少年剣士アロの苦難
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:深空月さゆる
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 65 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月09日〜08月13日
リプレイ公開日:2008年08月14日
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●オープニング
「いつの世にもどんな場所にもどんな種族にも、一風変わった人物というものは存在する‥‥か」
井戸でロープを引っ張り水汲みをしつつ、しみじみ師匠の人なりについて考え込むのは、長い銀髪を首の後ろで結わえ、小奇麗な格好をしている15歳程の年頃の少年。
彼は冒険者を志し、剣の腕も多少はあると自負していた。ここで一つ冒険者デビューを! と最近、ある『森』付近に現れる敵の退治依頼書をウィルの冒険者ギルドで見て、志願して‥‥それが全ての始まりだったのである。
平たく言うと彼は、役に立たなかった。彼は駆け出しの初心者、なのに敵はゴブリンの群れ。他の仲間の足を引っ張り、あげく通りがかった無茶苦茶強い謎の男に助けられた。白刃を煌かせ怒涛の勢いで助太刀してくれたのは、波打つ金髪に碧眼、尖った耳、風に流れる艶やかな髭、高そうな衣服をまとうエルフとは思えない小太りのおっさんだった。
(君はまだまだ、だねん。このまま冒険してたら死ヌよ? このリチャードの下で修行したらどうかな、なのねん)
彼は爽やかに汗を拭いながら言い放った。ゴブリン達が累々並んでいるその場所に平伏して、よろしくお願いします! とか言ってた自分はあの場の雰囲気に流されていた気が激しくしないでもない。周りの冒険者達もそれがいいとばかりに遠慮がちに頷いていたし、なんだかもう引くに引けない雰囲気だったというか。
「俺は身寄りもないし、命を救われた訳でもあるし、ここで働かせてもらうのは別に構わないんだけど」
独り言が増えるのは良くない傾向のような気がしないでもない。足の周りをまとわりついてくるのは三毛猫、黒猫、銀の毛に黒い線の模様が全身にある三匹の猫だ。可愛い。猫の他にも色々動物がいて、変人の主人がいて、他にまともに会話できる人の出入りがないので、独り言が必然的に増えるのも無理からぬことだった。
「リチャードさんは全然修行のことなんて忘れているみたいだもんなぁ。てかただ雑用が欲しかっただけなんじゃないのか、俺いいように使われてるんじゃ‥‥!いてっ」
ズボンに爪を立ててくる数匹に気付き、少年は毒気を抜かれてため息をついた。
「まろ蔵、黒豆、銀次郎、お腹すいたのか?」
天界マニアでもある師匠がつけた不思議な名前だが、少年は慣れつつあった。みゃあみゃあと足元をぐるぐるしながら愛くるしい様子で見上げてくる三匹の猫。はいはい、と頷き水を運び終えた後、世話を任されている少年は彼らのご飯を木皿にとりわけ『天幕』の傍へと並べた。朝一番で掃除を終えた近くの馬小屋に行き、彼らに食事を与える。馬とはヒヒーンとは鳴かないものだろうか、と彼はここへ来て思った。ぶひーとまるで豚のように鳴く彼らもこれだけ毎日接していれば愛着も湧いてくる。愛情をこめて彼らを撫でながら、少年は笑いかけた。
「後で散歩しような、ずっとここに繋がれてるばかりじゃ、リチャードさんみたいになっちゃうからな」
さて、主人を起こさなければならない。それがまた一仕事なのだが。
店や家屋が立ち並ぶ都会とは異なり、そこそこに大きな森、暮らすのは獣や虫やそういうものばかり。奇抜な模様が施されたしっかりとした作りのこの天幕があって、そこにはエルフの富豪リチャードこと、アロの師匠が世界の各地から集めたらしい、普通のアイテムから珍妙なアイテム等コレクションが収められている。天幕の奥にはさらに天幕つきの寝台があり、天界グッズの一つとかいう、妖しげな色の照明などが置かれていて、なんかもうどこからどこまで突っ込めばいいのかわからないアロなのだった。
「ああ、朝陽が眩しいな」
これから天幕の奥へと向かわなければいけないアロは、目を細めつつつかのま現実逃避をしていたが。心して向かった先で、目覚めた師匠に驚くべきことを言われるのだった。
「ここに来て結構経ったね。生活には慣れた、アロ? いよいよ修行を始めるのねん」
洗面器を落としかけたアロは、ゆるゆると笑顔を浮かべた。
「あ、ありがとうございます! じゃ食事を終えたら。俺、剣の用意してきます!」
「君は冒険者の素質はないよ〜。だからもっと別の修行をすることに決めたよ!」
えらく爽やかに告げるリチャードのセリフに、勿論アロの顎が落ちた。
「はぁああ!? ちょっと待ってください、素質がないってそんなバッサリ。てか、別の修行って何勝手に決めちゃってるんですか! 一体何の修行をさせる気ですか!」
「とりあえずプランとしては、リチャードの専属料理人の道を極める、目指せ動物看護士、無一文で世で生きてく素敵なサバイバル術、とかあるけどねえ」
「あんた俺に一体何をさせるつもりですか!」
「やだナァ。君が僕のところで修行するって決めたんじゃないか」
「俺は剣術を極めたいと思って、あなたのところに弟子入りしたんですよ!」
アロを見て、ふっと哀れむように微笑みかけ、唇の端をゆがめた。ふーっと息を吐き、扇を煽ぎながら言う。
「だってさぁ、君、冒険者には向いてないよぉ‥‥?」
「(うわ感じ悪ぃなこのオッサン‥‥‥!!!)向いてなくても、俺が極めたいのは剣の道です!」
絶叫した少年を、しみじみ見つめて、寝台の上で考え込むこと僅かに数秒。
「判った。僕が先程あげた修行だけでなく、君が剣術の修行もしたいんだってことは。いやいやいい! 何も言わなくてもいいねん! 僕は君のことが気に入っている。これから出す条件を君が飲んで無事解決させることができたら、君がやりたい剣術の修行についても(まあ、たぶん)考えてやる、うんやってもいいだろう!」
「小さい声で何か言いませんでしたか‥‥、とにかく、本当ですね!? 言ってください! またゴブリンでも退治してこいとかですか? どんなことでも飲みます! そんなに大人数じゃなければ、全力で倒してきます!」
「じゃ、ジャイアントビートル退治してきてー」
「‥‥じゃいあんと、何ですか?」
「ちょっと最近この森で増えてきたみたいなんだなぁ。何匹いるかは判らない。まだ実害はないけどね。うん。あ、君も戦いに参加するのが条件で、ギルドで応援を募ってきても大丈夫だよん♪ 結構強い虫だから、君一人じゃ危ないだろうし」
‥‥ゴブリンどころの話ではなかった。
●リプレイ本文
●虫退治の準備
鳥の囀りが耳に届く。一見平和そのものの森の中を、冒険者の一行と少年アロは歩いていく。虫退治の下準備の為だ。ちなみに、ジャイアントビートルは夕方も活動するらしいので、決行時刻は明日の夕刻に決まった。
虫が火に飛び込む性質を利用する、と仲間内で話し合い。火を使うこと、虫退治の為に整地をする事をリチャードには伝えてある。彼から聞き出した、森の中虫が出ると言われる場所へ向かい、使えそうな場所があったので延焼を防ぐため、手分けしてスコップでざっと整地を行う。ソフィア・カーレンリース(ec4065)とレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)の女性二人は特に草や小枝等の片付けを行い、男手を使って細い木は切り倒し、といった作業を暫く続けて、ある程度開けた場所になった。
当初穴をある程度深く掘る事も案として出たが、基本的にこの国では、深い穴を掘る事は禁じられている。アロが念の為その案伝えたところ、『大きな穴を掘る事で何かおきたら責任取ってもらうようぉ? カオスの魔物とか出てきたって知らないからねん』などと言われ。深い穴堀は中止になった。リチャードのにやにや笑いをみるに、本当に魔物の心配をしているのではなさそうだったが、あえて皆は突っ込まないでおいた。
師匠はいい気なもので、皆が汗だくで作業を終えて戻ってきた後、天幕の中の寝台でヘソを出して激睡していた。ようやくおきたと思ったら、巨大な羽扇を彼に渡して煽ぐように指示したりしている。思わず扇を天幕にぶんなげて出てきたアロ。
「アロって本当に、リチャードさんと仲良しなんだね」
「息もぴったりですしね。アロ君を弟子にしたのは、あなたと相性が良さそうだと想ったからかもしれませんね」
「や、やめてください」
くすくすと笑いあう女性二人に、アロは遠い目をした。
「けど。リチャードさんはいつも突拍子のないことを言うんですけど、今回は結構極めつけで。思わず引き受けたものの途方にくれてました。皆さんが依頼を引き受けてくださって助かりました」
「世の中安請け合いは若気の至りでは済まない事が多いですから、今後は慎重に約束事を決めるのをお勧めしますよ」
きっと成功する、と。少々浮かれているアロに、水を差したのはフレッド・イースタン(eb4181)だ。アロは少し赤面する。
「あ、は、はいっ。すみません」
「大型インセクトは滑らかで強固な甲殻を持っているのが常です。剣士を目指すにしても目的に合わせてある程度得物は選ばないといけないと思います。冒険者であろうとするなら尚の事。今回の件なんて戦う前に色々負けてますよー?」
あはは、と柔らかい口調で諭され、ちょっと大人しくなるアロである。
「そもそも、なぜ剣の道を究めたいのだ? 剣だけに限らず、武器を持つということは命を奪うということ。今回は虫型のモンスターが相手だったが、いつ人間相手にその刃を振うことになるのか、その時の自分が想像出来るだろうか?」
百瀬勝也(ec4175)の言葉に。アロは難しい顔で、黙ってしまった。少々、震えてもいる。想像以上にショックがでかかっただろうか? 顔を見合わせる男二人。
「冒険者になりたいってことでしたけど。剣でかっこよく戦って勝利して、感謝されたいとか・・・・そういう理由なら、おすすめしません。依頼がなければ動けなくて、依頼は難事が起きてから出されるものですから・・・・」
レインはそう、やんわりと諭すが。肩を落として静かにしている少年に、慌ててフォローを入れた。
「あ、でも! ごめんなさい、そんなに落ち込まないで」
「そうそう♪ 元気だしていこ? アロもなんとかリチャードさんに認めてもらおうって一生懸命だったんだもんね? 知らないことはこれから知っていけばいいよー」
とソフィアが明るく励ます。
がばっと彼は顔を上げた。真剣そのものの顔で、言う。
「落ち込んでなんて! リチャードさん、全然そういうこと教えてくれないから、なんだか嬉しくって。皆さんみたいな歴戦を潜り抜けてこられた冒険者の方の苦言、頂けるなんて嬉しいです。俺生半可な気持ちじゃないです。だから、もっとどんどん言ってださい! 俺、本当に冒険者としてやっていきたいんです!」
あ、全然めげてないみたいでした。
●虫退治
翌日の夕刻。整地して、例の場所にこれでもか、と積み上げた小枝や抜いた雑草の傍で、皆は最後の打ち合わせを行っていた。
「とりあえず、予定通り。油と薪で火を焚き虫の習性を利用して焼き殺しましょう。アロ君、このミドルシールドを貸します。自分の身を守るのも冒険者として大切なことですよ」
「僕からは、これを」
ソフィアは、彼に招福のターバンをプレゼントした。
「運も実力の内っていうからね。あと。剣術も大切だけど、回避術も大事ですよ〜。
どんな攻撃も当たらないと意味が無いですから、相手の動きをよく見る事も重要ですね〜。頑張りましょう♪」
「はい! おふた方、ありがとうございます!」
アロは頬を紅潮させ、ぺこりと頭を下げた。
「勿論火だけで、全て倒せるとは想いませんが。果たしてどれ程の数なのか・・・・」
「・・・・はい! 個体数の確認が終わりましたよ〜。ジャイアントビートルは・・・・どうやら、十五そこら、かな。結構多いみたい。気は抜けないね」
魔法を発動し、ブレスセンサーで数を感知したソフィアが皆に教える。
「ジャイアントビートルはいきなり突進してくることもあるみたいです。動きへの対策・・・・虫だから寒さには弱そうですね。皆さん、この防寒着を使ってください。いざとなったら、私がフリーズフィールドを張ります。あの術を使うと、あたりはかなり寒くなりますから」
男三人は、ウィザードである女性二人の守りと、火への誘導、いざとなったら武器による虫への攻撃を頭に置いた。
夕闇が忍び寄る。小枝に、火打ち石を使って炎を起こす。森の中、延焼を防ぐため整地されたその場の中心に、燃え上がる炎。暫くすると、木々の間から奇妙な外見の生き物が姿を現す。黒光りする硬そうな体の、丸っこい虫が。中には鋭い角を持つようなものも混じっているようだ。その数、だんだん増えていく。
虫退治、果たしてその計画の結末は!?
●戦闘開始!
「ライトニングサンダーボルト!」
ソフィアが放った、地の上を走る稲妻。整地したとはいえ、それ程広大な範囲ではない。虫は退治できたが、稲妻は周囲の木々をも巻き込んでしまった。燃え上がる木々、後で消火活動をしなければならないが、ひとまず虫退治である。
「レインさん、そちらは御願いします!」
「わかりました・・・・いけないっ! アロ君気をつけて!!」
「うわわわっ」
人間=餌だとでも想っているのか。虫の中で火に突き進んでいくもの以外に、人に向かって突進してくるモノも少なくはない数存在した。火の傍にいたアロ目掛けて突っ込んでくる虫、彼は慌てふためいて、脇へと避ける。傍らを突っ込んでく虫が、炎の中に入ってメラメラと燃え上がっていく。
「危ない、戦闘中にです、腰を抜かしている場合じゃないですよ!?」
庇ってくれたフレッドの叱咤に、アロは慌てて立ち上がる。へっぴり腰ながらも剣を構えて。
「―――はいっ。すみません」
「フリーズフィールド!」
仲間を殺されているのが分かり、怒っているのか。一度に、纏めて突進してくる虫達。レインが皆の身を守るべく、術を発動する。周囲一帯に術の効果が現れ、気温が一気に下がり。冷気をはらんだ風を受けて、炎も大きく揺らめいた。
「ウィンドスラッシュ!」
動きを緩めた虫の隙を見逃さず、詠唱を終えたソフィアが魔力を解放する。稲妻ではなく風で敵を切り裂き、なぎ倒す。ひっくり返った虫達の腹を、次々百瀬が切り伏せていく。百瀬やフレッドに習い、アロも懸命に戦った。舞い上がる炎によって若干目を傷めるものはいたが、事前にやるべきことを皆で決めていたことが功を奏したのか連携もうまくいき、誰も大怪我を負うこともなく事態は収束した。
●依頼の終わりに
その晩、彼の言う通り虫退治を終えた報告をしに、天幕の奥へ。ランタンに照らされた朱色の薄布越しに、リチャードが悩ましげな体勢で横たわっている。一応ちゃんと寝巻きは着ているのでご安心を。
報告を聞き、彼は鷹揚に頷く。
「皆様、お疲れ様でしたのねん。森をちょっと焼いちゃったのはあれだったけど、ちゃんと皆で消し止めてくれたし許容範囲ね。ジャイアントビートル・・・・結構強い虫なのに、大怪我もなく無事生還、安心したよ〜」
「リチャードさん・・・・それはつまり、成功って事ですよね?! 今度こそ俺の修行を本格的に始めてくれるってことでいいんですね!?」
「まぁ、考えてもいいかな? その話はとりあえず後でね。アロ、皆に食事の準備をしてもらっていいかな?」
「はい!」
足取りも軽やかに。今にも飛んでいきそうな程、彼は有頂天な様子だった。リチャードがその後姿を見て、胡散臭い笑顔を浮かべたのを、冒険者達はとりあえず見てみぬフリをした。
「リチャ−ドさんは、色々な物を集めていらっしゃるのですね〜」
広い天幕の中に並ぶ棚や宝箱、その中に並ぶ様々なものを見て、ソフィアが顔を輝かせる。エルフのおっさんは満面の笑みで、皆絨毯に座るよう勧めた。
「リチャードさんの興味を引かれるかどうかは、分かりませんが」
フレッドは、越中袴とインスタントコーヒーを前へと押し出した。
「私が用意してきたのはこちらです♪」
ソフィアがレーシングスーツ、ファンタスティックマスカレード、夜の外套、怪しの頭巾、盗賊の指輪、毛皮の兜、鬼角ヘアバンド、松竹梅の半纏、などなど。寝台から飛び降りかけよってきて手に取る。
「越中袴・・・・これは! 私に似合いそうな、ハイセンスなフン・ドーシ!」
「インスタントコーヒー・・・・。天界の生み出した即席黒豆茶! ブラボー!」
「怪しの頭巾は私の裏の仕事に使えそうですね・・・・!」
「ファンタスティックマスカレードも捨てがたい! ああ、皆さんこの天空に羽ばたく鳥のように、色鮮やかな装飾がされた仮面をごらんなさい! 気品の中にも恐ろしいほどの怪しさを漂わせていて、私の魅力に存分にマッチする事請け合いなのねん!!!」
ほけーっと圧倒される四人に、アロはあっさりと言う。
「あ、すみません。師匠、気に入ったアイテムに関する話をすると、こうなるんです」
甲斐甲斐しく夕食の準備をし、とてもいい香りのする具沢山のスープの入った器を皆に配る。めちゃくちゃ旨そうな香りに、皆がゴクリと喉をならした。ただのスープなのに、なんでこんなに旨そうなのか。この少年、料理の才能はかなりある様子だった。
「じゃ、フレッドさんにはこれをプレゼントするねん」
フレッドは二点のアイテムと交換で、アイテム『うわばみ殺し』『天下無双の旗印』を手に入れた!
「色々沢山ありがとう! じゃ、ソフィアさんにはこれをプレゼントするねん」
ソフィアは二点のアイテムと交換で、アイテム『まるごとメリーさん』『羽根付き帽子』『越後屋手拭い』を手に入れた!
おおっと、本当に嬉しいのか『何これいらね〜・・・・(笑)』と想ってるのか不明ながら、二人は声を上げている。その様子を見て、リチャードは満足そうに笑う。
「出血大サービス、もう中々手に入らないかもな特別な品ですよん☆ 喜んでくれたなら私も嬉しいのねん♪」
「あ、そうだ。いい忘れてましたが、リチャードさん、アロ君、頑張っていましたよ〜。剣術も教えてあげて下さいね♪」
「うーん、綺麗なお嬢さんの頼みでも、無理な話なのねん」
リチャードがソフィアに、にこやかに告げる。
・・・・。
沈黙が落ちた。アロが蒼白な顔で小太りなエルフのおっさんを見て、陸に打ち上げられたお魚のように口をパクパクとさせる。その後天幕の中ではちょっと色々大変なことがおきたのだが、それは依頼とは関係のないことなので割愛する。冒険者達が後に口々に言っていたところによると、リチャードのほうが数段少年より上手だということである。なんだかんだいいつつ、どうやらリチャードとアロの奇妙な共同生活はまだまだ続きそうなのであった。