悪夢、紡がれる家

■ショートシナリオ&プロモート


担当:深空月さゆる

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月17日〜08月22日

リプレイ公開日:2008年08月25日

●オープニング

●イハンと貴婦人

 エルフらしくないと家族には呆れられながらも、穏やかに平穏に過ぎ行く変わらない日常に飽き、エルフの集落を出てメイを放浪する事数年。楽師として生計を立て、今そのメイディアにある市民の憩いの場である噴水の傍で弦楽器で演奏をしている青年は、イハンという。
 
 左程身を飾り立てる事には執着していないらしく、薄汚れた格好ではあるが、淡い色の金髪も緑がかった青い目も、尖った耳もエルフであると一目でわかる特徴あるものだった。

「イハン、昨日弾いた曲も、演奏してよ!」
 曲が終わるとと芝生に座り込んで目を輝かせて話しかけてくる、子供達がいる。にやりと笑って、了解と短く軽く返答し、彼は再び弓を弦に押し当てる。
 
 観客は金を殆ど持たない子供や孤児、左程裕福まではいかない町人ばかりだったが、男にとってそれは関係のない事だった。演奏を求められ明るい顔で聞き入ってくれる人達がいる。無口な青年ではあったが、彼の口元には満足げな笑みが浮かんでいた。

 噴水の公園の傍でいつものように演奏をしていた、ある日の事。その観客の中に珍しい人物が混じっていた。顔は帽子のベールで隠され、まとう服も作りこそ簡素なドレスではあったが、一目で高貴な婦人であることが見て取れた。盛り上がる観客達の中、微動だにせず彼を見ているようだった。
(なんだ、あのご婦人は。俺の演奏に惚れた‥‥、って感じでもなさそうだが)

 演奏を終えて挨拶もそこそこに、楽器を抱え上げわざとその場を去ると。彼女はお供を連れて、予想通り追いかけてきた。路地裏で相対する事になったイハンはため息を一つ、落とした。

「何か、御用ですか」

 角を曲がったら男が待ち受けていたのである。面食らったように息を呑む侍女と思しき二人の中年の女性と、その斜め前に佇む貴婦人。婦人自ら、口を開いた。

「侍女達が教えてくれたんですの。今メイディアには、薄汚れた格好なのに、美しく心に響く演奏をするエルフの楽師がいると」
「貴女のような高貴なご婦人に、私のような男の演奏など大して価値はないのでは?」
 若干の皮肉を込めて告げれば、彼女は困ったように微笑った。

「いいえ、とても素晴らしかったわ。久しぶりに感動いたしました。まだ私にもそう感じる心が残っていたのだと、驚いたくらい」
 率直に告げているとは判る賛辞に、その内容に。イハンは眉を顰めた。
「あなたに、お願いがあります。私の屋敷にいらしてくださらない? あなたはバードでしょう? あなたの演奏を屋敷で聞かせて欲しいの」

「確かにバードですが、イハンという名があります。人に頼み事をするなら、貴女がどこのどなたか、まず名乗って頂けませんか」
 傍にいた女が、何かを言う前に当の本人が謝罪を口にした。
「ごめんなさい、あなたの言う通りですね」
 彼女は大きな帽子を脱いだ。柔らかな長い栗色の髪が、帽子から零れる。ベールもずれ、彼女の顔が露になった。
「私の名は、アシュル・リグラン。この近くに屋敷を構える、メイの国王様にお仕えする騎士を夫に持つ女です――」

 イハンが彼女の要望を飲んだのは、その目を見たからかもしれない。あまり生気を感じない儚げな容姿の中、切羽詰った何かを抱える者特有のその、思いつめた目を。


●狙われた佳人


「昨夜の奥方様の悲鳴すごかったよね〜。怖い夢をご覧になったみたいだけど」
「このところ、毎晩よね。リグランの旦那様、最近お帰りにならないことが多いし、精神的に参ってらっしゃるんじゃないの」
「参ってるって‥‥あぁ、あの噂? 以前このお屋敷で働いていた侍女を辞めさせた後、旦那様は別所で囲ってらっしゃるって話」
「でもまぁ、本当だとしても奥方様、もっと泰然と構えてらっしゃればいいのに」
 夕食の片付けをもう一人の侍女と手分け終えた後部屋へと戻ると、二人の先輩の侍女達が、入ってきた娘に話を振ってくる。
「ねえハンナ、あんたもそう思わない?」
「‥‥ええ、ただ、奥方様ますますお痩せになったようで、とてもお気の毒で」
「それは私達も思ってるわよぉ。でも少し気がお弱くいらっしゃって、少々歯がゆいのよね」
「あ、判る判る」
 先輩の侍女達は再び会話を再開した。話の内容は昨日から滞在中の、バードの青年の事へと移っていった。

 娘は、そっと部屋を出て唇を噛んだ。彼女は奥方の愛犬リリーの世話係りの一人。元々犬を飼っていた事もあって、世話にはかなりのところ慣れている。金色の毛並みと若葉色の瞳が美しい犬だ。奥方の寝室の隣の部屋に、リリーは常にいた。ハンナの来訪を待ち受けていたように、尾を振り近づいてくる。ほっと表情を和ませた娘は、真摯な目を犬に向ける。

「‥‥リリー、奥方様を守ってあげてね」
 娘は犬を抱きしめる。不安を和らげるように。犬は身じろぎはしたが、案じるように娘を見上げている。ゆるく尻尾を振り、甘えたように声をあげた。

「昨日、あなたも見た‥‥うなされていた奥方の傍にいた変なモノ。リリーがあれだけ吼えていたんだもの、あれは『善くないモノ』なんでしょう?」

 肌が粟立つような不気味な気配。あの日、珍しくリリーの調子があまりよくなくて、ハンナは隣の部屋で夜通し、看病をしていた。悲鳴を聞きつけて扉を開けて、そしてそこで見たモノを思い出すと、体は自然震えた。

「‥‥それについて、詳細を聞かせてくれないか。あの奥方を狙ってきている者について。興味がある」
 背後から声を掛けられて、驚いて弾かれたように振り返る。奥方の信任も厚い、ハンナが心を許している古参の侍女が二人、その傍らに一昨日から滞在しているエルフの楽師が佇んでいた。ここ暫くすっかり元気を無くしている婦人が気を紛らわせる為、自ら屋敷へ招いたバード。

「‥‥イハン様、あなたなぜその事を」
 黒い影に関しては、ハンナと二人の侍女しか知らない話だ。慌てて侍女を見ると、彼女達も思いつめた目で重々しく頷いている。
 彼は自分が幾らか、モンスター等に関する知識があることを説明した。そして人外の者に対する気配も、他者より感じ取る能力に長けていること。短い期間滞在しただけでも、気付く程この屋敷の周囲に飛び交う奇妙な生き物が少なくはない数存在することを。
 ―――恐らく狙われているのは・・・・。

「奥方の身が危うい。当の彼女は自分が狙われている事に気付いていないようだしな。‥‥いや、あえて目を背けているようにも、見えるというか」
 無意識下で何かを察知し、他者に助けを求める風であるのに――。
「私とリリーは、奥方様の眠る寝台の傍に、子供のような姿に、翼の生えた生き物を見ました。奥方様をお守りする為に吼え続けるリリーと、悲鳴を上げた私を見て、こちらを見て嗤いながら‥‥窓の向こう、暗闇の中に、消えたんです」
 ハンナの説明に侍女達は顔を強張らせ、イハンは困惑したようにため息をついた。

「楽を提供するだけと思いきや、‥‥とんでもない事に巻き込まれたな」
「イハン様。この屋敷には魔法を使えるものが皆無です。バードの方は魔法を操れると聴いたことがあります、どうか‥‥!」
「そんな顔、しないでくれ。これも縁だ。奥方を守る一助になってもいい。だが、俺も幾らかは魔法が使えるが、‥‥どこまで彼女を守り切れるかは判らない。冒険者ギルドに、応援を要請したほうがいい」
 厳しい顔つきで、イハンは告げた。

●今回の参加者

 ea1850 クリシュナ・パラハ(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb7689 リュドミラ・エルフェンバイン(35歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb9949 導 蛍石(29歳・♂・陰陽師・ハーフエルフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●貴婦人を護れ


 街中の賑やかな人の行き交う通りから僅かに外れた、並木通りの傍にひっそりと、その屋敷は存在していた。

「失礼ですけど、私は冒険者の方々はもっと粗野な方が多いのかと思っておりましたわ」
 年かさの侍女は、屋敷を訪れた礼儀正しく品のよい四人の様子に僅かに表情を緩めて、そんな事を口にした。仲間内、クリシュナ・パラハ(ea1850)がシルビア・オルテーンシア(eb8174)に軽くウィンクする。事前に振る舞いに関して、気をつけるよう注意を受けていたからだ。

 侍女に案内され向かった先には。例のエルフの楽師の男性がいた。年若い侍女も。そして穏やかに尾を振る、金色の毛並みの犬も。それぞれ挨拶を交わした後、彼等は侍女達に誘われ、女主人の居る奥の部屋へと向かった。

 *

「私の悪夢の原因を取り除いてくださる方々だと、侍女や、イハン様より聞いております」

 深窓の令嬢がそのまま美しく成長を遂げたといえば、この佳人の容貌を少しでも伝えることが出来るだろうか。

「‥‥本当に大したことは、ありませんのよ。黒い鳥のような生き物が押し寄せてくる、奇妙な夢を続けてみる‥‥それだけです」
 困惑する冒険者達に何か思うところがあったのか、やせ衰えつつある婦人は微笑した。憂愁の色が濃い、翳りある美を持つ彼女は、現を踏み外しかけているような、危うさを醸し出してた。

「恐ろしい夢を見るのでは眠るのが怖くなって当然のこと。少しでも気持ちが落ち着くよう、お力をお貸ししたいのですが」
「力‥‥とは」
 邪悪な魔法解除と、心を安定させ、癒す術の名前を口にしようとして。術に精通していない婦人を慮ってか、導蛍石(eb9949)は、言い方を変えた。
「奥方様が少しでも安心して眠れるように、おまじないです」
 微かに目を丸くした後、彼女は微笑う。
「ありがとう。お願い致しますわ」



 最初の晩、婦人を脅かす魔物は姿を現さなかった。
 翌朝仮眠を取った後。四人は屋敷の構造を、侍女の案内のもと把握に努める。いざ魔物が流れ込み、外に魔物を出す事が不可能な状態で戦闘になった場合に備え、頭に叩き込んでおく必要があるからだ。

 いざという時混乱を避ける為、イハンの提案で侍女全員に魔物の存在は伝えたとのことだ。

「敵襲の際、皆さんも確実にお守りしなくては」
 彼女達は戦う力を持たない。リュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)が愛用の刀に触れ、凛と言い切る。皆一様に頷く。

 イハンに使用できる月魔法はムーンアローと、テレパシー他幾つか、とのことだった。

「あんた達が来る前一度、襲撃があったが‥‥羽を掠めただけで、仕留めることはできなかった。相手は、子供程の大きさの黒い羽の魔物だ。以前そういった姿の魔物を・・・・夢紡ぐ翼。そんな風に呼ぶのだと聴いた覚えがある」
「う〜ん」
「‥‥どうしました?」
 唸るクリシュナに、リュドミラが問いかける。
「アシュルさん、現実に狙われている事を認めてないじゃないっスか? 最初の襲撃の時、犬が魔物に吠え掛かって、姿を見たハンナさんが悲鳴をあげて、‥‥ご婦人だって何事かって思って当然でしょう? 彼女だけがずっと夢だと思い込んでいるのは、不自然だ〜って思うんスよね」

「それを、あの人には言わないでくれ」
「・・・・何故ですか?」
 シルビアがイハンに、不思議そうに問い返す。
「うん、言っちゃったほうが、自分でも警戒できていいっスよ、きっと」
「いや‥‥。彼女が、自分で悟らなければいけないんだ。同じ事を繰り返させない為に」

 時刻は深夜。リュドミラとシルビアの二人が持つ、石の蝶の指輪。ゆっくりと蝶が羽ばたき、警告を発する。

「近づいては離れて‥‥それの繰り返しですね」
 シルビアが、武器を手にする。
「夢魔もまた、近くに来ているかも。攻撃を仕掛けますか?」
「いや、相手は多数、こっちは少数、防衛に回ったほうがいいっスよ」
「同感です。それに一度狙った獲物を、簡単に魔物が諦める筈がありません」
 導がそう、断言した。




●襲撃の夜


  警護を開始して三日目の深夜。クリシュナがバイブレーションセンサーを使用すると屋敷の周囲を魔物が近づき、また遠ざかっているのを、確認できた。

「なる程、我々を誘い出そうとしている訳ですね」
 遠ざかる魔物の気配。奥方の寝室にはシルビアとリュドミラが控えている。当惑する婦人を、侍女達がうまく説き伏せたので可能となった。

 隣の部屋で再び魔物の気配を探る為に、ディテクトアンデットの詠唱をする。

「里を出る気持ちは判ると言ったな。‥‥何故、あんたは里を出た?」
「‥‥えっ? ぶっちゃけ、わたくしも知識欲にかられて家出中でして。うーん、我ながら業が深いなぁ…なんて」
 頭をかいて照れ笑いするクリシュナに。
「知識欲か。いや、私は単にあの生活に飽きていただけだ。我々のように自由の利かん奥方のような方達は、気の毒だ。‥‥どうした」
 すっと目を眇め導が、窓を睨む。
「――陽動ではなく、来ます。敵襲です」
 かなりの数です、と。武器に手をかけ素早く立ち上がる。
「じゃっ、頑張りましょう。打ち合わせ通りに」
 クリシュナが、不敵に笑う。
「‥‥了解」
 婦人の護衛は任せ。イハンは侍女達を守るべく、行動を開始した。



 *


 暗闇の中。唯一のランプの微かな明かりで、石の中の蝶の動きを確認した二人は身構える。
 バァァァアアン!
「!」
 窓を破る音。婦人に近づく侵入者へ剣が投げ放たれる。直後、それは鈍い音をたて床に落ちる。手足を痙攣させているのは翼ある、鬼。

 直後、他の窓からも、次々と敵は現れた。蠢く闇、巨大な蝙蝠のような者達に悲鳴を上げる婦人を庇いながらリュドミラは抜刀し、数匹ずつ纏めて葬っていく。望んだ訳ではない寝室が必然的に戦いの場になった。倒しきれない相手はシルビアが短剣を投げ操りまとめて倒していく。

 事前に聞いていた夢魔の容貌と、似た姿の魔物ばかり。これでは夢魔を特定できない!

「バーニング・ソード!」
 リュドミラとシルビアの獲物が一気に燃え上がる。他に燃え移らない魔法の炎だ。隣部屋より現れたクリシュナが高速詠唱を使用し、術をかける。

「フレイムエリベイション! おふた方、頑張るッスよ!」
 別の窓も蹴破り、魔物は入り込んでくる。クリシュナの魔法で力づけられた二人は、効果をあげた得物により魔物を次々、葬っていく。
「こ、これは一体!?」
 傍に駆け寄ってきたクリシュナに縋って、婦人は惑乱し、叫ぶ。

「な、なぜ夢で見た魔物が‥‥!」
「自分で知らなきゃいけないっスよ。何故こんな事が起きたのか。誰があいつらを呼び寄せたのか。よっく考えて。わたくしには、それしか言えないっス」


 *


 ディテクトアンデッドを使用し、敵の数、場所を改めて探知しつつ。当初の計画通り、導は魔物を可能な限り屋敷の外へと引きずり出し、魔法で束縛して、敵を確実に減らしていた。
 婦人の部屋にある窓の一つ。その斜め上にいる、忙しく動き回っている黒い翼を持つ者達の中、一匹だけ微動だにせず様子を伺っている者―――。
 殺気を感じたのか。魔物は凄まじい勢いで滑空し、導の首を狙い鋭い爪を向けてくる。その相手を、正面から迎え撃つべく身構える。  

「コアギュレイト!」
 高速詠唱でなければ間に合わなかった。体だけでなく絶叫を上げることすら封じられて、魔物は石のように落下し地面に叩きつけられた。駆けつけたリュドミラの刀で夢紡ぐ翼の命は絶たれる。
 喧騒は消えうせ、静寂が訪れた。
 そして―――。



●悪夢の終わりに


「薄々、判ってはいたのです。夢ではなく、魔物なのかもしれないと。私が、元凶なのだと。それから目を逸らしていただけ。嫌な事は見ない振りをすれば傷つかなくて済むから、愚かにもそうして自分を護っていたのですわ‥‥」

 ご迷惑をおかけして、と呟く婦人の様子を見かねたのか、シルビアが彼女に言葉をかけた。

「私としては同じメイの騎士として、旦那様は今激戦となっているカオスとの戦いに赴いて忙しいのではないでしょうか、と考えていたのですが」
「‥‥あなたは、優しい方。でも‥‥」
「今のお気持ちを素直に旦那様にお伝えしてみてはいかがですか? 少なくとも答えが何であれ、今よりは悪くならないと思いますが、ご判断はお任せします」
 とはリュドミラが。婦人はまじまじと二人を見つめ、やがて小さく頷いた。

「イハン様も、こんなことに巻き込んでしまって‥‥ごめんなさい」
 震える声謝罪を口にする。楽師は椅子に座り込む、やせ衰えた婦人を見下ろす。
 
「貴女は、私に友人になって欲しいと願った。ずっと滞在する事が不可能なら、どうか旅の途中、思い出したときには屋敷に立ち寄り、また演奏を聞かせて欲しいと」
「それは‥‥馬鹿な女の戯言だと、お忘れくださって構いませんわ」
「約束してもいい。あなたが強く生きていく事を、誓ってくれるなら」
「‥‥!?」
「リュドミラさんに、バードに相応しい力が宿る贈物を貰ったことだし。せっかくだから歌も磨いて来ることにしよう」
「イハン様‥‥どうして」
 驚いた様子だ。
「あなたを案じる者達がいる。今回の一件で、危険を顧みず全力で助けになってくれた人達もいた。自分をもっと、大切にされたほうがいい」
 アシュルは、イハンを、控える侍女達を。そして笑いかけてくる冒険者達を見て、ふいに目を潤ませ、頷いた。

「もう屋敷の周辺にさっきの奴らは、一匹もいないっスから、とりあえず安心してくださいね!」
「敵は全て倒しました。後は、あなたの心次第です。心を強く持ってください。もう、二度と魔物に付け入られる事のないように」
「皆様、‥‥ありがとう。主人と、向き合ってみますわ。どのような事になろうとも。私は、‥‥もう逃げません」
 貴婦人を脅かす悪夢は、そうして終わりを告げたのだ。