大蛇とピエール

■ショートシナリオ


担当:宮本圭

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月24日〜08月31日

リプレイ公開日:2004年09月02日

●オープニング

「お義父さんっやめてくださいよもうみっともないっ」
 息子の嫁にしがみつかれてもピエール老人はまったくめげなかった。枯れ木のような体で、自分の体重の三倍はあろうかという嫁を引きずって歩く。亀のようなペースではあるものの、じりじりと前進しているのは執念というべきか。
「ええい離さんかあっ、ちょっとそこまで散歩に行くだけだと言うとろうがあ!」
「散歩だと言い張るならその手に持った銛はなんなんですか銛はッ」
 隠しようのない手の中の得物のことを問い詰められ、ピエール翁は思わず返答に詰まった。
「お義父さんだっていつまでも若くないんですよ! 先月ぎっくり腰になったばっかりでしょう」
「馬鹿にするでないわっ、このような村の一大事におめおめと寝てなどおれんっ」
「大蛇のことはこの間の寄り合いで決まったじゃないですかっ。冒険者を雇って退治してもらうって! 素人がそんな銛一本で何をするって言うんですか!」
 ことの起こりは数週間前、村にほど近い小さな山に、見慣れない大きな蛇が住み着いたことに起因する。
 偶然目撃した猟師によれば、体長実に六メートルを超えているとか‥‥どう考えてもこんな山には似つかわしくない大蛇は、貴族のペットかそれとも見世物小屋の動物か、ともかくそういった類の生き物が逃げてきたものだろうか。あれほどの大きさであれば、人間の子供ぐらいはひとのみにできるだろう。
 大蛇は山の生き物を食い荒らし、まだ青い実や山に生えるキノコ類を食べ散らかし、ときには麓まで降りてきて村の畑を食い荒らすこともあるという。それを止めようとした村の若者が、噛まれて大怪我をしたという話もある。
「お義父さんはそりゃ若いころはいい猟師だったでしょうけど、狩ったのはせいぜい狐だの狼でしょう! せっかく村のお金で雇うんですから、ぜんぶ冒険者に任せておけばいいんです!」
「何のことだか、わしゃあただ散歩に」
「お義父さんっ」
 耳などほじりながらピエール老人がまだ言い訳をするのをさすがに腹に据えかねて、嫁がすっくと立ち上がる。
 するとピエール翁、腕の力がゆるんだのを好機とばかりに、万力のようだった嫁のくびきを魔法のように抜け出していた。
「え?」
 何が起こったのか嫁が気がつくより早く、舅の後姿が、老人とは思えぬスピードで山の方向へと走り去っていく。
「お、お義父さん――――!?」

 街で雇われた冒険者たちが村に到着したのは、この数時間後である。

●今回の参加者

 ea0294 ヴィグ・カノス(30歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3124 北道 京太郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3869 シェアト・レフロージュ(24歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3892 和紗 彼方(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4071 藍 星花(29歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 ea4746 ジャック・ファンダネリ(39歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea4955 森島 晴(32歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「うう、あたしのお金がー」
「パリよりも‥‥高かった‥‥な」
 背後でまだ嘆いている森島晴(ea4955)の言葉を受け、ウリエル・セグンド(ea1662)が前方に生い茂る枝を切り払いながら答えた。表情はあくまでクール、要するにちょっと冷淡。
 山での探索である以上、保存食は必須である。何人かは必要と思われる量を所持していなかったし、晴に至ってはまったく保存食を用意していなかった。あわてて村の雑貨屋に駆け込んだはいいものの、待っていたのは都会との物価の違い。結果、冒険者たちはパリのエチゴヤよりもかなり割高な値段で、当座の食料を入手することになったのだった。
「悠長に‥‥狩をして食料を確保してる時間は‥‥ない」
「そうだけどさあ。あー、足元見られた気がして悔しい!」
「準備を怠るからだ」
 晴の繰言をヴィグ・カノス(ea0294)が冷静な声音で切って捨て、後方の仲間達に向き直る。
「このあたりから二手に分かれたほうがいいだろう」
「大蛇もそうですけど、ピエールさんも早く見つけたいですからね」
 もちろん異論はなく、シェアト・レフロージュ(ea3869)がその意見に賛同する。これ以上金のことで愚痴っても仕方ないと思ってか、晴はやわらかい金髪をかきあげてたずねた。
「んで。問題のじじいはどっちに行ったか、わかりそう?」
「「あっちだ」」
 ヴィグが指差したのは右、ウリエルは左。初手からいきなり意見が分かれて、その場にぎこちない沈黙が下りてくる。さすがに気を使って声をひそめ、晴が隣にいたシェアトに耳打ちした。
「‥‥もしかして、どっちかがものすごい方向音痴なんじゃ?」
「ど、どうでしょう‥‥」
 先導役を務めるのは主にこの二人であることを今さらのように思い、探索が無事に終わることを願ってシェアトはただ震えた。

 二手といってもお互いにあまり離れすぎるのはまずいということで、ひとまずヴィグの意見を容れて進むことになった。互いの大まかな位置がわかる程度の距離を保ちながら、山や森に知識のある者が周囲を確認しながら獣道を進む。
「‥‥暑ーい」
 和紗彼方(ea3892)が額の汗を拭いながら、ふう、と息をつく。もちろん足は止めない。
 夏も終わりとはいえ、まだ暑い日も多い。鬱蒼と生い茂る木々のおかげで日陰には事欠かないが、それでも旅装束にローブを羽織った彼方などは、歩いていると自然と汗をかいてくる。
「ローブぐらいは脱いだら?」
 隣を歩く藍星花(ea4071)などは、邪魔な鎧を村に預けてきている。彼方にくらべれば実に薄着なのだが、それはそれでまた別の問題が起こってくる‥‥などと言っている間にも、星花は自分の首筋をぺちんと叩いた。
「ああ、また刺されたわ‥‥」
 つぶれた虫を掌から払い落としながら、苦い顔で星花は呟く。おそらく、今夜あたりから痒くなってくるだろう。
「この暑い中をひとりで歩いてるんじゃ、そのおじいちゃんも相当に元気だよね」
「元猟師だという話だからな。山には慣れているんだろうが」
 誰にともない彼方の独白に、黙々と枝や茂みを払いながら先を行くヴィグがそう応じた。
「老人が一人で大蛇に立ち向うというのは、勇敢と言うより無謀と言った方がいいかもな」
 心意気は買うが、と付け加えると、すぐ後ろのジャック・ファンダネリ(ea4746)が肩をすくめ、
「まー、いつまでも元気なのはいいことッスよ」
 わりと無難なまとめ方をした。
「それで、どうスか? 大蛇なり、御尊老なりの痕跡は」
「そうだな」
 本題を持ちかけられ、ヴィグは立ち止まって足元を指差した。
「蛇の痕跡もところどころに見つかっているが、これがいつのものなのかまでは俺にはわからない。だが、ところどころに人間のものらしき足跡が見受けられる」
 ジャックや星花も指差された地面を覗き込むが、どこにそんな足跡があるのかさっぱりである。
「常ならばおそらく、村の猟師あたりがこの山に出入りしているのだろう。だが大蛇が出て以来、山に好んで立ち入る物好きなどいなかったはずだ。だから」
「その足跡をたどれば、おじいちゃんが見つかるかもなんだね!」
 ぽんと手を叩いて彼方が納得し、ヴィグも首を縦に振って肯定の意を示した。

「どうよ、京太郎」
「頭上は大丈夫だ」
 晴の呼びかけにそう答えつつも、帯にたばさんだ刀に手をかけたまま、北道京太郎(ea3124)の目が油断なく周囲に配られている。獣道は狭いが、ぎりぎり愛刀がふるえる範囲だろう。もっとも、味方に当たらないよう配慮した上での話だが。
 すでに探索を開始してまる一日が経過している。
 野営も睡眠も最低限の時間だけとって、冒険者らはまた捜索を再開していた。すでに枝の間から見える太陽は高くなっているが、昼食のためにキャンプを広げるほど悠長にはしていられない。味気ない保存食を齧りながら、晴もシェアトもウリエルのあとをついて歩いている。
「あー暑。じじいだけでもさっさと見つけたいわー」
 晴が土埃と汗でべたつく顔を手であおぐと、身につけたアクセサリーがしゃらしゃらと音を立てる。黙々と先頭を行っていたウリエルがおもむろに振り返り、簡潔な言葉だけで回答を示した。
「たぶん‥‥近い」
「ウリエル。確かか?」
 京太郎の問いを、イスパニアの戦士は特に気負いもなく肯定した。寡黙な彼にしては珍しく、足りない言葉を付け加える。
「‥‥匂いがする」
「匂い?」
 どういうことかと聞き返そうとしたとき、目の前の茂みがかさりと動いた。そこから何かが飛び出す。咄嗟に京太郎の刀の鞘が払われ、晴が後方のシェアトを守って前に出る。
 どすっ!
 にぶい音をさせてウリエルの目の前に突き立ったのは、一本の短い銛だった。
「‥‥え?」
 茂みをかきわけ、痩せた老人が不機嫌そうな顔を覗かせる。片手には何か、獣の肉らしきものを持っている。気がつくと周囲に、肉の焦げるような匂いが漂っていた。これはもしかして。
「なんじゃあ、お前ら」
 手にした肉を歯で食いちぎって骨をぺっと吐き捨てつつ、油まみれの口で老人はそう言った。
「‥‥あ、の‥‥もしかして、ピエールさん、では」
「おう。いかにも儂はピエールじゃ、お嬢ちゃん」
 遠慮がちに問うたシェアトに、にかっと老人は笑ってみせた。かくしゃくとした歩みで、地面にななめに刺さった銛を抜く。
「もしやお前さん方か。大蛇退治の冒険者どもってのは」
「‥‥ああ」
「思ったよりも来るのが早かったのう。お前さんらよりも先に儂が大蛇をしとめておれば、村の金の倹約になったものを」
 むっつりと応じた京太郎の返答に、カカカと大口を開けた笑い声は明るい。
 ウリエルが無言でピエールの出てきた茂みをかき分けると、離れた場所に焚き火の跡が見えた。火はもう消えており、近くに散らばっているのは野兎かなにかの骨らしい。周囲に背の高い草、頭上に枝の密集している場所を選んでいるためか、今まで煙にすら気づかなかった。鼻のきくウリエルでなければ、察知すら難しかったろう。
 こうして気づかれにくい場所で、今まで食事と休息をとっていたらしい。
 かつては相当な腕の猟師であったことは明白だった。道理でなかなか発見できなかったわけである。
「なんか」
「思ったよりも随分、と、元気そうで‥‥」
 なんとなく森の中で今にも死にそうな状況を想像していただけに、晴とシェアトは戸惑って囁きあった。

 ぴい、と高い音が聞こえて彼方は顔を上げる。シェアトの発見の合図だった。
「おじいちゃんかな? それとも」
「行ってみればわかるわよ」
 背の高い草むらをはさんで、向こうの班の中ではいちばんの長身である京太郎の頭が見え隠れしている。戦っている様子は見られないから、おそらく問題の老人が見つかったのだろうと星花はすでに目星をつけていた。
「まあ、食われてなくてよかったッスよ」
 ひとまず御尊老を迎えに行こう、とジャック。
 はあいと返事は元気よく、ついでに額に垂れてきた汗をまた拭いかけ、彼方はふと、視界の隅でなにかが動いたのを認める。
「‥‥あれ?」
 それまで沈黙を守っていたヴィグが、腰の得物に手を伸ばす。
 老人は大蛇を追ってここまで来たはずだ。かつては猟師だったという話だから、相手の跡を追跡してここまでやってきたのだろう。ピエール翁の腕がよほどのぼんくらでなければ、例の獲物もまた、翁の近くにいるはずで。
「もしかして」
 彼方はおそるおそる枝の上を見上げる。
 ぎしぎしと枝を揺らしながら、木の幹に巻きつきちろちろと舌を出す巨大な蛇と目が合った。
「うひゃあああっ!?」

 くわっと牙をむいて噛み付こうとするのを、すんでのところで星花が避けた。地面を転がるようにして距離をとり、自分の剣を鞘から抜き放つ。その間にもヴィグの手が閃いて、蛇の頭にダーツが垂直に突き立ったが、ほとんど効いている様子はない。
「ちっ」
 ヴィグの舌打ち。がさがさと草むらを掻き分ける音がして現れたのはまずウリエルと京太郎。すでに二人とも構えていた。
「こら若いの、そりゃわしの獲物じゃあっ」
「ぴ、ピエールさんっちょっとっ」
「じーさん、気持ちはわかるけどっ」
 その後ろから晴やシェアトを引きずるようにして現れたのがピエール翁。そちらを一瞥し、京太郎は刀を構え言い放った。
「下がれ。ここで死なれたら迷惑だ」
「な」
 にべもない京太郎の科白が、ピエール翁の顔を朱に染める。
「なんじゃとうっ」
「京太郎っ、じじいを刺激しないでよーっ」
 晴の抗議にはかまわず京太郎は刀をふるった。躍った刃が緑の鱗の上を浅くすべり、草の上に赤い色が数滴散る。
 後方に下がっていた彼方がすでに呪文を完成させている。放たれたアイスチャクラは丸太のような胴体に深い傷を残し、そのまま霧散する。蛇はしゅうっとふいごのような声を上げて身悶え、狙いを変えた。
「うおっ、こっち来たっ」
 覚悟はしていたがやはり目の前にしてみると迫力がちがう。彼方を守るように立ちはだかったジャックは、すでに剣に自らのオーラを宿していた。
 足元の下草をがさがさと言わせながら這いよってくるスピードは存外すばやい。フェイントを織り交ぜてふるった剣が勢いよく胴の半ば近くまで食い込んだ。しかしそれにも構わず、太くしなやかな胴体が足元から這い登ってくる。
「うわ‥‥」
 密着されると長剣はほぼ役に立たない。大蛇はするりとジャックの腰から胸までに巻きつき締め上げる。肺が圧迫されて苦しげな呼気が騎士の口元から洩れた。
「ジャックさん!」
「ええいふがいない、離さんかあっ」
「ああ、もうッ」
 銛を振り回し意気軒昂のピエールについに我慢の限界が来て、晴がおもむろに立ち上がる。
「御免っ」
「へぶっ」
 みぞおち目掛けおもいきり拳を叩き込むと、老人の枯れ木のような体は思い切り吹っ飛んだ。
「な、ゲホ、何すんじゃ小娘ェっ」
 しかも気絶していない。
「あら?」
「晴さん、や、やりすぎ‥‥!」
 当て身、すなわち『スタンアタック』の心得のない晴にとって、手加減はすこしばかり難しかったようだ。

「んぎぎぎぎ」
 奥歯をかみ締めて全身に力をこめる。呼吸もままならない騎士の顔が真っ赤に染まる。迂闊に攻撃すれば彼に当たる。冒険者たちが躊躇している間に、獣のような咆哮とともにジャックが締め付けをふりほどいた。その勢いのまま剣を振るおうとして、ぐらりとその体が揺らぎ地面に尻餅をつく。
「じゃ、ジャックさんっ」
「し、死ぬかと思った‥‥ッス」
 ただの酸欠なのか、空気を求めて犬のように舌を出してあえぐジャックを放ってウリエルが走る。
 ヴィグの投擲した槍が蛇へと突き刺さった。痛みに大蛇が身をよじる、スピアは食い込んだまま離れない。ヴィグは回収のために槍にくくりつけたロープを引いたが、よほど深く刺さっているのかまったく抜ける様子はなかった。逆にものすごい力で引かれ転倒し引きずられそうになる。
 ウリエルの短刀が鮮やかに一閃しロープを切断した。向かってきた蛇の牙を京太郎が盾で避ける。
「ピエールさん」
 後ろで戦いの様子を見守っていたシェアトが、隣のピエールに声をかける。
「なんじゃい、エルフの嬢ちゃん」
「あの‥‥猟師の目から見た攻撃のタイミングとか、弱っていそうなところを教えてほしいんです」
「そんなもん、わしに任せりゃあ一発で」
「前に出るだけが勇敢さではないと、思うんですよ?」
 言葉を継いだシェアトの顔を、ピエールは目をすがめて見る。
「‥‥大概の獣っちゅうのは牙以外に攻撃手段がないもんじゃ。大口開けたときにでも、ざくっと一発見舞ってやれ」

 眩惑するようにすばやいフットワークで、ウリエルは右へ左へと動き回りながら蛇を着々と傷つけていく。続いて京太郎が刀をふるえば、うすく鋭い刃の作り出す傷口から赤黒い血がほとばしる。のたうちながらも蛇の動きは少しずつ鈍くなってきていた。
 金色の蛇の瞳めがけたウリエルの攻撃はむなしく宙をかいた。やはり絶えず動く相手の目を狙うのは難しい。するりと蛇の胴体が足元を這ったのに気づき急いで飛び退る。ジャックのように巻きつかれてはたまらない。
 くわっと大きく開いた口で二股に分かれた舌が赤く光っていた・
「京太郎さん! 口を‥‥!」
 シェアトの叫びの意図を京太郎は瞬時に悟っている。
 剣光一閃。大きく開いた口を日本刀の刀身は貫いて、蛇の両目の間にその切っ先が覗いていた。
 ゆっくりと京太郎がそれを引き抜いたのと、もたげられた大蛇の頭が倒れるのはほぼ同時のことだった。

「‥‥本当に食べるの? コレ」
 彼方が思い切り顔をしかめるが、ピエールはちっともこたえた様子はない。
「狩ったもんはちゃんと食うのが猟師の礼儀じゃ」
「私たち、猟師じゃなくて冒険者なんだけど‥‥」
 死体を持って帰ると言ったのは誰だったか。
 確かに依頼達成の証拠は必要だが、なにしろ六メートルの大蛇である。ジャックの剣で簡単にぶつ切りにしたものの、かなりの大荷物だった。持っているのはおもに力のある面々だが、肉の用途を聞いてしまった彼方などはげんなりしている。
「蛇ねえ‥‥ジャパンではふつう食べないんだけど。星花さんは?」
「華国人が食べないのは椅子の足だけって昔から言われてるのよ」
 話を振られた星花の答えに嘆息した彼方に向けて、先頭のウリエルがぼそぼそという。
「悪いのは‥‥元の持ち主の管理不行き届きだし‥‥奪ってしまった命は‥‥無駄にしたら駄目だと思うし」
「‥‥うーん。まあ、そう、かも」
「‥‥それに意外と蛇は美味い」
「‥‥‥‥っ」
 ぼそりと付け加えられた言葉に特に女性陣がひるんだのだが、ウリエルはまったく気にせず荷物をかついで先を急いでいた。