秋だ夜長だ合コンだ
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■ショートシナリオ
担当:みそか
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月02日〜10月07日
リプレイ公開日:2005年10月15日
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●オープニング
気がつけばもうすぐ十月ですね。季節は秋になろうとしています。
ひらりひらりと葉が一枚ずつ舞い散るこの季節、『ああ、あの最後の一枚の葉が落ちたとき俺にも彼女ができるんだな』なんて妄想しているそこのあなた!!(そう、あなたです!! あなたなんですっ!!)
葉っぱが落ちて彼女ができたら苦労しません! 今回は一万枚の落葉をも圧倒的に凌駕する、そんな素敵なお話を本日は持ってまいりました。ご存知のかたも大勢いらっしゃることでしょう。そう、当商会が主催するパーティーでございます!! 抜群のカップル達成率と達成後の結婚率を誇る当商会のパーティーに参加なさったのなら、もうハッパとかカオとかタイケイとかオカネとかミブンとかネンレイとかフラレーとかは小さなことです!!!
‥‥今年の秋の夜長は、あなたの人生の中で最良のものとなるでしょう。
さあ、もう迷っている暇などありません。秋だからといって部屋にこもって体でキノコを何本も栽培しているというあなたでも、そのキノコを食べて外に出るべきです! とにかくハッピーが欲しい方、段々と寒くなっていく気候の中を恋人と、コンビで、セットで、おそろで、ツインで、デュエットで‥‥とにかくグゥレイトォに過ごしたい方は今すぐご参加を!!
<冒険者ギルド>
まずは上記チラシを参照して欲しいのですが、当商会では恋人に恵まれない方々のために近日、キャメロットから歩いて二日の場所に位置する貴族邸の一室を借り切り、男子と女子の人数を凡そ揃えてのパーティーを開催します。
当商会としましては気品あるパーティーを目指してはいるのですが、いかんせん前回は報告書でカップルが誕生したと描かれたこともあり、自らも劇的な出会いをと現実を無視して考えなさるお客様も中にはいらっしゃいます。そこで冒険者の方にお客様の中に紛れ、そういった方をなだめる仕事をお願いしたいのです。
気品あるパーティーを、仕事をしながら楽しめる‥‥冒険者の方にとっても悪くはない仕事だと思います。
どうか、ふるってお申し込みください。
●リプレイ本文
<男性冒険者控室>
恋人をつくるこのパーティー、今回で何回目の開催になったのか、あの形式化した紹介文が何度用いられたのか、そんなことを考えるのも億劫になってきたきょうこの頃。純粋にパーティーを楽しもうと考える者が多くなってきた中、きょうも貪欲に恋人作成を狙う者がいた。
「着付け、バッチリ。心意気、言うまでも無くバッチリ! 今度こそ、お互いッ、だねヲーク」
「その通りだリオンさん。苦節幾年、こんな剣を振るってきた俺たちにも、季節に逆行するような春が来るんだ!」
しきりに衣服のバランスを調整するリオン・ラーディナス(ea1458)に、もはやこのパーティーの常連となりつつあるヲーク・シン(ea5984)は、振るうと断末魔の叫びが聞こえてくるらしい魔剣を撫でながら返答する。
‥‥気のせいか、彼の持っている魔剣は断末魔が聞こえてくるそれではなく衣服が外れるエロスカリバーに見えないこともないが、どちらにしろ会場内へ武器の持ち込みは禁止されている。そこは気にするようなことではない。
「今回もパーティーを楽しめればいいですね。‥‥幸い知り合いばかりなので、あまり緊張しませんよ」
「幸せな家庭を築く。そのお手伝いができればいいと思っています。今回のパーティーをみんなが楽しく過ごせるように、そんなふうにしたいのです」
周囲を見回せば、伊達和正(ea2388)とビター・トウェイン(eb0896)の姿が見える。二人ともパーティーが開始する前から半ば恋人を作ることを諦めているのか、リオンのそれと比べれば身だしなみに対する注意力も散漫に見える。
主催者側からしてみればこのような恋人をつくる気のない参加者はカップル達成率に甚大な影響を及ぼすので好ましくない存在なのかもしれないが、他の参加者当人からしてみれば決して悪いことではない。なぜならば‥‥
「どうやら本気で恋人をつくろうとしているのはリオンさん、あなただけみたいだね。‥‥よろしい! 今回は俺もリオンさんのサポートに回りますよ。つまり、リオンさんはよりどりみどりなわけです!!」
「ほ、本当かいヲークさん!?」
競争率がぐんぐんと減っていく状況に、瞳を輝かせるリオン。なんとも情けない思考展開ではあるが、キャメロットの一部では『フラレー』という不名誉(?)な二つ名を欲しいままにしている彼にとってみれば、もういまさらプライドだのどうだの言っていられない。
「ありがとうヲークさん。俺は‥‥俺は‥‥絶対に、ここで恋人をつくってみせる!!」
力強く宣言するリオン。がっしりと彼の手を掴むヲーク。二人の男による、強力な同盟がここに結成されたのであった。
<パーティー会場>
「宵闇を溶かしたかの様な黒髪、静寂な湖面を思わせる青い瞳、その神秘の中に俺を包みこんでくれ〜〜!!!」
「白磁を思わせる肌に夕日を映したかの様な髪、そして澄み切った空を映したような碧い瞳‥‥その瞳に俺だけを映して欲しいな」
「深く静かに漂う如き艶やかな黒髪と、キラキラと照り返すような青い瞳が、その深淵へと俺を誘う」
「深い井戸の深淵を思わせる漆黒の髪と、その水面を思わせる静かな青い瞳が‥‥」
‥‥が、男の同盟とはかくも弱きものかな。パーティー開始と同時にヲークはミリランシェル・ガブリエル(ea1782)、セレス・ブリッジ(ea4471)、セラフィーナ・クラウディオス(eb0901)、忌野貞子(eb3114)へと声をかけていき、玉砕していった‥‥‥‥といういつものパターンにはなんとならなかった!!
「オーケー。それじゃ、さっそくキスくらいから始めましょう! むしろ食べてあげるわ」
「可愛い、私、可愛い‥‥? う、うふ、うふふふふ‥‥!」
どういうわけか普段異性から声をかけられることがなかったミリランシェルと忌野は、声をかけられたということに感激し、ブルブルと身を震わせながらヲークにしがみつく。まさかの展開にヲークは凱歌をあげながら、意気揚々と会場の隅へと移動していった。
「早速幸せになられた方が‥‥幸せな家庭を築けるといいですね」
「まったく、両手に華とはなんとも羨ましい話です」
早速のカップル(?)成立に、素直に喜ぶビターと、ハーレムをつくりたいという野望のせいか、やや嫉妬の篭った視線を送る伊達。
「‥‥‥‥‥‥」
そして、同盟を破られたリオンは早くも頭を抱えることとなってしまった。本来なら彼は四人の中から一人をチョイスできたのだ! できるはずであったのだ! それが今や(セレスは恋人を作る気はないと宣言しているから)残るはセラフィーナだけという状況になってしまったのである!
「でも、ああいう人の笑顔を見てみたいな〜‥‥!!」
「お久しぶりねリオンさん。相変わらず元気そうね?」
彼がセラフィーナへ声をかけようとしていた矢先、当の本人から声をかけられてリオンはその身をのけぞらせる。
「こ、ここで金貨が消えたら不思議じゃない?」
「‥‥どういうこと?」
そして、咄嗟に彼の口から出たのは、用意していた手品の話であった。だが、動揺した状況から飛び出したその言葉には何の脈絡もなく、セラフィーナは首をかしげてしまう。
「あ、いや‥‥とりあえず‥‥‥‥踊ろうか」
「そうね。別に‥‥いいわよ」
いつもの自分を取り戻せないまま(ある意味女性関係においてはこのような行動こそが彼らしいともいえるが)、セラフィーナをダンスへ誘うリオン。セラフィーナは少しの時間だけ考えていたが、やがて口元を僅かに緩めながら彼の手を取り、踊り始める。
滑らかな音楽が耳に飛び込んでくる中で踏み出すステップはぎこちないものであったが、それだからこそ足が止まった時、二人はまるで恋人のように視線を絡めることができる。
「金髪に童顔なんてすてき〜〜! もぅこの場で食べちゃっていいですか!?」
「う、ウフフフフゥ‥‥」
視線を逸らせばミリランシェルがビターへ、貞子がヲークへとそれぞれ暴走気味に踊っているが、それも今後はどうなるかわからない。今、手を取り合っているのは間違いなく踊っている目の前の人だけなのだ。
手を取り合う瞬間を、刹那で終わるものか、それとも自らが命を落とすまで続くものにするのかは自らが決めることである。握り合っている右手に、あるいは相手の腰を支えている左腕にほんの少しでも力を込めることができたのならば、彼女たち‥‥あるいは彼らは人を、目の前の人を例え音楽がなり止もうとも離さないでいられるのかもしれない。
文字からだけではその人の思考を読み取ることは難しいかもしれないが、彼女たちはそれ以外からも、それ以外からこそ相手の考えを得ることができる。『手に力を込めるかどうか』それは二者択一の選択肢であったが、非常に高度なゲームでもあった。
相手の思考を読み取り‥‥決闘の小手を投げつけるか、すごすごとその場から退散するのかを決めなければならないのだ。
「‥‥‥‥‥‥」
今回のパーティーにかなりの意気込みで挑んでいたリオンは自らの感覚を研ぎ澄ませ、相手の思考を読み取ろうとする。
相手の、セラフィーナの表情は否定的というよりは肯定的な雰囲気にとることができた。腕に力を込める事ができれば、いや、ここで込めなければ、自分は‥‥今までの‥‥‥‥。
「!!!」
リオンがその腕に力をこめようとした瞬間、彼の視界にテラスが映る。かつて星空を眺めたテラスを‥‥そしてかつて踊ったダンスのことを。
きっかけとは言うまでもなく大切なものである。しかし、それは決して万能なものではない。どんな言葉をかけても、出会いとはその先まで保障するものではない。
いや、出会いだけで決めていたのならば、きっと自分はいつか‥‥‥‥そして必ず後悔することになっていただろう。
「‥‥‥‥そうなのか」
リオンの震えていた腕からスッと力が抜け、音楽の終焉と共にセラフィーナを解放する。彼はここにきてようやく気付いたのだ。自分に必要なのはフラレーから脱却することではなく、ふられることを恐れて行動にでることができなかったヘタレーから抜け出す事なのだということを!!
誰かの手にゆだねるのではなく、彼は決めなければならないのだ。選ばなければならないのだ。自らの心を初めて開き、本当に心の中から愛する人を‥‥‥‥
「セラフィーナさん、また今度‥‥機会があったら踊ろうね」
「ああ。構わないぞ」
微笑むリオンに答えるセラフィーナ。腕に力を込めることはできない。
少なくとも‥‥今の段階では。
<選ばない人>
「お嬢さん、よろしければこのキャメロット闘技場初代チャンピオンの私と‥‥」
「い、いぇ、遠慮しておきます〜〜!」
「お嬢さん、この私、こう見えても脱い‥‥」
「やめておきます!」
「ああ伊達さん。きょうはどうでした? 彼女の一人でも‥‥」
「い、いや。できなかったな。‥‥用事があるのでこれで!」
リオンと違って、ダンスを踊った後も手当たり次第に声をかけていたヲークは普段と違う対応に頭をポリポリと掻く。
確かに普段から断られることは多いが、最後まで話を聞かないなんてことはあんまりないし、雑談をしにいった冒険者にまで逃げられるなんてことはない。
「はて、これはいったい‥‥‥‥」
「ウフフフフフフぅ‥‥」
首をかしげるヲークの後ろで、貞子はなぜか床に這いつくばりながら、猛烈な熱のこもった視線で彼をみつめるのであった。