古墳探索――ジャパン・京都
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■ショートシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月28日〜07月05日
リプレイ公開日:2005年07月08日
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●オープニング
●古墳探索
「はじめまして。冒険者ギルドの番頭です」
楚々とした仕草で、その女性は冒険者諸賢に対し、丁寧に頭を下げた。
「本日お集まりいただいたのは、ほかでもありません。いささか難儀な事件が起こっております」
と、まじめな口調で、番頭は切り出した。
話はこうである。
一週間ほど前に、京都から西に二日ほど行った場所で小さな遺跡が見つかった。当初は未探査の遺跡を発見したということで、発見した冒険者の一行が探索を行ったという。しかし、骸骨の化け物に追い払われてしまったというのだ。
「探索すべき遺跡は学術的な価値があり、ぜひとも無傷で確保したいというのが今回の依頼内容です。特に重要なのは壁画らしく、玄室の壁画の確保が絶対条件になっています。遺跡を破壊することなく骸骨の化け物を撃退し、そして遺跡を確保してください。これが遺跡内部の、調査済み部分の資料です」
そう言って、節子は羊皮紙の束を出した。
「発見された副葬品などについては、依頼人が別途買い取ってくれるそうです。つまり発見した分だけお金になります。奮起していただければ幸いです」
節子が、話を締めくくった。
【遺跡内部について】
発見された遺跡の内部構造は、次のようになっています。
A:入り口
小山の中腹に空いたほら穴。熊かなにかが掘ったらしい。現在生物は生息していない。
B:通路1
壁に埴輪が並んでいて、侵入者を撃退する仕掛けになっている。壁には『14、91、62、53、64、96、48、11、?』と書かれていて、数字を押すボタンがある。
C:玄室1
10メートル×10メートルの部屋。奥に通路の入り口がある。壁画がある。壁画には6人の兄弟の絵が描いてある。
『あるところに2組の3兄弟がいました。その6人をそれぞれABCDEFとします(誰と誰が兄弟かは不明)。この6人のうち、3人は常に本当のことを言い(正直者)、他の3人は常に嘘をつきます(嘘つき)。また、どちらの兄弟にも最低1人は嘘つきがいます。以下の証言から、誰と誰が兄弟で、嘘つき・正直者はそれぞれ誰なのかを当ててください』
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・証言
A「私の兄弟は2人とも嘘つき」
B「私の兄弟は2人とも正直者」
C「AとBは両方とも嘘つき」
D「私はCと兄弟」
E「私とBは兄弟」
F「Eは正直者」
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D:通路2
怪骨(スカルウォーリアー)が立っている。その手前の床にABCDEFの6枚の石版があり、『兄弟か正直者だけ乗れ』と書いてある。奥に玄室があるのが見える。
E:玄室2
15メートル×15メートルの部屋。中央に石棺があり壁画が描いてある。
●リプレイ本文
古墳探索――ジャパン・京都
●古墳とは
古墳とは、土を高くもりあげた古代の墓である。ジャパンでは弥生時代に続く3世紀半ば〜7世紀ごろに築造された多種類の墳墓を古墳と総称し、この時期を古墳時代と呼ぶ。代表的な前方後円墳で世界一の体積をもつ仁徳天皇陵(大山古墳・全長約486メートル、後円部径約245メートル)から、直径10メートルにみたない小円墳、崖部に横穴をあけた横穴墓まで多くの種類がある。
律令国家の成立、火葬の流行とともに、古墳文化は衰退した。現在では作られることもない。
そして古墳はジャパンにおいて、西洋で言うところのダンジョン(地下迷宮)に相当する。
古墳時代にどのような経緯を経てもちこまれたのかは分からないが、その内部には様々な魔法の武具が副葬品として納められている場合が多い。大陸(華仙教大国)から流れてきたものがそのほとんどであると思われるが、中には西洋でしか作られないようなものが混じっていることもある。
非常に興味ぶかい話ではあるが、この謎を解くにはまだまだ時間と調査が必要だろう。
ともあれ、今回の依頼の古墳は玄室二つの小規模の古墳という話である。4名の探索の予定だったが、直前に1名(ちなみに新人)欠員が出て、3名での依頼遂行であった。
●探索者たち
今回探索にたずさわったのは、次の三名である。
フランク王国出身の、エルフのウィザード、ゼルス・ウィンディ(ea1661)。同じくフランク王国出身の女ナイト、ティアリス・レオハート(ea2396)。そして地元ジャパンは京都出身の僧侶、八幡伊佐治(ea2614)。
ティアリスはまだまだ冒険者として練達の域には遠いが、他の二人はかなりの手練である。
「実は私、ジャパンに来てまだ日が浅いので、この国の遺跡に触れるのは初めてだったりするんですよ」
うきうきしながらゼルスが言えば、「じゃ、頭脳労働は任せたわよ☆」とティアリスが言う。
伊佐治は飼い犬の諭吉と戯れていた。
――お前ら少しは緊張しろよ。
筆者の心の叫びをよそに、一同は大過なく問題の遺跡についた。
がけ崩れでも起こそうかな(ぼそっ)。
●謎解きその1
「『14、91、62、53、64、96、48、11、?』、とくれば、答えは『00』ですね」
ゼルスがそう言って文字盤の数字を押すと、廊下に居た埴輪たちが一斉に壁際に並んだ。どうやら正解らしい。
「どうして『00』が正解なの?」
ティアリスが感心したように言う。
「簡単な数字のアナグラムです。『14、91、62、53、64、96、48、11』を『1、4、9、16、25、36、49、64、81、1??』と並べ替えれば、1から9までの二乗の数字になっているでしょう。だから、最後は10の二乗の『100』が来ます。『1』はすでにあるので、『?』は『00』というわけです」
すばらしい、完璧です。
ティアリスが解いたとおり、答えは『00』で正解である。通路を通ったが、埴輪は襲ってこなかった。
人数が少ないから、多勢で攻められると弱いんだけどね、このパーティ。
●謎解きその2
問題。
『あるところに2組の3兄弟がいました。その6人をそれぞれABCDEFとします(誰と誰が兄弟かは不明)。この6人のうち、3人は常に本当のことを言い(正直者)、他の3人は常に嘘をつきます(嘘つき)。また、どちらの兄弟にも最低1人は嘘つきがいます。以下の証言から、誰と誰が兄弟で、嘘つき・正直者はそれぞれ誰なのかを当ててください』
――――――――――――――――
・証言
A「私の兄弟は2人とも嘘つき」
B「私の兄弟は2人とも正直者」
C「AとBは両方とも嘘つき」
D「私はCと兄弟」
E「私とBは兄弟」
F「Eは正直者」
――――――――――――――――
ちょっと難易度の高い問題だったが、これも冒険者たちは解いた。
解答例は次の通り。
『Bが正直だとすると、Bの兄弟全員が正直となり、矛盾します。よってBは嘘つきです。
ここでFが嘘つきとすると、Eも嘘つきとなり、残りのA、C、Dは正直となりますが、Cの発言が正しくないのでCが正直であることと矛盾します。よってFは正直で、発言よりEも正直となります。
BとEは兄弟となりますが、Bの発言(嘘)より、Fとは兄弟ではありません。
ここでDが正直とすると、残りのA,Cは嘘つきになりますが、Cの発言が正しくなり、Cが嘘つきであることと矛盾します。よってDは嘘つきです。
ここでAが正直だとすると、Cは嘘つきとなりますが、Aの発言を満たすためにはA、C、Dが兄弟となり、D(嘘つき)の発言が正しくなってしまいます。また、FはB、Dとは兄弟でない、というのにも矛盾します。よって、Aは嘘つき、Cは正直となります。
まとめると、正直者はC、E、F、嘘つきはA、B、Dです。
ここでBの発言(嘘)より、B、Eのもう一人の兄弟は嘘つきです。よって、CはB、Eの兄弟ではなく、同じくB、Eの兄弟ではないFと兄弟になります。Dの発言(嘘)よりCとDは兄弟ではないので、兄弟は(A、C、F)と(B、D、E)になります』
「というわけで、盛大にACFの石版に乗ってみようか!」
と、今回出番のあまり無い伊佐治が勢いよく言った。ちなみに諭吉は入り口の見張り中である。
魔法で魅了してテレパシーで言い聞かせて。
犬はそんなことしなくても、飼い主と認めればついてくるものなのだが。
その辺り、伊佐治もまだまだ人間ができていない。
ガコン。
石版に3人が乗ったとたん、奥の怪骨が動いて道をあけた。
「どうやら正解みたいね」
ティアリスがほっと息をつく。
「この怪骨、売れないかな」
俗物僧侶の伊佐治が言った。
まあ、好事家に売ればいくらかにはなろうが、運ぶのがちょっと大変そうである。
●壁画
奥の玄室の壁画は、考古学的価値から言えばたいそうなものだった。
基本は、日本神話に属するもののようである。だが今回の発見では、西洋竜のような画像が見られたからだ。
月道の発見時期などから考えると、このような壁画が存在すること事態歴史的発見である。依頼人がこの壁画を欲したのも、わかるような気がする。
ただ惜しむらくは、副葬品らしきものがほとんど腐食していたことだ。天井の一部を木の根が突き破って、湿気が浸入したためらしい。青銅に金メッキなどを行った大陸風の剣等が無事であれば、もう少し稼ぎにはなったはずである。
ま、難儀でも若葉マーク向けの冒険なので、とりあえずはこんなものだろう。
依頼を遂行した冒険者は、ギルドに戻り報酬を受け取った。
また次の冒険が待っている。
【おわり】