強襲! 恐獣兵団殲滅戦
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■ショートシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 47 C
参加人数:12人
サポート参加人数:2人
冒険期間:11月22日〜11月28日
リプレイ公開日:2006年12月01日
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●オープニング
●カオスの脅威
『カオス』が何であるか?
実は、多くのアトランティス人は把握していない。ただカオスニアンや『カオスの魔物』などの存在から、邪悪で『このアトランティスを冒(おか)すモノ』であると認識している。
だが、その本質にまで迫った学者や魔法使いは居ない。それはこの50年変わらぬアトランティス各国の命題であり、そしてなんとか探りたい事物である。
なぜか?
話しは簡単だ。どうやって生きて(発生して)いるかが分かれば、滅ぼすことも不可能では無いからだ。
生物のメカニズムは、かなり解明されている。まあ、天界の知識でアクチン・シトミンといったアミノ酸の集合体であるという人間の構成が、アトランティスやジ・アースでは『六大精霊』によって構成されているものであったりとその有り様は様々だが、モンスターも含めて、解明された現象はあまり脅威ではない。ウィルスの発見により免疫学が発展したように、正体が分かれば対処のしようがあるからである。
だが、カオスだけは別である。現状その発生原因も分かっていないし、ある日突然『カオスの穴』が開口しサミアド砂漠が広がり、文字通り『世界が崩壊しかけた』この事象は、今だ謎のままだ。
そして、バの国の台頭。
基本的に『リーダー』という存在の無かったらしいカオスニアンたちは、バの国の『軍』というシステムを教えられ、『群体』から『軍隊』に変化した。それは身体能力にすぐれたカオスニアンに適合し、そもそもバイタリティあふれるカオスニアンを巨大な一個の『暴力』に作り上げたのである。
そしてカオスニアンの多くはどん欲で、実に凶暴である。そしてしたたかで、認めなければならないのは『賢い』のだ。
悪の賢人ほど始末の悪いものは無い。そして、彼らは虎視眈々と『何か』を狙っている。
◆◆◆
サミアド砂漠が人跡未踏の地になって久しいが、生物は数多くいる。その中にカオスニアンや恐獣も含まれているのは、実質支配被支配を超えた部分でそこが『カオスの地』の延長にあるからに他ならない。分国3領でもカオスの地については『支配地』としての責任は放棄しており、実のところカオスの地と隔てるものはシーハリオンの丘や山脈などの『地理的な事情』によるものがほとんどだ。
ゆえに砂漠はカオスニアンにとって庭のようなものであり、恐獣の繁殖地や敗戦の避難地、あるいは駐屯地や軍事拠点として使用されている。広大な砂漠を遊牧民のように転々としながら、位置を特定させずに『軍(群)』を運営しているのだ。
「カオスニアンの、大規模な居留地が判明しました」
めずらしくギルドマスターから発せられた言葉は、カオスニアンに対する『攻め』の依頼であった。
「バの国の動向を探っていて判明した事実です。バの国はフロートシップで補給を送りながら居留地運営を手助けしていたようでしたが、それをリザベ領の巡検隊が目撃したようです。かなり希少な確率と言っていいでしょう」
ギルドマスターは地図を広げて、サミアド砂漠の一部に×印をつけた。
「正確な位置は現地の案内に頼むことになりますが、リザベ領とステライド領の境界を北上したあたりに水場があるそうです。そこをカオスニアンは、拠点にしているそうです。今回は、ここを叩きます」
身震いするような雰囲気が周囲に満ちた。なぜなら、このところカオス勢力の攻めに遭うことはあっても、カオス勢力を攻めることなど無かったからだ。
「敵戦力は、種別不明の大型恐獣が3体に中型恐獣が1個群。これはおそらく、ヴェロキラプトルあたりでしょう。運が良ければ――あるいは悪ければ、バのフロートシップにも遭遇するかもしれません。我々の目的は敵兵力の排除と拠点の確保。アリオ王からは精霊砲搭載型のフロートシップ2隻とモナルコス4騎が下賜されました。かなりの兵力です」
精霊砲搭載型フロートシップは、メイの国ではまだ片手も無い希少船種である。さらに騎士と兵士が60名。馬や兵站なども含めると、文字通り載せられるだけ載せた陣容だ。
「冒険者はこれらの兵員を有益に使用し、最大の戦果を挙げること。『実』もそうですが、天界人の『名』を挙げることも重要視してください。冒険者――つまり天界人の名があがれば、全軍の士気にも関わります。つまり、『宣伝』です」
いろいろと注文の多い仕事だが、軍事行動というのはそういうものである。メイ人の冒険者を軽んじているわけではないが、アリオ王が『英雄の息子』であるように、冒険者も何か『確たる者』でなければならないのだ。
「派手な仕事になりますよ? 覚悟してください」
ギルドマスターが、そう言ってしめくくった。
●リプレイ本文
強襲! 恐獣兵団殲滅戦
●攻め戦
攻撃は最大の防御と言うが、実のところメイの国の実状を考えれば真理に近い。
『防衛戦費』という言葉が一応世の中にはあるのだが、これが抱える矛盾は相当なものだ。つまり『守るための戦いの準備をするお金』というわけで、基本的には水際で『防衛的攻撃』をするためのお金なのである。これは『防衛費』とはまったく違いあくまで『攻性』のもので、迎撃ミサイル・パトリオット(一発約2億円)を購入するような単純なものとは違う。
そしてこれらは日々大量の物資と人材と貴重な時間を食い潰して行き、国力を疲弊させる。主な相手はテロリストなので、手を緩めるわけにもいかない。つまりこのような戦いを繰り広げている限り、ジリ貧なのだ。
だから実は、戦争やって先に相手をぶん殴ったほうが経済効率が良かったりする。大義名分とかお題目とか、そういう『義理』とか『筋』とかを通さなくて良いのなら、バンバン戦争やって相手を叩きのめした方が儲かるのだ。
馬鹿なことを――と思わないで欲しい。現実世界の兵器メジャーが望んでいることは『コントロールされた非核大規模戦争』で物資が大量に消費されることであり、『人命の尊重』はその中に含まれていない。むしろ人が死んだ方が新しい兵器に転換しやすく、また消費者も増えるので万々歳なのだ。
メイの国でも、ある意味同じ事が言える。広大な領土の平和を維持するために消費される物資や金銭、人員は膨大な物で、そして膨大であるが故にゴーレム兵器の導入が急がれたのだ。ゴーレムシップが30隻も存在するのは、つまりは国軍運営に必要な『兵站』を維持するために非常に能率的だったからである。風や潮の影響を最小限にしか受けないゴーレムシップは、まさに広大なメイの国にとって天佑に近い発明品なのだ。
そして状況は、さらに攻性に働く。つまりフロートシップと人型ゴーレムの導入である。
内陸部にサミアド砂漠という広大な『敵地』を抱えるメイの国にとって、陸上部隊の輸送は常について回る命題であった。それが解消の兆しを見せたのは、フロートチャリオットの出現からである。地形を問わない陸上移動を可能にしたこの器物は、アリオ王も注目した。大型化なども検討されたがそこにフロートシップが出現し、アリオ王はフロートシップとフロートチャリオットの混成部隊という構想をすぐに思い描いたという。
実際は鎧騎士の不足によりまだ実現はしていないが、早晩何かの形で結果が出ると思われる。ともあれ現在はフロートシップ+ゴーレム+兵団という構成で、最速の兵団輸送が可能になった。
「つまり、我々はその先鋒だ」
マグナ・アドミラル(ea4868)が重々しく言った。
「ゴーレムを含めた混成兵団の出動は、初めてというわけではない。だがそれが攻撃に使われるのは初めてらしい」
依頼で『希少な確率』と言われた理由を、今更ながらにマグナが説明する。
年長ゆえか立てられているが、実のところ攻撃プランのほとんどは陸奥勇人(ea3329)が立てた。戦術に明るいわけではないが、人間、知恵と勇気があれば結構何でも出来るものである。
ちなみに今回の作戦に使用されている艦は、攻撃型巡洋艦ウルリス級3番艦『ルノリス』と4番艦『シムリス』である。精霊砲1門、バリスタ8門装備の、本格的攻撃艦だ。
そのうち『シムリス』は、今回後詰めとなった。
「弓兵部隊は意気軒昂。訓練は十分とは言えないけど、実戦には間に合わせるわ」
スニア・ロランド(ea5929)が作戦板を前に言った。今回彼女は事実上、フロートシップ『シムリス』と部隊最大派閥となる30名の兵員を率いる指揮官である。
「俺たちは予定通り、デカいヤツを一匹潰しにゆく」
陸奥勇人以下、ノルマンの女ファイター、フォーリィ・クライト(eb0754)、同じくノルマンのファイター、エイジス・レーヴァティン(ea9907)、ノルマンのレンジャー、アリオス・エルスリード(ea0439)が組みを作った。いずれも武勇と武名の立つ者たちだ。
「光太とマフマッドは予定通り、一人で一匹を担当してくれ」
「了解だ」
「わたくしが動かすにはいささか以上に無粋なゴーレムだが、きっちり役割は果たしてみせよう」
天界人、龍堂光太(eb4257)とメイの鎧騎士マフマッド・ラール・ラール(eb8005)がそれぞれ言った。マフマッドはちょっとアレでナニな態度であはったが、悪漢を気取っているわりに神経が細かい人物であることを周囲の人々はこの数日で知っていた。
「で、俺たちがヴェロキをぶっとばすってわぁけだな?」
ヴァラス・ロフキシモ(ea2538)が、ちんぴら口調で言った。冒険者として勇名をはせても、品格の変わらない人物である。ちなみに彼と行動を共にするのは、華仙教大国の武道家、風烈(ea1587)とフランク王国のナイト、ランディ・マクファーレン(ea1702)、ビザンチンのファイター、マグナ・アドミラルと、エジプトのファイター、レインフォルス・フォルナード(ea7641)。
そして彼らの麾下には、残り30名の兵団が、3名1分隊が2分隊ずつ付く。
「作戦は――再確認の必要は無いな? なら、勝ちにいくぞ!」
「「「「応!!」」」」
一同の、声が唱和した。
●黎明の襲撃
カオスニアンも寝る。
まあ当たり前のように聞こえるが、身体能力に長けた彼らが本当に『普通に』寝ているのか、実のところちゃんと確認した者はいない。だが天幕を張り休憩を取るところを見ると、一応夜露をしのぐ工夫ぐらいはしなければならないようである。
「よ‥‥し、むこうは気づいていない」
天界人が持ち込んだ双眼鏡でカオスニアンの居留地を確認して、勇人が言った。
「――ゴーレムを降ろせ! 総員戦闘用意!」
『ルノリス』は予定取り、2騎のモナルコスと30名の兵士、そして9名の冒険者を降ろした。
「抜錨! 上げ舵! 最大戦速!! 弓兵隊、配置につけ!!」
スニアの命令を、『シムリス』の船長が実行する。『シムリス』が先行する形で、2隻のフロートシップは先行した。
「戦いが――始まる」
エイジスがつぶやく。
「戦いが始まれば怖いなんて全然感じなくなるのに、正直今は結構怖い。あんな化け物、個人で相手するもんじゃないからね。でも、そんな凄い敵と戦えることを喜んでる自分もいる。剣士ってのは因業なもんだね」
シールドソードを構えたエイジスが、敵地を見据えながら言った。今回の相手は、全長10メートルを超える大型恐獣なのだ。天界人の武名を知らしめるために、あえて生身で難敵を倒す。それがエイジスに振られた『役割』だ。
「まあ‥‥あたしも戦いに夢中になっちゃうと、本当に我を忘れちゃうから、なんとも言えないかな? でも、臆病なほうがいいと思うよ。この先、生きのこるためにはね。ロロ、ドラグノフ、いくよ」
フォーリィがドラゴンパピィとウォーホースを連れて、先行し始めた。エイジスも続く。
ごごっ!! ばばーん!!
火弩弾が2発、炸裂した。『ルノリス』『シムリス』のものだ。
そしてそれが、開戦の合図――。
「いくぞ!」
勇人が言う。全員が、一斉に駆けだした。
●カオスニアン殲滅戦
「放て!」
『シムリス』の艦上から、いくつもの弓の弦の音がする。スニアの指揮する弓隊のものである。
「取り舵! 右舷バリスタ用意――放て!!」
こちらは先ほどより野太い音がして、太矢が放たれた。そのうち何本かはヴェロキと思われる恐獣を直撃して絶命させた。
「報告! 我が先鋒、敵兵団に到着しました!」
「打ち方やめ! これより『シムリス』は上空警戒を行う!」
スニアが言う。
――命令口調って疲れるなー。
と、愚にも付かないことを考えながら。
一方地上では、2騎のゴーレムを皮切りに兵士たちがなだれ込んでいた。天幕を蹴散らしカオスニアンを踏みつぶし、一気に大型恐獣へと歩を進める。その間に、烈、ランディ、ヴァラス、マグナ、レインフォルスは、麾下の部隊と共に散開し予定通りカオスニアンを潰し始めた。敵を確認する必要など無い。見たもの、動くものは倒す。それだけで十分だった。
「カン騎士団が1人、『爆裂旋風』推参。弱者が強者に打ち勝つために鍛え続けた技術の粋、その目に焼き付けろ!」
烈が雪崩のような連撃を放ち、カオスニアンの戦士を黙らせた。さらに襲いかかってくるヴェロキを叩き伏せ、さらに追撃を加えてとどめを刺す。烈に突っかかる者もいるが、いかんせんかすりもしない。むしろ彼の援護に回っている兵士たちのほうが、大変だった。
――速度戦には、分隊を率いるのは不向きだな。
今回の作戦の評価をするほど、烈には余裕があった。
――メイ到着早々、怪物退治とは難儀なことで。
ランディはぼやきながらも、戦馬を駆り戦場を縦横に駆けめぐる。狙いはヴェロキ級の、危険な中型恐獣である。
同伴の兵士たちはよく戦い、戦意もある。しかし実戦の勘については、いささか未熟と評価せざるをえない。
そのうち、戦場は混乱しはじめてきた。夜襲はそもそも、相手を混乱のうちに敗戦させる策の一つである。ゆえに混乱するのは、当然であった。
下馬――そして混戦へ。
――まあ、予定通りだ。
武器を振るいながら、ランディは戦陣深く斬り込んでゆく。
「だ――――――――――――――っひゃっひゃっひゃっひゃ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね――――!」
ヴァラスは今日も、絶好調である。特におおっぴらに殺しても良い相手であれば、なおさらだ。
――とすっ。
「おっ――」
そのヴァラスの動きを、止める者があった。胸に刺さった、矢である。すぐに胸から熱い物がこみ上げ、口からまっ赤な鮮血となって溢れた。
「ごふっ‥‥てめぇ‥‥このやろう!」
しかしヴァラスは、気合いでカオスニアンの弓兵を斬り殺した。そして矢を引き抜き、ポーションを飲む。
「復――活っ! げはーっはっはっは!」
うーむ、さすがは天界人である(違うって)。
マグナは戦技を繰り出し、着実に戦域を切り裂いていった。縦横無尽とは言い難いが、堅実に敵を屠ってゆく。地味だが存在感のある戦い。それは彼の名乗る二つ名『静かなる暴風』そのものだった。
だがそれも、矢弾には弱い。《ミサイルパーリング》を修得していない者は結構多いのだが、今回それが多くの冒険者の負傷の原因になっていた。
「まずは弓兵を潰さねば!」
マグナは弓部隊とおぼしき一団に斬り込み、《バーストアタック》でその弓をことごとく破壊していった。
「強襲という利を生かすぞ、時間をかけすぎて体制を整えさせるな」
レインフォルスが率いる一団は、徒の兵である。移動は遅いが、元より乱戦は必定なので気にはしていない。
《ブラインドアタック》で相手を仕留める技は、メイの兵士には神業に見えただろう。だが、そんな優越感に浸っている暇は無かった。敵の数はまだまだ多いのだ。
『こんのおおおおおおおお!!』
ボギン!!
怖気をもよおす異音と共に、アロサウルスの首を光太のモナルコスがへし折った。ちなみにモナルコスの剣は噛み砕かれている。恐るべき破壊力である。
――もう一匹!
光太はマフマッドのモナルコスを探した。巨人兵器はすぐに見つかったが、一見して旗色の悪さが見て取れた。
――こんな貧弱なゴーレムでさえなければ‥‥。
などとマフマッドは思っているかもしれないが、これがメイの国正式騎で最新鋭騎なのだからしょうがない。だがマフマッドが今生きているのはモナルコスの強靱な装甲と耐久力のお陰であり、それは疑いのよう無い事実であった。
『マフマッド!』
光太が、素手のままアロサウスルに組み付いた。マフマッドは動きの封じられた恐獣の腹部に剣を突き込み、ねじった。血と内臓がどばどばと流れ落ち、恐獣は絶命した。
『よ! 余計なことを‥‥』
とマフマッドは言うが、声がうわずっていたのは否めない。まあ、勝ったから良いではないか。
●決戦! 恐獣vs冒険者
「さあエイジス、思う存分やっちゃうといいわ」
フォーリィが周囲のカオスニアン兵を牽制しながら言う。勇人もエイジスを援護しており、アリオスは恐獣の目を射抜いた後は周囲のカオスニアン兵弓で近づけないようにしていた。
相手の恐獣はアロサウルスだ。すでに目を射抜かれたところで乗り手を振り落とし、現在は怒りのために我を忘れている。
それを叩くのだ。エイジスたった一人で。
苛烈な条件だが、カオスニアンに、そしてメイの兵士たちに『天界人あり』と知らしめるには、圧倒的な『力』を見せるしかないのだ。
――すうっ、と、エイジスの目が細くなる。狂化が始まったのである。今この瞬間、彼は一個の殺人機械になったのだ。
がん!
初撃はアロサウルスの『牙』に対しての《バーストアタック》になった。牙をへし折られ、アロサウルスが苦鳴をあげる。それは、歯を折られれば痛いだろう。
さらに、エイジスが地を蹴る。《スマッシュEX》級の必殺剣で柔らかい腹部を狙った。
ズブッ!
「くっ?」
確かに、恐獣の腹にシールドソードの剣はめりこんだが、手応えに張りがない。厚い皮膚で止まった感じだ。
ガン!!
「エイジス!」
エイジスが、恐獣に蹴飛ばされた。間合い深く入りすぎたのだ。
が、エイジスは綺麗に着地していた。盾で受け止めたのである。
そして今度は、一直線に突進を始めた。
ずぞん!
GUAAAAAAAA!!
恐獣の苦鳴が上がる。エイジスの《スマッシュEX》《チャージング》で威力を上乗せされた、彼の行える最大級の攻撃が、恐獣の懐をえぐったのだ。深く、深く。
ずっずうううううううん‥‥。
恐獣は、斃れた。それが、カオスニアン壊走のきっかけとなった。
寡兵をもって大軍を討つ。
まさに、彼らはやってのけたのである。
●戦勝報告
喝采と共に、冒険者は迎え入れられた。戦いは圧勝。負傷者も多数出たが、死者はいないという完璧な全勝であった。
以後、例の水場はメイの国預かりとなる。砦が早急に設けられることになったが、その名は『エイジス砦』となるらしい。
またひとつ、天界人は武勲を挙げたのである。
【終わり】