【ハロウィン】を徹底的に楽しむ為の方法?

■ショートシナリオ


担当:深空月さゆる

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや易

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:3人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月28日〜11月02日

リプレイ公開日:2008年11月05日

●オープニング

 二十日以上前からだろうか。海に面したその町のあちこちで、供物が置かれるようになった。町の者達は収穫された野菜を町の集会場、教会、住人達の憩いの広場、港の傍に、海と町が一望できる丘にある畑傍の皆が休憩等で利用する建物に簡単な祭壇を作り、供え。とっておきのワインや酒も添えて自然の恵みと精霊達に感謝を捧げているようだった。
 つまり一般的な収穫祭かというと、少々違うようだ。
 毎年この町も例外ではなく収穫の祭りは存在した。だが、どうやら今年は趣向が少々違うらしい。
「えへへへ、お菓子くれないと、悪戯しちゃうぞう」
「きゃ〜!!」
 二つ穴をあけた布を被って追いかけまわす子供が増えた。それを微笑ましく見ている大人達。皆が浮足立っているのは同じだが。はてさて――?



 町中、道のど真ん中を青のドレスを纏う金髪美女が淑女にあるまじき大股で闊歩している。手にした羽根つきの絢爛豪華な扇がなくても、注目を浴びる存在感をアピールしていた。住人達は思わず彼女にぶつからないように慌てて脇によけまくった。ぶつかったら面倒なことになりそうなオーラが出てたのだろう。ちなみに、エルフの婦人は悪びれた様子はまったくない。
 その傍らを小柄でぽっちゃりとした可愛らしい少女が、荷物を持って小走りで駆けている。もう一人無口・大柄・無愛想が三拍子揃った男が後ろで異様にでかい荷物を持ち、否、おそらく持たされて大股で後を追う。

「ふぅん。どことなく町の雰囲気が違う、か」
「? マチルダ様?」
 彼女達は誰なのかご存知の方も少ないと思うので説明すると。メイディアの外れに屋敷を構える知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない好事家エルフの女傑とお供の二人である。骨董品、珍しい天界の品には目がない人物で、購入売買、何でもやる。かなりの富豪で人脈もある。
 今回この町に訪れているのも、友人より近々行われる催しへの招待を受けたと共に、ある頼み事をされていたからだ。

「マチルダ様ぁ。どうなさったんですかぁ」
 お供の少女が不思議がるのも当然。マチルダはたまに虚空に視線を彷徨わせている。
「‥‥いえなんでも。さぁて、美味しいワインをしこたま飲むわよう!」
「ま、マチルダ様はざる、いえお酒強いんですから多少は遠慮されたほうが」
「ふふんおバカさんね、ミーア。酒を楽しまないなんて人生を楽しまないのと同じことよ。酒、美味しい食事、質の良い睡眠、そしてまた酒――それがいい女を作るのよ!」
「はぁ。えっと、ミーアもマチルダ様ぐらいの年齢になったら色々気をつけたいと思いますぅ♪ 今は若さで勝負です、なーんて☆ じょおだん、冗談ですぅ‥‥うっうっ」
 偉そうな主人と一言多い侍女、無口な使用人が向かった先は、招待主である町長の屋敷だ。小柄で優しげな人柄が滲み出ている中年の男性。マチルダ達が屋敷へ訪れると、使用人は迅速に町長の私室へと通してくれ。久しぶりに会えた友人とお供達を見てほほ笑んだ。
「マチルダ様! 皆さんもようこそ」


 *

「シフール便でお伝えしました通り、我が町は今年収穫祭という名ではなく、はろうぃんという名のお祭りをする事にしたのですよ」
 町長が語るところ。天界でどうやらこの季節に行われるイベントを収穫祭と融合させることにしたらしい。
「新しい事取り入れるのは別にいいんじゃないかと思うわ。でもよくわからなかったんだけどそれってどんな内容?」
「我々は――本来のものとちょっと違うのかもしれないのですが――、自然や精霊、先祖の霊を祀り、また魔除けの為に魔物の格好をして町を練り歩き、恐ろしい者を遠ざけようとする祭りだと聞き及んでいます」
「? 子供達が変な格好してたのって」
「お祭りで着るつもりの衣装かもしれませんね。我慢できなくて着て皆を脅かせている子もいるんですよ。ただ、ちょっと最近‥‥。奇妙な事がありまして」
 祭壇に羊皮紙が石で止め置かれており。町長宛に、奇妙なメッセージが残されていたのだという。その内容は次の通りだった。

 ご招待ありがとう。楽しいお祭りになる事を期待しています。でも面白くなかったら、皆で徹底的に悪戯しちゃうぞ――。

「そう書いてあった紙が、私が読み終えた後目の前でいきなり燃えたのですよ。あっという間に灰になりました」
 驚きましてなぁ、と彼はしみじみと言う。
「ふぅん。一部でいいのだけど。もしかしてその灰は残ってたりする?」
「はい、マチルダ様なら真相を解明することができると思いまして。持って来なさい」
 使用人に命じられて運ばれてきた布の中には確かに灰が乗っていた。
 紅に彩られた艶やかな唇を釣り上げ、マチルダは褒めた。
「さすが。では灰に直接聞いてみましょうか。なぜいきなり燃えたのか。誰にやられたのかを」
 彼女はウィザードだ。炎系統の。マチルダが長い指を灰の上に翳す。朱色の輝きが彼女を包みこみ。高速詠唱で呪文を紡ぎ、その術を発動した――。


 *

「つまり。犯人はエレメンタラーフェアリー。彼等はその祭りに招待されていると思い込んでいる訳ですか?」
「あれだけ大々的に祭壇作って供物が置かれれば、で祭りをやるっぽい雰囲気があればそりゃ勘違いするかもねぇ。最近はメイディアでも彼らの宴が催されたみたいだし。新しいもの好きな者はどこにでもいるってことねぇ。あ〜もっと強く押す!」
「えいっ‥‥あのマチルダ様。町長様から不穏な事をもう一つ聞いたんですけど。よいしょっ。ええと、はろうぃん自体がこちらに元々ないお祭りだから、皆試行錯誤してやってるけど準備が思うように進んでないって」
「ん〜。まだ時間もあるしなんとかなるんじゃない?」
 豪華な寝台に寝転び、背中のコリを解され、至福といった様子で婦人はそう返す。
「やっぱり天界のお祭りをやるのは少々無謀なんじゃぁ‥‥」
「どうしたのよ、ミーア? きゃ〜そこそこ」
「あ、ここですか。ええとですねだって面白くなかったら皆で悪戯しちゃうよ、ですよぉ?」
「簡単よ。面白おかしく成功させちゃえばいいの。不安なら冒険者ギルドに行って一緒に頑張ってくれそうな人を捜してきたら? もしかしたらいい助言をしてくれる人がいるかもしれないわよ」
「わわ、名案ですぅ! ‥‥といいますか私も頑張ることになってるんですね‥‥?」
「困ってる町長達を放っておけないでしょ? それにああ見えて町長は結構悩んでると思うわ。立派な贅肉が少し落ちてしまってたもの」
「はぁ贅肉はさておき。うぅ‥‥まぁ、そうです。皆さんに楽しんでほしいですし、興味があります」
「ホラね。あ。町長に断ってから依頼出してね〜。依頼人には町長がなってくれると思うから〜」
「‥‥はぃ(汗)」
 パタン。少女が出て行った。マチルダが枕に顔を押しつけたまま独白する。
「ワインも沢山あるって言ってたけど、さっき晩餐で頂いた今年のやつは味が少しいまいちみたいね。せっかくだから貴腐妖精達も来てくれるといいわよね。あぁでも」
 何せお祭りが盛り上がらないとガッカリしたフェアリー達が悪戯しだすかもしれないのだった。貴腐妖精は中々個性的な面々が多いし。マチルダはむぅと唸る。だが逆に言うと大成功に終われば美味しいワインが飲めるとか、いいことはあるかもしれない。
「これはなんとしても成功して欲しいものだわ」
 マチルダはうっとりと呟いた。

●今回の参加者

 ea1856 美芳野 ひなた(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ec4427 土御門 焔(38歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●はろうぃんのお勉強!
 今や単純にはろうぃんを楽しみたい! という気持ちと共に。そのフェアリーより贈られたメッセージを知る者達は、『ひょっとして何がなんでも盛り上げなきゃマズイんじゃないの』という何とも言えないプレッシャーのただ中にあった。
 困り果てていた町長とはろうぃん実行委員会の皆の前に現れた冒険者達は、彼らの目にはきっと後光がさして見えたことだろう。

「はろうぃんというのは、こちらでいうところの収穫祭がある地方で変化したものだと言われていて、その地方の言い伝えでは、10月の終わりが一年の終わりで、その時になると魔女や怖いものが出てくるから、仮装や怖いランタンを作って身を守る風習ができたのが始まりだとか」
 まずは『はろうぃん』というものについて、改めてお勉強である。町長の屋敷のある広い部屋にて教師役を務めるのは、陰陽師の土御門焔(ec4427)。彼女はジ・アースにある国の一つであるイギリスに滞在したことがあり、その時得た知識をわかりやすく説明してくれた。ほぉぉぉとどよめく町人、町長の友人マチルダの侍女のミーア。ルイス・マリスカル(ea3063)と美芳野ひなた(ea1856)は道中彼女とハロウィンについて語り合っていたので、口を挟む事はない。
「仮装については、魔女やお化けといったものが主だった気がします」
「姉さん、お化けとか怖いものってのは一体どんなものだい?」
「ええとですね、成仏できない霊魂、人を害する悪霊であるとか・・・・?」
 それ以上続けられず焔は少し答えに窮してしまった。彼女とて解っている、アトランティスには生を終えた魂が成仏できず地上を彷徨うという概念が存在しないのだ。揃って? を顔一杯に浮かべた人達。
「人に害をなす良くないもの、それから身を護る為にわざと恐ろしい格好をする風習がジ・アース等にはあるのだとご理解いただければ宜しいかと」
 ルイスが助け舟を出す。
「つまりは、病とか魔物とかが近づかねぇように皆を護るための儀式みたいなもんか!」
 町のはろうぃん実行委員の皆が納得してくれたようなので、焔が微笑んでルイスに軽く頭を下げた後に、続けた。
「ただ、ここからは三人で話し合った事なのですが。もともとはそうであれ、皆さんはハロウィンと収穫祭を融合させたものをしようとしていらしたとの事ですし。全て一緒にしなくてもいいのではないかと」
「精霊達が集まってくるようですし、子供達が精霊や動物などの仮装して家を回り、各家がお菓子の供え物をして鎮め、感謝する儀式と位置づけては?」
 とはルイスが。
「そうだよなぁ。まったく同じにする必要はないもんなぁ」
「この町だけの、他にないお祭りにしてしまうとか?」
「供えるっていうのははいって渡してあげてもいいのかな? 勝手に持っていってもらうよりそのほうがいいよな?」
 わいわい盛り上がっていく室内。
「そうですね、料理やお菓子を各家を回る仮装した子供達に配り。蕪をくりぬいて中に蝋燭を立ててジャック・オー・ランタン、あ、お化け蕪のことです。それを作ったり――そんな感じにしましょうか」
「何だか、やっぱりはろうぃんって聞けば聞くほどジャパンのなまはげみたい」
 感心したように頷く皆の傍ら、故郷を思い出しこっそり評するひなたの発言。ルイスが彼女に問う。
「ジャパンにもあるのですか?」
「あ、まったく同じな訳じゃないんですけどね。よし、はろうぃんに参加するのは初めてですが、頑張りますね! くりぬいて余ったカブはお料理に使えますし」 
 キャベツや玉葱、あと葡萄やイチジク、リンゴ、魚など材料には事欠かなそうだ。料理は町の女達が総出で行う。その中で料理人として通用する程の力量のひなたの料理の腕は、きっと頼りにされることだろう。
 準備に費やせる時間は4日間。衣装・料理・ランタンの作成・出し物・祭りの流れなどは決める事がやるべきことは山程ある。早速そちらへ話題は移った。

 *

 ルイスが子供達が付けるマスクに関して、顔が入る程度の袋に染物を施し、木の実や木の葉を貼り付け作っては、という発案をした。衣装に関してはまず見本となるものを幾つかひなたが、作る事にした。とはいえ、彼女が全てを作るのは当然難しい。なので例えばこんな感じ、という見本を参考にしながら、他の者も作ってもらえるようにする。実行委員の家族の子供達も集まってきていたので。蕪のランタンを作る工程も子供達でも作業ができるよう、子供同士で教え合っていけるよう、ルイスが丁寧に説明していく。

「ナイフでこう差し込み、直線の切れ込みを作ります。切れ込みを三角につないでくりぬいていき。ゆっくり、手を切らないよう気をつけて。三角を合わせて目や口・歯を作っていくと・・・・」
「うわ、怖そうな顔ー!!!」
「こういうものが出来上がります」
「そっか、少しずつそうやって切っていけばいいのかぁ」
「僕もやりたい!」
「僕もぉぉ〜〜!!」
「年長の子は他の子にも教えてあげてくださいね。町の子供達が一人一つ持てるよう沢山作らなければなりませんから」 
『はーい!!』
 元気の良い返事にルイスは頷く。やる気があるのは良い生徒、自然笑みも零れるというものだ。焔もひなたも室内のあちこちで引っ張りだこだ。仮装・マスク・ランタン・料理共に何とかなりそうだ。また、各材料、ランタンで使う蝋燭等は町長が既に用意してくれているようなので、そちらも問題はない。
 夕刻に始まる子供達の仮装ともてなしを第一部とし、第二部は広場に料理を持って集まり、深夜まで収穫を祝い飲食をする仮装ありのパーティはどうかというルイスの案に、皆が賛成した。

 準備期間も存分に楽しみつつ、はろうぃん当日を迎え。さっそく手作りのマスクを被り精霊や西洋風お化けの仮装を身にまとった子供達が、手造りの個性的な蕪のランタンを掲げ、町長の屋敷より町の中へ向かっていった。そして、はろうぃんを楽しみにしていた人ならぬ者達もまた姿を見せ始めたようで――?

●はっぴー、はろうぃん!!
「お菓子くれないとー」
「いたずらしちゃうぞ〜!!!」
 わぁあっと歓声が上がる。幾つかのグループに分かれて、年長者の背の高い子供達が、ルイスから借り受けたまるごとシリーズを身にまとい、皆を先導していく。竜や華国の妖怪などを模した不思議な格好だ。ひなたの提案した秋の果物をふんだんに使用したタルトなどを各家で作り、大人達はくすくす笑いながら家の前で少しずつ手渡していく。この時の為に子供達は昼は何も食べていない。町の女達がひなたよりアドバイスを受けてひと手間加えたタルトはとても美味しく、さらに空腹は最高のなんとやら、である。子供達の目はきらきら輝いていた。
 家屋の明りだけが光源である常ならば夕闇に沈む筈の町は、今子供達のランタンの灯に照らされている。
 やがて第二部に移行した。子供達が練り歩いている間、広場ではひなた、そしてルイスを中心として村の女達の協力のもと作られた料理、手のあいている者達が続々と料理を運んできていた。蕪やキャベツ、玉葱などを利用したシチューを大量に作り、他にも多数の魚料理が用意されている。鍋の蓋をしっかりと締め、広場にて温め直して皆で食べる事になっている。焔が所持していた、3色串団子、桜まんじゅう等もまた彼女の好意で、子供達に振る舞われる事になった。合わせて相当な料理の量。だが、子供達の胃袋は底なしだ。きっと美味しく消費されることだろう。
 僅かに吹く風に、美味しそうな匂いが町に流れていく。町の各地から広場に戻ってくる途中、子供達の中にいつの間にか妖精が混ざっていった。普段は恥ずかしがり屋のエレメンタラーフェアリーも、今夜は随分姿を見せているようだ。
「わぁぉ、圧巻ねぇ」
「す、凄いですねえ」
 準備中は何をしていたやら。しっかり本番は楽しむつもりのマチルダ女史は、楽しげに評した。傍らでは侍女のミーアが頬を紅潮させている。各属性のフェアリーの発する光はキラキラと美しく、あちこちで歓声が上がっている。
「はぁ、美味しいワインがないのが残念よねぇ。シェリーキャンは来てるかしら?」
「こんばんは。精霊が手を加えて作ったワインと言われていますが、よろしければどうぞ」
 空になったグラスにあるワインを注いだ焔に、好事家エルフの女傑―マチルダがきょとんとした後、破顔する。
「あらぁ気が利く。うちのミーアにも見習わせたいくらいだわ」
「そんな、お師匠〜」
「これ、・・・・フロストヴァインね。ありがとう。とても美味しいわ」
 いえ、と笑む焔は、ミーアに瓶を渡す。そして取り出した横笛に、マチルダは首を傾げる。
「これから演奏するんです。あちらにいらっしゃるルイスさんと言う方と」
「まぁ、そうなの。粋な演出ね、そういうの風流で素敵だわ。あら、あの方が持っている楽器は・・・・」
「?」
「いえ、以前知り合いに渡した楽器に似ているようだから」
「あ、良かった、見つけられました!! これ、ひなたから差し入れです。シェリーキャンリーゼ、良かったら飲んでください」
 現れた小柄なお化け――それはひなたがお化けに扮した姿である。のけぞるマチルダとミーア。苦笑する焔。
「びっくりした・・・・って、まぁ貴女も? しかも上質のワインじゃな〜い! 良い事が続くわね。これも私の人徳かしら?」
 マチルダはお酒飲んでいると大人しくしてくれるので、ミーアが依頼書にこっそり書き加えてもらったというのは余談だ。脇でこっそりミーアが苦笑しつつも頭を下げる。
「これ、プレゼントよ。美味しいワインがなければ飲もうと思ってたの。私は素敵な贈り物を頂いたし、良かったら貴女達にあげるわ。ちょっと普通のワインじゃないけど、味はそこそこだと思うわよ」
 二人は笑顔で、礼を言って受け取った。
「焔さん、演奏を始めましょうか。子供達が皆集まったようです」
「! わかりました」
「残念ね、面白そうな方達なのにゆっくりお話もできないわ。たぶん祭りが終わった後も、そう話す時間はないでしょう。気が向いたら、メイディアの都の外れにある私、マチルダ・カーレンハートの屋敷を訪ねていらして。歓迎致しますわ。そうあの楽士さんにも伝えてくださいな」
「ぜひ! お待ちしていますので」
「ありがとうございます」 
「ひなたさん、料理を配るの手伝ってください〜! 手が足りません〜」
「あぁっはい、了解しました。それじゃ、マチルダさん。ミーアちゃんも、楽しんでくださいね!」
 広場にルイスがある妖精より譲り受けた琵琶の音と、焔の横笛『早春』の楽の音が響き渡る。
 ルイスの傍にひとりの、シェリー・キャンが舞い降りた。メイディアで開かれた彼らの宴に招待された際に譲り受けた楽器なのだ。ルイスと妖精は目を合わせる。悪戯小僧めいたその貴腐妖精は、相好を崩した。
「髭の兄さん、まだその楽器渡してからそう時間たってないのに、結構上手いじゃん。やるね」
 ルイスと焔の周りに、ルイスがいつぞや出逢った妖精達が集まってきている。仮装した子供達が、そして大人達がその周りで踊り、二人の演奏を邪魔しないよう楽器を奏でるもの者も現れ出した。当初予定していたマジカルミラージュによるショーは、術の発動が夜は発動できないため使う事はできなかったが、それでも冒険者達と町の者達が一丸となって盛り上げたはろうぃんは妖精達も含めて満足に終わる結果となったようだ。そして皆で子供達の仮装姿も、大変可愛らしかったことを書き添えておく。また、祭りの中で機嫌を良くした貴腐妖精達が飲食するばかりではなく、今夜は葡萄を使用し上質のワインを作り、皆がそれを皆飲む事ができたという一幕もあった。
 少しやつれていたと聞く町長も元気を取り戻し、その頬に艶も戻ったようだ。ボーナスを上乗せされた報酬を彼から受取った冒険者達。この催しの盛り上げに大いに貢献してくれた冒険者達には、メイでは貴重な紅茶の葉、そしてアロマキャンドルなどのプレゼントが贈られた。大いに盛り上がった『はろうぃん』――それはこの町で来年も同様に行われる筈だ。