●リプレイ本文
●一幕
「えーと、今回は戦争だったんだけど、皆それぞれ思うところもあるだろうし、ここでドバーっと吐き出して乾杯といきましょう! は〜〜いそれじゃあ皆さん。コップを持って〜〜〜、ご唱和くださいっ!」
『カンパイ!!』
ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)の掛け声に合わせてコップを突き上げる面々。戦争では負けたが、とりあえず『終わった』ことには大いなる意義がある。
明日への活力を見出すためにも、区切りというものは盛大に祝わなければならない。冒険者は乾杯の余韻にひたるのもそこそこに、コップを傾けて体の中にエールを流し込んでいく。
「負けたって事は、まだまだ未熟だって事だ。でも生きている以上、失敗を糧に成長できる。とにかく今は、みんなが生きて帰れた事への喜びと、あの争乱で死んじまった奴らへの鎮魂の意味も込めて、乾杯!」
『乾杯!!』
そして早くもリ・ル(ea3888)の手によって二回目の乾杯が行われる。もちろん乾杯は一回だけだとか、そんな堅苦しい事は言ってはならない。
「なぜならば、戦争に明確なルールが存在しないのと同じように、打ち上げではノリが最重要視されるからだっ!! ‥‥夜を過ぎて飲酒するとインプになるという出身の村の言い伝えがあるから気をつけろ! ちなみに『淫夫』ではないのでご注意を!!」
のっけから全力疾走で場の雰囲気を盛り上げるリル。早くも暴走しているきらいもあるが、戦争にて彼が行った作戦立案とそれにかかった労力は、誰もが認めるところであったのだ。ここは多少暴走しても、彼の苦労をねぎらうべきところであろう。
「ほらほら、グーっと呑みなさいよ! キンキンに冷えた‥‥気の抜けたエールをさ」
「はっはは。こうして美人のお姉さんにお酌してもらえるだけでも、生きて帰ってきた価値があるな」
もぅジョセフィーヌのちょっとした冗談もスルーである。リルはテンションが上がれば何でもできるといわんばかりの気分でエールをさらに流し込む。
「やあリルさん、盛り上がっていますね!」
「こんにちは〜〜。楽しそうですね」
そんなリルのもとへコップを片手に歩いてくるリュウガ・ダグラス(ea2578)とサリュ・エーシア(ea3542)。リルは激戦をともに戦った仲間へ微笑みかけると、エールがなみなみ入ったコップを二人に渡そうとする。
「お疲れ様、今日はみんなで楽しもう」
サリュに差し出されたコップを横から受け取るレイリー・ロンド(ea3982)。恋人をいたわるレイリーの行動に、リルは頭をボリボリと掻いて笑い声をあげる。
「ふーーー、それにしても、今回は冒険者が嫌になりかけたな! ザーランドとゴーヘルドの依頼を受けたから混乱しそうだったし! ‥‥だが、お前がいたからここにいられる! お前は無二の親友にしてライバルさ!!」
たくさんの冒険者がいる中で二人の世界をつくりあげるレイリーの肩をバシバシと叩くリュウガ。会場を見渡そうとも、彼が想う人はいない。冒険の上ではライバルでも、そっちの方面ではずいぶんと差をつけられたものだと、内心ながらに強く思う。
「いや、本当によく乗り越えられたよ。‥‥というよりよく生きているよ、俺。思えば放火を防ぐ依頼で集まったメンバーだったのに、いつの間にか戦争に巻き込まれるなんて一体どういう‥‥ぉぃぉぁあぉ」
戦争に巻き込まれて危うく命を落としかけたからか、輪の中にあっても閃我絶狼(ea3991)は若干しみじみとお酒を飲んでいく。後半の台詞は酒がまわっていたせいか聞き取れなかったが、まあ飲み会の席でそういう話はよくあることである。
「まあそんな細かい事は置いておこうよ! さっ、閃我さんも飲んで飲んで」
「絶狼の、ちょっといいとこ見てみたい!!」
閃我のコップにワインを注いでいくセイラ・グリーン(ez0021)。すかさずジョセフィーヌが合いの手を入れれば、閃我はコップに入ったワインを一気に飲み干していく。
‥‥エールの樽がひとつカラになるころには参加者たちは皆いい気分になり、力強い足腰もクラクラになっていた。
●二幕
エールと笑い声が天井近くを飛び交う中、カウンター近くに退避した人影が二つ。お洒落なコップを片手にみつめあう二人は、もちろんレイリーとサリュである。
互いの視線が交わる中、レイリーはゆっくりと彼女の白絹のような指を手にとると、そっと銀色に輝く指輪を通す。
「‥‥‥‥」
喧騒の中ゆえ声は聞こえない。しかし、その様子を見ているものであれば、彼らがどのような会話を行い、どのような結末を迎えたのかはすぐに分かるだろう。
掌を相手の背中にまわし、頬を寄せた二人を‥‥未来は祝福している。
「壁の華ですか? もうすぐ何かゲームが始まるみたいですよ」
「‥‥‥‥ええ、そうですね」
カウンター周辺を華やかな雰囲気が支配する一方、パーティーの開始時刻から壁に体重を預けていた夜枝月奏(ea4319)の表情は優れなかった。シン・バルナック(ea1450)はそんな彼のことを気遣ってか、コップを片手に彼のもとへと歩いていくと、遠慮しようとする夜枝月の手に強引にそれを握らせる。
「いろいろと考えることもあると思いますけど、こういう場ではお酒くらいは飲みましょうよ。場の雰囲気が壊れてしまいますからね」
「そうですね。一杯だけ、いただきましょう」
シンの言葉に含められた雰囲気を感じ取り、エールを口元へと運ぶ夜枝月。きょうになって初めて飲む酒は、喉にビリビリと刺激を与えた。
「今回の戦い‥‥結局どちらが勝ったのか分かりますか?」
「‥‥‥‥‥‥」
シンの問い掛けに、夜枝月は無言のまま考える。確かに自分たちは負けた。皆がそう言っているし、ゴーへルドの城は落とせなかった。
だが、ゴーヘルドは、そしてその領に生きる民は一体何を得たのか? 『解放軍』は今も各地に散らばり、潜伏していると聞くし、荒廃した大地が復興するまでには時間もかかるだろう。
テーブルの上には、このパーティーに参加することができなかった仲間の杯と共に、敵方ではあるが戦いで命を落としたラシィームの分の器も置いてある。自分たちはなんのために戦ったのだろう? 勝った側からみても、負けた側から見ても、失ったものはあっても得たものなどない。
戦争だから仕方ないのか? だが、その一言で片付けてしまうには、あまりにも‥‥
「‥‥考えはまとまりませんね。‥‥ただ、次にザーランドに行くことがあったのならば、その時は敵として行くことになると思います。あの領に正義は感じられなかった」
長い志向の末、自らの言葉でシンに返答する夜枝月。シンは彼にもう一杯エールを勧めると、自らもコップに残っていたエールを体の中に流し込む。
「自分もそう思っていました。以前ザーランドやベガンプにかかわり、不条理な中死んでいった軍人‥‥そして僕が殺してしまった人を見て、そう思いました。‥‥ただ、今回も自分はその戦いに参加してしまった。‥‥‥‥何かできると思って。不条理な戦いの中に混じれば、それを少しは変えられるんじゃないかと思って」
キャメロットにいようとも、自分達が戦いの渦に巻き込まれてしまっていることを感じずにはいられない。死んだ者は何かを考えていた。そしてそれを自分に託してきた。死んだ者はもう動くことはできない。だから‥‥‥‥
「人は本当は分かり合えるはずなのにどうして戦いが終わらないんだろう‥‥そして私は誰も傷つけたくないと叫びながらなぜ戦ってるんだろう」
誰へともなく、疑問を投げかけるシン。
夜枝月は暫し俯いていたが、結局その質問に対して返答をすることは‥‥明確な答えを見つけることはできなかった。
●三幕
「しゃあ! それではここで皆さんお待ちかねの〜〜、第1回、アーサー王様ゲーム!!!」
‥‥突然ではあるが説明しよう!! このジョセフィーヌが叫んだ『アーサー王様ゲーム』とは、王様の籤を引いた人が他の人に何でも命令できるという、ワクワクウハウハなゲームなのである!! ちなみにイギリスの王様とは一切関係ないのでくれぐれも注意しよう!
「それじゃあ早速行ってみよう!! 最初の王様は〜〜〜!?」
ノリノリで司会をするジョセフィーヌの声に合わせて、手を上げたのは‥‥‥‥閃我であった。彼が呈示した命令は『3番が7番の口にはいアーンで飯を食わせる』である!
「おっ! 3番は俺だ!!」
ハイテンションで手を挙げたのはリルである。はいアーンでご飯を食べさせる‥‥いい感じにお酒が回ってきたリルが願うのはもちろん『7番がジョー、サリュ、セイラの誰かであること』。もし七番がサリュだと後々大変なことになりそうだが、酒の入った頭ではなかなかそこまで考えがまわらない。
七番として誰が手を挙げるかということを、リルは固唾を飲んで見守る。
そしてその結果は‥‥‥‥
「ははっ。それじゃあリルさん、お願いしますね」
「‥‥‥‥‥‥ああ」
七番は先ほどサリュにプロポーズをしてめでたくゴールインしたレイリーであった。『早速浮気か!?』という酔っ払った面々の野次が飛ぶ中、リルは決して顔を上げることなく、幸せ満面の顔をしたレイリーの口に料理をねじ込んだ。
‥‥さて、気を取り直して第二戦である。今度の王様はシンであった。先ほどの雪辱に燃えるリルはもちろんのこと、他の冒険者達も自分の身に今からどんなことが起きるのかと考えて、もうドッキンバクバクである。
「それじゃあ2番は‥‥‥‥」
「俺か!?」
思わず声を上げるリュウガ。慌てて口を抑えるが、既に自分が二番であるということは周囲に知られてしまった。
「6番に‥‥‥‥」
「‥‥!!」
シンの言葉が続く中、リュウガの二つの目が微かに、しかし確実にジョセフィーヌがピクリと反応したところを捉える!!
想い人が別にいる彼にとってみれば当然、相手が女性であろうとも何か(まだ何か決まったわけではないのだが)することは当然意に反する。だがしかし、だがしかし、これはアーサー王様ゲームであるからして‥‥‥‥
「2番は‥‥6番に‥‥‥‥気をつけろ!!」
「‥‥‥‥‥‥なにが?」
大爆笑を期して言ったであろうシンのお題は、心の葛藤に苦しんでいたリュウガの冷ややかな一言によって、流されてしまった。
‥‥こうして、夜はふけていったのであった。