ゴーレム開発計画2nd ?R

■ショートシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:03月11日〜03月16日

リプレイ公開日:2007年03月22日

●オープニング

●シルバーゴーレム《イクサレス》の失敗
『ありとあらゆる予想は、ありとあらゆる不確定要素によって覆る』
 新式シルバーゴーレム《イクサレス》。その開発結果は、まさにそれであった。あまりに『良すぎた性能』は様々な不具合を露呈し、敵シルバーゴーレムを撃墜したものの、本体には深刻な損傷を受けていた。
 何より問題なのは、搭乗者を苛烈なまでに消耗させるその制御系の稚拙さである。いや、稚拙というのは語弊があろう。最高の技術と最高の素材が組み合わさった結果が、人間の分を超えた能力を必要としただけだ。だがお陰で初代《イクサレス》搭乗者は戦闘ではない重傷を負い、『鎧騎士殺し』の名を冠することになるのである。現代人天界人には、『人間電子レンジ』とまで言われ、まさに敵にも味方にも『殺人兵器』と認識される結果となった。
 客観的には、この結果は『失敗』である。無調整だったとはいえ、搭乗者を殺すような騎体が実用にこぎ着けることはない。
 しかし、《イクサレス》の実用データには、次のような数値が出ていた。

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名 称:イクサレス
ランク:シルバーゴーレム
全 高:5.0m
重 量:2.0t
戦闘力:50以上(+40以上)(推定)
移動力:歩8
起 動:達人
限 界:達人2以上(搭乗鎧騎士のデータまでの確認)
H P:無9 カ19 軽30 中51 重93 瀕177
E F:6以上
解 説:性能抜群。ただし良すぎて鎧騎士が5分しか持たない。別名人間電子レンジ。対バのシルバーゴーレム戦で勝利するが、中の鎧騎士は重傷になった。
メ モ:建造費に尋常ではない金額を投入したシルバーゴーレム。性能的にはまだ上限が見えない。量産は不可能。
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 少なくとも、ウィルの国のシルバーゴーレム《キャペルス》の性能は上回っている。しかし向こうが実用兵器なのに対し、こちらは実験兵器で、しかも失敗作だ。
 だが、その程度のことでへこたれる、我らがカルロ・プレビシオンゴーレム工房長ではない。
「性能を上げるのは大変難しいですが、性能を下げるのはまだ簡単です。バランスと価格と性能の折り合いの付く点を模索すれば、《イクサレス》――いえ、改良型なので《イクサレス?》とでもしましょうか。その開発は、今までより難しいとうことは無いでしょう」
 筆者は、『試作品が性能が良いというのは、幻想である』と以前どこかで書いた覚えがある。《イクサレス?》は、性能については破格のデータを手に入れたが、その代わり破格のリスクを背負うことになった。これはつまり人間の限界を超える性能を持った代償であり、『搭乗者の安全』について考え方の遅れているこの世界では初めて発生したケースであろう。
 まあ、三国志に出てくる名馬『赤兎馬』だって、名馬だからと言って誰でも乗れるものではない。新米兵士が乗っても、振り落とされるだけである。まあ、落馬して骨折とか、ろくな結果にはならないだろう。
 いずれにせよ、今回は工房方面も含めてタッグを組み、新式の新式――つまり実用兵器になりえるシルバーゴーレム、そしてその随伴騎となるゴーレムの開発や運用指針を模索しなければならない。
 また、バの国のゴーレム工房の人材について一つの懸念事項がある。前回倒された敵シルバーゴーレムを自焼しその中枢部を熔損した機構――アルミニウムと酸化鉄を使用した『テルミット自焼装置』の存在である。テルミット反応はもちろん、その素材に使用されるアルミニウムもアトランティスには存在しない。それは現代の技術であり、素材も現代にしか存在しないものである。
 アルミニウムは、天界から落ちてくるアルミニウムの飲料缶などから採取可能だが、ゴーレムの中枢部だけ焼くためでも、国家規模で数をそろえなければならない。つまりバの国の中枢に、天界人が存在するのだ。
 事は、ただの開発任務に収まらなくなってきているのである。

 本依頼は、捕獲した敵シルバーゴーレムおよびゼロ・ベガの解析および評価を目的とした、ゴーレム開発では二次的な『データ収集』と工房生産体制の強化を目的とした依頼である。技術職の方は、奮って参加されたい。

●今回の参加者

 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3446 ローシュ・フラーム(58歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国)
 eb4099 レネウス・ロートリンゲン(33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4598 御多々良 岩鉄斎(63歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb4637 門見 雨霧(35歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb7880 スレイン・イルーザ(44歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb7898 ティス・カマーラ(38歳・♂・ウィザード・パラ・メイの国)
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 ec1261 ジョージ・モートン(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 ec1717 草薙 神威(25歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

ズドゲラデイン・ドデゲスデン(eb8300

●リプレイ本文

ゴーレム開発計画2nd IR

●職人は‥‥
 職人はたいていオタクである。
 まあ、偏見と取られてもかまわない。だがナントカが紙一重なのと同じように、職人というのは『偏っているから職人』なのである。こだわりの無い職人など皆無と言ってよく、こだわりが無ければそれはただの生産者でしかない。
 だから職人はプライドが高いし、変なことや、真っ当なことを言ってもへそを曲げる。職人は、扱いづらい人種の一人なのである。
 その職人の寄り合い所帯である工房ともなると、これはもう日々ケンカケンカケンカ。殴り合いにならないのは、職人は拳で決着をつけるのではなく『仕事』で決着をつけるからだ。
 というわけで、ゴーレム工房管理官ガンゴントウス・エメルセンはここ最近増えてきた『新製品』の検分に大忙しであった。例えば精霊歴1040年3月14日に彼の元へ届けられた様々な武器防具道具のたぐいは、40を越える。これを普通の仕事をしている合間やその後勝手に残業して職人たちは作っているのだから頭が下がるが、それを検分するのはガンゴントウス一人である。そして中には、どう考えても「おまえバカだろう」というものもあった。
 例えば、今彼の目の前にある巨大な半円形の物体。いわゆる熊罠とか虎ばさみと言われる、踏むとガッチンと罠がハエトリソウのように閉じるものだが、直径がガンゴントウスの1.5倍はある。対人型ゴーレム用トラップらしいのだが、これを開いて設置するにはモナルコス4騎が力を合わせて口を開かなければならない。ちなみにこれを一つ作る手間で、ゴーレム用の剣が4本は打てるらしい。
 ――勘弁してくれ。
 まさに、ガンゴントウスの『思うところ』という奴であろう。ストレスも貯まろうというものである。
 もっとも、オルステッド・ブライオン(ea2449)はゴーレムや魔法に依らない対ゴーレム・対恐獣兵器の開発を模索していたところなので、まさに『これだ!!』という気分であった。ガンゴントウスにその話をしたら「築城時から準備しなければならないから、現実的ではない」と言われていたので、むしろ光明が差した気分である。
 しかし、現在のところ城塞防衛戦をしている最中の城塞でそのような大がかりな工事をするわけにはいかないため、オルステッドの考えはやはり現実的に不可能である。結局ゴーレムにはゴーレムで当たるという原則を、小手先の技術で実現化するのは、かなり難しいのだ。それよりも、オルステッドが戦技を駆使して生身で戦ったほうが早い。まさに、『戦士なのだから殴ってこい!』である。

 ローシュ・フラーム(ea3446)は、敵シルバーゴーレムの組成調査を行った。鋳つぶして熔解したパペットの液状金属を、十の目盛りのついた炉に流し込み加熱を続ける。やがて比重によって炉の中の金属は分離し、目盛りごとに付けられた栓を抜くことによってその部分の金属を抜き取ることが出来るのだ。
 アルキメデスが考案した、質量と重量の違いによって不純物の混入を看破する方法では、2種類の金属の場合にしか使用できない。複雑な合金を使用している場合は、この方法では判別不可能なため、ガンゴントウスが指導してくれたのだ。
 結果、敵シルバーゴーレムの金属混合比は、概算で銀7、銅2、その他雑鋼1という比率であることが判明した。これは開発部にすぐに知らせられ、次期新ゴーレムの製作に役立てられるであろう。

 レネウス・ロートリンゲン(eb4099)は工房の改築プランを提案していた。換気問題は依然としてあり、換気扇を風力を利用して製作したのだが、冬場の氷結問題が先送りになっている。ただ試作品は上々の出来で、実用化は不可能ではなさそうだった。
 またパーテーション型防音壁の構築も精力的に行い、騒音問題にもかなりのてこ入れを行っていた。ただし依然として問題なのは、鎧打ち出しようの大型ハンマーであり、これは現状、夜間は停止させる以外の方法が無い。
 なお蒸気機関のモデルを製作しようとしたが、アトランティスやジ・アースレベルの加工技術では、実現は不可能そうだったことを付け加えておく。

 御多々良岩鉄斎(eb4598)は、弓の命中度を上げるための『新型ゴーレム弓』の製作を行った。具体的には照準装置に相当するポールやバランサーなどの組み込みによって、経験と勘で養っていた弓の命中率を、技術で補填しようというのである。
 これがなかなかのものになり、アイアンゴーレムを改造して作った射撃用ゴーレムに持たせてみたところ結構な性能を発揮した。
 ただし、致命的な弱点がある。依然として弦の素材についての解決案が無いため、弦を損じると、弦を張り直した後にかなり微妙な再調整が必要なのだ。これは地球のアーチェリーなどにも言えることで、複雑化した器物は故障すると対処に手間を食うのである。
 結局、成功だか失敗だかわからない、微妙な結果となった。

 地球の知識を過大評価してはまったのは、門見雨霧(eb4637)である。彼はさまざまな現代知識と現代技術を持っていたが、そのほとんどが敵ゴーレムの調査に使用できず困窮した。具体的には、現代物理学によって魔法で生成されたゴーレムを解析しようとしたのである。
 魔法によって膨張したゴーレムは、銀素材なのに銀の比重を持っておらず、魔法で加工した素体は現代工作技術で解析は不可能で、そして間接部分がヒンジなどの別パーツになっていないゴーレムに、基本的な機械設計の概念は当てはまらない。応力とか重心とかそういうのもアテに出来ず、困惑するばかりである。結局、現代知識とアトランティス知識のすりあわせを考えて物事を検証しなければならないという、教訓を得て再出発することになった。

 スレイン・イルーザ(eb7880)は、白金銀(eb8388)と共に戦闘報告書を提出した。そしてその後は、銀を手伝った。
 その銀とは言うと、シートベルトの作成を提案していた。過去何例か、強烈な衝撃で制御胞内部をはね回る鎧騎士が怪我をした報告が上がっており、そして現代人の銀がシートに固定するベルト器機の装備を提案したのである。
 意外なことに、これはわりと簡単に実現した。もっとも改良の余地は多そうで、後々かなりの進歩を見せそうである。

 ティス・カマーラ(eb7898)は、前回失敗した業務管理の代替え案を再提案していた。今度は自分の項目に○と書き込むチェックシート方式で、労務者は自分の名前と座標さえ覚えていれば問題ない。
 これは、たいへん機能した。だが最初に書いたとおり、職人たちは現在ものすごい勢いで残業などをしており、それを抑制する方向にはまったく働かないシステムであった。そのため、別の問題を抱えることになった。つまり、『職人の気の向いたときに仕事が出来ない』という、メンタル面の問題である。
 職人は、気分が乗ればかなりの仕事をする。つまり規則正しい生活とはかけ離れた存在で、『組織』を押しつけてもうまくいかないのだ。ゆえに現在、『工場システム』という新しいシステムに身を置いた職人たちは、慢性的な『自分の仕事がしたいストレス』を抱えることになり、結果的にしわ寄せがガンゴントウスの元に行っているのである。
 これはこれで、問題であった。

 陽気なアメリカン、ジョージ・モートン(ec1261)は、真面目な表情で敵ゴーレムのモックアップを製作していた。
 敵シルバーゴーレムは中枢部を自焼しただけで外見のほとんどは無事だったため、その製作自体はわりと安易に済んだ。問題は、その形状をどう『解釈』していいか、ということである。
 なにせ間接はヒンジ状になってはおらず、どう考えても動かない。鎧は剛性重視だが、バランスの取れた構成には見えず、その解釈にも困る。そのほか様々な『ワケ分からん』が飛び出し、ジョージは乾いた笑いしか出てこなかった。
 そしてジョージの出した結論は、「これはジョークだ!」であった。
「ブラフさ! こんな不合理な兵器があるはずない! HAHAHAHAHA! だまされるところだったよ!」
 だが、それが未調整とはいえ、メイの国のゴーレムを追い詰めた事実を、彼は忘れていた。

●装甲チャリオット
 今回多方面から要望のあった案件が、フロートチャリオットの装甲化である。しかし搭載力に限界のあるチャリオットでは、当然装甲するといっても限界がある。
 結局は例の『ゲイボルグ』対策として、天蓋状の装甲を装備することになった。これによって搭乗人員は2名減るが、対策としては順当なところである。

 さて、まだまだ問題は山積している。が、一つ一つ潰してゆくしかあるまい。
 大きな戦いが、控えているのだから。

【おわり】