【京都移動】東海道化物騒動――山鬼

■ショートシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 65 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月17日〜03月25日

リプレイ公開日:2005年03月26日

●オープニング

●当世ジャパン冒険者模様
 ジ・アースの世界は、結構物騒である。
 比較的治安の取れたジャパンでも、その傾向は強い。人間が何かするよりも、ゴブリンやコボルド、オーガと言った鬼種による事件が、後を絶たないからだ。
 それに対し、君主達は一応の警戒網を敷いている。しかし機能しているとは言いがたく、今日もそれら鬼種を含めた、様々な化け物による事件が減ることは無い。
 そんな君主たちが歯噛みしている所で、出番になるのが『冒険者』である。雇われ者で無頼の輩。政道にまつろわぬ彼らは、金で様々な問題を解決する。汚れ仕事も進んで引き受け、様々な揉め事も解決してくれる。縦割り社会構造を持つ役人には出来ない、事態に即応した対処が可能な遊撃部隊ということだ。
 それを束ねるのが、『冒険者ギルド』という組織である。
 冒険者ギルドの役目は、仕事引き受けの窓口、仕事の斡旋、報酬の支払い、報告書の開示などが主に挙げられる。大きな仕事や疑わしい仕事は独自の諜報機関を用いて裏を取り、怪しい仕事は撥(は)ねるのだ。
 基本的に、咎を受けるような仕事は引き受けない。仇討ちの助勢を行うことはあるが、暗殺などの依頼は原則として受けないのが不文律である。報酬の支払いは確実なので、冒険者としても安心して仕事を受けられるというものだ。

「諸君! いま京都は大変な危機に陥っている! このことには家康公も心底、心を痛めておられるのだ‥‥いまこそ我らの志を無駄にはせず‥‥」
 一人の武人が、熱弁を振るっている。自分の演説に酔っているようにも見えるが、昨年来京都の治安は思わしくなく、そこで急遽人材の派遣が決まったのだ。
「ああ、あれかい? 何でも、京都へ向かう有意の者たちを集めているんだって」
 その武士を見ながら、冒険者ギルドの番頭、“緋牡丹お京”こと烏丸京子は言った。艶やかしい黒髪の美女で、キセルを片手に冒険者たちを見ている。
「あのお侍様の名は『清河八郎』って方。どうやら京都の危機に、神皇様をお助けに参ろうと、そういう話みたいね」
 後ろで続いている檄の声を背負いながら、京子は興味を持った一同に声をかけると資料を手にし、たっぷりもったいをつけて言った。
「先年、家康様が京都より戻られたのは、ただ江戸の町を妖狐に襲われた、という理由だけじゃないらしくてね。風の噂じゃ、京都でも妖怪どもが大きな顔をしてるらしいんのよ」
 そこで、清河の熱弁は一通り終わったようだった。改めて自分が人を集めていることを語り、一礼して去る武士に向けて、お京は意味深な流し目をくれている。
「話がずれたね。今は京都のほうも不穏で、新撰組や京都守護だけじゃ手が回らないってことらしいのよ。そこで、江戸から力の余っている浪人者や冒険者を集めて、京都の警備にあたらせたり、あっちでできたばかりのギルドの仕事を任せてみようという話になったのさ」
 そこまで告げると、お京はにこりと微笑んで、依頼の内容を指差した。それには京都まで東海道を移動する商人や大道芸人、その他職人といった人たちの、キャラバンの護衛の仕事が書かれていた。
「一旗揚げようという気があるのなら、いい機会だよ。この話に一枚噛んで、上洛してみてらどうだい?」

●今回の参加者

 ea2266 劉 紅鳳(34歳・♀・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea3115 リュミエール・ヴィラ(20歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea6354 小坂部 太吾(41歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6356 海上 飛沫(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea6357 郷地 馬子(21歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea6358 凪風 風小生(21歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 ea8526 橘 蒼司(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea8685 流道 凛(36歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea9867 エリアル・ホワイト(22歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb0575 佐竹 政実(35歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

【京都移動】東海道化物騒動――山鬼

●実際の話
 東海道は、かなり整備の進んだ、神聖暦一〇〇〇年においては世界でも有数の安全な街道である。
 だが、『絶対に』安全などということは無い。山賊に鬼族、幻獣に精霊など、さまざまな不確定要素を持っている。山賊などはまだ、金や荷物を置いてゆけばいいが、オーガなどにつかまると頭からバリバリ食べられてしまう。不遇な運命を呪う間もなくあの世行きだ。
 だから、旅をする人はできるだけ大人数のほうがいい。道行きで旅の連れを持つなとは言うが、最初から旅団を組んでいれば胡麻の蝿などにやられる心配も少ない。そして旅団ともなれば、金を出し合って冒険者を護衛に雇うことも出来るようになる。
 今回の冒険者諸賢は、京都に行くついででそのような仕事を請けた者たちだ。ついでだからサービス価格になっている。
 京都までは、馬で6日。彼らの担当は、先遣隊として街道を進み、障害を排除することである。

●山鬼の山
「ジャパンにはホントに綺麗な景色が多いねぇ。たまにはこうやって旅するのもいいやね」
 返り血を浴びた、結構凄惨な姿でそう言ったのは、ジャイアントの女武道家、劉紅鳳(ea2266)である。彼女の尻の下には、激闘の末にたたまれた山鬼が二匹、うつぶせにぶっ倒れている。その上に腰掛け、足を組んでひざに肘を乗せ、上がった右手の上にあごを乗せている。絵になる姿だ。
 別に彼女は、殺人快楽症とかそういうわけではない。そんな場所でも一息つきたくなるほど、敵が多かったのだ。
「山鬼は、もうほとんど倒したみたいだよ〜」
 明るい声でそう言ったのは、シフールのレ女ンジャー、リュミエール・ヴィラ(ea3115)だ。彼女は戦域において、偵察および索敵行動を担い、冒険者たちに『状況的優位』を与えたのだ。非力でも、役に立つ奴は一味違うものである。
 最初に、ジャパン語の通じない山鬼に向かって「“蒼き流星”リュミエール、参上!!」とか見栄を切り、山鬼に棍棒の餌食になりかけたのは秘密だが。
 “維新組”を標榜する志士たち、小坂部太吾(ea6354)、海上飛沫(ea6356)、郷地馬子(ea6357)、凪風風小生(ea6358)は、まあいつも通りの結束力を発揮して過不足無く戦った。曰く、「神皇様がおわす、京の一大事! 我ら維新組、神皇様の御許へ、馳せ参ずる也!」と太吾が檄を飛ばし京都への出向となったのだが、その中の馬子が状況を本当に理解しているかは微妙なところである。
 付け加えて書いておくが、彼らに台詞表記が少ないのは、いまさら特記すべき行動が無いからだ。
 百戦とは言わないが、練磨された彼らの地力は相当なものであり、本来ならば書記すべきところである。だが毎回似たような行動を取っていると、読者にも『飽き』が来る。奇矯な行動を取っていただきたいとは言わないが、小さくまとまっているのもどうかと思われることを記しておこう。
 白髪の地の志士、橘蒼司(ea8526)は、山鬼に命の尊さを説いていた。
「‥‥死にたくなくばそこを退け、自分から命を散らす事もあるまい」
 言葉は通じないが、気迫は通じたらしい。対峙していた山鬼は武器を捨て、逃げていった。無益な殺生を好まぬ彼としては、上出来な部類に入る成果であろう。
 ぽやぽやんな女浪人の流道凛(ea8685)も、かなり渋々と言った態で戦っていた。こちらはいささか地力が足りず、山鬼相手にてこずっている。結局は、凪風風小生の援護とエリアル・ホワイト(ea9867)の回復魔法を受けて、山鬼一匹をなんとか倒した。
 その、エリアル・ホワイトの心はすでに、古都京都の神社仏閣に向いている。寺社めぐりの好きな彼女は、念願がかなうと今回の道行きには大乗り気である。
 女侍の佐竹政実(eb0575)は、《オーラパワー》による援護と《オーラボディ》をかけた、身体を張った自己犠牲的精神によって仲間のダメージを減らしていた。もっとも本人はエリアルの《リカバー》によって癒されているので、それほど大きな問題にはならなかった。痛かったが。
 結局一向は、老若男女あわせて8匹の山鬼を駆除し、2匹を取り逃がした。個々の戦闘力はともかく、機能する冒険者のパーティーが、どれほどの戦闘能力を発揮するかを、知らしめる結果と成った。このスコアは、充分誇って良い数字である。
 一同は、他に排除すべき脅威が無いかどうかを調べるため、京都へと駒を進めた。

●京都見物
 山鬼との戦闘のあと、他の冒険者が攻略したしたらしい要害などを逐次確認しながら、一行は京都に入都した。
 ちなみに『京都』という呼び名は江戸言葉で、本来は『平安京』と呼ばれるべき都市である。だが冒険者ギルドにおける表記の規定により(というより冒険者ギルドの発展の歴史が江戸発展の歴史そのものなので)、報告書における言葉の表記は、江戸言葉で統一させていただく。
 ともあれ一行は、神聖暦八〇〇年ごろに興った呪術都市、京都の姿を目の当たりにすることとなった。
 京都手前の烏山から俯瞰(ふかん)した京都は、整然と格子状に区画整理された計画都市である。四神、つまり朱雀・玄武・白狐・青龍に相応する『守護』を受ける土地に作られており、鬼門の方向には都を守るために陰陽寮が構えられている。ここには『陰陽師』という術者がおり、京都の守護を行っている。
 京都は、梅の季節であった。一同は道々の茶屋で菓子に舌鼓を打ち、湯葉や丹生麺、他に京野菜と呼ばれる食材の料理を用いた料理で腹を満たし、そして京都の冒険者ギルドに報告へと向かった。
 隊商の到着は、それから10日近く経ってからだった。せっかちな風小生はずいぶん胆を炒ったようだが、とりあえず仕事は最後までこなさなくてはならない。
 もっとも非常時に備えるだけなので、問題なければ他の事を行っても良かった。だからその間に、彼らはギルドの依頼を受けたり観光をしたりと、暇をもてあますようなことは無かった。
 そして、全ての引継ぎを行い、依頼は完了したのである。
 とりあえず、新天地での彼らの活躍を、見守りたいと思う。

【おわり】