新式ゴーレム開発計画4
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■ショートシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 97 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:01月22日〜01月29日
リプレイ公開日:2007年02月02日
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●オープニング
●代償
「今後、生物素材ゴーレムの開発および生産は完全凍結します」
開口一番にカルロ・プレビシオン、ゴーレム工房長が言ったのは、ゴーレム開発計画の大幅軌道修正であった。
つい先日のことである。『ユニコーン』級を越えるさらなる高性能ウッドゴーレムの試作のために、『人食い樹』を素材に用いた新式ウッドゴーレムが試作された。その起動実験でゴーレムは暴走し、搭乗者を文字通り『喰い殺した』。
それでも暴走は止まらず、仮想敵に用意したバガン級ゴーレムを一騎オシャカにし、希少なゴーレムニストにも3名の死者が出た。
最終的な被害は、死者4名を含む15名の被害者を出し、メイの国では過去最悪のゴーレム事故となったのである。
搭乗していた鎧騎士には、婚約者が居たという。
この事件は、ゴーレム生産体勢にも大きな影響を与えた。製作に携わるゴーレムニストが負傷したために、ゴーレム生産が文字通り停止したのである。最終的には、今後1ヶ月分は生産体勢に遅れが出る見込みだ。
責任を取ったのは、カルロ工房長である。彼は俸給の4割を国庫に返還し、遺族と負傷者の保障に充てるように願い出た。遺族の家を一軒一軒謝罪に回り――中には腐った野菜をぶつける家もあったが――彼なりにけじめをつけた。
そして出した決定が、『生物素材ゴーレムの完全封印』である。
そもそもウッドゴーレムは、個体レベルで能力の差が激しい。出来による能力のバラツキが多く、いわゆる『一糸乱れぬ軍隊行動』というのに向いていなかったのである。
ましてや、素材によってはこのような事故が起こることが判明した今、ウッドゴーレムの存在意義はほとんど無いと言ってもいい。『ユニコーン』の出来が良かったのは、もしかしたら『たまたま』だったかもしれないのだ。
ともあれ、人食い樹素材は全て焼却され、完成していた2騎の『ユニコーン』も封印された。今後日の目を見ることは、おそらく無いだろう。
●銀ゴーレム開発
ほどなく。
カッパーゴーレムの試作に成功したこと、それと今月期の月道貿易によって得られたアイアンゴーレムの製法の解析によって、新たなゴーレムの試作計画が発布された。
『銀素体ゴーレム開発計画』である。
ゴーレム先進国であるウィルの国ではすでに主力騎になりつつあると噂を聞くが、メイの国で実物を見た者はまだいない。だが『出来る』と分かっているのなら、研究し開発する価値はある。
またアイアンゴーレムの性能評価が、防御力と耐久力においてモナルコスとそう変わらないらしいことが判明した。ゆえに安価で操作性の良いモナルコスを量産し、エース騎体として新式銀ゴーレムを支給するという方向に方針が定まりつつあった。
ただ、銀ゴーレムの『タイプ』に調整が必要そうであった。つまりモナルコスのような重装型にするか、バガンのようなバランス型にするか、それとも運動性を重視した今までに無いタイプにするか。
簡単に考えただけでも、この3タイプがある。そして鎧や装備についても検討事項は多かった。
1騎の製造には、約1ヶ月はかかる見込みである。
今回の開発計画は、新式銀ゴーレムの製作コンセプトの検討が主軸になる。試作はカルロたち工房の者が行うので、実際に運用する冒険者諸賢に『必要なゴーレム』を提言してもらいたい。
●リプレイ本文
新式ゴーレム開発計画4
●カルロ工房長のゴーレム論
カルロ・プレビシオンゴーレム工房長は、多重人格者である。
これはゴーレム開発に関する話で、酒を飲んだら人が変わるとかそういうレベルの話ではない。
カルロは、ゴーレム開発に熱を上げている。それはもう寝食を忘れるほどだ。だが一方で、モナルコスを設計し世に出したのも彼である。
モナルコスは技能の低い乗り手でもほぼ十全に扱える、『用途のはっきりしたメイの国に必要な騎体』として作られ、配備された。結果的にバガン級のような『汎用性』は失われてしまったが、厚い装甲と高い耐久力により乗員の安全を守り、結果的にもっとも育成に時間のかかる鎧騎士の損耗を最小限にするという目的を果たしている。それでいて攻撃能力はバガンを超えるものを持っているのだから、つまり回避度外視の攻撃型ゴーレムなのだ。
ここまではっきりと『実用』という目的を達したゴーレムは、そう無い。実際、ゴーレム先進国のウィルの国では様々な素体金属を使用したゴーレム開発に成功しているが、モナルコスは一つ格上のアイアンゴーレムと同等の耐久力と防御力を持っている。他の能力をオミットした結果だが、それが『メイの国の事情』に即したものだからだ。
つまりカルロの精神構造は、『すンばらしいゴーレムを作る』という、ちょっとドリーム入ったゴーレムオタクと、実用生産品としての『製品』を作る技術者が同居した人物なのである。つまり多重人格者、だ。
先頃解析が完了し、そして試作したカッパーゴーレムも同様である。ウィルのカッパーゴーレムはやはり汎用的な能力を持っていたが、カルロ工房長はあえて新造カッパーにモナルコスと同じ制作コンセプトを導入した。これはゴーレム技術者としてドリーム入った人間の判断ではない。明らかに、バの国のカッパーゴーレム『ゼロ・ベガ』を敵に想定した仕様である。つまり殴るだけ殴らせて、同じかそれ以上ぶん殴る、『一騎一殺』の騎体。しかもそれを成すのは、並大抵の腕前の鎧騎士なのだ。ゼロ・ベガがエースを乗せているのに、こちらが量販店で束売りしている程度の鎧騎士で事足りるという、ある意味非常に辛辣な仕様である。むろん、相手にとってだ。
なぜならゴーレムは『工房で生産できる』が、練達の鎧騎士はそんなもので生産出来ないからだ。つまり(嫌な結果だが)ゼロ・ベガと新式カッパーゴーレムが相打ちになっても、費用対効果では圧倒的にゼロが不利なのである。
この悪魔のような計算が出来るのも、カルロ工房長の一面である。そしてカルロ工房長は今回のシルバーゴーレムの設計に当たり、一番効率の悪い方法をあえて取った。つまり『現場の話を聞く』という方法である。
現場の意見は率直で、達成できれば役に立つような話が多い。だがその実、現場の意見を尊重すると量産汎用機は本当の『汎用機』になってしまう。つまり何でも出来る=高性能ではないのだ。何でも出来る騎体は、つまり『何も出来ない』のと道義である。
なぜなら戦闘特化型のゴーレムに戦闘で敗れ、移動特化型ゴーレムに移動力で負ける。必要なときに必要な能力を発揮できないゴーレムというのが、汎用機の実態である。メイの国でバガンがあまり活躍できないのと、同じ理由だ。
●試作名『イクサレス』
ジャスティン・ディアブローニ(eb8297)の提案により、試作シルバーゴーレムの名は『イクサレス』になった。武神アレスのエクストラヴァージョンという意味らしい。名前にあまり頓着のないカルロは、この案を容れた。
さて、実際の試作作業の前に、エルシード・カペアドール(eb4395)から、ウィルの国のゴーレム事情と性能についてのレポートがあがっていた。実際にゴーレムに搭乗していた彼女の情報はかなりの影響を与えたようだが、カルロはそれについての言及を避けた。
ただ彼女の要望を容れてモナルコスを貸与し搭乗させてみたのだが、エルシードにとっては不足なものが多すぎて、むしろいらつくほどの性能だった。何より重い、遅い。軽快なウッドゴーレムに乗り慣れていた彼女にしてみれば、まさにドン亀である。
ただ乗っているうちに、前述したような制作意図に気付き、メイの国のゴーレム事情の厳しさを実感したのも確かだ。カルロが彼女のレポートにすぐレスポンスしなかったのも、つまり事情が違いすぎて当てはまらないことが多すぎたのであろう。
そのあたりの事情については、出撃のたびにレポートを提出している白金銀(eb8388)がフォローに入った。開発提案をしている中島沙織(eb9402)とともに、メイの国のゴーレム事情とウィルの開発状況をすりあわせし、いくつかの推測を立てるに至ったのである。
「つまりウィルのゴーレムが想定している敵は、ゴーレムなのよね。それも、攻めを想定したものっていうこと。それはつまり、ウィルの国が他国に侵略戦争なりなんなりを仕掛ける準備を進めている『準戦闘態勢』という状況なんだと思うわ」
エルシードが言った。ウィルの鎧騎士の言葉だけに、重い。
東方のメイの国まで攻めるかどうかは分からないが、少なくとも西方大陸での分国乱立とそれによる軋轢は深刻であり、政治的に不安定なのも確かである。
それに対し、メイの国は守りの体制で臨んでいる。それは目前にカオスニアンという敵が存在し、そしてその背後でバの国が暗躍しているからだ。いつかは守りから攻めに転じなければならないが、それは防備が『なんとかなってからの話』であって、少なくとも自国の安全保障は達成しなければならない。
「その転機となる騎体が、まさに新式シルバーゴーレムだろう」
天界人、龍堂光太(eb4257)は言う。具申という体裁を取っているが、まさに要望である。同様な話を、鎧騎士のフラガ・ラック(eb4532)も言っている。そして彼のオーダーは、ウィルのシルバーゴーレムを凌駕するシルバーゴーレムの開発というものだった。
ゴーレム魔法も日進月歩しており、実際ウィルのデク級ウッドゴーレムを凌駕する性能を持つ、ユニコーン級ウッドゴーレムの開発にカルロは成功している。ならば後発の強みで、同じ格でも性能が上のゴーレムの開発は、不可能ではないはずである。
が、それに対しカルロは、一つ条件を付けた。
「新式ゴーレムの搭乗者の熟練度は、エルシードさんの能力を基準にします。それを満たさない場合は、貸与いたしません」
はっきり言えば、すべてにおいて達人級の腕が無ければ、ゴーレムに乗せませんよ、と免許制のようなものを言ったのである。これは現状、メイの国の鎧騎士には、まずもって搭乗の機会は無いと言っていい。
もちろん不満は出るだろう。だが新式ゴーレムにかける予算と時間を考慮すれば、当然とも言える。新式シルバーゴーレムの予算は、メイの国では多少旧型になったとはいえアルテース級フロートシップの3倍以上なのだ。生半可な腕で乗られて、間違っても乗り潰されては困るのである。
また量産騎と違い、イクサレスは一品モノの試作品で終わる可能性が高い。つまり予算と時間を引き替えに高い性能を持つが、量産できるほどに価格を下げればその性能は保持出来ないと思われる。これは天界人の言う『ガ○ダム』と『ジ○』いう事例と同じだろう(それはフィクションだろう(記録者注))。
ただ運用計画として、イクサレス、ないしその量産騎が単騎で行動する可能性は低い。イクサレスをサポートする騎体が必要と思われるが、生身の騎士には荷が重すぎるし、モナルコスは殺人的に遅い。
次期の生産計画では、イクサレスの実際の仕上げと起動実験と同時に、そのサポートとなる騎体の開発を検討しなければならないだろう。つまり、『運用方法の模索』である。つまり天界人の言うところの『ガ○タンク』『ガ○キャノン』の製作およびその運用コンセプトの構築ということになる。この辺りはすでに現代戦術論の領分になってくるので、専門的な知識が必要だ。
もっともゴーレム開発は様々な試作騎を経て構築される物なので、例えばサポート専用騎があってもおかしくは無い。この辺りは、『機能する冒険者戦隊の戦闘能力』を参考にしたほうがいいかもしれない。様々な職能を持つ冒険者が正しく機能したとき、その戦闘能力は足し算ではなく乗算される。
さて、それでもゴーレムの基本コンセプトは『かなり高い性能を維持したバランス型』というところで落ち着いた。『どのような局面にも対応出来る騎体』という要望はあったのだが、それは却下された。先にも書いたが、どのような状況にも対応するなら、それ相応の装備なりなんなりが必要で、そしてそれ以外の状況ではその装備はまったく無駄になるのである。
ギヨーム・カペー(ea9974)とハルナック・キシュディア(eb4189)は、その装備開発に動いた。検討に検討を重ねて落ち着いたのは、「とりあえず剣と鎧と盾」であった。かなり様々な武器の提案があったのだが、まずは基本武装を固めてから、という結論に帰結したのである。
武器開発では、沙織も一口入れている。つまり板金技術によって作る立体断面構造を持つ鎧の製作だ。ただこれはちょっと難しいものがある。工房のほうが対応してくれないとどうにもならないだろう。
結果を総合すると、カルロ工房長はまるで『結論ありき』のような生産体制を敷いたように見える。だが試作騎に費やす時間と手間と予算を、要望に応じた形で配分したのは確かであり、その実も要望に応じたものだ。
つまるところ冒険者たちが要望したのは、カルロ工房長が想定していた中で、工房・冒険者ともに、もっともハードルの高いものだった、ということであろう。
なおこの依頼終了の3週間後、ゴーレム工房ではウィルのコピー生産のアイアンゴーレムがロールアウトしている。この辺りも検討の中に入れるべきかもしれない。
次期は試作シルバーゴーレムの起動試験がある。そもそも予定通りの性能を発揮できるかどうかは分からないが、とにかく待つしかあるまい。
時間だけは、金では買えないのだから。
【おわり】