【朱と蒼】サイドアタック・レッド
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■ショートシナリオ担当：MOB 対応レベル：1〜3ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：0 G 93 C 参加人数：7人 サポート参加人数：-人 冒険期間：10月14日〜10月21日 リプレイ公開日：2004年10月20日 |
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●オープニング
「おーい、受ける依頼がまだ決まってない奴は集まってくれ。なんと貴族様からの依頼だ、とくれば報酬額は言わずもがな。さあ、依頼内容に興味のある奴は集まった、集まった」ある程度人数が集まった時点で、ギルド員が今回発生した依頼についての説明を始める。こんなふうにギルド員が説明を行う依頼は、急ぎの依頼である事が多い。少し猶予のある依頼ならば、ギルドの壁に依頼書として貼られるものだ。
依頼の内容は、貴族の領地の境界線上に住み着いてしまったコボルトの退治。領地の境界線は山沿いや川沿いにしているのが普通で、こうやって都合の悪い事に領地の境界線上にオーガ族が出没する事も稀にある。
既に近くの村には被害が出始めているそうなのだが、勘のいい冒険者ならもう気づいただろうか？境界線の両側の村に、コボルト達による被害は出ているのだ。人間達が勝手に引いた線など、彼等にとってはどうだっていい事なのだから。
だから、領主である両貴族は互いに責任を押し付け合い‥‥ではなく、共同で退治依頼を出す事にした。季節は秋、実りの秋、各地の村は収穫の時期を迎え、そろそろ冬への備えも考えなければならない頃だ。この時期に余計なトラブルなど勘弁願いたい、この両貴族はそう判断したのだろう。
少し話しが逸れてしまったので、ここらで依頼の内容に話を戻そう。退治を依頼されているコボルトだが、どうやら２つのグループに分かれて行動しているようなのだ。その数を合わせてみると、結構な数になる。故に今回の依頼は、境界線が引かれている山に対して両側から、それぞれ冒険者に向かってもらうようにするらしい。
そして更にだが‥‥
「コボルト戦士って知ってるか？経験を積み、戦士としての才能を持ったコボルトの事だ。ああ、別に今回の相手がそれだというわけじゃない、そうだったらお前さん達にはまだ手に余る相手だからな。だが、命を受けて村に調査にいった騎士によると、普通のコボルトよりは戦闘経験がありそうだ、との事だ」
騎士は、自分ではなく自分の後方にいる村人へ、脇目も振らずに襲い掛かってきたコボルト達に遅れをとってしまい、相手の数に対してこちらの手も足りないので追い返す事しか出来なかったらしい。
「コボルトっていえば武器に毒を塗っている事で有名だからな、その点も含めて結構厄介な相手かも知れんぜ。受けるつもりなら、決して気は抜かない事だな」
数刻後、場所は一気に変わって酒場。
「なんだよ、東側の方に回っちまったのか。‥‥逃げたな？」
「そりゃ逃げますよ、いっつもいっつも面倒な事を僕に押し付けて」
「だけどよ、対応としてはあの形が一番ベターだろ？ 一人が偵察、一人が護衛。最近じゃ、このパリに依頼と依頼金を持ってくる奴を、専門に狙ってる野盗が居るっつー噂もあるぜ？」
「それはそうですけど」
「じゃあアタシが、偵察とかに向いてると思うか？」
「思いません」
「‥そこまできっぱり言われると腹が立つな」
「えええええ、自分が聞いたのに」
「ま、今回はいーわ。そん代わり一匹も逃がすなよ？」
「ええ、これ以上下手に経験を積まれたら、更に厄介な相手になってしまいますからね」
オーガ族に限った事ではないが、一般的にモンスターは自分の身が危険になったら逃走を試みる。全く逃げる事を考えずに襲い掛かってくるのは。普通には虫系統のモンスターぐらいのものだ。今回の依頼が挟撃という形を取るのも、彼等が話しているような事も一因となっているのだ。
●今回の参加者
ea4190 ガリンシャ・ノード（36歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国）ea6392 ディノ・ストラーダ（27歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国）
ea6632 シエル・サーロット（35歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国）
ea7383 フォボス・ギドー（39歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国）
ea7569 フー・ドワルキン（55歳・♂・バード・エルフ・イスパニア王国）
ea7579 アルクトゥルス・ハルベルト（27歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国）
ea7602 リーン・クラトス（26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国）
●リプレイ本文
●もう少しのところで好機を逃がす？「アンタは朱（スカーレット）、俺は赤（バーミリオン）って訳だ。ま、よろしく頼む」
そう言ってディノ・ストラーダ（ea6392）がウインクをする。グラケルミィと同じく赤系統の服に身を包んだ彼は、自称している『赤い狼』に相応しい実力を得る道の途中にある。
「さって、コボルトが相手だな。逃がさないようにとっちめるのか‥面倒だが、頑張ろうか！」
出発前にガリンシャ・ノード（ea4190）が皆にそう呼びかけ、今回の依頼の目的を確認しなおすと共に、気合を入れなおす。彼の、鎧一つ身に着けずにさらけ出した見事な体格は、流派コナンを修得しているグラケルミィよりも一回り逞しい。
「ああそうだな、だがその前に‥そこのエルフ！」
「私が何か？」
相変わらず荒っぽい口調で、グラケルミィがフー・ドワルキン（ea7569）に話しかける。出発前に言っておきたい事があるようだ。
「何か？じゃねぇ。 まったく‥こーいうのはアタシじゃなくて馬連れた奴に頼め」
フーは、自分が持つには少々重い荷物をグラケルミィに持ってもらおうとしていた。彼女にもちゃんと自分の分の荷物があるので、もっと持てる（積める）荷物の量に余裕のある人、つまり馬や驢馬を連れている人に頼んだほうがいい。
「じゃあ、わたくしの馬に積んでおきますわ。ね、グラキさん？」
誰の馬に積むのか決めようとしていたところに、サッとシエル・サーロット（ea6632）が手を挙げた。
昼間は歩いて先を急ぎ、夜は休息。夜の見張りも交代で行い、警戒を怠らない。荷を運んでいるわけでもない冒険者達を野盗が襲う事は、ハイリスク・ローリターンなので普通はないが、つい最近にオーク族が移ってきている可能性や、野生の獣が襲ってくる事は考えられる。
だがそんなアクシデントも無く、実に平和だったパリからの道中の一間。夜、見張りのローテーションの関係で今起きているのはグラケルミィとシエルの二人だけ。焚き火が消えないように枝を放りこみつつ、言葉を交わす。
そんな中、スッとグラケルミィの手が無造作にシエルへと伸び、その身を揉みしだく。
「あの、グラキさん‥？」
ぐにぐに。
「うーむ、やっぱりそこいらの奴よりはいいモノを持ってると思ってたんだよなぁ‥」
「ちょ、ちょっとグラキさん。少し‥痛いですわ」
ぐにぐにぐに。急に揉まれたのでシエルが困っていると、それを察したのかグラケルミィは手を離す。
「ああ悪い悪い、アタシは昔っから力の加減ってのが苦手なんだよ」
担当の時間が過ぎ、交代の為にテントに戻ったシエルは、グラケルミィの言葉を思い返していた。
（「でももったいねぇなぁ‥そこいらの奴よりいい腕の筋肉してると思うのに」）
どうやら、普通の冒険者よりは少し腕力のある彼女がオーラ魔法主体の戦い方を選んだのを、グラケルミィはちょっともったいないと思っているらしい。
このテントは二人用なので、なんとかしてグラケルミィをこっちで寝るように誘おうとしたが、このテントには持ち主であるアルクトゥルス・ハルベルト（ea7579）が既に寝ている。次の見張りの順番はそのアルクトゥルスだが、その間だけテントで寝るように言うのは少し不自然な話だし、寝て起きてでは疲れが残ってしまう。
（「こうなったら‥」）
むにむにむに。
「あら？ アルクトゥルスさんって、結構着やせするタイプですのね？」
「‥？ なっ！ななななんという起こし方をするか、シエル殿！」
テントの中で何があったのかは２人しか知らない。少しアクシデント（？）はあったものの、パリからの道中は平和だった。
●コボルト、吶喊します！
目的地である山に向かい、麓の林を抜け、山肌の露出した緩やかな斜面を登っていく。コボルト達が住み着いたのは境界線付近という話なので、そろそろ遭遇してしまう事も考えないといけない頃だが‥
「いました！ あそこの岩陰の近くです！」
リーン・クラトス（ea7602）がいち早くコボルトの姿を発見し、続いて他の皆もコボルトの姿を確認する。
「いたか‥之もまた再現神の試練と導きであろう」
アルクトゥルスの呟きを合図にしてか、打ち合わせ通りにサッと陣形を組んだ冒険者達に対し、岩陰から一斉に飛び出してきたコボルト達は、その勢いのまま全員全力で駆けて迫ってくる。相手が完全に迫ってくる前にシエルとリーンは仲間に補助魔法をかけようとするが、リーンのフレイムエリベイションは初級クラスの効果では術者自身にしか使用出来ない。
「一斉突撃というわけか」
「‥ったく、突っ込めばどーにかなると思ってんのかよっ！」
フォボス・ギドー（ea7383）が、身を半回転させ勢いをつけたモーニングスターをコボルトに叩きつけ、ガリンシャがコボルトの腕に打撃を与えて武器を落とさせる。慌てて落とした武器を拾おうと無防備な姿を晒したコボルトは、二人の攻撃を受けてその場に倒れ伏した。
まず止まったコボルトの数は二体。
「こ、こいつら‥！」
矢をつがえた状態の弓を持ったまま、器用にディノは相手の剣を避ける。弓は剣などと違い、矢をつがえて射るという二つの動作を必要とする為、一度攻撃するのにそれと同じだけの行動力を必要とする。射程と命中率に利点を抱える分、それなりの欠点というのも抱えているのだ。
「一体は引き付けた事にはなるが‥！」
タイミングよくディスカリッジの詠唱を成功させたが、アルクトゥルスはディノ以上に防戦一方だった。自分がかけた魔法によって動きの鈍ったコボルトの剣は、かなり回避しやすいし受けたとしてもカスリ傷程度だろう、だが毒が怖い。攻めるにしても魔法は詠唱中の隙が大きすぎるし、ナイフでは満足にダメージを与えられない。
だが相手を引き付けれたのは確かで、これで止まったコボルトは合計四体。
フーがギリギリの射程とタイミングを見計らい、メロディーを試みる。
「血塗られた刃を投げ捨てろ、魂の拳で語り合え。人よ集え、一つになり強さを示せ。鬼よ闘え、一人に成るまで強さを示せ‥‥って、うわっ来た？！」
「当たり前だーーー！！」
フーに接近してくる二体のコボルトにメロディーの効果は及んだはずだが、効果は全くないかのようにコボルト達は勢いを変えずに突撃してくる。それもそのはず、目の前に居る冒険者達と戦う事の方が、メロディーで示唆された内容より遥かに優先度が高い。
突っ込んできた二体のコボルトの内、一体はオーラパワーの補助も受けたグラケルミィのウォーアックスが叩き潰したが、まだ一体残っている。シエルのオーラショットがコボルトを襲ったが、獲物を目の前にしたコボルトは傷つきながらも剣を振り下ろす。回避は、僅かに間に合わなかった‥。
●情報通りと言えば情報通り
「之もまた再現神の導きだ、早く使ってやれ！」
回避一辺倒でなんとか凌いでいた相手をガリンシャとフォボスが叩き伏してくれ、そのコボルトの懐から素早く解毒剤を取り出すと、アルクトゥルスはフーの近くにいたリーンに投げて渡す。脂汗を流しながら傷口を押さえて痛みを堪えているフーは、間違いなく毒を受けてしまっているだろう。
「残ってる相手は後少しだ、さっさと片付けちまおうぜ！」
突撃して包囲ぎみになっているコボルトに対し、これを好機と上手く囲む形に移動しながらガリンシャが皆に呼びかける。フォボスも攻撃以外の動作も出来るよう、様子を見て相手を追い詰めていく。あとは時間の問題だろう。コボルト達も、攻撃よりはどうにかして逃走する事を優先しているように見える。
そこへ解毒剤を飲み干し、毒から立ち直ったフーがイリュージョンを一体のコボルトに送り込んだ。内容は「雨あられと降り注ぐムーンアローが急所に深々と突き刺さり即死する」というものだが、この場合『死ぬという結果』までは送りこめない。
だからなのか、対象になったコボルトは一瞬身を強張らせた後、より一層逃げようとする以外に変化はなかった。ムーンアローの特徴は、長い射程と対象を目視していなくても撃てる事で、威力は低い部類に入る。魔法に対して少しでも防御力のある相手ならばカスリ傷にしかならないだろう。そして、フーはモンスターに対する知識は冒険者として最低限のものしかないので、当然コボルトの急所の位置など分からない。
どうにかして包囲を抜け出した一体のコボルトに、リーンのファイヤーボムとディノの矢が撃ち込まれ、これで全てのコボルトは地に倒れ伏した。逃がした数は０。解毒剤も数個回収でき、これは後でパリに戻った際に換金して皆で公平に分けた。
『後方に居る者達へ、脇目も振らずに襲い掛かってきた』コボルト達は、情報通りと言えば情報通りである。ただやはりコボルトと言うべきか突撃した後が無かった、確かに身体の弱い術者達にはたった一撃でも脅威にはなりえたが、結果的には包囲されて殲滅の形である。
ともあれ、さすがに完璧とはいかなかったが成果は上々、西からの班はこれにて依頼終了‥‥なのだが、やっぱりグラケルミィから伝言があるので記載しておく。
「自分の分の飯ぐらい用意しておけ、もし次同じ事したら‥アタシはお前等を桃色狼とか刺鉄球と呼ぶ！」
‥らしい。刺鉄球はまだしも桃色狼は、なんかそれとなく違う意味が思い浮かばれそうな響きがして嫌だと思うので、呼ばれたくなければ注意するように。ちなみにこの二人は道中、他の冒険者の中で保存食を余分に持ってきた人から、売って分けてもらっていた。
