暴れん坊藩主#4−1――ジャパン・箱根
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■シリーズシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 94 C
参加人数:5人
サポート参加人数:2人
冒険期間:06月24日〜07月01日
リプレイ公開日:2006年06月27日
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●オープニング
●サブタイトル
『かまぼこが結んだ父子愛。箱根七湯かまぼこ珍道中』
【箱根かまぼこ】
伊勢参りを行い箱根で湯を浴び、小田原の味覚に舌鼓を打つ。古くから東海道で発展してきた箱根の味覚の一つ、それが『箱根かまぼこ』。ちくわなどでもおなじみで、温泉まんじゅうのある場所なら同じ蒸しせいろに並んでいる場合が多い。小田原の名品の一つ。
●箱根における冒険者
箱根はその地勢学上、西国からの防衛の要衝となる。
天下の嶮(けん)と呼ばれる箱根山を中心に、関所、陣、城砦が作られ、『駅』と呼ばれる飛脚や早馬を利用した情報伝達手段も確立した。現在の箱根駅伝はその名残である。
神聖暦980年ごろ、源徳家康によって東海道が整備されると、湯本から須雲川沿いに元箱根へいたる道が開かれ、湯坂道にかわる本道となった。最近になって小田原から8里、三島から8里の芦ノ湖岸に箱根宿が開設され、元箱根にあった箱根関が宿の東に移転。道筋には杉並木と石畳がととのえられた。箱根神社への参詣も活況をとりもどし、元箱根は門前町として発展した。
一方、芦之湯と早川沿いの湯本、塔之沢、堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀は箱根七湯の名で知られるようになり、湯治場として賑わっている。とくに湯本は、唯一東海道沿いにあるため繁栄し、一夜泊まりの客は小田原宿や箱根宿をしのぐほどである。
その箱根は、小田原藩11万5千石の支配地で、東海と関東を隔てる境界にもなっている。源徳家康の支配地の、西端というわけだ。
藩主は、2代目大久保忠吉(おおくぼ・ただよし)。若干24歳ながらよく箱根を治める、賢主であった。
箱根そのものは小田原藩の直轄地であり、その運営は藩主大久保忠義が直々に行っている。だからといって、侍の領地運営にありがちな馬鹿みたいに厳格な統治ではなく、例えるならすごしやすい程度に適度に散らかった、自分の居室のようなものだ。わりと小器用に清濁併せ呑み、武士にとっても町民にとってもそれなりに居心地の良い場所になっている。
実際、景気もかなり良く、仕事も数多くあり、『箱根で三日も働けばどこの藩に行く駕籠代も工面できる』などという評判も立つほどだ。そして実際、その通りなのだ。
無論、多くの人が居れば揉め事も多い。深刻なことなら役人が、瑣末なことなら地回りたちがそれを解決してくれるが、『暴力専門の何でも屋』という職能が求められる場合はそのどちらも対処できない場合がある。たとえば、鬼種を始めとする怪物系の揉め事である。それ以外にも、愚直な役人や縦割り社会の地回りたちでは絶対に解決できないような、知能系の問題になると『彼ら』の出番となることが多い。
『彼ら』――すなわち『冒険者』である。
江戸では、社会の底辺のさらに底辺に属する性格破綻者の集団と見られがち(ヒデェ)な冒険者ではあるが、箱根ではわりと立派な部類に入る職業として認知されている。宿場と街道の安全を確保しているのは間違いなく多くの冒険者諸賢であり、惣菜の材料調達から夫婦喧嘩の仲裁まで、冒険者の仕事は実に多岐にわたりそして尽きない。
だからこそではあるが、冒険者に来る依頼は「本当にどうにもならんのか?」と言いたくなるぐらい厄介なものもある。しかしそれで尻尾を巻くようでは、そもそも冒険者などやっていられない。
そして今日も、やっかいな依頼がやってくる。
「今回の依頼は、『箱根練り物組合』から来てるわ」
そう言ってキセルをくゆらせたのは、冒険者ギルドの女番頭、“緋牡丹お京”こと、烏丸京子(からすま・きょうこ)である。漆を流したような黒髪が艶やかしい妙齢の女性で、背中には二つ名の由来となる牡丹の彫り物があるという話だ。
京子がキセルを吸いつけ、ひと息吐いた。紫煙が空気に溶けてゆく。
「『箱根かまぼこ』、食べたことある? 汁物に入れるだけで出汁が出るような、とても旨いものなんだけど、最近値が上がってきているの。理由は簡単。練り物の材料となる魚の流通を、誰かがじゃましているから。その犯人を挙げてお縄にして欲しいっていうのが、今回の仕事よ」
タン!
京子が、キセルで火箱を叩いた。火球が、灰の中に転がる。
「依頼内容は、箱根七湯の練り物価格を適正に戻すこと。大元は材料かもしれないけど便乗犯が七湯に出ているらしいわ。その辺、よろしく」
●リプレイ本文
暴れん坊藩主#4−1――ジャパン・箱根
『かまぼこが結んだ父子愛。箱根七湯かまぼこ珍道中』
●豆知識
桜夜:「ちなみに蒲鉾の由来とは、魚肉をすって鉾の先に付け焼いて食べた。その形が蒲の穂に似ていたと言う、言伝えかららしいな。ちょっとした豆知識だ」
へぇーへぇーへぇーへぇーへぇー。
56へぇ。
●展開早いです
「なるほど、そなたといると退屈だけはせぬようだな」
久遠院桜夜(eb5371)と大野進之助(NPC)は、15人ぐらいのごろつきに囲まれていた。いずれも風体のよろしくない御仁ばかりで、安っぽい時代劇ではよくある展開である。
桜夜は、情報収集のために派手に動き回った。具体的には、関係各所に聞き込みをしたのだ。
大野進之助とは、その過程で知り合った。彼女の妹と進之助が知り合いだったというのもあるが、進之助も今回の件に首をつっこんでいたからである。
はたして、効果はてきめんであった。出てきたごろつきは衣服も武装もまちまちだが、
『いかにも下っ端です』みたいな雰囲気は共通していた。
「どうする桜夜どの」
進之助が桜夜に問うた。あまり困っている様子を見せないのは、余裕からだろうか。
「たたきのめして、裏を吐かせる」
そう言うと、桜夜は両手に十手を構えた。
「やっちまえ!」
定番のセリフと共に、ごろつきが一斉にかかってくる。
1分14秒後。
ごろつきはことごとくノされて地面に横たわっていた。
ちなみに進之助は、刀を抜かず無手でやり過ごした。余裕である。
●話しをまとめると
「まあ、『魚正』こと湯本の正太郎が、今回の値上げ騒動の大元で間違いないな」
冒険者ギルドの酒場で茶をすすりながら当然のように言ったのは、志士の柚衛秋人(eb5106)である。いろいろと各方面(もちろん合法的なところも非合法なところも)調べを尽くし、結論に達したのだ。
「誰じゃそれは」
河童の忍者、磯城弥魁厳(eb5249)が言った。彼も秋人と同様の調査を行っていたのだが、あいにく手間取りすぎてそこまでの結論には達していない。
余談だが彼の飼い犬たちを捜査に参加させたが、『魚の匂いを追え』というあまりに漠然とした命令のため、役に立たなかったことを付け加えておく(つーか、子犬に何を期待しとるんだ君は)。
「魚の卸しの元締めだよ。人間の、こんな恐い顔したひと」
カムイラメトルクのスギノヒコ(eb5303)が、手で顔のあちこちを引っ張り『恐い顔』(はたから見ると笑える顔)を作る。
「ならば、真っ当な犯罪ではないですか」
ジャイアントの陰陽師、宿奈芳純(eb5475)が言った。犯罪に、真っ当なものがあるかどうかはさておき。
「ここまでは、おおかたの予想通りだ」
そこまで何も言わなかった、大野進之助が口を開いた。
「便乗値上げの対処といった話しは、後でも解決できる。しかし解せないのは、蒲鉾程度にやけに大仰な対応をしてくることだ」
そこで桜夜が、先刻暴漢に襲われた話しをした。
「確かに、蒲鉾の材料は大抵雑魚だ。儲けもそんなにあるとは思えない。俺が黒幕なら、もっと大物を狙う――」
秋人はそこまで言って、はっとした顔になった。
「もっと他に、何か大きな魚を釣り上げようという黒幕がいると?」
秋人の言葉に、進之助がうなずく。
「蒲鉾は、庶民の家では自宅で作るのが普通だ。値上げで困るのは、温泉組合や温泉宿、料理屋、とにかく蒲鉾の消費の激しい場所。実は小田原藩の台所事情にも、大きくかかわる。もちろん藩主、大久保忠義様の面子にもな。そこを狙い撃ちにしているとなると――」
「そうか!」
スギノヒコが声をあげた。
「犯人は、蒲鉾が嫌いなんだ!」
おいおい。
●とりあえず悪はしばく
冒険者一行は、とりあえず蒲鉾の件を解決するため魚正こと湯本の正太郎の所へ行くことにした。
もちろん証拠を握ってふん縛り、悪を正して正義を履行するためである。
「では、ちょっと忍んでくるのじゃ」
魁厳が、正太郎の家に忍び込む。正太郎の家はいわゆる魚御殿言われるもので、かなり大きな部類に入る。
魁厳は天井裏を渡り歩き、客間とおぼしき場所にたどりついた。
「‥‥‥‥は順調でございます。蒲鉾の値段は上がる一方ですし、小岩井屋には秘密裏に材料を卸していますので、蒲鉾自体が無くなることはありません」
「うむ、仕手相場も良い案配になってきた。金さえ積めば、多少無理な領地換えもかなうだろう。ところで、あの子供はどうした?」
「ええ、今ンとこふん縛って蔵に放り込んでおります」
「あれはいい人質になる。目を離すなよ」
「それはもう‥‥」
*
「みたいな話しをしていたのじゃ」
魁厳が帰ってきて報告をすると、なにやら事態がややこしくなっているようだった。
「人質ってなんのことでしょう‥‥」
芳純が、大きな体で腕を組む。
「助けてから考えようよ。今は悪党がいるんでしょ? なら叩くなら今だよ!」
ぴょうんぴょうん跳ねながら、スギノヒコが言った。
「叩こう。よろしいですね、大野どの」
「承知」
桜夜の言葉に、進之助がうなずいた。
●突入
まず、魁厳が見張りを《スタンアタック》で黙らせた。そして木戸を開け、一行を中に誘(いざな)う。
いち、にの、さん、で客間に飛び混む手はずになっている。ただしスギノヒコは、その『子供』を守るために蔵へと向かった。
いち、にの、さん!
ばーん!
桜夜と秋人が客間を蹴り開けると、そこには覆面の高級武士と正太郎が居た。驚いた顔をしている。
「手前ぇら何者だ!」
正太郎が言う。
「箱根温泉組合の者だ。魚正こと湯本の正太郎。魚の不当な価格操作の証拠、確かに聞かせてもらった。潔く縛につけ」
秋人が、口上を垂れた。
「くせ者だ! 出会え、出会え!」
お約束のセリフに、チンピラと覆面武士の取り巻きらしいのが数名出てきた。取り巻きの武士は、覆面武士を守るように囲んでいる。
「やっちまえ!」
うお――――!!
ちゃーんちゃーんちゃーん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃーんちゃーん!(※BGMは参考です)
闘いが始まった。
*
スギノヒコは問題の土蔵に来ていた。南京錠がかけられていたが、小刀をてこにしてへし折る。
「誰かいる?」
中では、何か小さなものがうずくまっていた。人間の子供らしい。
「僕はスギノヒコ。君は?」
「‥‥忠吉」
「助けに来たよ、ここを出よう」
*
スギノヒコが忠吉を連れて皆の所に戻ってきたとき、すでにコトは終わっていた。覆面武士には逃げられたが、正太郎一味を捕らえ冒険者達は面目を果たした。
ただ、まだ完全に事は終わっていない。事件は次の展開を見せることになるだろう。
「かまぼこ食べたいな」
「そうですね」
「よし、では私がおごってやろう」
芳純とスギノヒコの言葉に、進之助が応じる。
かくて、箱根かまぼこの平和は守られた。
ただ、事件はまだ終わっていない。
【つづく】