新式ゴーレム開発計画2nd II

■ショートシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 97 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:04月21日〜04月28日

リプレイ公開日:2007年05月03日

●オープニング

●新式シルバーゴーレム評価試験
 兵器には、基本的に『評価試験期間』というのがある。
 別に、小難しい話ではない。単にテストして、性能をみるというものだ。前回の《イクサレス》級シルバーゴーレムの出撃状況が異常なだけで、兵器とは本来、何度も研鑽と調整を重ねて完成するものである。
 まあ、テスト無しの設計思索のみで、高性能を発揮した兵器の例はそれなりにある。が、それは本当に例外というものだ。
 さて、そこで今回のゴーレム開発計画である。
 前回撃破した敵シルバーゴーレムを修理(実際はリ・ビルド)したものと、イクサレスをデチューンしたもの。この2騎のシルバーゴーレムの、テストを行う必要がある。
 ただ今回は、その性能を見ると同時に『能力の低い者にも使用できる汎用性』を見る必要がある。
 理由は簡単だ。練達の鎧騎士しか使えないようでは、今後の戦況に『影響を与えられない』からだ。
 騎士道が通用する人間同士国家同士の一騎打ちならともかく、メイの国では力は『数』である程度決まる。必要なのは『超兵器』ではなく、『多数の戦力』である。
 そういう意味で、敵ゴーレムの確保は良くも悪くもメイの国に影響を与えた。敵シルバーゴーレムはすでに『汎用機』としての素地が出来ていて、稼働能力(つまり扱いやすさ)もかなりの水準に達しているようだったからだ。
 出遅れを認識するのは、いたしかたあるまい。そもそも敵であるバの国は、ここ50年他国を攻めたことはあっても、国内に敵の侵入を許したことは無いからだ。つまりそれだけ国力をため込むことが出来、従って軍備もそれに準ずるものになっているのである。
 話をメイの国に戻そう。
 ともかく2騎のシルバーゴーレムはつつがなく製作され、完成を見た。鎧などの装備については基本的な部分を押さえ、出来るだけフラットな状態でテストされる。
 敵ゴーレムについては評価資料として工房留置となるが、新式シルバーゴーレムについては、テストの状況が良ければ先行量産型として、リザベ領西部の新領地に配備される予定だ。
 また、装備についても検討の必要がある。今のテスト装備ではなく、正式配備の時のための装備一式をそろえなければならない。
 もっとも、約300万GP以上経費がかかったと言われるイクサレスと違い、今回は装備込みで100万GP程度まで圧縮されている。量産時には、50〜80万GPまで圧縮出来るのではないかという試算も出ている。
 ともあれ、新領地は激戦の地となるのは必定である。『具体的な』装具などの検討が必要だろう。

●今回の参加者

 eb4243 天ヶ崎 希望(24歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4598 御多々良 岩鉄斎(63歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb8285 浦 幸作(38歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb9700 リアレス・アルシェル(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)

●サポート参加者

王 風門(eb5247)/ 斉 蓮牙(eb5673

●リプレイ本文

新式ゴーレム開発計画2nd II

●私の専門分野ではありませんが
「私の専門分野ではありませんが、これはたいしたものですね」
 と、ウィルの国から輸入された弓の弦を手にして、カルロは感心したように言った。目の前にはその解析を行った天ヶ崎希望(eb4243)がおり、日本語で記されたメモを手にその構造解析結果を報告している。
「ウィルの国のゴーレム用弓の弦はぁー、天界で言うところの『圧着鍛造法』に近い製法で作られているよぉー。これは特性の違う金属を高圧で接着してぇー、引っ張りに対して柔軟な特性を持ちながらぁー、丈夫な金属を『構造で』作る方法だねぇー」
 彼女(いや、『彼』だ)にしゃべらせ続けると不要の文字数稼ぎ疑惑が出るので割愛するが、彼が調べたところによると、ウィルのゴーレム用弓の弦は、日本刀に近い作り方で作られているということであった。
 日本刀は、だいたい4種類のパーツを圧接して造られる。実は、本身と刃で金属が違うのである。
 このような構造を持つに至ったのは、日本の鍛冶師が求めた刀剣が、文字通り『鉄で鉄を切る』ことを目指したためらしい。じっさい日本の剣技は日本刀の性能ありきのものが多く、日本は西洋より遙かに早く重装甲な鎧とのいたちごっこの時代を通過していた。例えば鎌倉時代の兜は分厚い鉄の鋳物に飾りを付けたもので、兜だけで10キログラムほどあり行軍中に指揮官の兜を専門に持つ役職が居たぐらいである。逆を言えば、それだけの攻撃力が、すでに当時の刀にはあったのだ。
「冶金は私の専門分野ではありませんが、ガンゴントウス工房管理官ならば、何か方法を見つけてくれるかもしれませんね。それが無理なら、現状の物でなんとかするか、輸入をするしか無いでしょう」
 ウィルの国で作れるものがメイの国で作れない。そのようなことは、実はあり得る。なぜならウィルの国には、日本刀の流れをくむらしい『サンソード』の製法が伝わっているからだ。『製鉄技術』という意味では、メイは2段階ぐらい立ち後れている。
 とにかく構造解析に消費した1本の弓を除き、4本のゴーレム弓が製作された。これは射撃戦用に組まれた《グラシュテ改》に装備される。

●空飛ぶゴーレム
 ウィルの鎧騎士グレナム・ファルゲン(eb4322)の行動は、ジェト戦線への『敵』ドラグーンと精霊殻の組み合わせによる、大量破壊兵器の戦線投入の可能性を奏上することであった。
 ドラグーンについてはメイの王宮でもそれなりに把握しているようだが、精霊殻は1個しかない。ゆえに必殺の一撃に使用されることが予想されるが、メイで使用されなかったこと=ジェトに向く可能性と結びつけることは確かに容易だ。
 が、イコール『即メイでもドラグーンを開発すべき』という話しにはならない。精霊殻を持ち出されなければ良いだけの話しだし、現在そのために厳重な警備体制が敷かれている。また『飛行恐獣対策』のための飛行ゴーレムの開発という提案についても、ゴーレム用の弓を輸入したほうが安く済み、そして汎用性に富むため『何かと都合が良い』のだ。
「全ての敵をゴーレムで対処するというのは、間違いでしょうね」
 カルロは、率直なところを言った。
「件の『ドラグーン』についても即バの国が持つという話しにはならないでしょうし、ウィルの国がすぐに他国へ売却するとも思えません。技術屋として興味はありますが、メイに必要なのは『多くの鎧騎士が使えるたくさんのゴーレム』であり、たった一人のための超兵器ではないと私は考えます」
 グレナムとしては、完封されてしまった形ではある。同盟国とはいえ、ジェトの国の戦線構築にまでメイが介入するのは、多少行き過ぎの感が無いではない。
 そのグレナムも、浦幸作(eb8285)がもたらした新型チャリオットの試験を任され結構ご満悦であった。量産に至るには問題が山積しているが、幸作もかなり入れ込んでこの仕事をこなしているし、何よりウィルから来訪した鎧騎士は、チャリオットやグライダーを操縦できる者が多い。実際、試験の様子を見たステライド王は『歩兵戦術の更新のために』とチャリオットへの研究予算を交付したぐらいだ。
 ステライド王のオーダーは、『武装した歩兵を10人搭載して敵地へ進める攻撃型チャリオット』であった。奇しくも、90年代に現代戦術で発展した、歩兵輸送戦車思想と重なったのである。
 ステライド王は、エルタワ級輸送艦に搭載し、歩兵1個中隊をすばやく安全に侵攻させられるチャリオット。そういうものを求めているらしい。つまり単品ではキテレツ兵器の装甲チャリオットも、数をそろえ歩兵と運用することが出来れば、強力な先遣部隊となりえると考えたのである。
 鎧騎士はゴーレムに目が行きがちだが、戦争の主役は『歩兵』なのだ。無論、幸作がそれを喜んだことは言うまでもない。
 また幸作の提案でチャリオットに搭載できる小型エレメンタルキャノンの量産が進められることになり、城塞や艦船への備砲として採用されることになった。これらの改装は、順次行われることになっている。

●ゴーレム評価試験
 さて、今回のメインイベントである人型ゴーレムの評価試験である。御多々良岩鉄斎(eb4598)が《オーラエリベイション》要員として構え、希望、ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)、エルシード・カペアドール(eb4395)、フラガ・ラック(eb4532)、リアレス・アルシェル(eb9700)がそれぞれテストパイロットとして各ゴーレムに登場することになった。
 なお、今回もゴーレムに関する命名募集が行われ――そして今回は激戦となった。
 今回試験をする機種は、以下の通りである。

・射撃戦用アイアンゴーレム
・メイの国仕様カークラン
・量産型オルトロス
・新式シルバーゴーレム
・敵シルバーゴーレムのリ・ビルド騎体

 さて、名前についてはカルロ工房長が頓着無いため、彼が適度にチョイスした。以下が試験結果を含めた、今回のゴーレムの総覧である。

・射撃戦用アイアンゴーレム
名 称:アルメリア
ランク:アイアンゴーレム
【解説】
 ウィルの国のグラシュテ級アイアンゴーレムを改装し、射撃戦用に特化した騎体。稼働条件などはグラシュテ級に準じるが、装甲類を含めた格闘戦の性能を犠牲に、運動性と射撃性能の特化している。所持するゴーレム用鉄弓の有効射程は150メートル。最大射程600メートル(もっともこの距離を狙うには、難易度は10倍以上に跳ね上がるが)。つまり移動し連射のきくバリスタに相当する。
 なお、過日に岩鉄斎の開発した射撃補助装備が鉄弓に取り付けられているが、現在の所非常にデリケートな仕様のためテスト時は不評が多かった。使いこなせるようになるには、射撃技能そのものに対しかなりの練度が必要と思われる。
 主にジャクリーン・ジーン・オーカーがテスト。命名はリアレス・アルシェルによる。

・メイの国仕様カークラン
名 称:カークラン
ランク:カッパーゴーレム
【解説】
 ウィルの国のカークラン級カッパーゴーレムのコピー生産品。外装に若干の変更が見られるが、性能に特記すべき差異は無い。
 メイの国では、総合戦闘能力の高い準エース騎となるであろう。

・量産型オルトロス
名 称:オルトロス
ランク:カッパーゴーレム
【解説】
 試作オルトロスを量産前提に組み直したプロダクションモデル。性能に変更は無いが生産価格が下がっている。
 基本コンセプトも特に変わらず、頑丈で殴り合いでの性能に特化した部分は同じ。今後のメイの国における主力騎になると思われる。

・敵シルバーゴーレムのリ・ビルド騎体
名 称:リザレクト
ランク:シルバーゴーレム
【解説】
 バの国のシルバーゴーレムを組み直した騎体。外装は完全新調だが、中身は制御系のみメイの国製。元の騎体について追加情報があり、バの国では『ガナ・ベガ級』と呼ばれているらしい。
 能力的には技術派騎体で、戦技重視の高い運動能力を保持するタイプと判明。バグナ級ストーンゴーレムからの傾向だが、バの国は戦技重視の騎体を製産している模様である。
 起動は専門。限界性能は達人3ぐらいのようだが、攻撃力は《キャペルス級》をやや下回るようである。
 命名はフラガ・ラック。

・新式シルバーゴーレム
名 称:ヴァルキュリア
ランク:シルバーゴーレム
【解説】
 メイの国初の『実用』シルバーゴーレム。《イクサレス》のデータをふまえテストを十全に行ったところ、起動は専門で限界性能は達人2程度のところで落ち着いた。攻撃力はやや高めだが、バランス型ゴーレムというポジションに落ち着きそうである。特筆すべきはエレメンタルフィールドの密度の濃さで、どうやら騎体の『物質的性能』よりも『魔法的性能』のほうが高いようだ。
 主なテストパイロットはエルシード・カペアドール。命名も同嬢による。ただし本人は、この性能に満足していないらしい。

 以上である。詳細な性能データは後ほど公開するとして、全体として『汎用化』が進んだ内容となった。これはカルロの恣意的なものもあるであろうが、メイに在務している冒険者の中でも、トップクラスであるエルシード『しか』使用できないゴーレムでは、戦力に換算しにくいからというのもあるだろう。

●その他の細々としたこと
 武器防具については基本的にガンゴントウスの管理なので詳しくは触れないが、岩鉄斎が投擲用のジャベリンと、ナイフを多数装備した盾を製作していた。実戦での有効度(特に投擲ナイフの威力など)がどれほどかは分からないが、実戦に運用可能な状態になったことは記しておくべきだろう。
 またリアレスからの提案で、試作2号機《サイサリス》に使用していた、精霊殻射出装置のスプリングを使用した、《パイルバンカー》と呼ばれる武器が試作された。これはバネによって極太の鉄の杭を撃ち出す武器で、評価試験では3枚の《ストーンウォール》を一撃で撃ち抜いていた。推定威力100以上。1発こっきりのキ印な兵器だが、究極の接近戦武器になると思われる。ただし、部品の都合上1器しか製作されず、故障・破損しても予備は無い。

 ヴァルキュリアは近くオルボートへ搬送されるが、今度はヴァルキュリアの量産型の試作を行う必要がある。また次回以降、さらに高度なゴーレムの開発も検証しなければならない。具体的には黄金素材になるのか、それともドラグーンなるものの開発になるのか。
 開発系は、まだまだ目が離せない状況である。

【おわり】