チブール商会仕入れ依頼1040年2月7日〜鉄〜
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■ショートシナリオ担当：三ノ字俊介 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：普通 成功報酬：4 G 98 C 参加人数：6人 サポート参加人数：-人 冒険期間：02月12日〜02月19日 リプレイ公開日：2007年02月20日 |
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●オープニング
●チブール商会アプトの大陸西方、ランの国に基盤を持つ大陸一の豪商。現在西方諸国で苛烈な商戦を展開中であり、メイの国では王宮御用商人の地位を確立している。
●ガッツ・グリル ［人間・男性・38歳・チブール商会店主］ 〜ゴーレムから棺桶まで〜
「金さえ払えば女房以外何でも売るよ」と言う、非常に商魂たくましい商人。出自は明かではないが、ジ・アースの物品にも天界の物品にも詳しく、商売という面においては非常に頼りになる人物。恋女房は昔、『ウィザード・ビューティー』という名を馳せた美人精霊魔法使いというが、今はすっかり肝っ玉母さんだそうである。
「女房のメシが一番」と人に自慢するのが癖で、愛妻家で子煩悩。はっきり言ってバカ旦那である。
●チブール商会の依頼〜皮類〜
冬場になって減るものがある。
動物の皮などだ。動物類は冬になると移動したり普段いない場所に行ったりと、結構めんどくさい。
まあ、同じ場所に同じモンスターがいるのはテレビゲームの世界の話であり、現実には初心者冒険者が、野良ドラゴンに遭遇して全滅の憂き目を見たりすることもあるのが実際だ。例えが極端だが、別に過去例が無かったわけではない。
まあそんな話はさておいて、チブール商会から依頼が出た。
今回の依頼は、鉄鉱石の採取である。とある洞窟に行き、そこでピッケル片手に鉱石の採取をしてほしい。
鉄鉱石は、武器や防具を作るときに、よく使われる素材である。鉱山類の多くは国や君主が押さえているため通常は一般人の採取などままならないが、そこがモンスターの巣窟ならば話は別である。
つまり、敵を排除すれば鉄鉱石などの鉱物を採取出来る鉱山があるのだ。
洞窟はメイディアから二日ほど北に行った村の近くである。そこで三日ほど採掘を行い、出来るだけの鉱石を集めてほしいということだ。
採掘の成果によって、チブール商会には相当数の品物が店売りされる。アイテム合成をしている者には朗報だろう。
頑張ってもらいたい。
【地図】
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【Ａ】森の奥の狩り場。鹿などが狩れるらしい。
【Ｂ】平原。現在は雪原。ウサギや狸などが捕れる。
【Ｃ】森の中。オオカミなどがいる。
【Ｄ】洞窟。何かがいる。
１マス１００メートルぐらい。
●今回の参加者
ea3446 ローシュ・フラーム（58歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国）ea3641 アハメス・パミ（45歳・♀・ファイター・人間・エジプト）
ea7641 レインフォルス・フォルナード（35歳・♂・ファイター・人間・エジプト）
ea9974 ギヨーム・カペー（35歳・♂・ナイト・ドワーフ・ノルマン王国）
eb8704 南雲 康一（37歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb9701 香坂 美幸（25歳・♀・浪人・人間・ジャパン）
●リプレイ本文
チブール商会仕入れ依頼1040年2月7日〜鉄〜●実はよく効く《ブラインドアタック》
さて、ちょっと先の話をすっとばして本丸の話を記すべきだろう。
香坂美幸（eb9701）は、ジャパンから来た女浪人である。本人がネガティヴ思考なのか非常に行動や思考が悲観的で、あまり前向きとか前進とかそういう方向に運気も向かない。もっともこれは『そんな気がする』程度の話であって、人間の運気は『たいてい五分五分』というのが記録者の見解である。
ならば、どうして個人によってツキのあるなしが決まってくるのだろうか？
それは、『アピール』の問題であると記録者は考える。
例えば、幸運があったときに幸運なことを周囲に喧伝する人物は、『運の良い人間』と見られやすい。なぜなら、不運なことなど周囲に知らせないからだ。
だから同じように、不幸自慢や不運な話をする人間ほど、『不運な人間』と見られる。なぜなら幸運に遭っても、他人にアピールしないからである。
しかしその実は、両者とも同じような幸運と不運の間を揺れ動いているのだ。
美幸は典型的な後者だ。なにやら不幸自慢ばかりで、業績を挙げているのに言葉で損をしている。だから今回のような『超幸運』に遭遇して、美幸はとまどいを隠せなかった。
「すごいな、一人でヴェロキを３匹か」
ローシュ・フラーム（ea3446）が、素直に感心した。かなりの手練れであるエジプタン・ファイター、アハメス・パミ（ea3641）でさえ、２匹しか倒していない。それも無傷ではない。盾受けや戦技を駆使しても、無傷では済まなかったのだ。
それを美幸は３匹、小太刀一本を武器に、無傷で倒したのである。
件の鉱山は、恐獣の冬の住み処のようだった。『本当の事情』はよくわからないが、周囲に恐獣の被害が出ていないところを見ると、ほとんどこの坑道の中だけで生態系が確立しているらしい。ただ坑道があっても恐獣がいれば、そこは文字通り『人の入れぬ場所』である。村が近くにあるのもあったし、恐獣の『駆除』についてはなんら問題のない場所であった。
問題は、中にどんな恐獣がいるか、である。
アハメスが村で『害獣駆除』の説明会を行ったあと、冒険者一同は情報を少しだけ集めて早々に坑道に入った。内部はかなり高い天井があり、入り口は３メートルほどしか幅がなかったが、全幅３０メートル、全長１００メートルほどの洋なしのような形の空間になっていた。
そこに、いきなりヴェロキラプトルが７匹居たのである。最初の一匹が吠えると、他のヴェロキも『エサだ〜♪』とばかりに襲いかかってきたのだ。
遭遇戦は互角になるかと思われた、が。実は美幸のお陰で圧勝になった。
理由は簡単である。美幸は居合い――《ブラインドアタック》を使用したのである。
体術を磨いた美幸に、ヴェロキは噛みつくことが出来なかった。そしてヴェロキは、美幸の居合いを見切ることが出来なかった。
ゆえに、美幸は多数のヴェロキに囲まれながら、かすり傷一つ負うことなく恐獣を殲滅したのである。ずばり、戦術がハマったのだ。
調子づいたのは、南雲康一（eb8704）である。この少数で苦戦を強いられると思っていた採掘作業が、非常に強力な味方の支援を得られると分かって、その日のうちに村人に協力を求めたのだ。
元々康一は、ちょっと他力本願なところがある。まあ今時の現代人なら十分許容範囲な性分だが、この人数で採掘作業を行い十分な鉄鉱石を獲るのは、難しいと思っていた。
そこでチブール商会のガッツ・グリルから荷馬車や道具類を借り受け、それなりに効率よく事を進めようとした矢先、『この状況限定』ではあるが無敵の守護神が現れたのである。
康一は村で美幸の武勇を語り、『絶対に恐獣は採掘場所まで来られない』と言って、労働力の供与を求めたのだ。代価は交渉してチブール商会から出すと、約束もした。
はじめは半信半疑だった村人だが、とりあえず次の日５人の男衆を加えて採掘に向かった。
それが翌日には、男女合わせて２０人以上になった。美幸やアハメスが、完膚無きまで恐獣を退散させたからである。
採掘指揮は、ギヨーム・カペー（ea9974）が行った。ローシュともども、ドワーフが二人も居たのが、村人に『穴を掘らせる』ことに対して安心を提供していた。
その間にも、採掘現場近くでは両手近くの恐獣が襲撃してきた。しかし危機的状況は、ついに訪れることはなかった。採掘は順調に進み、荷馬車に乗りきらないほどの鉱石を採取したのである。
むろん、美幸がこの村において、一躍英雄となったことは言うまでもない。
●チブール商会収支報告
荷馬車に載せられた鉱石は、実に２トン近くあった。約半分は雑鉱だが、半分は鉱物専門のギョームの見立て通り、鉄鉱石である。その半分をメイの国に卸し、チブール商会には一般向けに約５０個ほどの鉄鉱石＋αが仕入れられることになった。
チブール商会からは、村人へ金銭ではなく冬を越すのに必要な品物が、卸値で提供された。また村の猟師から、皮類の仕入れが少々あったことも付け加えておくべきであろう。
そして一番重要な事なのだが、冒険者の協力によってしか鉱石を採取出来ない、新鉱山が誕生したことを特記しなければなるまい。今後鉱石が不足したら、チブール商会に依頼頒布を頼むことで、鉱石類の供給を満たせるようになったのである。アイテム製作を行っている者には、朗報であろう。もちろんゴーレム生産を行っている、メイの国にとっても朗報だ。
「いい仕事をしましたね。貴女も鼻が高いでしょう」
アメハスが、美幸に笑いかけた。それに美幸は、どういう表情をしていいのか分からず、苦笑いした。
ただ、これが彼女の転機になりそうな気配はある。ローシュもギヨームも康一も、美幸の『一芸』の価値を認めているのだ。
あとは、本人が実感出来るかどうかであろう。
【おわり】
