手下→オウミヤ→ダイカンの順。
三:改心するようであれば峰打ち(刃の腹での打撃)も可。その場合痛めつけてから『もういいでしょう』と言い、何かがんちくの深そうな物を見せること。

「‥‥な、わけわかんねぇだろ。もともとアレブカリフには変人が多いし吟遊詩人は大げさ極まりない報告書を書くっていうけど‥‥こういうノリについていけないならやめておいた方がいいぞ」
 ギルド職員はそういい残すと、冒険者達に依頼書を手渡すのであった。

●今回の参加者

 ea0061 チップ・エイオータ(31歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0445 アリア・バーンスレイ(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0504 フォン・クレイドル(34歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2065 藤宮 深雪(27歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea2207 レイヴァント・シロウ(23歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea2889 森里 霧子(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3991 閃我 絶狼(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●序幕
 軽快に響く蹄の音を確認しながら、レイヴァント・シロウ(ea2207)は白馬に乗って、小石が点在する川原を疾走していった。

●一幕
「お嬢、そろそろ小腹がすいてきたんじゃありませんか? このあたりには食べ物の名産品が揃っていましてね。このあたりで一休みしませんかね?」
「やれやれ、もう腹が減ったのか。パティにも困ったものだのぅ。‥‥どういたしましょうお嬢様?」
 芝居のかかった口調で会話をするパトリアンナ・ケイジ(ea0353)と閃我絶狼(ea3991)。彼らは依頼を受けてきたわけなのだから目的地はアレブカリフのはずなのであるが‥‥依頼者からの要請により、さも諸地域を漫遊しているように振舞わなければならないのである。
「‥‥そうですね。せっかくですからこのあたりで一息つきましょうか。それじゃあパティさん、美味しいお店を探してきてください」
「えっ、あっしがですか?」
 お嬢様と呼ばれた藤宮深雪(ea2065)はパトリアンナの提案に口元を綻ばせると、少し意地悪な指令を送る。両掌を頬の位置まであげ、驚いた表情をつくるパトリアンナ。
「それはいい提案ですねお嬢。食べたいと言ったのはお前だからな」
「ははっ、こいつぁー一本とられましたね。そういうことなら合点です。わたしゃぁこれから一足先に町に行きますから。のんびりきてくださいな。お嬢たちが到着するまでには美味しいお店をみつけときますから」
 さらに寡黙な料理人を演じるアリア・バーンスレイ(ea0445)からの追加口撃に、パトリアンナは自らの頭をペチっと叩き、完全にまいったといわんばかりに町へと駆けていく。
「おいしい名産品が見つかるといいですね」
 徐々に小さくなっていくパトリアンナの背を見て微笑む深雪。
 ‥‥その時、彼女達はまだ町で何が起こっているのか知らなかった。

●二幕
 チップ・エイオータ(ea0061)を乗せ、ガラガラと依頼主から借り受けた荷車のようなものを押すフォン・クレイドル(ea0504)。
「親子じゃないよ! 姉弟だよ!」
「ちゃん!」
 21歳というチップの年齢、そして彼が放つ言葉はいろんな意味でギリギリと言えるが、二人はそんなことなどどこ吹く風で街の仲を歩いていく。
「キャーー!」
 突然何の前フリもなく辺りに響く悲鳴。見ればいかにも悪人面といった男達が娘を連れ去ろうとしている。
「一人に男数人がかりってのは感心しないね。もう少し紳士的にはできないのかい?」
 荷車に乗ったチップを放置して、果敢にも男達の制止に入るクレイドル。さらわれようとしていた少女は男達の手を振り解くと、彼女の後ろに隠れるように逃げた。
「なんだとぉ。てめぇ、俺達がオウミヤ様の部下と知ってそんなことをいってんのか? ‥‥遠慮はいらねぇ。借金踏み倒すとどういうことになるか、体でわかってもらおうじゃねぇか。やっちまえ!」
 非常に説明的な台詞を放ち、クレイドルへ突進していく男達。
 だが、これが絶望的に弱い! 男達はクレイドルに文字通りちぎっては投げられ、あっという間にやられてしまう。
「ちくしょぅ、おぼえてやがれ!」
 頭を抑え、月並みな捨て台詞をはきながら退散していく男。そしてクレイドル達は、助けた娘からこの町を牛耳る悪の存在、ダイカンとオウミヤについての情報を聞いたのであった。

●三幕
「そうですか。‥‥そんなことがあったのですか」
「まったくとんでもねぇ奴もいたもんですねお嬢。まったく、せっかくこんなに美味しい名産品があるってのに」
「少し黙っていろパティ。それで、どうしますお嬢?」
 現地の酒場でクレイドルからの報告を受けた深雪一行。聞けばダイカンとオウミヤはこの辺りで財力に物を言わせて悪徳の限りを尽くしているそうだ。
「これは放ってはおけませんね。‥‥霧子さん、情報を集めてきてください」
「‥‥」
 深雪の指示に合わせて、準備よく屋根の上に潜んでいた森里霧子(ea2889)がダイカンの家に情報収集へ向かう。
「やれやれ。ここでもひと悶着ありそうですのぅ」
「あの‥‥‥‥あなた達は‥‥」
 霧子に指示を送った後も、まるでダイカンやオウミヤなど敵ではないかのようにのんびりとお茶をすする閃我達に、恐る恐る声をかける店員。
 そんな店員に、閃我は微笑みながらこう答えるのであった。
「なぁに。私どもはしがない江戸の魚屋でございます。‥‥ただし、ちょっとでしゃばりの」

●幕間(おまけ)
 水面に浮かぶは絹のような白い肢体。
 肩口にかけられた水は水滴となり、純白の肌をゆっくりと伝っていく。
 均整のとれた身体、くびれた腰! ほどよく引き締まった各所!! 肩口には桜の絵が描かれていた。
「ヘックシ! ‥‥くそっ、役目とはいえまだ季節的に水浴びは厳しかったか」

 ‥‥何の役目なのかは知らないが、水浴びを終えたレイヴァントはいそいそと服を着てダイカンの家へと向かっていくのであった。

●終幕
「ダイカン様。本日もやまぶき色のお菓子を持ってまいりました。どうぞおおさめください」
「おぉ、さすがはオウミヤ。ワシの好みをよくわかっておる。‥‥しかしオウミヤ、お主もワルよのう」
「いぇいぇ、ダイカン様程ではございません‥‥‥‥何奴!?」
 突如として騒がしくなった外の気配を察知して、声を張り上げるオウミヤ。慌てて扉を開き、外の様子を伺う。
「‥‥チュー」
「なんだ、脅かすなオウミヤ。鼠ではないか」
 屋根の上から僅かに聞こえた軋む音に、脅えにも似た声を出したオウミヤであったが、霧子の咄嗟の機転(?)によりまんまとダイカンはそれを鼠によるものだと判断する。

 彼の視線が空を仰ぎ再び大地へと戻った時、そこにはいつの間にか彼の手下を捕らえ、証拠を全て掴んだ深雪一行の姿があった。
「あなた達の数々の悪行、既に御見通しです。大人しく罪をつぐないなさい」
 八人でオウミヤとダイカンを取り囲み、厳しく改心を迫る深雪。自らが行っていたことが明るみに出てしまったダイカンは暫く苦しそうに唸っていたが、やがて真一文字に結んでいた口を僅かに開く。
「ぐぬぬ‥‥このようなところでワシの悪事が明るみにでるはずもない。者ども、であぇいであぇい!! この者どもを切り捨てィ!」
 自棄になったように叫び、部下を呼び寄せるダイカン。部下は無言で武器を抜き放つ。
「どうやらわかっていただけないようですね。‥‥皆さん、懲らしめてやってください!」
「畜生べらんめぇ、やってやるぜ!」
 深雪の声を合図に、冒険者達も武器を引き抜く。
 ここに、ダイカン一味と深雪一行の熾烈な戦いは火蓋を切って落とされたのであった。

「‥‥‥‥無駄だ」
 霧子の放った春花香が刃を振りかぶった男たちを眠らせれば。
「わたしらは姉弟だぞーー!!」
「俺は、あんたの親父がくれたパンの味を覚えているっ!」
 クレイドルは狼よろしく次から次へと男たちに襲いかかり、レイヴァンとのよくわからない語りかけと同時に放たれるパンチは敵を弾き飛ばす。
「お嬢様には指一本触れさせませんぞ」
 深雪を人質に取ろうとすれば、閃我の刃が煌めく。ダイカンの部下たちは、まるでやられるために集まったかのようにバタバタと倒されていった。
「おのれえぇ! ‥‥!!」
「後ろからなんて狙わせないよ。‥‥この次は外さない」
 大声を出しながら、アリアの背後から斬りかかろうとしたオウミヤの腕をチップが放った矢が掠める。恐怖を覚え、その場に立ち尽くすオウミヤ。
「センセイ! 用心棒の旦那!!」
 ついに追い詰められてしまった状況に、ダイカンは振り返って用心棒を呼び寄せる。ジャパンの素浪人らしきその男は寄せ付けぬ雰囲気を発して深雪一行の前に現れた。
「お主‥‥流派は何だ?」
「あたし? あたしはただのコックさ。‥‥あたしの剣は、人を斬るためにあるんじゃない。食材を斬るためにあるんだ!」
 アリアの剣が用心棒の刀をかいくぐり、剣の腹がおとこの脇腹にめりこむ。泡を吹いて倒れる男。
 仰々しく登場した用心棒の敗退に、ダイカンとオウミヤはもう自棄になって襲い掛かるしかない。
「へっ、あたしゃあ間抜けで通ってますがね? 腐った匂いにゃ敏感なんだ。腐った料理を投げて捨てることに、何の躊躇も未練もねえや!!」
 そして、当然のようにパトリアンナに投げられる二人。投げられては起こされ、起こされては投げられるという繰り返しでダイカンとオウミヤの二人は徐々にぐったりとしていく。
「はい。もぅいいでしょう」
「静まれ、静まれ、静まれーーェぃ!」
「静まれー――ェイ!!」
 状況を後ろで見守っていた深雪の合図に合わせるようにして、閃我とアリアが未だに戦い続ける男たちを静めてまわる。予期せぬ言葉に、徐々に静かになっていく。
「控えよろぉおお! ここにおわすお方のモンモンが目に入らぬか!!」
「私の顔は見忘れたかもしれないが、この桜のモンモン、まさか見忘れたとは‥‥言わせねぇぞ!」
 閃我に紹介され、場をわきまえた役者のように上半身をはだけるレイヴァント。そしてそこには、先ほど水浴びをしている時に露になった桜の‥‥かなり適当だが桜の絵が描かれていた!!
「へ、ヘヘーーー!!!」
 展開を掴みきれないものの、レイヴァントの言い知れぬ迫力に、ついにダイカンとオウミヤは抵抗を諦め、地面に頭をこすりつけた。
「ダイカン、オウミヤ。貴様らの企み、全て白日のもとに出た。おってアレブカリフ市民より、相応の沙汰がくだるであろう。それまで心して待つように!!」
「ヘヘーーー!!」
 最後は霧子が見事な裁きで締め、依頼は達成されたのであった。

●余幕
「まったく、あなた様方には何とお礼を言っていいのかわかりません」
「いえいえ、お気になさらず。当然のことをしただけですから」
 そして旅立ちの時、どこかで聞いたような感謝の言葉を受けて旅立つ深雪一向。
 彼女たちは今後も旅を続けるのだろう。アレブカリフの名産品を求めて‥‥そして、そこで出会う事件を解決するために。

 完