海へ還れこの想い

■ショートシナリオ


担当:宮崎螢

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月29日〜12月04日

リプレイ公開日:2004年12月06日

●オープニング

 みすぼらしい旅装に身を包んだ少年は、周囲の様子を神経質に窺いながら『冒険者ギルド』の扉を開いた。
「いらっしゃい。ギルドに何の御用ですか?」
 定番の挨拶を返す係員に、少年は礼儀正しく一礼する。
「あの、護衛をお願いしたいんですが」
「わかりました。まずは御話を詳しくお聞かせ願えます?」
「はい、実は‥‥」

 少年の実家は、船乗りの祖父が一代で成した商家だった。
 しかしその息子である少年の父には残念ながら祖父ほどの才覚はなく、商家は祖父が部下として雇っていた男にほぼ乗っ取られる形で奪われ、父の死後、一家には僅かな財産だけが遺された。
 ところがその『僅かな財産』に含まれる『あるもの』を寄越せと、その部下だった男が迫っているという。その『あるもの』とは――
「これを見て下さい」
 人目を憚るように、粗末な麻袋から少年が取り出したもの。
 つややかなビロードで幾重にも巻かれたその小さな包みの奥から現れたのは。大人の親指の爪ほどはあろうかという大きさの、虹色に輝く真珠であった。さすがのギルドの係員も、思わず息を呑む。
「これ、『人魚の涙』と、祖父は呼んでいました。何でも船乗りだった若い頃、祖父は海で一人の人魚姫と出会って‥‥その、恋に落ちたんだそうです」
 それはとても真剣な恋だった。だけど所詮は異種族、加えて陸の者と海の者では成就など到底叶うものではない。二人はやむなく別れの道を選び、その際に、恋人だった人魚姫が少年の祖父に託したもの。それが、この見事な真珠であるという。
 祖父はこの真珠をとてもとても大切にしていた。いかに商売が傾こうとも決して手放しはしなかったほどに。元部下の男に商家も財産も巻き上げられた際も、父が何とか守り抜いたのだが。今になってこの存在を知った部下は、何とかそれを手に入れようと、少年の一家を激しく脅しつけてきたという。これほどの真珠である。その価値は計り知れない。
「祖父の話してくれたことが本当かどうかはわかりません。でも、この真珠は祖父にとって本当に大切なものだったんです。だから、あんなヤツの欲望のエサになんて、断じてしたくない」
 だけど、自分たちが持っていたのではいずれそれも叶わなくなる。それならば。
「だから、これは海へ還します。元の持ち主である人魚姫のいる海に、祖父の想いと一緒に。でも‥‥」
 それまで、あの男がどんな強引な手を使ってくるかわからない。実際、ここに至るまでの旅路で、何度も危ない目に遭った。それがあの男の手によるものかまではわからないが、もう自分一人では守りきれないかもしれない。
 そのため、海へこの真珠を還すまでの護衛を冒険者に頼みたい。少年の依頼はそういうものだった。
「依頼料はそちらの希望に添えるよう、何とかします。よろしくお願いします」

●今回の参加者

 ea3266 氷室 明(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea7724 ウィンディー・ベス(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea7906 ボルト・レイヴン(54歳・♂・クレリック・人間・フランク王国)
 ea8252 ドロシー・ジュティーア(26歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8417 石動 悠一郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8533 シヴァ・アル・アジット(34歳・♂・ナイト・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea8566 フローラ・トルク(26歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea8776 ハリー・グランブル(35歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●嵐の前
 今回の依頼の目的は、依頼人の少年を無事港町まで送り届け、その望みの通りに『真珠』を海へと還すこと。
 まずはギルドで依頼を受けた冒険者同士で、顔合わせと簡単な打ち合わせが行なわれたが。その席で早々に問題が持ち上がった。参加メンバーの一人、シヴァ・アル・アジット(ea8533)が何気なく口にした一言が、同じくメンバーの一人、ハリー・グランブル(ea8776)の心証を大きく害したのである。一時その場は息苦しい緊張に支配され、見かねたウィンディー・ベス(ea7724)が仲裁に入ったが、ハリーはまだ顔をしかめたままだ。
「ケッ‥‥まぁ、いいさ。だがどちらにしろ、二手に分かれてつるんで行動、なんてまどろっこしい真似は気に食わねぇ。悪いが俺は単独で動くぜ。どうせ船を確保するのも直接護衛するのも、俺じゃ人受け最悪だからな。問題児はいない方がいいだろ?」
 この態度には、仲裁に入ったウェンディーもさすがに顔をしかめた。冒険者としての初依頼・初顔合わせでこんな事態に対面するとは思わなかったフローラ・トルク(ea8566)は、どうすれば良いのかわからずオロオロするばかり。結局、石動 悠一郎(ea8417)も仲裁に入り、かつ、シヴァが自身の失言を認めてハリーに謝罪したため、この場は何とか納まった。
 が、結果として。やはりハリーは単独で行動する、ということになった。これは仲間の心証云々ではなく、彼の『血筋』によるところが大きい。ハリーは『ハーフエルフ』‥‥人間とエルフの混血である。地域にもよるがここではそう数も多くなく、一部では『忌み子』として疎まれている存在だからだ。そんな自分がメンバーと行動を共にしていては、何かと迷惑になる。ハリーの単独行動の申し出は、そういう意図もあってのことだったらしい。
「それならそうと素直に言ってくれればいいものを‥‥まったく」
「まあまあ。彼にも彼の事情と言うものがあるのでしょう。‥‥さて、と。では、策を進めましょう。基本的には、ドロシーさんの提案で動く、ということでよろしいのでしょうか?」
 ハリーが場を去った後、不満げに言うウィンディーを宥めながら、ボルト・レイヴン(ea7906)。一同がそれに頷きで答える。
 ドロシー・ジュティーア(ea8252)の提案は、メンバーを『依頼人の護衛』と『先行して船を手配する』ものの二手に分けて行動する、というものだ。話を聞く限りでは、少年の動きは相手方に逐一把握されていると思って間違いない。ならば監視の目の届かないうちに船の手配を行なった方がいい。下手をすれば、『船を貸してくれた』人物が実は相手の手先であった、という事態が起こることも考えられるからだ。
 ひとまず馬など『足』を確保できている人間が、依頼人に先行し港へ入る。そのメンバーは提案者であるドロシー、悠一郎、そして氷室 明(ea3266)の3名が選ばれた。残るウィンディー、ボルト、シヴァ、そしてフローラは、依頼人の少年を護衛しつつ、遅れて港町へ入る。
 その後対面した依頼人の少年は一行の案を受け入れ、
「よろしくお願いします」
 と素直に頭を下げた。悠一郎が名を問うと。
「クリストフといいます。クリス、と呼んでくださって結構ですから」
 生真面目に答える。真っ直ぐな眼差しには、こうと決めたらそれを貫く意志の強さを感じさせる。『祖父の想いを海へ』、その想いだけで、何とかここまでやってきたのだろう。そう思うと、彼に目的をなんとしてでも果たしてやろう‥‥そう、思えてくる。
「その問題の真珠‥‥もし良ければ見せてもらえませんか?」
 無邪気に問うフローラ。ウェンディーが軽くたしなめるが、クリスは気にした風もなく、懐から大事に包まれたそれを取り出した。虹色の艶めいた白玉の美しさに、一同の口から思わずため息が出る。
「‥‥人魚姫‥‥その恋の結末はいつも哀しい結末‥‥彼女の想い‥‥必ず海に還してあげよう‥‥」
 ウィンディーが呟く。それがまた、一行の偽らざる想いであろう。

●巡る想い
 翌日から、一行は二手に分かれ、港を目指す。クリスによると、船を借りる当てがある、とのことで。港に着いたら、その人物に頼んでみてくれ、との進言があった。
「その人物は、信頼できる方なのですか?」
 借主がクリスの追っ手と通じているケースを危惧し、明が問う。それに、即座に頷くクリス。
「大丈夫‥‥だと思います。祖父の船乗り時代の弟分だった人で、何より祖父自身が誰より信じてた人の一人ですから」
「ブルト・レグンさん、ですね。クリス君のお祖父様の弟分、ということは、かなりのお歳ではないのでしょうか?」
 先行して港に入り、問題のその人物を探しながら呟くドロシー。果たして。クリスのいっていたその人物はすぐに見つかった。確かに年齢は既に『老齢』といっても差し支えないだろうその男はいまだに現役の船乗りで、港ではちょとした有名人であった。
 3人がクリスのことを伝えるとその老人は破顔し、『船を出して欲しい』との申し出を快諾してくれた。
「坊ちゃんのたっての願いなら是非もねえ。協力させてもらうぜ」
「ありがとうございます。‥‥ところで、気を悪くしないでいただきたいのですが。クリス君達の到着と出向まで、船の検分と警備をさせてもらえますか?」
 明の申し出にブルト老人はひくり、と片眉を跳ね上げる。まずったかな? と内心で悠一郎は思ったが。しかし気分を害した、というわけではないらしい。ふん、とため息をつくと頷いた。
「確かにいい気はしねぇが、仕方がねぇや。といっても、船はワシの命だ。好き勝手されちゃかなわねえから、検分にはつき合わさしてもらうぜ」
「結構です。失礼なことを申し上げた」
「ま、あんたらの言い分もわかるぜ。こう言っちゃナンだが、この辺りも最近ガラの悪いのがうろつく様になってなぁ。しかも妙にハバを利かせやがって、気分が悪いことこのうえねえんだ。兄貴‥‥坊ちゃんの祖父上が存命のときはそんなこたぁなかったんだが‥‥あの恩知らずめ」
 老人の声を潜めた忌々しげな呟きに、3人は顔を見合わせる。
 どうやら、警戒するに越したことはないようだ。

 依頼人のクリスを伴った後発の護衛メンバー達は、先行した3名に遅れること2日ほどで、港に到着した。
 道中で襲われる可能性を懸念し、野営の際は見張りや警戒に気を配ってきたが。運が良かったのか、それともクレリックのボルトの使った『グットラック』の賜物か、予想された襲撃はなかった。
「はぁ〜。何とか無事に到着できましたね♪ 何よりです!」
 ひとまずは目的の一つを無事果たせたことに、フローラが相好を崩す。それをたしなめるように、ウェンディーから冷静な一言が飛ぶ。
「安心するのはまだ早い‥‥。真珠を『海に還す』までが私たちの仕事だ。あれだけの品、そう簡単に諦めるはずもない‥‥。最悪の場合‥‥海に出てからが勝負、ということになるかもしれん。気を抜くな」
「一刻も早く、先行のドロシーさん達と合流した方がいいでしょうね。あとハリーさんは、無事に港に入れたでしょうか」
「それは大丈夫、だと思います」
 ボルトの疑問に、確信した口調で答えるフローラ。別に、姿を見せたり声を聞いたりしたわけではないが。一昨日、野営の警戒用に鳴子を作ろうとしてたときに気がついた、荷物の中に増えていたロープ。多分、あれを置いていったのは‥‥。
「やはり、悪いヤツ、というわけではないようだの」
 フローラの報告に、フム、とにこやかに頷いて、シヴァ。
 ここまでの道程には、特に問題はなかった。
 それだけに、真珠を還すために出る海こそが正念場になるだろう。口にこそ出さないが、誰もがそう思っていた。
 夜が明ければ、船は港の沖合いへと出発する。
 クリスの話によれば、彼の祖父が想い人の人魚姫に出会った海、とは、この港の沖合いに他ならないとのこと。『真珠』を還すのにこれほどふさわしい場所もないだろう。
 当番で、警戒のため船の周囲を見回っていたフローラは、突如現れた影に飛び上がるほど驚いた。すわ敵襲か、と身構えたものの。闇から姿を見せたのは、出立前から単独行動を取っていたハーフエルフ、ハリーだった。仲間を呼ぼうか、と言うフローラを制し、ハリーは素早く、伝えるべきことだけを伝える。
「気をつけろ‥‥連中に、こちらの動きはすべてバレてるぞ」
「‥‥!」
「奴らは、おまえ達が港の外に出たところを一斉にかかるつもりでいる。海の上なら、余計な援軍も来ないしな。相手は、最近この辺りで力をつけてきた荒くれの船乗り連中だ。もう海賊といってもいいかもしれん。気を抜くんじゃねぇぞ」
「‥‥わかりました」
 緊張に顔をこわばらせながら、フローラが頷く。それを確認して、ハリーは再び、闇の向こうに姿を消した。

●海へ還れ
 翌日は、雲ひとつない好天だった。風の具合も上々。船出には最良の日である。
 ブルト老人の号令のもと帆が張られ、船は凪いだ海面を沖合いに向かって滑り出してゆく。
(‥‥ハリーの情報では、襲撃は港の外、とのことでしたが‥‥)
 昨晩、フローラがもたらした報告を胸のうちで反芻しつつ、氷室明は注意深く周囲を見回す。ひとまず目的の海域に着くまで、舳先、船尾、そして左舷と右舷の四方向に各々が散り、周囲の警戒に当たっている。依頼人のクリスは問題の『真珠』を抱いて船の中央に。ドロシーとフローラの2人が、側で護衛に着いている。ブルト老人の船はそんなに大きくはないが、こうしておけば少なくとも甲板際にいるよりは安全だろう。
(‥‥連中も海のプロです。こちらへの援軍は避けたいでしょうから、襲撃をかけるとすれば港からそれなりに離れてから、でしょうね)
 船は順調に進み、陸の影はもはや水平線ギリギリの場所に見えるか、見えないか。そんな辺りまで来た頃。左舷にいたシヴァが、突如警戒の声をあげた。
「来おったぞ! 気をつけるのじゃ!!」
「ブルト老、頼みます!」
「おぉよ、まかせてくんな!」
 相手の戦力を知らぬまま戦うのは得策ではない。そう思って、襲撃があったらまず逃走をはかる、そういうことにしておいた。運良く逃げられれば、それでいいと思ってのことだったが‥‥。
「‥‥やはりムリ、か。敵もそうあまくはないな」
 チィ、と舌打ちし、ウェンディーが剣を構える。ボルト老も努力はしているのだろうが、相手は『海賊』もどき。船足の速さは比較にならない。相手の船影が、見る見るうちに大きくなってゆく。
「私の後ろに隠れてて下さい」
 ドロシーが言い、盾をかざして少年の前に出る。フローラが慌ててそれに倣った。その直後、予想通り相手の船から勢いよく矢が射掛けられてくる。ただし『射殺』が目的ではないのは明らかで、乗員に当たることはない。
「ハッハァ、シロートに海戦はムリだぜ! 素直に例のブツを渡しな!! そうすりゃ命までは取らないでいてやるぜ!」
 下卑た声が、予想通りの脅し文句を叩きつけて来る。向こうは矢で威嚇しつつこちらに船体をぶつけて接舷し、力づくで真珠を奪い取ろうという算段のようだ。迫る船体を何度かはかわしたものの、いかんせん機動力に差がありすぎる。やがて、重い衝撃と共に、船体がぶつかった。
「行け、野郎ども!! ブツを奪い取れ!!」
 親分の号令に、ショートソードを抜いた手下達が、こちらの船に乗り込もうとやってくる。その様子を、明が不敵な笑みで受け止めた。
「‥‥確かに不勉強なのは否めませんが、これでも水の理を修める身なれば‥‥水よ、我が求めに応じてその有り様を変えよ!」
 その声に応えて船の周囲の水面から水塊が飛び出し、船に飛び移ろうとする男達の目前で弾ける。いきなり視界を奪われ、たたらを踏む男達。それにタイミングを合わせ、悠一郎の刀が風の唸りをあげる。
「我、武の理を持て斬を飛ばす‥‥飛斬!」
 目に見えぬ風の刃が手前の敵をなぎ倒す。できればこれで、敵が乗り移ってくる前に撃退したいところだが、そう間隔をあけず連発できるものでもない。倒れた味方を踏み越えて、幾人かがこちらの船に乗り込んでくる。
「おおおおぉ!!」
 乗り込んできた敵に、迫力ある雄叫びをあげシヴァが吶喊をかける。その背後から、ボルトが援護として『ホーリー』を発動させ、敵に見舞った。
 更にその背後では、ウェンディーとドロシーが剣を構え、依頼人への最後の砦となることを辞さぬ構えでいる。
「愚か者どもっ!! 汝等は恥を知らぬか! 知らぬ者は斬って捨てる!」
 ドロシーが普段の様子からは想像もつかないほど険しい表情で、敵を睨みつける。最初は、『相手は海戦の素人』と舐めてかかっていたらしい海賊達も、奮戦する彼らに徐々に本気になっていった。情勢は今のところ冒険者有利。しかし決定打がない。ずるずると長引けば、やはり一日の長で連中に軍配が上がることになる。
「フローラさん、手伝って!」
「‥‥わかりました!」
 クリスがフローラに言い、『真珠』を入れた麻袋を手に舳先へと走り出す。彼の意図を悟り、彼を守る形で盾をかざして後に続くフローラ。
「‥‥! 拙い! 野郎ども、あのガキの足を止めろ!!」
「させませんよ!」
 同じく意図を見て取った明が水を操り矢を番えた敵の視界を奪い、悠一郎の『飛斬』が薙ぎ倒す。追いすがろうとする敵は、シヴァ、ボルト、そしてウェンディーとドロシーが食い止めた。少年の手から麻袋が舞い、真珠を包んでいた布が落ちる。
「受け取って、人魚姫!」
 そして振り上げられた手から、真珠が空へと放たれる。
 虹色の煌きは一瞬青い空に弾け、そして青い水面に吸い込まれていった‥‥

 獲物を逃した、と知った敵の決断は早く。こちらの船に飛び移って捕らえられた仲間さえ回収せず、さっさと撤退するといった潔さであった。飛び移って奮戦した手下達こそ良い面の皮で。シヴァによって武装をはがれて縛り上げられ、港に着いたら然るべき所へ突き出される運命となった。無論、剥いだ武装は換金し、これからの冒険者達の道行きの良い足しとなる。
 ‥‥また死に損なったか。でも今日は、上手い酒が飲めそうだ。
 風に髪を靡かせ、ウェンディーが目を細める。その視界に、水を切って飛び上がる影が映る。
「おや‥‥。おい、皆見てみろ」
 声に応えて向けた視線の先では。イルカ達が楽しげに水面で舞っている。
 戻ってきた想いを、受け止めるかのように。