人狼

■ショートシナリオ


担当:美杉亮輔

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月13日〜03月18日

リプレイ公開日:2005年03月20日

●オープニング

 闇の底から歩み寄ってくる黒髪の少女を見とめ、自警団の男は誰何の声をあげた。
 が、少女は応えない。名工が彫ったかのような美麗な面はあくまで冷たく、ただ、その眼だけが血の色に輝いて――
 閃!
 斬撃はいきなりだった。
 眼にもとまらぬ一撃は、自警団の若者を無造作に斬り下げている。声すらあげえず、若者は弊れ伏した。
 しぶく血に半顔を真紅に染めた少女は、まだ息のある若者に眼をくれることなく、ついでのように彼の背に刃を突き立てた。若者の断末魔の痙攣は一瞬である。
 若者にとどめを刺し終えた少女は、豹のように音もなく邸内に忍び込んだ。そして、彼女は次の獲物を見つけた。
 ホールにたむろしていた残りの自警団の若者だ。
 数は四人。
 突然の侵入者に、彼らは得物に手すらかけていない。その隙を少女は見逃さなかった。
 颶風と化してホールを疾りぬけると、少女は手前の一人の胴を薙ぎ払った。噴出する血は狭霧となった少女を朧とする。
 残る三人の自警団の若者達は――
 戦意よりも恐怖に駆られ、彼等は剣を抜き払った。
 刹那――
 窓をぶち破って、三つの影が踊り込んできた。銀髪の、赤髪の、金髪の――全員が血に染まった少女と同じ年頃の少年であり、彼等もまた仮面めいた美麗な相貌をしている。
 が――自警団の若者の一人は、彼ら四人のもう一つの相似点を見出していた。
「ハーフエル――」
 言葉の途中で、若者の首に刃がもぐりこんだ。
 キリキリと――
 刃がすべり、ゴボリと若者の口から血が溢れだし――
 ボトリ、と若者の首が床に落ちて転がった。
 他の二人の若者は一合も刃を交える事なく斬殺されている。かかしでも斬るような呆気ない殺戮だ。
 少女は切断された首を蹴り飛ばすと、一気に階段を駆け上がり、寝室のドアを開けた。
 部屋の片隅、窓に接しておかれたベッドの上に壮年の男が一人。背後には赤子を抱いた女が――。
「ベルド、か?」
 少女の問いに壮年の男が応えるより早く、赤子が泣声をあげた。恐怖のため、無意識のうちに母親が抱く手に力をこめた故だ。
「耳障りだな」
 少女の脇をすりぬけて、ニンマリと笑みを貼りつけた金髪の少年が進み出た。突き出す刃が、あっさりと赤子に突き刺さる。
 悪鬼の笑みを深くし、さらに少年は刃を押し進めた。研ぎ澄まされた刃は、バターのように二つの肉体を貫く。
 唐突に赤子の泣声がやんだ。しんとした部屋に響くのは、ゴボゴボという母親の口から噴く血泡の音のみだ。
 人のものとは思えぬ絶叫をあげて、ベルドは少女めがけて踊りかかった。
 対する少女の動きは正確そのものだ。毛ほどの乱れも見せず、小女の刃はベルドの首を貫いている。
 カッと眼を見開いたベルドの死様を見つめる少女の眼は、人形のように硬く、冷たかった。

「いくら洗っても、染みついた血は拭えねえぜ」
 揶揄するような声に、小川に手を浸していた黒髪の少女――シアが振り向いた。
「仕事をこなす度に、何度も何度も沐浴と手洗いか‥‥まったく、ご苦労なこったぜ」
 嘲るのは金髪の少年――アルフレッドだ。彼は続けた。
「俺なんか、銭もらってムカツク人間どもを殺せるんだから、有り難いくらいのモンだけどな」
「お前とシアは違う」
 銀髪の少年――ディクスがアルフの肩をたたいた。しかし、とディクスはシアに眼をやって、
「その想い、早く捨てた方が良い。そんなものを抱いていると、いつかは足をすくわれるぞ」
 と、忠告した。
 それに頷いたのは赤髪の少年――マーグだ。
「そうだぜ。拾われ、殺しを教えこまれなけりゃ、俺達のようなハーフエルフのガキが生きてこれるはずがなかっただからな。また、これからも生きてゆけはしない。どのみち俺達は殺し――人狼としてしか生きていくことはできないんだ」
 自嘲めいて、マーグがせせら笑った。
 でも――
 全てを嘲るようなマーグから視線をはずし、シアは再び清水に手を浸した。
 でも――
 痛む何かから逃れようとするかのように、または背後から掴みかかる何かを振り切ろうとするかのように、シアは手をすりあわせた。

「――人狼を知っているか?」
 冒険者ギルドの男の問いに、
 ――ワーウルフのことか。
 逆に問い返した者がいる。それにかぶりを振ると、ギルドの男は続けた。
「暗殺者の名だ。詳しいことは何も分かってはおらぬ。個人であるのか、集団であるのかすら‥‥ただ、これは噂にしか過ぎぬが、人狼はハーフエルフであるという」
 ざわり、と室内の空気が揺れた。それが静まるのを待って、ギルドの男は続けた。
「それと、凄腕であるのは確かだ。先日も八人殺された」
 中には赤ん坊も混じっていた――。
 沈痛な面持ちで、ギルドの男は依頼書を押しやった。
「その人狼から守ってほしいという依頼がきた」

●今回の参加者

 ea0933 狭堂 宵夜(35歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea0945 神城 降魔(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4591 ミネア・ウェルロッド(21歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea7641 レインフォルス・フォルナード(35歳・♂・ファイター・人間・エジプト)
 ea7981 ルース・エヴァンジェリス(40歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 ea8761 ローランド・ユーク(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea9027 ライル・フォレスト(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9286 セシリー・レイウイング(45歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb0901 セラフィーナ・クラウディオス(25歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

「赤ん坊まで殺した鬼畜‥‥依頼抜きでも許せねえ」
 ジョンソン宅の庭に佇む巨影から、憤怒にくぐもった呟きがもれた。
 狭堂宵夜(ea0933)。無頼の風貌に似合わぬ物云いである。なんとなれば――
 彼自身の肉親もまた凶牙にかけられた過去があるのだ。
 その彼の傍らに立つ人影がふっと溜息をついた。
「何より盗賊本人を仕留めるべきだったのよ。息子じゃなく」
 宵夜と共に邸内の間取りを調べていたルース・エヴァンジェリス(ea7981)である。使用人の人数確認や木戸等の戸締りなど、並の男よりも着々と対策を施す彼女であるが、その胸の内は決して湖面の如くに凪いでいる訳ではなかった。
 ハーフエルフが生きる為に進む道がどれだけ少ない選択肢か。暗殺者となるもむべなし。
 その想いがある。まして彼女にはハーフエルフの義兄までいるのだ。
 しかし、それでも道を選んだのは彼等自身。ならば――
 衛るか討つか。立場は違えど、それぞれの道に従い、戦うまで。
「退く訳にはいかない」
 暗雲垂れ込める天穹に、ルースは決然たる眼をあげた。
 
 そのルースと同じく、忸怩たる想いを抱いている者がいる。
 凛たる美しき者の名は――セラフィーナ・クラウディオス(eb0901)だ。
 使用人の寝所となる離れを見まわる彼女もまた迫害されし血の末裔であった。久し振りの戦闘依頼に、腕が鳴るわと勇躍するセラフィーナであるが、同属と刃を交えることが嬉しいはずがない。
 できうるものならロシアの地に逃してやりたい。
 が、同時に極刑が免れる事はないと知る彼女であった。

 同じ時、もう一人のハーフエルフ――ライル・フォレスト(ea9027)は侵入口になりそうな箇所に鳴子と罠を仕掛けていた。
 いつも陽気な彼の面は、今、蒼く引き締まっている。人狼に関して一語ももらさぬ彼であったが、似合わぬ無口ぶりが彼の複雑な心情を表していた。
 その隣では可憐な美少女が罠作りを手伝っている。
「暗殺者、人狼‥‥か。う〜ん‥‥ミネア達もお金貰って殺しちゃったりしてるんだし、あんまり違わないのかな〜。ま、今は考えるのやめて、おじちゃん守らなくちゃ♪」
 少女――ミネア・ウェルロッド(ea4591)はあっさりと結論を下した。
 元々悩むのは苦手な性質である。それよりも、彼女は暗殺防止の策を練るのに余念がなかった。
 ミミクリー対策に、依頼人には虫除けでもしてもらわくちゃ。
 独り頷くと、ミネアは手に視線を落とす。掌には合言葉の任務完了の文字が書かれてあった。

 そして――
 三人目のハーフエルフは依頼主の側にいた。
 抜き身の剣を壁にもたせかけ、自身もすね者めいて壁に背を預け――ローランド・ユーク(ea8761)である。
「人狼か。手ごわい相手だな」
 傍らのレインフォルス・フォルナード(ea7641)がぼそりともらした。
 ジョンソンから聞いたベルド殺害の様子から類推し、彼は敵の力量のただならぬ事を察している。守りながらの戦いは厳しいのだが、他に策はなかった。
 ややあって、ユークが顔を向けた。
「人狼‥‥人でもなく、狼でもねえ半端者ってか」
 暗鬱な皮肉に、ユークは歪んだ笑いを浮かべた。
「ま、実際俺らを素のまんま受け入れてくれるなんて馬鹿、多くないからな。迫害されても法は助けてちゃくれない。だったら法の外に生きるしか仕方ねえ」
 良い、悪いではない。それは現実の一部なのだ。
 だからこそ――
 連中に手を汚させるわけにはいかねえんだよ。
 ユークの眼に閃いた刃の煌きを、ただフォルナードは見つめ返した。

 窓扉を閉めて闇を追い出すと、匂い袋の慣れない香りに神城降魔(ea0945)は顔をしかめた。
 変装対策としてジョンソン夫人から借りうけたものだが、進言した者が彼であるので文句は云えない。美貌の降魔に匂い袋の香りは似合わなくもなかったが。
 降魔――彼はハーフであった。それ故に、彼にはハーフエルフに対する忌避感はない。
 ――できうるならば、人狼達に他の生き方もある事を伝えられぬものか。
 沈思する彼とは裏腹に、アイスブルーの瞳に一切の迷いはなく――セシリー・レイウイング(ea9286)は何度目かのブレスセンサーを終えると、ふっと息をついた。
 可憐な娘に見えて、すでに三十四になる彼女の胸には怒りの炎だけが揺らめいている。
 彼らが何者であろうと関係はない。生まれがどうとか、そのような事を犯罪を犯す理由にしてはならないのだ。
 事実、セシリーは迫害を受けていても正しく生きているハーフエルフをたくさん知っている。現に、今ここにいるハーフエルフ達は関係のない者を守るために命を賭けようとしているではないか。それに比べ――
「人狼はただの人殺しです。人殺しにはそれ相応の報いを受ける必要があるのです」
 誰にともなく、セシリーが呟いた。刹那、彼女は異変を捉えた。
「屋敷の外に人が。それと‥‥馬!?」

 あがった炎に気がついたのは、庭の警備にあたっていた宵夜とルースが最初であった。
 愕然としてランタンを掲げたルースの眼前で門扉がぶち破られ、馬が乱入してきた。ただの馬ではない。背にくくりつけられた小さな樽に火がつけられている。
 危うく身をかわした宵夜達を後に残し、狂ったように数頭の馬が疾りすぎた。
「まずい!」
 一瞬の自失の状態から立ち直ると、宵夜達は馬を追った。夜目の効く彼らは、馬の腹に潜む影を見とめていたのだ。
 が、狂ったように疾駆する馬はあっという間に屋敷に到達している。
 轟!
 屋敷と離れの周囲でいくつかの炎が立ち上った。馬の背から転がり落ちた樽が割れ、中の液体に引火したのだ。

「くそっ、火を放たれたぞ」
 ライルの叫びに、ドアの前にバキュームフィールドを施そうとしていたセシリーが動きをとめた。
 火攻めに出入り口を閉ざすのは不味い――
 その一瞬の躊躇の隙を突くように、ドアがぶち破られ、三つの人影が躍り込んできた。
 疾る三筋の白光!
 悲鳴をあげてセシリーがのけぞった。その肩から血がしぶいている。
 残る二筋――金と銀の髪を翻し、二匹の狼がライルと降魔に襲いかかった。

 熱波と黒灰色の煙の彼方に――
 佇む黒髪の少女を見とめて、ユークは刃を奮った。が、唸る衝撃は、宙に舞う少女の足下を空しく流れる。
 人狼最強の少女とコナン流の達人――ユークが相見えた瞬間であった。

 そして、ここにもまた相対するハーフエルフがあった。
 離れの前――
 熱風に吹かれ、散らされる赤黒い焼煙の跡に佇む紅い髪の少年。対するセラフィーナはすでに弓をひきしぼっている。
「あなたが人狼の一人ね? 今まで殺された人達の恨み、晴らさせてもらうわ」
 放つ矢は阿鼻叫喚の巷を裂いて――
 が、紅髪の少年は紙一重で矢をかわすと、一気にセラフィーナに肉薄した。襲い来る刃をセラフィーナのダガーが受けとめる。
 が、防ぐのが渾身の業だ。刃ではねられたセラフィーナに、続く二撃目をかわす余裕はなかった。
 刹那――
 疾り来たった小さな影が紅髪の少年の腕を掴みとめた。斬撃の勢いを利用し、そのまま少年の体をはねあげる。たまらず、少年は地に叩きつけられた。
「くっ」
 苦鳴をあげつつも、半身を起こした少年は敵を薙ぎ払うべく、刃を振り――
 小さな影――ミネアの体の寸前で、刃はとまっている。わずかに遅れて、ごぶりと血を吹き、少年が倒れた。
 その首を貫いたダガーを引きぬきつつ、セラフィーナは声にならぬ呟きをもらした。
 やな感じだわ、同属に手をかけるの‥‥

 突き出される刃に、ライルは跳びずさった。灼熱の殺気に、足を踏み出すこともままならぬ。悔しげに見上げる視線の先で、銀髪の少年が階段を駆け上がっていく。
「お前らは、俺が遊んでやるよ」
 ニンマリ笑う金髪の少年。
 直後、彼ははっしとナイフをたたき落とした。
 その隙をつくように、ナイフの投擲者――降魔が迫った。刃を鞘の内に秘めたまま。
 が、刃の鋭さは人狼の方が上――
 戛然!
 氷片のごとき少年の刃が折れ飛んだ。降魔のバーストアタックだ!
「やるじゃねえか」
 鎌のように口の端を吊り上げると、金髪の少年は一気に数メートルの距離を飛びずさった。入り口から新手の敵――宵夜とルースが踏み込んで来たのを見とめた故だ。
「鬱陶しいなぁ」
 少年の体から迸る衝撃が、部屋そのものを揺るがした。

「俺が相手になろう」
 ユークの心情を察し、フォルナードが進み出た。走らせる刃は水流の如く煌き、黒髪の少女を薙ぐ。
 が――
 フォルナードの剣は空をうち、少女の身は宙を躍っていた。黒狼と化した少女はユークに、駆けつけて来た銀髪の少年がフォルナードに襲いかかる。
「やめろ!」
 少女の刃を受けとめつつ、ユークが叫んだ。
「殺しまくって、憎んで憎まれて、それで結局どうなるんだ?」
 噛み合う刃の向こうに輝く、少女の紅玉のような眼を見つめ、ユークは続ける。
「生き直すんだ。遅すぎるってことはねえ。叩き続ければ、いつかは重い扉も開かれる。俺らが生きるにゃ過酷な世界だ。だがな、たまには俺らを受け入れてくれる馬鹿もいる。それだけで価値があるのさ。くそったれなこの世界でも、な」
 が、少女の面に変化はない。むしろ眼を爛たる血色に輝かせて――
 噴きあがる殺意に、さらに刃は先鋭さを増して疾る。さしものユークもあしらう余力はない。
 全精根を込めたユークの一撃が少女めがけて振り下ろされ――
 血の飛沫は銀髪の少年の口からしぶいた。
「――シア、仕事は失敗だ。逃げろ」
 盾となった銀髪の少年の声が、少女をうった。さらに、
「逃げて生きろ。そうすれば、どこかで馬鹿と出会える知れない。こいつのような――」
 銀髪の少年が、ニヤリとユークを見上げた。その眼を見返し、ユークの剣がゆっくりと下がる。
 一人でも逃がせば狙い続けるかも知れない。わかっちゃいるんだ――
 その想いに反して、すでにユークの剣に必殺の力はない。
 刹那――
 銀髪の少年の体を貫いた刃が、ユークの腹に突き刺さった。
「馬鹿が」
 仲間の体ごとユークの傷口をこねると、悪鬼の笑みを浮かべた金髪の少年は闘気の刃を引き抜いた。ユークの口から溢れた血が床に血溜まりを作る。
「人狼だったか? 畜生には相応な名前だぜ」
 宵夜の声に、金髪の少年が振りかえった。
 一瞬後、三つの影が交差した。
 ルースの盾が少年の刃をはじき、宵夜の刃が胴を薙ぐ。間合い無用の陸奥流――宵夜の一撃だ。
 そして――
「他人に死をもたらしてきたあなた達に、本当の死の恐怖を与えてあげます」
 血にまみれたセシリ―の指先から紫電が迸り出た。

「狩ったら何時か狩られる。お前らはな、そういう道に足突っ込んじまったんだよ」
 血にまみれた金髪の少年を見下ろし、宵夜の口から呟きがもれた。その彼の眼には、なぜか凱歌の色はない。
 と――
 くくく、という嘲笑が流れ、金髪の少年が顔をあげた。
「喜ぶのは早い。貴様らは陰獣を敵にまわした。もはや貴様らに安息の時はないぞ。豚のように死ぬがいい」
 死微笑を口の端に刻み、少年は息絶えた。
 直後、窓をぶち破って、黒髪の少女が虚空に身を躍らせた。後には火の爆ぜる音だけが高く――

 街外れに作られた三つの墓標。
 人狼達のものだ。
 その前で、ライルは方膝ついていた。
 もっと早く会いたかった。助けあって支えあって、一緒に‥‥
 もはや届かぬ想いであるが、せめて逃げのびた少女だけは幸せになってほしい。
 そう願わずにはいられないライルであった。