ある愛の物語
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■ショートシナリオ
担当:瑞保れん
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 97 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月24日
リプレイ公開日:2004年06月23日
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●オープニング
霧の都キャメロット−−
人々賑わう南東部の下町で、今ある芝居小屋の演劇が話題となっていた。
ある対立する名家。両家のそれぞれの息子そして娘が出会い、そして恋に落ち‥‥。しかし、それは許されぬ恋。しかし、2人の堅い絆は切り離すことはできず、最後には2人共に命を絶つ。
あまりに激しくそして儚い2人の恋物語に、人々は感動し、そして涙‥‥いや号泣する者も続出であった。
そんな中、話題の芝居を眼にして涙する者が1人‥‥。しかし、彼女の涙は他の誰よりも深かった。彼女はポツリと呟く。
「まるで‥‥私たちのよう‥‥」
そして数日後。
酒場ではある話でもちきりであった。
対立する2つ商家のそれぞれの1人息子と1人娘が行方不明になったらしい。そこで、各家が冒険者を募り、捜索隊をつくり2人を探しにでたそうだ。
すでに冒険者達は集められた後で、ここに集うものは出遅れた者‥‥といった所である。
「おや、浮かない顔してるね。気になったかい? この話」
酒場の親父は小さくニッと笑う。
「だったらいい話を教えてやろう。ただし‥‥お前がこの2人の運命を握ることになるかもしれないぞ」
酒場の親父が行けといった場所−−それは、キャメロン郊外の小さな教会であった。
「よくおいでくださいました‥‥冒険者の皆様」
出迎えた神父が深々と頭をさげる。そして挨拶そこそこに、神父はその話を始めるのであった。
2人は一目逢った瞬間に恋に落ちた。
青年の名前はロイ・ティルソン。娘の名前はジェラルディン・ハーネス。
お互いの身分、立場など全く知らずに、2人は惹かれあい、そして手を繋ぎ‥‥。
しかし、2人の家は実は商売敵‥‥許されぬ恋であったのだ。事実を知り嘆き悲しんだ。
‥‥が、2人の愛の絆は強かった。 周囲に隠れて、2人は愛を育んでいったのだ。
が‥‥、運命は残酷なものだ。年頃の娘に訪れた縁談の話。家にとりそれは良縁であり娘の意思など顧みることもなく、その話は進んでいく。なすすべもなく、2人は互いの身の上を呪い、そして嘆いていた。
そんな時‥‥ジェラルディンが友人に連れられて、今話題となっているあの芝居を見に行き‥‥そして衝撃をうけたのだ。
「まるで‥‥私たちのよう‥‥」
2人は決意した。
家をでて、2人で逃げよう。世界の果てでも、2人でいよう。
もし‥‥2人共にいることが叶わぬならば‥‥‥‥この命共に果てよう‥‥と。
神父はこの2人が交際してる事を知っていた数少ない一人であったのだ。
「もし、私が2人が駆け落ちする事を先に知っておればこんな無茶は‥‥」
そう言って神父は悲痛な表情を浮かべる。
神父はこの両家の争いの矛を収めさせ、この2人が結ばれるよう思案していたのだとよう。しかし事は巧くいかず、そして2人は出て行ってしまった‥‥。
ジェラルディンは神父に手紙を残し、それを出て行った朝、乳母がこっそりと届けてくれて、事の詳細を知ったという事だ。手紙には別れの言葉と今まで力になってくれた感謝の言葉が書き綴られていた‥‥。
手紙の最後の言葉は、『私たちは2人永遠に‥‥』
「どうか‥‥あの2人を探し出してください。家の者たちは、2人を連れ戻して互いの仲を引き裂こうとしております。この手紙によると2人は東の森を抜けて、遠くの街を目指しているようでございます。幸いにもこの手紙は親たちの目に触れることなく、私の元に届いたようです。ですのでこの話は捜索隊は知りません。しかし、見つかるのも時間の問題です。そしてあの森はあまり人通りがなく、毒蛇や獣達がうろついているという話もあります。どうか、あの2人を無事に‥‥‥‥」
神父は祈るように天を仰ぐであった。
●リプレイ本文
●祈る想い
その後、冒険者ギルドに正式な依頼として出される事となる。依頼を受けた冒険者たちは、急を要する依頼というこで急いで事前準備をした。
「ただ追っても彼らを刺激するだけでしょうから、神父様に身分を証明していただけるものを貸していただきましょう」
ルーシェ・アトレリア(ea0749)は再び教会へ行くと、神父に何か貸しくれないかと伺ってみた。「あの2人を助けるなら」と、神父は快く応じ、ロザリオを冒険者たちに貸してくれた。はめ込まれた石などが少し変わっていて、多分神父の特別なロザリオだろう。それとスピア・アルカード(ea2096)は神父に2人あての手紙を書いてもらうように頼んだ。今の気持ち、今後のこと、2人に無茶をさせないように‥‥。同様の手紙をレイヴァント・シロウ(ea2207)は乳母に書かせて持参するようにした。
他の探索隊が2人を見つける事ができず、かなり両家とも焦っているという話を耳にする。東の森に向かってる捜索隊もいるという噂も聞く。
「急がなくては‥‥」
レイ・エアリス(ea1729)の言葉に誰もが頷いた。
●漆黒の森
キャメロット中心街を離れ東へ、東へ。
次第に道は険しくなり、周囲の木々は鬱蒼と茂ってくる。次第に人気のない深い森へとなっていった。
今はかすかな道が森の中に続いている。あまり山歩きなどは慣れていない2人だ。無理な事はできないだろう。しかし、もし追手が来て‥‥追手でなくても関係ない人を追手と勘違いして、道をそれて森の奥深くに入ってしまう事も考えられる。
フォリー・マクライアン(ea1509)は山での土地感を生かして、足跡、人の高さくらいの小枝の折れ具合、もしくは野営の後がないかなど周囲を観察していく。
クレア・クリストファ(ea0941)とレイヴァント・シロウ(ea2207)、クロノ・ストール(ea2634)は馬で先発し2人の後を追う。道中で森で樵と出会い、2人のことを尋ねると、若いあまり見ない顔の2人の男女を見て声をかけようとしたが、こちらを見ると慌てて逃げるように道を進んでいったという。多分ロイとジェラルディンだろう。しかも、樵によると2人の進んだ道‥‥というのは比較的安全な街道‥‥ではなく、もっと深い山奥へと入っていく険しい森のほうだったのだ。馬で進むのも難しいらしく、3人は樵に頼み馬を預かってもらうようにした。
その後森を進み、道沿いで新しい野営の後をみつけたりとそれらしい痕跡を見つける。日も暮れかかっていた。ランタンはクレアがもっていたが、あまり深い森での夜の捜索には限界がある。この野営の後から考えて、2人の足を考えるとそう遠くはないだろう。
先発隊は後発隊を待ち合流。その日は野営を組んで休む事となった。保存食を持ち忘れた者もいたようだが、クレアが自分の分を分け与えたり、山の知識に詳しい者が多かったので道すがらに食料も確保することができた。
闇に包まれた森‥‥。獣の遠吠えが耳に入ってくる。
こんな危険な森の中、2人は無事なのだろうか?誰もが身を案じていた。
「生き急いだり死に急いだり。忙しいな、人は」
レイヴァントは焚き火の火を見つめながら、フッと呟く。エルフである彼独特の感性なのだろう。
そうして、1日が過ぎていった。
●襲い掛かる毒牙
その後、ますます森は深くなっていく。
1日目と同様の方法で森を進む。フォリーとルーシェは改めて2人の進路を予想し、それに添って歩いていくことにした。
昼でも夜のような林、大きな崖、深い沼地‥‥。時折出会う獣や蟲などを追い払いながら、2人を探し求めた。
この前出合った樵によると、こちらの奉公はあまり人が来る事も少ないという。自分が見かけた限りでは、最近こちらに来たのはその2人ぐらいだという。それから考えると、途中発見された木々の折れた跡は彼らが残した物だと予想ができた。
それから数日、微かな痕跡を元に、一向は森を彷徨った。無事ロイとジェラルディンはいるのだろうか。どこかの街にたどり着いたのか? それとも‥‥。
メンバーに焦りの色が出始めた頃の、昼過ぎ‥‥。
「やはり、あまり遠くなさそうですね‥‥」
フォーリーは折れた木の切り口を見て、そう判断する。ユイス・アーヴァイン(ea3179)はステインエアーワードで精霊の声を聞こうとしがた、この魔法は澱んだ空気と会話する魔法であり、風のよく通り抜けるこの場所ではその声が聞こえる事はなかった。
道を進んでいると、近くから沢の水音が聞こえてきた。水がある場所は休息する場所に選らぶ事が多い。2人も立ち寄っているかもしれない。
予想はあたった。
そこにはまだ火が微かに燻った焚き火の跡があった。彼らかもしれない。
近くにいる‥‥。そう予想ができた。クレアはデティクトライフフォースで、周囲に異変がないかを調べてみた。
「これは‥‥危ない!」
感じた数匹の獣の気配。駆け出したクレアの後を冒険者たちは追いかける。近くにいる。しかし、ここで襲われたらこれまでの捜索は水の泡となる。
無事でいてくれ!
そう心で祈りながら、クレアの感じた場所へと向かう。
グルルル
耳に飛び込む獣が威嚇する声。
「いる‥‥」
殺気を感知したクロノは茂みの中をじっと睨んだ。
ガササと音をたて茂みが動く、そして1匹、2匹そして3匹の影が冒険者を襲った。
1匹飛び掛ってきた狼をクロノはロングソードで叩き切る。
少し離れた後の2匹には、クレアのソニックブームとフォリーの弓矢が対応する。ほどなくして狼は地に倒れた。
しかし、2人の姿は見えない。狼に襲われた形跡もない。多分彼らが怯えた獣の気配はこの狼だろう。だとしてら、彼らは?
もう一度、クレアは周囲をうかがった。
「‥‥これは‥‥」
感じた2つの人影。今度こそ間違いない、二人だ!
再び駆け出すと、けたたましい女性の悲鳴が森にひびいた。
「まずい‥‥!」
レイヴァントの頭に最悪の結果が一瞬よぎる。しかし、それを振り払い悲鳴の方向へ急いだ。
森の茂みが少し開ける。
大木の下に二人の男女が、身を寄せ合いっていた。女性の前に立ち塞がるような男性。しかし左腕を押さえて苦痛な表情を浮べている。
「ロイ!!」
後ろで隠れて、男性の名前を呼ぶ女性の顔は恐怖の為か真っ青だ。
その2人の前には‥‥。
シャーーーッツ!!
威嚇の声をあげる一匹の大きな蛇。目は真っ赤に燃え、二人に向かいゆったりと鎌首を持ち上げる。
「あぶない!!!」
クレアは再びソニックブームを放つ。蛇は衝撃に長い体を震わせる。そこへ続けざまに、レイヴァントの剣が蛇の命を奪った。
「大丈夫ですか!!」
後ろで待機していたレイが二人に近寄る。そして男の腕をとると応急処置を始めた。
男の様子から蛇には毒があったかもしれない。
「これを使え」
クロノはバックパックから解毒剤を取り出した。レイは解毒剤とリカバーポーションを使い、男を治療していった。
女性は心配そうにその治療を見つめていたが、怪我をしていない手をとり、ずっと握り締めている。
毒の性かグッタリとしていた男だったが、少し楽になりだすと冒険者たちを見つめて震える声で尋ねた。
「貴方達は‥‥‥‥」
その言葉に女性もハッとする。そして、レイを跳ね飛ばし男性を庇うように覆いかぶさった。
「わ、私たちは帰りません!!! もし連れ帰るというなら‥‥この森で!」
「待ってください。私は、貴方達の味方です」
そう言って、ルーシェは神父から預かったロザリオを取り出した。
「これに見覚えはないですか?」
「‥‥それは、神父さまの‥‥」
勿論見覚えがあった。それは唯一の味方でもある神父のロザリオ。
「神父さまに頼まれたわ。貴方たちを保護する」
スピアの言葉に、2人の顔に安堵の表情が浮かんだ。
●幸せのカタチ
治療のかいがあり、ロイの怪我は重くはなかった。しかし、無理して歩かせるのも危険なので、クロノとレイヴァンでロイを担ぎながら、移動していった。
安全な場所に移動し、野営を組む。
そこで、ロイとジェラルディンに2つの手紙を渡した。神父、そして乳母の物。
2人はそれを読むと、涙を溢す。
「私たちは‥‥2人だけでないのですね‥‥」
自分たちの身を案じ、幸せを願ってくれる人がいる。不幸に打ちひしがれて忘れていた事だったかもしれない。
2人は自分達の家の事情を話し出した。お互いが長い代にわたる商売仇であり、その遺恨はとても根が深く、遠い過去には血生臭い事もあったらしい。多分、今帰ったとしても石のように堅い両親の心はそうそう簡単に砕けるものではないという。
「だから‥‥もう逃げるしか‥‥死ぬしか‥‥」
「馬鹿! 貴方達はお芝居の役者じゃないのよ!? 生きなさい、何があっても‥‥」
命は掛替えない物‥‥。お芝居のように簡単に死を選択しようとした2人に、クレアの叱咤がとんだ。
「駆け落ちしたのは別に悪いことだとは思いませんよ〜」
ユイスはゆったりとした優しげな口調で、2人に尋ねた。
「どんなに悪い選択肢を選んだとしても、それを決めて『先に進んだ』事には違いないんですから。現にそれをして、こんな所まで来ています〜。今回お2人は、駆け落ちをするということで前に進まれました。それが善いか悪いかは別にして」
運命に流される事より、自ら運命を掴もうとした2人の想いはすばらしいとユイスは考えた。
しかし、何を選択肢するかがこれからの問題だ。。
「死ぬ程の覚悟があるならば、何故闘おうと思わない」
レイヴァンの言葉に2人はハッと顔をあげた。
「確執? 許されぬ恋? だから駆け落ち? ふざけるなよ人間。お前達は世界で一番幸せに貪欲な筈だ。時に前例など打ち壊し、時に運命など乗り越えて」
クロノが言葉を続ける。
「炎は全てを焼き、新しいものを生む‥‥ストール家・火の教えの言葉だ。ジェラルディン嬢、ロイ殿、お2人の絆が真の愛ならば愛と言う名の炎が古き縁を焼き、両家の間に新たな絆を生む‥私はそう思う‥そしてそれを行うのは貴方達2人の役目だ。真の幸福とは自分達の手で掴むもの‥‥解りますね」
障害から逃げても何からも逃れられない。古い悪しき楔は誰かが断ち切らなくてはいけない。これ以上‥‥血と涙が流れる前に!
冒険者たちの想いは、若い2人の心に響く。そして、意を決したように頷いた。
「わかりました‥‥僕らは逃げません」
●路なき路を‥‥
冒険者たちは2人を連れてキャメロットへ向かった。途中獣に出会う事はあったが大きな怪我もなく、そして他の捜索隊の目に触れることもなかった。
両家へ2人と共に説得と考えたが、ルーシェは2人の想いをこめた手紙を届けて説得したほうがいいのでは? という案をだした。
多分今戻っても、感情的になり話はならない可能性が高い。2人はその案に同意する。
まず、2人は神父の下に届けられた。2人の無事に安堵の表情を見せる神父。冒険者たちに何度もお礼をいった。
その一夜は体を休め、そして翌日。一晩考えて心を込めて書いた2人の手紙を受け取ると、冒険者たちは両家へと出向いた。二人の未来を得るために。
しかし、世の中の流れはそうそう甘くはない。
両家の父親は首を縦に振らなかった。
「己が体裁の為に二人を繋ぐ絆を断たんとする貴様等の所業、美しくないぞっ!」
クロノの厳しい言葉も父親には届かない。がんじがらめになった古き楔はそうそう切れるものではなかった。
「‥‥悪しき血の束縛‥‥だな」
スピアは溜息交じりに呟く。
『家』というものは時にして人を不幸にする‥‥。これは、それの良い例の一つだった。
しかし、微かに見えた光明もあった。
両家の母親は違った。2人の子供を心配し、そして2人の気持ちをうけとめていた。命まで駆けようとした愛、そして自分で運命を掴むという心。
母の心は大きく揺れ、そして子供の想いを受け止める事ができたのだ。
しかし、今2人を家に戻す事はできない。両家の母親はそれぞれにそう考えた。
父親には内緒に使いを教会に送り、2人を認めるという手紙を届ける。2人の将来の為に、父親の説得にも今後力を尽くすと‥‥。
その手紙を見てロイとジェラルィンは抱き合って喜び、そして泣いた。
100%ではない。しかし、愛する家族の1人から許しは得たのだ。
両家から教会へ帰っていた冒険者達もその光景を目にする。
絶望から『死』に向かっていた若い2人が、今は希望に向かって歩こうとしている。‥‥これからも困難な路かもしれない。でも、それにも恐れず真っ直ぐに進もうと‥‥。
2人は手を繋ぎあい、冒険者に向かって笑顔を向ける。
「ありがとうございました‥‥私たち、生きていきます。2人で‥‥ずっと」
その後‥‥。
2人はキャメロット近くの小さな村で、母親と神父が用意した家で2人の生活をする事となった。近いといっても日帰りでいける距離ではなく、それなりに遠い。そしてまだ2人を許さない父親たちの追手がでるかもしれない、という事もあり、冒険者たちが引き続き2人に付き添い、村まで送り届けた。
道中、2人といろんな話をした。
家の事、両親の事、2人の出会い‥‥そしてこれからの事、未来、夢。
村に到着し、新しい小さな家の前で冒険者たちを見送る二人。
その表情は晴れ晴れとし、そしてこれからの希望に満ちているように思えた。
‥‥まだ、父親の同意は得ていない。
しかし、2人を見守る人々の協力もあれば、水解けの日もそう遠くはない。
悲しき鎖が解かれる日も‥‥。
* END *