●リプレイ本文
「今回の相手は人喰樹か。‥‥微妙に硬い敵と縁があるのは‥‥まあ、気のせいだろうな」
苦笑いを浮かべながら、結城利彦(ea0247)が人喰樹の巣食う山林にむかう。
山林を切り開くためには人喰樹を退治しなければいけないため、必要な道具を背負い袋の中に放り込み地図を頼りに進んでいく。
「丸々樹一本がモンスターですからね。‥‥倒すのに苦労しそうです」
材木問屋で人喰樹の情報を集め、闇目幻十郎(ea0548)がボソリと呟いた。
人喰樹の防御力はかなり高いため、戦闘中はある程度の機敏さが要求される。
「一体とはいえ相手の領域で、しかも弱点を突けないってのはきついな」
依頼主から詳しい話を聞いたため、久留間兵庫(ea8257)が疲れた様子で溜息をつく。
人喰樹は移動する事が出来ないため、それが弱点とも言えるのだが、近づくものを攻撃してくる習性があるため、簡単に勝てる相手ではないようだ。
「とりあえず戦ってみないと分からないだろ? ‥‥あたしは強くなりたいんだ。どんな奴とも戦ってみないとね」
後学のために人喰樹に興味を持ち、劉紅鳳(ea2266)が拳をギュッと握り締める。
他の冒険者と共に人喰樹と戦い倒す事で、自分の戦い方を見直し糧とするため、いつも以上に気合が入っているようだ。
「やれやれ‥‥汗臭いのは似合わないんだがねぇ‥‥」
火の入ってないキセルを弄び、壬生天矢(ea0841)が大斧を肩に担ぐ。
「依頼主の話じゃ、あの辺りの樹は日の当たってない部分が他と比べて脆いらしい。人喰樹にもこれと同じ弱点があるといいんだが‥‥」
険しい表情を浮かべながら、兵庫が依頼主の言葉を思い出す。
「それじゃ、毒は‥‥持ってるわけ無いか、ちぇっ」
兵庫の話に耳を傾け、玖珂麗奈(ea0250)が残念そうに溜息をつく。
「毒なんかあったらシャレにならん。あんなデカイ奴を相手にしなくてはならないからな」
そして兵庫は人喰樹を睨みつけ、素早く刀を抜くのであった。
「‥‥では皆様、魔物調伏と参りましょうか」
人喰樹の本体を攻撃する仲間達を援護するため、シャクティ・シッダールタ(ea5989)が棍棒を握り締める。
「それじゃ、試してみるか」
人喰樹は近づくものを攻撃するため、紅鳳が兎などの小動物を放って出方を待つ。
野に放たれた兎達は何も知らずに辺りを走り、人喰樹の根で串刺しにされて息絶える。
「‥‥意外と攻撃範囲は広そうだな」
一瞬にして兎が仕留められたため、幻十郎が人喰樹の攻撃範囲を特定した。
「兎さんが‥‥可哀想‥‥」
悲しげな表情を浮かべながら、レティエル・レティーシャ(ea2452)が亡くなった兎達に同情する。
「‥‥仕方ないさ。こうでもしなきゃ、ああなっていたのは俺達だ」
落ち込むレティエルを慰め、兵庫がボソリと呟いた。
「この様子じゃ、かなり苦戦しそうな雰囲気ね。‥‥分かったわ。私が敵をひきつける!」
アイスブリザードを使って人喰樹の動きを鈍らせ、麗奈がウォーターボムを撃ち込んだ。
人喰樹は麗奈の攻撃から逃れるため兎の骸を放り投げ、次々と根っこが地面の中へと潜っていく。
「我が一撃、仏罰と知りなさい!」
人喰樹の動きが鈍ったところで金棒を振り下ろし、シャクティが地面から伸びた根を避ける。
「どんな敵にでもこの拳一つで向かっていきたいってのが、本音だけどね‥‥。今はそうも言ってられないか」
人喰樹の根が脇腹をかすってバランかを崩し、紅鳳が険しい表情を浮かべて斧を力任せに振り下ろす。
「多少の怪我は覚悟しないと駄目かもな」
仲間達と連携を取りながら、兵庫が人食樹の根を斬りつける。
なるべく単独行動にならないように気をつけているが、人食樹の攻撃は容赦なく兵庫の身体を傷つけていく。
「きゃあ!?」
人食樹の根によって身に纏っていた服が切り裂かれ、レティエルが悲鳴を上げて尻餅をついた。
「レティエルさんを人質にするつもりですね。そうはさせませんよ!」
怪我を覚悟で囮になり、幻十郎が手斧を振るう。
「もう大丈夫よ? ‥‥怪我はない?」
レティエルに肩を貸し、麗奈が人喰根の射程範囲から離れる。
「えっと‥‥その‥‥胸が‥‥」
恥かしそうに頬を染め、レティエルが胸を押さえて呟いた。
「‥‥胸が?」
心配した様子でレティエルを見つめ、麗奈が胸に怪我をしていないか確かめる。
「ドキドキしています」
麗奈の顔をジィッと見つめ、レティエルがニコリと微笑んだ。
「ご、ごめんなさい。は、早く人喰樹を倒しましょう」
レティエルの口から意外な言葉が出たため、麗奈が苦笑いを浮かべて再び人喰樹の退治にむかう。
「とにかく傷を癒しましょう。そんな身体じゃ、うまく戦えないでしょうし‥‥」
秘蔵の活命丹を使ってレティエル達の傷を癒し、シャクティが金棒を構えて人喰樹を威嚇する。
「せめて根っこだけでも始末しないとな」
次々と伸びてきた根を切断し、紅鳳が脇腹を押さえて横に飛ぶ。
「努力はするさ。なるべくな」
首に絡みついてきた根っこを払い、兵庫が汗を拭って日本刀を振り下ろす。
兵庫達のおかげでほとんどの根は駆除出来たが、本体は全くと言っていいほど無傷のため、これからが大変そうである。
「ここで諦めたら負けですものね」
露出した胸元をマントで隠し、レティエルがシューティングPAとダブルシューティングを組み合わせると人喰樹の本体を狙い撃つ。
それと同時に人喰樹が悲鳴にも似た音を上げ、怒り狂った様子でレティエルを襲う。
「かなり効果があったようですね。そろそろ本体を潰しましょうか」
手斧を握り締めてレティエルの前に立ち、幻十郎が次々と人喰樹の根を切り落とす。
「それじゃ、ちょっと試してみようかしら」
弓矢の先端に毒を塗りつけ、麗奈が人喰樹めがけて放つ。
人喰樹は苦しみのあまり地面に根を叩きつけ、麗奈を集中して狙っていく。
「皆様、わたくしの技量では余り癒す事が出来ませんの‥‥。くれぐれも、無理をなさらないで下さいまし」
仲間達が必要以上に無茶をしたため、シャクティが心配した様子で声をかける。
「それは分かっているんだけどね。そこまで余裕がないだけさ」
そして紅鳳は苦笑いを浮かべながら、人喰樹めがけて自らの拳を放つのだった。
「そろそろ俺達の出番だな」
仲間達にバーニングソードを付与し、利彦が人喰樹の本体を狙ってスマッシュを放つ。
人喰樹の身体から大量の体液が飛び散り、辺りには樹特有の独特なニオイが漂った。
「怪我をしたくなければ退きなっ」
不敵な笑みを浮かべながら仲間達にむかって声をかけ、天矢がソードボンバーを放って本体を傷つける。
「欝だ‥‥。相手の腹の中にいるみたいでよぉ‥‥」
憂鬱な表情を浮かべて小柄を握り、時雨桜華(ea2366)が人喰樹の根元を攻撃した。
ほとんどの根は仲間達によって破壊されているが、残った根が桜華を狙い次々と伸びていく。
「さぁ、行くぞ、玲。遅れを取るなよ。鬼道衆が2人も揃ってるんだ。無様な真似は出来ないぜ」
大斧を構えて人喰樹を睨みつけ、天矢が氷川玲(ea2988)にむかって声をかける。
「材木にも薪にもならしな、こんなもんは。さっさと土に返りやがれ!」
大斧を背中に担いで天矢と連携をとりながら、玲が霞刀を振り回し枝や根を相手にした。
「みんなで集中して根元を狙うか。さすがに化け物だって根元から折られたら死ぬだろ?」
同じ場所ばかり狙い、利彦が何度もスマッシュを放つ。
「だぁぁ、この化けもんがぁ!!」
得物を小柄から斬馬刀に持ち替え、桜華が人食樹めがけて必殺の一撃を叩き込む。
人喰樹は何度も同じ場所を攻撃され、今にも倒れそうになっている。
「もうそろそろか。‥‥気を抜くなよ」
天矢に危険が及ばないようにソードボンバーを放ち、玲が襲い掛かってくる枝を霞刀で斬り落とす。
「当たり前だっ! ここで手加減なんて出来るかよ!」
ダブルアタックとスマッシュEXとバーストアタックを組み合わせ、桜華が人喰樹の根元めがけて一撃を放つ。
人喰樹はグラグラと揺れるとドシンと倒れ、まわりの根っこも糸の切れた人形のようにしてパタパタと落ちていく。
「やっぱ、俺に斧は似合わねぇ‥‥」
馬に預けておいた刀を愛おし気に腰へおさめ、天矢がケラケラと笑い出す。
「‥‥終わったな。後はコイツを始末するだけだ」
そして玲は切り株を掘り起こし、風呂敷に包んで溜息をついた。
二度と人喰樹が現れないように願いつつ‥‥。
(代筆:ゆうきつかさ)