小賢しき小鬼

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月23日〜07月28日

リプレイ公開日:2004年07月28日

●オープニング

 ゴブリン。
 ずる賢い小鬼であり、駆け出しの冒険者が何度かお世話になるモンスターだ。普通に同数同士が戦えば、冒険者達が負ける事はまず無い。だからこそ、彼等は冒険者として生計を立てていられるのだが・・それはさておき。まず負ける事が無いというのは、「普通に戦えば」の話。今回の依頼は少し事情があった。

 パリから近くの村の一つ、その村までの道にゴブリンが出没するようになり、行き来する人が度々襲われるようになったらしい。ここまでは普通なのだが、どうやらこのゴブリンの集団、何処かで追い散らされたゴブリンでも混じっているのか、一人でも冒険者然とした者が一行に居ると現れないそうだ。
「つまりは・・一般人のふりをして、ゴブリンを誘い出す必要があるという事か?」
 勘のいい冒険者が口を開いた。
 まあ、そういうわけだ。おおよそ冒険者と分かるような物は身に着けず、荷物の中に纏めて入れてしまわければならないだろう。ゴブリン相手とはいえ、最初は丸腰の状態から戦え、というのは少し不利のように思える。ゴブリンがそこまで判別出来るのかはいささか疑問だが、冒険者然としていては相手は出てこないらしいので、周囲に対して十分に警戒を払う事が許されないかもしれない。もし相手が出てこなければ、それは依頼の失敗になってしまうのだから。
 ゴブリンの数は10を越えるか越えないかの少数、との事だが・・。

●今回の参加者

 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1641 ラテリカ・ラートベル(16歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea1850 クリシュナ・パラハ(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea2448 相馬 ちとせ(26歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4167 リュリュ・アルビレオ(16歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4567 サラ・コーウィン(30歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea4662 ティーナ・ラスティア(30歳・♀・バード・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

●誘う為に牙を隠せ
「小賢しいってこのことだわ!ゴブリンごときが生意気な!」
 一番に開口したのはリュリュ・アルビレオ(ea4167)、他の参加者達も近い事は思っているだろう。ともかく依頼の内容を理解した冒険者達はそれぞれに準備を始める。ロックハート・トキワ(ea2389)がやっているように、ナイフやダガーといった小型の武器ならバックパックに入れずとも、隠し持つことが出来る為、こういった事態の時には便利だ。サラ・コーウィン(ea4567)に至っては鎧を知人に預けた。少し不安を覚えるが、剣などの武器ならともかく、鎧を取り出して着る時間を考えると、これは別に悪い選択ではないかもしれない。
 旅人風に見せる為、姿を隠して不意打ちを行い易くする為、荷馬車を借りようという案が出ていたが、そうそう借りれる物ではない。この依頼の依頼主が裕福な商人や貴族なら話は別だったろうが、それでもゴブリン退治のような簡単な依頼で貸し出すとは思えない。衣装の類についても同様である。小物の類ならともかく、衣装そのものとなると事情は違ってくる。なにしろモンスター退治で使うとなれば、傷つかない保障が無い。どうしても必要な状況で、生活に余裕のある者に頼めば、貸してもらえるかもしれないが。
 こうして、予定とは少々違うものの、これでも問題無いとして小賢しいゴブリンが出没するという街道に向かう事にした。要はゴブリンから見て冒険者然として見えなければ、それで十分なのだ。

●周囲への警戒は最低限に
 囮役の班と、彼等が襲われた際に駆けつける班、冒険者達は二つに一行を分けて街道を進んでいた。二つの班の距離はギリギリ視認出来る程度。ラテリカ・ラートベル(ea1641)が、月の精霊魔法の一つであるテレパシーを使って連絡する案もあったが、彼女が使えるテレパシーは15mまでしか届かない上、6分間しか保たない。致命的なのは、発動の瞬間に術者は銀系統の淡い光に包まれて見えるという事だ。使用する際に、もしゴブリンに見られてしまったら、それでアウトである。
 また、駆けつける班には隠れて様子を窺うという考えを持つ者も居たが、街道で隠れるとしたら両側の林の中。隠れる者が全員、そういった隠密行動に関して熟練の者ならば話は違ってくるかもしれないが、彼等では囮役の班が歩む速度に合わせたら、ガサガサと音を立てながら進むほか無い。ゴブリンが運良く街道を挟んで逆側の林から来るのなら、なんとか見つからずに済むかもしれないが、半分に近い確率で依頼に失敗するような案は、とても実行できない。

●小賢しき者の末路
 クリシュナ・パラハ(ea1850)が、小旗を振りつつ能天気にスキップで先頭を歩む。左前方の林の中に、ゴブリンと思わしき影が見えてもお構い無しにスキだらけだ。彼女達は囮班なので、むしろこれでいいのだが。案の定、ゴブリン達は数日ぶりの獲物と思い、林の中からゾロゾロと出てきた。それを確認し、彼女達は逃げ出す。方向は街道を逆方向・・・・つまり駆けつける班の方向だ。折角の獲物を逃がすまいとゴブリン達は彼女達を追いかける、彼等には自分達から逃げ惑っているように見える彼女達しか視界に入っていない。その方向に彼等を獲物として待ち構えている冒険者達が居るとは思ってもみないだろう。
 こちらへと駆けてくる囮班の姿を確認し、リュリュは魔法の詠唱を開始する。10秒後、それは真空の刃となって一体のゴブリンを切り裂いた。
「トキワ・ロックハート…行くぞ!」
 続けざまに投擲されたナイフが、また別のゴブリンに突き刺さる。この頃にはゴブリン達は何が起こっているのかようやく気づくが、もう遅い。やや包囲されぎみに冒険者達と対してしまっているのだ。
「ゴブリンさん、街道を騒がせた罪でェ〜、ジャッジメント!」
「んじゃ、……いてこましたれー!」
 クリシュナとリュリュ、二人の声が本格的な戦闘の開始の合図となった。

 今回の冒険者達は、武具を持てないという事態でも普段と変わらない実力を出せるウィザードやバードが多かった為か、思いの他ゴブリン達に対して優勢に戦闘を行っている。相馬 ちとせ(ea2448)のように地の精霊魔法の一つストーンアーマーを使えば、防具を身に付けずとも防具に身を守られているかのように戦う事も出来る。

「人を見て態度を変えちゃいけないのよ!」
「疾きこと風の如し!貴様等に死の制裁を!」
 サラとトキワが前方に出る。二人の得物は同じではあるが、技量の差からかサラのダガーの方が確実に敵を切り裂いていく。しかし、そうして弱り動きを鈍らせたゴブリンに、トキワはCOを放つ。
「シュライク!!」
 彼の技量では、そうして動きを鈍らせた相手にしか命中させる事が難しいとはいえ、致命傷を与えるという点に関しては、トキワの方が上手であった。

「え〜と・・・・味方から離れた位置にいるゴブリンは・・・・」
 ティーナ・ラスティア(ea4662)はその効果範囲から、シャドウボムを味方から離れた位置にいるゴブリンに撃つつもりだったが、ゴブリンの得物は殆どの場合、刃こぼれの酷い斧など格闘武器なので、味方から離れた位置には普通居ない。居るとすればそれは傷を負い、逃げ出そうとしているゴブリンなのだが・・・・彼女がそのゴブリンを発見すると同時にもう一人、魔法の詠唱を始めた者が居る、ラテリカだ。彼女が選択した魔法はスリープ、逃さないようにとの思いからなのだろうが、おかげでゴブリンは眠りに落ちかけた時に足元の影が爆発したりと、少々可哀相にも思える目に遭っていた。

十全の状況でなくとも、それを補う力を冒険者達は持っている。その手に何も持たずとも、モンスターを退ける力を持つものも居る。その事を思い知らされながら、ゴブリン達は駆逐されていったのだった。

「ふふふ、殴りクレリックの捌きの鉄槌を受けてみろ、ゴブリン!」
 そうだ、もう一つゴブリン達が思い知らされた事があった。ノリア・カサンドラ(ea1558)が自称する、殴りクレリックという存在だ。彼女がメイスを振るうたび、鈍い音と共にゴブリンの顔が歪む。サラが本来の武器であるロングソードを知人に預けてきていた為、彼女の打撃がトータルで最も多くのダメージを与えた。ちとせの日本刀の威力は素晴らしかったが、本人の技量不足なのか空を斬る事も少なくなかったのだ。また、敵の多数撃破はシュライクで鋭い一撃を与えていったトキワだったが、彼の攻撃もまた空を斬る事が少なくなかった。

●依頼目的達成!
「これにて一件、コンプリート!・・・・ついでに領地宣言です」
 クリシュナが小旗を掲げる、ついでにボソリと言ったセリフが気になる。気の合った仲間内で決めた行動か何かだろうか? ともかく、ここは往来する皆が使う街道なので、領地とかなんとかは少々問題がある。他の仲間になだめられながら、他の仲間は彼女をなだめながら、今回の依頼の参加者は帰路についたのだった。