逃げた大蛇を追え――ジャパン・江戸

■ショートシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月25日〜07月02日

リプレイ公開日:2004年07月01日

●オープニング

 ジャパンの東国『江戸』。
 源徳家康の統治する、実質の日本の主都である。政治色の強い都市で、帝の都(みやこ)である『京都』よりも精力的な都市だ。
 だがそんなことよりも、人々の関心はその日の生活に向いていた。なにぶん、人間は食わなくてはならない。平民の暮らしはあまり裕福とは言えず、毎日ちゃんとご飯を食べるのも大変だ。
 そして、化け物の襲撃はもっと深刻だった。
「ある廻船問屋があってね」
 冒険者ギルドの女番頭が、キセルをくゆらせながら言った。
「そこでは好事家相手に、西洋の動物を輸入したりしているんだけど、その動物の一匹が逃げ出したらしいのよ」
 女番頭が、紙に描いた絵を見せる。
 それは、多分蛇だった。ただ隣に描いてあるのが人間なら、体長はその4倍ほどもある。
「『ジャイアントパイソン』っていうの。湿地に住む大きな蛇で、パラぐらいなら丸呑みにしちゃうんだって。それが1匹、檻を抜けて逃げたらしいわ」
 女番頭は、さらに地図を出した。それは山の地図で、古い坑道のようだった。
「昔、金山だった坑道よ。今は何も掘れなくなっているけど、そこに逃げ込んだらしいわ。そして問題なのは、そこが小鬼の住処であることなの」
 小鬼は、人間の子供の背丈ほどしかない鬼の一種で、醜悪で貧相で小ずるい鬼である。洋名ゴブリン。集団で弱い者をいたぶるのを好み、そして強いものには逃げへつらうような連中だ。
「依頼内容は、この大蛇を無傷で捕まえること。報酬ははずむわ」
 タン。
 女番頭が、キセルで火箱を叩いた。

【地図について】
 地図には、6箇所のポイントがあります。
A:入り口。幅3m×高さ3m。何も無ければ見張りが居るはず。
B:Aからまっすぐ30m行ったところに分岐路1。右へ行くとC、左へ行くとD。
C:20mほど進んで落盤の跡。つい最近のもの。
D:30mほど進んで分岐路2。右へ行くとE、左へ行くとF。
E:20mほど進んで行き止まり。水が溜まっている。
F:10mほどで落盤の跡。
※COソードボンバーなどを使った場合、崩落の恐れがあります。

●今回の参加者

 ea0548 闇目 幻十郎(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0959 アルファルド・ルージュルペ(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea1956 ニキ・ラージャンヌ(28歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea2160 夜神 十夜(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3394 ルーン・エイシェント(16歳・♂・ウィザード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea3445 笠倉 榧(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4051 ラフィン・シェルロード(27歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

逃げた大蛇を追え――ジャパン・江戸

●廻船問屋の不始末とその尻拭い
 状況は、最悪である。
 西洋から輸入された巨大ヘビは、檻を抜け出し野に放たれた。人間を絞め殺しパラぐらいなら飲み込んでしまうという、極めて危険な動物である。それがしかも、廃坑に逃げ込んだのだ。そこには小鬼が住んでいて、探索するには荒事の専門家、『冒険者』の手を借りなければならない。
 そして、往々にしてそういう場所は、トラブルと縁があるものである。
「いきなりコレですか‥‥」
 黒装束の、忍者風の男が言う。
 問題の洞窟は、確かにあったらしい。山の中腹、元金山らしく周囲にはかまどの跡やタタラ場の建物などがあり、鉱夫たちが寝起きしていたあばやらの跡もある。
 そして、洞窟の入り口は閉じていた。落盤があったようだった。
 途方に暮れたのは、ヘビ捕獲の任を受けた次の10人の冒険者たち。

 ジャパン出身。人間の忍者、闇目幻十郎(ea0548)。
 ジャパン出身。人間の浪人、本所銕三郎(ea0567)。
 フランク王国出身。人間のファイター、アルファルド・ルージュルペ(ea0959)。
 インドゥーラ出身。人間の僧侶、ニキ・ラージャンヌ(ea1956)。
 ジャパン出身。人間の浪人、夜神十夜(ea2160)。
 ジャパン出身。人間の浪人、氷川玲(ea2988)。
 ビザンチン帝国出身。シフールのウィザード、ルーン・エイシェント(ea3394)。
 ジャパン出身。人間の浪人、笠倉榧(ea3445)。
 ジャパン出身。人間の浪人、音羽でり子(ea3914)。
 ノルマン王国出身。人間のナイト、ラフィン・シェルロード(ea4051)。

 最初に声をあげた忍者は、闇目幻十郎だ。他の者も、今にもため息をつきそうな表情をしている。
「これ、どうするんだ?」
 本所銕三郎が、言う。どうするも何も、なんとかして中に入るしかない。
「これは仏のお導きやわ。これなら入り口は何も通れないさかい、この中に必ずヘビがいてはるやろ?」
 黄色のサリーをまとった、ニキ・ラージャンヌが言った。まあポジティヴに考えればそうだが、この大量の土砂や岩のたぐいをどうするかという問題は、依然としてある。
 一同は協議し、その結果、すみやかに土砂を除(ど)ける作業に取り掛かった。シフールのルーン・エイシェントも、非力ながら一生懸命手伝った。
「これでいいだろう」
 アルファルド・ルージュルペが、額に汗をかきながら言った。日はとうに没し、夕焼けも夜の紫色に染まっている。
 入り口の落盤は、冒険者たちの一日がかりの作業でほぼ復旧できた。作業の途中、岩の下敷きになった2体か3体(潰れてて判別がつかなかった)のゴブリンの死体を発見したが、ヘビの死体は無かった。
「とりあえず今日は野営しよう。探索は明日だ」
 氷川玲が言う。確かに、皆疲れていた。
 一同は夜の見張り役を決めると、タタラ場跡で夜を過ごした。

●金山跡
 金鉱に限らず坑道というものは、まあ場所にもよるが横掘りが一般的である。地層に沿って岩を掘るため、横へ横へと伸びてゆくのが普通だ。
 ご他聞に漏れず、この廃坑も横向きに堀り進められていた。近代掘削技術では、坑道を掘った分だけ補強しながら掘り進む。だがそんなものは無いこの時代、かなり無理な掘り方をするので、落盤の危険は満載である。下手な魔法や剣技は、命を縮めることになるだろう。
「分岐路だ」
 銕三郎が言う。冒険者ギルドの女番頭が出してくれた、地図の通りである。
「少し偵察してくる」
 幻十郎が言う。そして右に向かった。地図通りなら、落盤が起きて行き止まりになっているはずである。
 <湖心の術>を用いて物音を消した幻十郎は、そこでゴブリンを見つけた。何をするわけでもなく、ぼうっと土壁を見ている。途方に暮れているようにも見える。
 幻十郎はその背後に近づいた。
 トン。
 一撃だった。素拳の<スタンアタック>でゴブリンを昏倒させると、手際よくそれをロープで縛り、猿轡を噛ませて一同の所に戻ってきた。
「こいつを、ヘビの生餌にしよう」
 ぐったりしたゴブリンを引きずってきた、幻十郎が言う。僧侶であるラージャンヌが、それに手を合わせて黙祷した。まだ死んでないのだが、運命は決まったも同然である。

●二手に分かれる
 一行は、二手に分かれた。ゴブリン殲滅班とヘビ捕獲班である。

【ゴブリン殲滅班】
 ニキ・ラージャンヌ
 夜神十夜
 音羽でり子
 笠倉榧
 ラフィン・シェルロード

【ヘビ捕獲班】
 闇目幻十郎
 本所銕三郎
 アルファルド・ルージュルペ
 氷川玲
 ルーン・エイシェント

 捕獲の決め技は、ルーンの<アイスコフィン>である。その前にパクっとやられないかどうか、微妙なところだろう。何せシフールは小さい。
 ともあれ、ゴブリン殲滅班は、内部へ侵攻していった。最初の分岐路を左に折れて30メートルほど進むと、またT字の分岐路になる。ここも地図の通りだ。
「とーや‥‥ヘビ‥‥居(お)ったか?」
 音羽でり子が、夜神十夜の影に隠れて問う。でり子は完全に腰が引けている。というのも彼女は大の爬虫類嫌いで、実際なぜこの依頼を受けたのかわからないぐらいビビッていた。
「さて‥‥どうするか」
 笠倉榧が、難しい顔をした。右に行けば水場、左に行けば落盤の跡。どっちにもゴブリンやヘビが居そうである。
「左から潰そう」
 十夜が言う。
「水場はヘビが潜んでいる可能性が高い。まず小鬼から潰す」
 十夜が言った。
 左へ進むと、何かの気配があった。複数。すえた生活臭も臭ってくる。
「確認します」
 ラージャンヌが<ディテクトライフフォース>を使った。
「前に子供のような反応。群れてます」
「ゴブリンだな」
 ラフィン・シェルロードが、日本刀の鯉口を切った。もう分かる。ゴブリンだった。数は6匹ほど。
「さて、久しぶりの殺戮だ‥‥簡単に死ぬなよ? 俺を愉しませろ」
 十夜が言う。そして刀を抜く。
 戦闘が、始まった。

●大蛇捕まる?
「‥‥蛇やゴブリンがいつ出てもいいように準備しておけ‥‥戦いでの最大の敵は己の油断する心だ‥‥」
 アルファルドが言う。ここは最初の分岐路である。班分けした冒険者たちは、ゴブリン殲滅班が戻ってくるまでここに待機する手はずになっていた。
 が、事ここに至っては、少々の油断ぐらい許されてもいいだろう。主な探索は済んでいるし、先行した班も無事にゴブリンと戦っているようだ。逃げてきたゴブリンが居れば、それを排除すればいい。大きな問題は無いはずだ。
 やがて、坑道に響く戦闘音がおさまってしばらくし、ゴブリン殲滅班が戻ってきた。
「収穫がありましたよ」
 提灯を持ったラージャンヌが言う。ゴブリンは少々の砂金と貨幣を溜め込んでいた。
「ヘビは?」
 玲が、一行に向かって問う。
「居なかった。水場にも落盤跡にも」
 榧が言う。待っていた捕獲班は、皆一様に難しい顔をした。
「ヘビは逃げたのかな?」
「きっ、きっとそそそうや!」
 銕三郎の問いにどもりながらでり子が答えたとき。
 ぼっとん。
 何か長くて太い弾力のある物体が、でり子の上に落ちてきた。
 じっ。
 目が合った。まぶたの無い丸い目。金褐色の瞳には表情が無く、そして口には先端が二つに分かれた舌があった。

 ――ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

 壁を震わせるような叫び声が、坑道に響き渡った。でり子のものである。でり子の上に、大蛇が落ちて来たのだ。壁かどこかを這い伝ってきたのだろう。
 大蛇は、でり子にからみついた。でり子は脂汗を流しながら凝固していた。息が出来ないのは締め付けられているという理由だけではあるまい。
「<アイスコフィン>!!」
 ルーンが呪文を唱え、発動させた。でり子に絡みついたまま、ヘビは凍り付いてしまった。
「捕獲成功!」
 ルーンが快哉をあげる。
 さてここで問題である。どうやって絡みつかれたでり子を、ヘビから救出すれまいいのか。
 まあ、なんとかするしか無いのだが。
 合掌。

●冒険成功
 一同は、ヘビの捕獲に成功した。でり子の心に大きな傷を残して。
 ヘビは無事に依頼主の廻船問屋に引き渡され、好事家の元に届けられたという。
 でり子は今日も、立ち直れずに寝込んでいる。

【おわり】