新式ゴーレム開発計画2nd VI

■ショートシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月04日〜11月09日

リプレイ公開日:2007年12月07日

●オープニング

●ドラグーン――その実態
 アトランティス最強の個人装備は何か?
 メイの国で現在確認されているのは、一時期阿修羅の剣に間違えられていた『破滅の剣』がそうであろう。ありとあらゆる因果関係を操作し、所有者の望む未来を構築するものだ。たった一本の剣に付与された魔力は、本物の阿修羅の剣の0.0001パーセントにも満たない。しかしそれだけの魔力量で世界の破滅までをコーディネイトするのである。そしてその作為的な運命は、結果を導くためにありとあらゆる事象を発生させる。英雄願望のある者には『倒すべき敵』と『救うべき滅亡の未来』を用意する。そしてそんな困難な状況を、たまさかその剣を持ってしまった人物が達成できるとは限らない。結果、剣は所有者をことごとく破滅させ、現在に至るわけである。
 破滅の剣は、実用に耐えない。なら実用レベルならという話になると、これはもう現在のところドラグーンがそうだろう。
 しかし短い研究期間では、天才であるカルロ工房長も戦線に実戦用のゴーレムを提供するのが精一杯だ。しかし、ここで一つのファクターが発生する。
 メイの国は、カオス勢力の『なんらかの野望』をいくつも打ち砕いてきた。その中には、ナーガ族に対する非情な仕打ちもある(シナリオ『ナーガ族の○○』参照)。
 それらの助力に感謝してくれたのか、ナーガ族の数名がドラグーン開発に協力してくれるという話になったのだ。むろん人間からの打診に応じたというもので、ナーガ族が総力を挙げて、というわけではない。
 ナーガ族というのは、不戦不干渉の孤高の民族である。しかしこの1年メイの国は、彼らを支援し続けてきた。その気持ちに感じ入った者もいたということであろう。何せ、現在カオスニアンと戦って血を流しているのは汎ヒューマノイドなのである。

    ◆

 さて、『ではドラグーンとはなんなのか?』という話になる。
 メイの国には基礎的な概念すら入ってきておらず、著名なオーブル・ プロフィットとナーガのカブラ・ カラドが協力して制作したということしか知られてない。
 しかし、カルロはあっさり成果を出した。無謀とも言えるが、ロールアウト前のヴァルキュリア級にナーガを乗せて起動させたのである。かなり手こずったのは確かだが。
 さてここで、ナーガという種族について触れなければなるまい。ナーガには精霊竜と同じく精霊の属性があり、精霊力器物と親和性が良かった。またその所有する『竜語魔法(ドラゴン・ロア)』は精霊属性を持つ神聖魔法で、その能力は『竜人能力の発現』である。
 もっともこの『竜語魔法』、実はナーガ族が生体的に持っている能力で、ナーガ族は一切使用する必要が無い。竜の翼を持ち強固な鱗を持ちブレスまで吐く能力を持つナーガ族は、そもそもが同様の効果を持つ竜語魔法を文字通り『身体に装備している』のである。
 カルロはその『現象』に着目した。通常、魔力消費などの点から「そんなわけねー」という概念を検証したのだ。つまり「ナーガ族は常時魔法を発動しているんだ!」というものだ。無魔法で生物的な能力を獲得しているのではなく、常時魔法で強化されるなんらかの生物構造(システム)を保有している、と解釈したのである。
 ナーガ族の特異性――つまりその個体能力の高さは説明のつきにくい部分がある。アトランティス人の多くも「竜の眷属だから」という説明で当たり前のように納得しているのが現状だ。納得している以上、思考はそこより進まない。結果、誰も疑問にも思わないという『状況』があった。
 カルロは、そこにメスを入れたのである。いや、別に生体解剖とかしたわけではないが。まあそれで『ナーガ袋』とかいう謎の器官が見つかれば、それはそれで説明は可能である。いや、そんなもの無いけどさ。

 ゴーレムは搭乗者の能力に性能が大きく左右される。稼働能力、稼働時間、すべてに例外なくと言っていい。しかし強固な閉鎖精霊系を構築しているため、搭乗者が唱えた魔法を外部に放出するなどの手段が取れなかった。またゴーレムそのものに《ファイヤーボム》などの魔法能力を持たせようという試行錯誤も行われたが、結局はエレメンタルフィールドという『ゴーレムそのものの利点』に阻害された。ついでに言うと術式を組み立てるような作業の出来る手足を持たせようとすると、ゴーレム本来の目的である『圧倒的な暴力』が発揮できないという弱点もあった。なんせ剣で相手を殴るのにも衝撃が来る。人間だって、殴り方が悪ければ殴った手のほうをくじくのだ。殴り合いのプロであるボクサーだって、拳を骨折した例は枚挙に問わない。
 結局は「魔法使いがゴーレムを使用するのは不可能であり無意味」ということを検証結果として蓄積し、計画は完全に潰えた。
 しかし、竜語魔法はそれらの魔法とは違う。かれらは精霊魔法とは違う魔法の系譜であり、カルロの推論が正しければ『個体能力を変異・強化する能力』に特化した魔法ということになるの。しかも持続時間は、汎ヒューマノイドの魔法から見れば、無限にも近い。
 生物も、強度の差はあれ閉鎖された精霊構造を持つものである。ゆえにカルロは「ウィルは術式などの『技術』ではなく、もっと直接的にゴーレムの強化へ使用したのではないか?」と推論したのである。
 そして起動したヴァルキュリア内部でナーガが竜語魔法を使用した結果、素体に微細な変形などの変化が発生した。つまり、とっかかりとしては間違っていないということである。
 ただし、課題は山積みである。まず「ナーガしか操縦できないのならそれはドラグーンではない」という結果帰結。ウィルのドラグーンの搭乗者は、ナーガが変身しているのでなければ全員汎ヒューマノイドである。
 また「ドラグーンは起動前もドラグーンである」というやはり結果帰結。ただ逆説的には、製作方法はわからないが、ドラグーンはつまり『竜語魔法を定着させたゴーレム』であるということはほぼ確定的だ。
 ただその方法はわからないし、カルロにもまったく未知の領域である。
 そして今、工房には一つの課題がある。これが今回の『通常型ゴーレム開発最後の課題』である。例の人間電子レンジ現象だ。

 後発ゆえの無茶な開発ペースが祟ったのか、メイのゴーレムは性格的(?)にくせやアクといったものが強い。そもそも規格化とか統制といったものを無視し、現場の冒険者や鎧騎士の要望を容れることを至上命題にしてきたのである。結果犠牲になったのは安全性で、制御系などはかなり粗雑、というかゴーレムの性能ほど発展していない。
 まあ、「高性能のゴーレムに早く乗りたい!」という冒険者たちが選んだ結果でもあるのだが、結局ツケを払わなければならない時期にきたということだ。
 ジレンマは一つだけ。多くの搭乗者の要望より「性能は落としたくない」が、「誰でも乗れるようにしてほしい」。ゆえに構造構築の中心は、制御系に集約される。具体的には制御胞をどのように作るかという話だ。
 この部分を解決しない限り、ゴーレムはともかくドラグーンは100パー製造不可能である。より多くの精霊力かなんだか分からないものを集約して稼働させる器物に人間が乗ったら、コンマ2秒で破裂しかねない。
 カオスニアンとの戦争の後のことを考えれば、不可避の技術開発である。心して当たっていただきたい。

●今回の参加者

 ea9387 シュタール・アイゼナッハ(47歳・♂・ゴーレムニスト・人間・フランク王国)
 eb4494 月下部 有里(34歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb9277 エリスティア・マウセン(34歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 ec2341 クラリベル・ミューゼル(22歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・メイの国)
 ec2412 マリア・タクーヌス(30歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・メイの国)

●リプレイ本文

●ドラグーン――その実態
──メイディア・ゴーレム工房
 アトランティス最強の装備。 
 それを実験する為に、其の日も大勢の協力者がカルロ・プレビシオン工房長の元に集った。
「さて、早速ですが、メイオリジナルドラグーンについての、皆さんの意見を頂きたいのです。最大の問題点は電子レンジ現象です。皆さんの忌憚ない意見を御願いします」
 そう開発工房に集った皆に告げるカルロ工房長。
「まずは素体から。私はドラグーンに使用する素体には『シルバー』を推薦します」
 そう告げるのは月下部有里(eb4494)。
「ほほう、で、その意義は?」
「現在までの開発過程庭から考えうる、最大のメリットと最少のデメリットを考慮して‥‥」
 そう告げると、有里は解説を開始。
「ゴールドクラスほどのパワーは必要ないと思います。現状、シルバーのイクサレスの機動限界にまで達している人はそうそういませんし、なによりもシルバーまで下げると、レンジ化が起こらないかと仮定しました」
 そう告げつつも、さらに有里は手作りの資料を皆に配布。
「そちらをご覧くださいね。私はCPUというものには詳しくないの。でも、冒険者ギルドが所蔵している各種報告書を見る限りでは、ゴーレムとはすなわち一つの生命体に近いものと考えたわ。ならば‥‥次のページをどうぞ」

──皆でペラッとページをめくる♪〜

「私の専門分野である東洋医学。それには外気功と内気功という概念が存在する。そしてそれらの力をつかさどるリンパ循環、そこに伴走している動脈静脈との血液の交換循環。それらを元に、精霊力も内部だけでなく、体全体に満たすことができないかと考えているわ。ここまでで何かご質問は?」
 そう告げる有里だが、特に誰も質問がない。
「続けてください」
 そうカルロ工房長に促され、話を続ける有里。
「私は精霊力専用循環器官を作ろうかとおもうわ。で、ここからはゴーレムニストやウィザードの皆さんにお聞きしたいのですが、その器官をエレメンタルフィールドで作れないかしら。もう一枚エレメンタルフィールドを重ねるのよ」
 そう告げると、次のページにある図解入り説明を開始する。
「まずいつもどおりゴーレム内部を精霊力が満たし、オーバーした精霊力を2層の間に流す、素材に達した精霊力は素材に影響を与える。生物の体は一部例外を除いてどの器官も自己よね。
 その内部同士なら外界との仕切りがあっても物質を交換できるわ、上皮細胞、基底膜、通過孔、そしてリンパ循環…。エレメンタルフィールドが同じものならば、内外に閉鎖精霊系をつくることで精霊力を固定できないかしら」
 医師らしい判断だが。
「その意見についてですが。まず、素体のシルバーは考慮してみましょう。次に精霊力循環器官ですが、我々もまだ、エレメンタルフィールドを始めとするゴーレムの構造全てを把握しているわけではありません。そのため、そのような器官の開発には、さらなる研究が必要です」
 そのカルロ工房長の言葉に、有里がさらに問い掛ける。
「この世界をつかさどっている精霊。それらを総て把握していないというのは、ウィザードとしては怠慢では?」
「では、貴方に問いましょう。天界でいう医術は全ての生命について熟知していると。では、貴方はその中に存在する『魂の構造』すべてを理解していると?」
 一般参加しているウィザードがそう有里に問う。
「‥‥了解しました。つまり、ゴーレムは我々の肉体、精霊力は魂、その関係にちかいと?」
 そう告げる有里に、ウィザードは肯く。
「カルロ工房長、彼女の意見は重要懸案として、ウィザードの方でも考えてみることにします」
 そう告げられて、カルロが一つサインを施す。

「では次にわしが。まず、今回このような機会を提供してくれたカルロ工房長と、同席して頂いている協力者の皆さんに感謝を送らせて貰う」
 そう挨拶をしているのは、シュタール・アイゼナッハ(ea9387)。
「素体云々とかは他のメンバーがやってくれているので、ワシは制御系についての提案をさせて貰う」
 そう告げると、シュタールも自作の図解を壁に張り付け、差し棒をつかって説明に入る。
「まず制御系についてだが、ワシは『ウィル型』の採用を推薦する」
 その言葉に、工房からの出席者達に波紋が起こる。
 まあ無理もあるまい。
 メイのゴーレムは、ウィル等から買い上げた機体を独自に調査、そして改良を加えた『工房自慢の逸品』である。
 それをウィルオリジナルのものをとなると、彼等のプライドもあろう。
「意義アリっ!!」
 工房の制御胞担当が手をあげる。
「認めない。シュタール、話を続けてください」
 カルロ工房長が皆を止めて話を続けさせた。
「では、制御胞はすなわちゴーレムの要。ウィルでは成功しているのにメイで失敗しているということは、ここに何かあると考えた。そこで、この縦列複座式の制御胞を機体に設置し、どちらに精霊力が集中するか調べ、集中する方に身代わりの人形をおき、もう一方に制御系をおく。または単座式にして精霊力が集中する場所から制御胞のある位置をずらすことで、安定できないかと考えたのだが」
 その意見に、会場はざわつく。
 ゴーレムの素体の大きさから、制御胞を置くスペースは限られる。
 それが大きくなると今度は、素体の耐久性や機動の為の精霊力、そして稼動時間やパイロットに対する負荷も考えなくてはならない。
「で、ここからが本番。精霊力放出関係については余剰精霊力放出の為、ゼフィランサス装備のゴーレム機器を作成し、取付けるというのはいかがかと」
 その飛躍的発想に、参加している一同からは賛否の声があがる。
「その線で話を進める。工房で細かい打ち合わせを行なった後、試作実験機としてデータ収集用に開発認可」
 カルロ工房長がサインし、それを工房責任者の一人が受け取る。

「では、今度は私が。今までの様々な実験や開発計画を検証し、ある種のデータが取れました」
 そう告げているのは、エリスティア・マウセン(eb9277)。
 過去の事例であったイクサレス作成やヴァルキュリア、飛行ゴーレム計画など、彼女は様々な事例を元に幾つかの推論を弾きだしていた。
「では結果から申し上げます。銀以上の材質は、精霊力を過剰吸収する。そしてウィルには、精霊力の過剰吸収を抑える技術が有ると考えていいかと思います。そうでない場合、外見こそシルバーゴーレムですが、実は素体に違う何かが混ぜられているという可能性もあり、これらを検証していただきたいと思います」
 そう告げると、さらに一拍おいて話を続けるエリスティア。
「検証候補の上がる材質は、制御胞内で竜語魔法を使用し、変化した材質。これは確か、ヴァルキュリア内部に発生した変異材質を調べて頂きたいのです。この部位はすでに銀ではない。ならば、全てをその『変異した材質』によってゴーレムを開発すれば、それはドラグーンにも耐えうるものが出来ると考えられます」
 その発想は、工房のものにはなかったであろう。
「竜語魔法は、ナーガ様が自然に行われる力を体現した物で有る以上、飛行能力も自然に有している筈です。以上の事から、銀以上の材質は、通常ではゴーレムに適さず、竜語魔法で変質させた材料のみ有効となる。結果、ドラグーンは、竜語魔法で変質させた、金、ブラン鉱によって作り出されたゴーレムだと考えて、竜語魔法で変質させた材料を使用したゴーレムの作成を提案します」
──パチパチパチパチ
 あちこちから拍手が沸き上がる。
「ナーガの皆さん、これらの協力、よろしく御願いします。後日、正式な手続きを行なって、その素体の開発に入ります」
 カルロ工房長が実行許可を出すと、工房では慌ただしい空気が流れはじめた。

「私の意見は、大体皆さんがおっしゃったので‥‥」
 そう告げつつ、話を始めたのはクラリベル・ミューゼル(ec2341)。
 彼女の意見である『素体についての考察と精霊力の制御』。
 それらは他の人たちの意見がよいと考え、そう発言した後に、自身の切り札を晒してみせる。
「私からの提案は、操縦者を必要以上に精霊力へ晒すのを防ぐ事です。従来の騎体は集まった精霊力が操縦者に流れ込むのに、何も制限を掛けていませんでした。それを防ぐ方法として、精霊力が操縦者に流れる経路が不明なため確信は持てませんが、制御胞については騎体とは別に精霊力の透過性の悪い材料で作る事を提案します」
 つまり、ソフトではなくハード面での制御胞の開発。
 それはまたしても、制御胞担当チームにとっては、耳に痛い話であろう。
「例えば、金や銀の騎体に対して石や木で制御胞を作成して設置するわけです。これにより精霊力が直に操縦者に流れ込む事を防げると考えます。そしてもう一つは精霊力の方向性を操縦者から別方向へ逸らす事。初めて電子レンジ現象が起きた際に、搭乗者がエレメンタルフィールドを集中放射させた事がありました。レアケースとして無視していましたが、あれは集まった精霊力を意図的に外部へ発散する事が可能である事を意味します」
 過去の事例を元に、一つ一つ丁寧に説明する。
「あの時は操縦者を経由していたために本人は重傷を負ったようですが、この現象を人為的に操縦者を経由せずに発生させ続ければ、操縦者への負担は減少するはずです。具体的には騎体より精霊力の透過性の良い素材、プラチナやブラン製の部品を騎体の外殻に設置する事を提案します。そこから精霊力を発散させ続けエレメンタルフィールドに変換させる事ができれば、防御力の上昇にも繋がると考えます」
 ここまでの話を聞いて、カルロが何かを考えている。
「先程の月下部殿の意見にあった『精霊力循環器官』に繋がる部分がりますね。では、同時進行でそちらの研究も考慮しましょう」
 今度は先の話と合わせての決定。
 一つ一つの難題を解決する糸口が見えはじめた。

「私の意見も、先の月下部さんやクラリベルさんの話と繋がります」
 そう話を始めたのはマリア・タクーヌス(ec2412)。
「月下部さんは精霊力の循環、クラリベルさんは外部放出、では私は『内部遮断』についての提案です」
 いきなり本題から始めるマリア。
 精霊力が強く流れすぎて操縦者に害になるのであれば、精霊力を遮る工夫をするのはどうであろうというのが、彼女の考えである。
 これについては、ゴーレム乗りからの非難はあるであろう。
 機動の源である精霊力が遮断されると、その運動性能は格段に低下するからである。
 だが、限界性能が落ちるかもしれないが、人の扱える力にせねば、元も子もないであろうというのがマリアの提案。
 それゆえに。
「精霊力をある程度遮断するために制御胞に磁器をコーティングすることはできぬであろうか? 天界には電気という精霊力に似た力があり、それを遮る絶縁と言う考え方があると聞く。その現象に、磁器は優れた効果が得られると言うではないか。ならば、制御胞部分を磁器から作った粉で塗り固め、精霊力や熱そのものを遮断できぬであろうか?」
 それについては、天界人である月下部やエリスティアがバックアップで説明を付け加え、磁器コーティングの有効性を説明した。
 そして過剰精霊力を外に吐き出す方法。
 これについてはクラリベルと同様に意見を出し合い、二人でそれらの器具や回路についての開発協力が命じられる。
「マリアの意見はおもしろい。単体としての意見ではなく、皆の意見について、さらなる強化と改良か‥‥」
 サラサラと書類にサインを行ない、それを工房責任者に手渡す。
「先程までの開発認可に、この部分も付け加えるように」
 その話が纏まると、カルロが皆に話を始める。
「確かに今回は、有意義な時間だった。このまま引き続き開発は行うし、必要であれば、再び皆に意見を求めるだろう」
 そう告げると、一人一人の話をもういちど振り返り、こう絞めた。
「ドラグーンがメイの大空を飛び交う姿を、私は愉しみにしている‥‥」
 それで話は終った。

 そして翌日より、新たなプロジェクトが開始され、今回の提案事項に付いての研究が開始される。
 国からの予算補助も大幅に選られたので、今回はかなり大規模な開発になるだろう。
 


●メイ・ドラグーン開発に置ける今後の実験
・精霊力循環器官の研究と開発(月下部有里提案事項)
・縦列複座式の制御胞開発と、それにともなう精霊力の安定実験(シュタール提案事項)
・ゴーレム素体を作る際に、同時に竜語魔法の付与(シュタール提案・研究段階)
・竜語魔法で変質させた、上位金属素体の開発(エリスティア提案事項)
・外部装甲に精霊力の透過性の良い素材、プラチナやブラン製の部品を使用した機具を開発、それらの設置(クラリベル提案事項)
・制御胞に置ける、余剰精霊力の『内部遮断』および外部放出の為のパイプライン開発(マリア提案事項)


──Fin

(代筆:一之瀬守)