【聖杯戦争】魔性聖母
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■ショートシナリオ
担当:美杉亮輔
対応レベル:3〜7lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 45 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月25日〜07月30日
リプレイ公開日:2005年08月05日
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●オープニング
オクスフォード侯蜂起。
その報せは燎原の火の如く走り、キャメロットを震撼させた。
そしてもう一つ――
キャメロットを毒のようにおかす、ある噂があった。
「ガウェイン裏切り」
どこから出たものか、またどのようにして伝播していったものか。誰も確たるものを掴んではいないのだが、それは故なきものではないとして確実にキャメロットを腐食している。
なぜなら――
オクスフォード侯の裏にモルゴースあり。
そのモルゴースは――ガウェインの母であった。ガウェインが疑惑の視線を向けられるのもむべなるかな。
が、ガウェインを知る者は一笑に付したものである。あのガウェインに二心などあり得るはずがないと。
また当のガウェインにしてもどこ吹く風といった様子だ。口さがない宮廷雀などには興味はない。
とはいえ、このまま捨て置けぬというのもガウェインの本音である。肉親や友に対する情の篤い彼としては是非とも確かめたいことがある。
「どうしても行かれるのですか?」
「ああ」
問う侍従に、キャメロット城内の庭園で寝そべったガウェインは、背を向けたまま応えた。
「しかし、北と申せばオクスフォード侯の‥‥」
「近いな。しかし」
母の居所が知れた。
「会って、確かめたいことがあるのだ」
「されど独りでは」
「馬鹿」
ガウェインの背から苦笑が響く。
「俺が兵を率いれば、かえって大事になる」
ガウェインはむくりと身を起こした。そして大きく伸びをする。侍従に向けた面には何の屈託も見受けられぬ。
「子が母に会うのだ。何の心配もいらぬ」
「‥‥来るであろうか」
蝋燭の火が揺れ動く、仄暗い部屋の中。一人の男が口を開いた。
彼の名はグース。オクスフォードの騎士の一人である。
「必ず」
応えて、グースの対面に座する女がふっと嗤った。妖しく、美しい笑み。
モルゴースの使いの一人、アンジェラである。
「ムチャクチャな方と聞いております故」
「されど‥‥」
グースは口を噤んだ。彼にはまだ腑に落ちぬことがあるようである。
「来たとして、果たして応じるかどうか‥‥相手は円卓の騎士ぞ。その点はどうか?」
「分りませぬ」
アンジェラはあっさりと頭を振った。
「我が息子ながら得体の知れぬところのある者、とモルゴース様もおっしゃっておられました。なれど‥‥」
アンジェラの切れ長の眼がギラと光った。
「応じぬとあれば、その時はその時。捕らえ、閉じ込めれば良いと。その上にてガウェイン様がオクスフォードの陣営についたと噂を流せば――」
噂は真実となる。人とはそういうものだ、とアンジェラは云った。
「あとは魚が網にかかるのを待つだけ」
呟くと、アンジェラはキュッと唇を吊り上げた。
「ガウェイン卿の護衛?」
「ええ」
息をひく冒険者ギルドの男に、頷いて見せたのはガウェインと話していた侍従である。
「北に向う卿をお守りしていただきたいのです」
「‥‥」
ギルドの男は声もなく、侍従を見つめた。
無茶なガウェイン卿の護衛なら一度受けたことがある。その折に依頼を出したのも眼前の侍従だ。が、此度は少し様子が違う。
「ただ護衛すれば良いのですか」
「いや」
顔を歪め、侍従が面を伏せた。ややあって上げられた侍従の眼には決死の色がある。
「ガウェイン卿の真意に注意を払っていただきたい。もし王に叛意あると知れた時は――」
冒険者のお力にて。侍従は幽鬼のように青白い顔で告げた。
●リプレイ本文
●邂逅
キャメロットから北にのびる街道。そこに一本の巨木がある。
待ち合わせのその場所、木陰でうつらうつらしている若者を見つけ、リオーレ・アズィーズ(ea0980)は駆け出した。
「ガウェイン様!」
「うーん」
声に若者――ガウェインは眼を覚ましたようである。走り寄って来るリオーレを見つけた彼ははね起きた。
「お久しぶりです、ガウェイン様」
「おう、久しいな」
ガウェインは天陽の笑みである。実はリオーレの方が年嵩であるのだが、ガウェインは彼女が可愛くて仕方がない。
同じく可愛い顔を見つけ、すっとガウェインが手をのばした。
つうっと。今度はぬかりないと身を躱したのはサクラ・キドウ(ea6159)である。子供のように頭を撫でられるのは真っ平だ。
「おっ、上手く避けたな。サクラもとうとう男でも知ったか」
ガウェインらしくもない嫌らしい笑み。さしも愛想のないサクラの頬にもぱっと紅が散り――
その隙をつくようにのびたガウェインの手がサクラの髪をかきまわした。
「云っただろう。戦いというものは刃をあわせるだけではないと」
「ずるい」
「ずるくない」
「まあまあ」
リオーレが宥めすかす様は、まるで痴話喧嘩だ。
「あれが円卓の騎士殿ですか?」
やや呆れたように問うセラ・インフィールド(ea7163)に、頷いて見せたのはきりりと引き締まった面立ちの女騎士、ユイス・イリュシオン(ea9356)である。
「そうだ。どう見る?」
彼女はガウェインとは初見ではない。
つかみどころのないと承知していたが、この非常時にいかなる神経をしているのか‥‥
「面白い方ですね」
くすりと苦笑し、巨躯のくノ一がガウェインに歩み寄っていった。その後に続くのは月光で成ったかのような銀髪をゆらめかせた女騎士だ。
「緋芽佐祐李(ea7197)と申します」
「私はフェアレティ・スカイハート(ea7440)と申す騎士‥‥円卓の騎士である卿を信頼し、お守りしましょう」
一人はたおやかに、一人は毅然として。
ガウェインに挨拶を送る。
当のガウェインはほっと吐息をもらし、まじまじと二人を見詰め返した
聞けば佐祐李は忍びであるという。ここまで数々の修羅場をくぐってきたに違いない。にもかかわらず、この可憐さはどうだろう。よほど魂に穢れなく、煌きが強いに違いない。
そしてフェアレティという女騎士。女性の身でありながら、ここまで凛気を身につけるには血の滲むような鍛錬が必要だったはず。それをひそとも感じさせぬ透徹の身ごなしに、ガウェインは好ましさを感じた。
「ガウェイン卿、そろそろ」
全ての始末は得意技、というか宿命というか。セラが促した。
うむと肯首した太陽の騎士のあまりの屈託のなさに、ふとユイスは危惧を覚え、身を寄り添わせた。
「ガウェイン卿、親子での対面とはいえ今は緊迫下、ましてやこれから臨むのは敵地――」
「わかっている」
頷くガウェインの身に、ふっと凄愴の気が揺らめいた。そうと見てとって黒瞳を上げたユイスは蒼みがかったガウェインの笑みをとらえている。
「ならばこそ、お前達と共にゆくのだ」
●揺れる太陽
セラもフェアレティもともに冷静沈着だ。
が、やはり時には失策もあるようで。
心優しいリオーレが食糧を差し出した。一度は断った彼等があるが、難敵――腹の虫には敵わない。
「時に、お尋ねしたいことが」
ふっと口を開いた佐祐李に、フェアレティをからかっていたガウェインは笑顔のままで、
「なんだ。難しいことは分らんぞ」
「いえ、あの‥‥王は神の聖剣に選ばれし勇者と聞いております。ならば不義の出生での神の加護の有無はいらぬ心配でしょう。何故諸侯がそこを問題にするのか私には分かりかねます」
「佐祐李は聡いな」
ゆらり。ガウェインは立ちあがった。
「世の者達が、皆、お前のようであったならば争いなどは起こるまいに」
その嵐の前の凪ぎにも似た風景をよそに。
ふっと二つの黒影がわいた。
フレドリクス・マクシムス(eb0610)と狭堂宵夜(ea0933)。夜闇に乗じて忍び寄る者を警戒し、見回っていた二人であった。
「どうだ?」
「大事ない」
確認しあった二人は、焚火に浮かび上がる仲間達の姿に眼を転じた。
「イギリスもきな臭くなってきたようだな」
「ああ。荒事の好きな俺には嬉しい限りだ」
ニンマリする宵夜に、フレドリクスも冷笑を返す。
刃を友と。刃を敵と。立ち位置は違えど、胸に獣を飼っている一事は同じである。
「俺も同様だ。傭兵崩れの俺にも仕事が増えて、有り難い事では有る」
「物騒な連中だな」
声に、はじかれたように二人は振り返った。
背後。のばせば手の届く近さに一つの影が佇んでいる。
「ガウェイン卿!」
同時に二人の口から小さな声がもれた。
共に手練れの二人である。その自負もある。
が、その二人に気づかれることなく背後に立つことを可能とするガウェインの手練とは、そもいかなるものであろうか。
フレドリクスともあろう男がわずかに肌を粟立たせ、逆に冷然たる語調で問うた。
「一つ聞きたい事がある。‥‥今の時期に其処へ向かうのは、周囲に無用な憶測を呼び混乱を招く事になりかねん。それを承知で行くというからには‥‥それなりの覚悟が有るのだろうな?」
「覚悟もなしで、お前達を巻き込んだりはせんさ」
「ならばよい。が覚えていてもらおう。誰も己の生まれを選ぶ事は出来ん。だが、己の道を己で決める事は出来る。重要なのはどちらであるかということを」
云い置いて立ち去るフレドリクスの背をガウェインはちらと見遣った。そして、その特徴的な耳を。
ハーフエルフであるフレドリクス。彼の歩んできた道がいかに過酷なものであったか。その彼が、他人の痛みを案じることができる。その強靭さは、フレドリクスの最大の武器に違いない。
「ガウェイン卿。俺も聞いてもらいたい事があるんスけど」
「おお、かまわんぞ」
宵夜に眼を転じたガウェイン。その面には、彼自身気づかぬ笑みが浮いている。
実は――一目見た時から、ガウェインは宵夜のことが気に入っていた。それは彼の裡にある修羅が、宵夜の裡の陽気な修羅に共鳴したからかも知れぬ。
「俺が依頼を受けた理由なんスけど」
キャメロットで沢山の友と出会い、愛する女性もできた。だから、この国が大好きだ。こんな戦争なんかで失いたくない。
「王様が不義の子だとしても、関係ないッス。この平和な国が、そんな風に治めてくれる王様が、生まれた国より好きだから‥‥俺、闘いたいんス」
「宵夜よ」
宵夜の肩を、ぐっとガウェインは掴んだ。強さと暖かさ。二人の熱量が溶け合う。
「その言葉、王に聞かせてやりたかったぞ」
降るような星空を見上げる太陽の騎士は、ひどく孤独に見えた。
「お眠りにならないのですか?」
「リオーレか」
応えてから、再びガウェインは宝石を散りばめた夜空に眼を戻した。
「星が綺麗なので眺めていた」
「そう‥‥」
数歩歩み寄って、リオーレはぽつりと言葉を零した。
「私、いつも教え子に諭していることがあるのです‥‥」
聞いていただけますか?
応えを待たずにリオーレは告げた。
人は神ならぬ身で、どんな選択でも‥完璧な回答など無くて、いつも悲しみ苦悩する。でも、苦悩の可能性を恐れるのではなく、苦悩する事すらない安易な道を選ぶ事を恥じなさい。自分を欺かず正しいと信じた道を進めば、きっとどんな事になっても胸を張れるから。
「お前の教えを受けた者は幸せ者だな」
ややあって応えたガウェインだが。
その背がいやに頼りなげに見え、思わずリオーレは抱きしめていた。
「苦しいなら苦しいと云えば良い、泣きたいなら泣けば良いのですよ」
「リオーレ」
満天の星の下、寄りそうふたつの影を、ただ時だけが静かに抱きしめ‥‥
「リオーレ」
再びリオーレを呼び、ガウェインは顔を振り向かせた。
「お前、華奢だと思っていたが、思いの外柔らかいな」
「!」
はっと身を引いたリオーレは慌てて胸を抱きかかえている。闇のこととて見えぬが、耳朶までルビー色に染まっていることは間違いない。
「ガ、ガウェイン‥‥」
さすがに怒りかけたリオーレであるが、続くガウェインの声に胸の炎がさっと散り消えた。
「姉のよう」
ガウェインは云った。
「姉上がいたら、きっとお前のような匂いがするのだろうな」
まるで幼子のようだ。
リオーレはふと思った。
●館
「ガウェインだ」
告げると、門衛の兵士の一人はすぐさま館にとって返した。あまり驚いた様子がないのは予期していた証しであろう。
「ガウェイン卿」
フェアレティの注意に、ガウェインは無言で頷いた。
静もる館。アフタヌーンティーが似合いそうな瀟洒な風景であるが。
殺気に凍りついている。
が、ここで手を出すことはあるまい。
恐れず慌てず。胸の細波は現の真底を読み違える元となる。セラは不動の心でそう読んだ。
「行きましょうか」
「よかろう」
ガウェインが足を踏み出した。
リオーレ、サクラ、セラ、ユイス。
ガウェインが会見に臨むことを許した四人であるが。
悶着が一つ起きた。ユイスはイギリスの騎士であるので問題はなかったが、残る三人は他国の者である。ましてやセラ以外は平服のままだ。どこの馬の骨とも知れぬ者は立ち入りを禁ずると応対に出た兵士は否やを表明した。
が、これが拙かった。
「馬の骨だと」
兵士の胸倉を掴むと、ガウェインは壁に叩きつさけた。ミシリ、と壁が軋み、これにはさすがの冒険者達も慌てた。いや、もっと慌てたのは兵士の方だ。
ごねられては面倒。そう計算したものか、慌ててユイス以外は得物を携えずという条件で同行を認めたものである。
「飲食は控えていただきます。この会見は既に私的会見に非ず、油断は禁物ゆえ」
「あなたに勝つまではいなくなられては困りますから‥‥」
廊下の途中で告げたのはユイスとサクラである。
「ハッ、共に美形であるのに、何とも色気のない」
溜息をもらしたガウェインであるが、胸の内では莞爾と笑っている。ユイスのなんという配慮の確かさか。サクラのなんというけなげさか。
一方。
残った四人のうち、フェアレティとフレドリクスは門の近くで馬を預かっていた。宵夜は庭園などをうろつきまわり、度々注意を受けている。
「単純だが、効果的な陽動だな」
「なんせ、あの面相だ。それより」
会談の方は大丈夫なんだろうな。宵夜が耳にしたら青筋たてそうな台詞をに続けて、フレドリクスが問うた。が、フェアレティは薄く口辺を歪めたのみだ。
「問題はその後だ。どのような策略が待っているか知れんが‥‥。ふふ、心配に至らぬか」
そして佐祐李は――
たおやかな外見とは裏腹に獅子奮迅の働きの真っ最中であった。館を含めた周辺の地形を把握し、その後罠を設置。今は番犬を夢幻境へと誘い込んだところである。
しかし。
これからが問題であり急所。
自分達の馬車を確保し、なおかつ敵の馬車を破壊、馬を放つ。これで敵は足をなくすという按配だ。
●会談
館の奥まった一室。
用意された数脚の椅子にはガウェインのみが腰掛けていた。冒険者達は用心のため佇んだままだ。
その彼等の眼前には二人。一人はグースという、おそらくはオクスフォードの騎士。そしてもう一人はアンジェラと名乗る妖艶な女。彼女はモルゴース――ガウェインの母の遣いといった。
「母に会わせてもらおうか」
いきなり切り出したガウェインにアンジェラは苦笑を頬に散らした。
「ガウェイン様はせっかちであらせられる‥‥モルゴース様はここにはいらっしゃいませぬ」
「なに」
すらり。ガウェインは立ちあがった。
「なら、ここには用はない」
「お待ちを」
慌てることなく、アンジェラは一枚の書状を差し出した。
「モルゴース様よりの信書でございます」
「母上の――」
ひらいた書状を一瞥すると、ガウェインはぐしゃりと握り潰した。
「母上に伝えてもらおうか。俺が欲しくば、直接口上を述べろと」
もはや用はない。くるりと背を向けたガウェインを、再びアンジェラが呼びとめた。
「お待ちください」
「まだ何か用か」
「はい。今のご返事で、ガウェイン様をお帰しすることはできなくなりました」
ニィ、と。アンジェラの口の端が吊りあがった。
が、ガウェインが返したものは、それにも増して凄絶な笑みだ。
「できるか」
「はい」
「馬鹿め。ここにいるのを誰だと思っている。ガウェインと冒険者だぞ」
かちり、と。ガウェインの足元に短剣が落ちた。
眼にもとまらぬ迅さで放たれたグースの短剣であるが、その必殺の牙は聖なる結界に覆われたガウェインには届かない。
するすると二つの影が進み出た。
ユイスとリオーレだ。
危険な女。本能的に察知したユイスの剣は威嚇するかの如くアンジェラにかざせられ、そして――リオーレの身は琥珀の燐光につつまれている。
「おのれ」
グースの腰から銀光が噴いた。
その前に――
サクラが蹴りあげた椅子が飛んだ。咄嗟に薙ぎ払うグースであるが、そこに隙が生じた。
刹那、重力の渦が窓を吹き飛ばした。
合図だ。
直後、四つの影は同時に動いた。
廊下を疾風の如く駆けぬけるのはガウェイン達である。
唸りをあげる刃風は怒涛のように群れなす敵兵を容赦なく斬り伏せていく。中でもセラとサクラのふるう水晶剣の威力は絶大だ。刃光が蛍火のように舞う時、それは恐怖の体現となる。
「ええい、しつこい!」
なおも追いすがる敵兵にサクラとセラが忍ばせていたダーツを放った。一瞬後、ガウェインはドアを蹴り開けた。
陽光溢れる空間に数頭の馬と馬車。御車台にはフェアレティの涼やかな笑みが輝いている。
「お待ちしておりました」
「引き上げるとするか」
ガウェインは馬車のうちで瞑目する若者を見とめた。黒狼の如きフレドリクス。門衛が弊れ、門が開いているのは彼の仕業であろう。
次いで。
ガウェインは館の裏から火の手が上がっていることを見とめた。
どうりで敵兵の数が少ないはず。やるな、佐祐李!
そして宵夜は――
酒のようにポーションをあおりつつ、陸奥流を駆使し敵兵を凌いでいる。装束の所々が斬られ、ダラリと垂れ下がっているのは彼の命知らずの武者ぶりの証左だ。
「ガウェイン卿!」
呼ばわる声には微塵の翳りも見うけられぬ。
「俺、騎士じゃないスけど‥この剣、貴方に捧げます!」
「ならば――」
ガウェインは静かな笑みを浮かべた。
「ここで死ぬことは許さんぞ」
「おう!」
宵夜は凱歌をあげた。
この後、冒険者達はセラとサクラの装備を携えた佐祐李と落ち合うことになるのだが。
見送るアンジェラに、しかし悔恨はない。むしろ餌を前にした獣の欲情的な光に眼をぬめらせて――
「たった九人のみで囲みを破るとは‥‥やはり欲しい、太陽の騎士を」