【後方支援】二つの村を守れ!

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月20日〜11月25日

リプレイ公開日:2004年11月26日

●オープニング

「にしても多いな、奴等も冬の準備でもしてるってのかねぇ‥‥」
 困惑した顔で、ギルド員は自分が貼り付けた依頼書を見返す。依頼内容はオーク族の撃退。一括りにオーク族といっても、ゴブリンに始まりオーク、バグベア、更には経験を積んだ〜〜戦士と呼ばれるような相手まで、その実力はピンキリだ。
「ああ、ちょっと待て。最初に言っておくぞ、こっちの依頼はお前達にゃちょっと回せんぜ?」
 その言葉に続いて、ギルド員は別の依頼を冒険者達に提示する。
 ギルドは冒険者達に依頼を斡旋するが、基本的に発生した依頼に見合った実力の冒険者に回す義務がある。そうでなければ依頼が失敗に終わる確率は大きく増し、冒険者ギルドの信用は失墜してしまう事になるだろう。
「ほれ、こっちだこっち。これなら無理しなければ達成は簡単、更に力量次第で報酬アップの可能性もある依頼だ」
 そう言いながらギルド員が示した依頼は、二つの村の防衛だった。

 内容はオードソックスな村の防衛。最初のギルド員が言っていたオーク族退治の依頼だが、現場が村と村の間になるらしいのだ。まあ、それだけなら普通は問題ないが、今回の場合は相手の数が多い。
 大半はゴブリンやホブゴブリンで、実力的には大きな脅威ではないのだが、その全てを現場で倒してしまうのはかなり厳しい。勝ち目の無い戦いを続けて無駄に命を落とすほど相手も馬鹿ではなく、大きな怪我を負ったりすればその場から逃げ出していく。
 逃げ出すオーク族が全員村の方角に来るとは考えにくいが、一体も来ないというのもまた考えにくい。それに、また集まられる前に倒せてしまえるなら、しっかりと倒しておきたいものだ。

 さて、一つの依頼で二つの村‥つまり参加者が二手に分かれる必要があるこの依頼。逃げてくるオーク族は、冒険者達を見たら方向を変えて逃げ出すだろう、どうしても少しは追いかける必要がある。かといって下手に深追いすれば村の守りが薄くなる。
 依頼内容は二つの村の防衛、オーク族を追い払う必要はあっても倒す必要はない。だが、依頼書に最後に記された文には、「オーク族を退治した場合、追加報酬あり」とある。さて、どうしたものか‥‥。

●今回の参加者

 ea0422 ノア・カールライト(37歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea1509 フォリー・マクライアン(29歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea6137 御影 紗江香(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7927 ライエル・サブナック(27歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8252 ドロシー・ジュティーア(26歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8417 石動 悠一郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8498 月詠 閃(40歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●千里の一歩、されどそれ自体の価値は軽く
「えっと、それじゃお互い頑張ろうね」
 2つの村を守るこの依頼だが、依頼に参加した冒険者達は同数ずつでそれぞれの村に向かう事にした。オーク族がどちらかに偏って逃げてくるよりも、やはり同数ずつぐらいが逃げてくると思えるので、特に多くの追加報酬を狙う気がないのならば、こちらの方がベターな作戦だろう。
 一つの班がノア・カールライト(ea0422)、ライエル・サブナック(ea7927)、レオン・バーナード(ea8029)、ドロシー・ジュティーア(ea8252)。もう一つの班がフォリー・マクライアン(ea1509)、御影 紗江香(ea6137)、石動 悠一郎(ea8417)、月詠 閃(ea8498)。ジャパン語ぐらいしか上手く話せない冒険者が複数居たので、咄嗟に意思疎通が出来るように分かれたようだ。
 こうして冒険者達は、二手に分かれてドレスタットを発っていった。


「もうすぐ、近くでオーク族討伐が行われます。逃げてくるオーク族から村を守る為に、私達は来たのですが‥」
「相手を村に近づけさせない為の準備を、村の方々にも少し手伝って欲しいんです」
「私達も出来る限りの事をするつもりだが、やはり人手は多い越した事はないからな」
 ノアとドロシーの言葉に、ライエルが続く。短時間でなるべく多くの罠を仕掛けるつもりなら、借りられる労力があるなら借りたほうがいいし、自分の村を守る為とあっては村人達も協力してくれるだろう。とは言っても、さすがに直接モンスターと直接戦うのは無理なので、罠を仕掛けるのを手伝うだけだけれども。

「‥で、この辺りを掘って、落とし穴を作って欲しいんだ」
 もう一つの村の方でも、フォリー主導の下で罠の設置が始まっていた。しかし、どちらの村にも言える事だが、決して作業の効率が良いとは言えない。冒険者達が持っている技術や知識は、まだまだ初歩の初歩でしかないレベルのものが多い。
 それらで、ただ漠然と行為を行おうとしてみても、決して良い結果は得られないのだ。作業内容を伝える為に、話せない言葉を身振り手振りでなんとかしようとするよりも、いっそ実際の作業をやって見せるなどした方が良い。百聞は一見にしかずという言葉がジャパンにある。ようはやり方次第なのである。
 この事は、オーク族の群れを偵察しに行った紗江香にも言える。彼女は、オーク族の群れ近くまで接近したところであっさりと発見され、危うく追い掛け回される所だった。後少し逃げ出すのが遅れていた時の事など、ちょっと考えたくない。

 オーク族がこちらに来る可能性がある。その事を告げられた村人達は、最初は恐れ慄いたものの、自分達を守る為に努力してくれている冒険者達の姿に励まされ、力仕事に向いた若者が中心になって手伝ってくれた。こういう時には例え思い込みだとしても、大丈夫だという言葉は人に力を与えてくれる。


●オーク族の迎撃
 時間はかかったものの、それぞれの村での罠の設置は、数自体は満足出来るほどに作られてきていた。だが、誰も専門的な知識や技術を持っていないので、とりあえずオーク族‥‥今回逃げてくると予想されている、ゴブリンやホブゴブリン程度ならば通用するだろう、といった出来具合だ。
「ふう‥これぐらいで切り上げないと、そろそろ相手が来てしまいますか」
「皆さんは村に戻って下さい。大丈夫、モンスターが来ても絶対に私達が村には入れさせない」
「ゴブリン‥それも怪我した状態の相手に苦戦するようじゃ、冒険者は務まらないって。余裕余裕」
 そろそろ主作戦のオーク族討伐が開始される頃合だ。今の内に伏してしまわないと、こちらの姿を見た相手が方向を変えて逃げていってしまい、折角の罠が無駄になってしまう。

 穴を掘る為の道具を貸してくれた事や、実際の作業も手伝ってくれた村人達に礼を言うと共に下がってもらい、冒険者達は草陰に潜む。あとは相手が逃げ込んでくるのを待つだけ。
「来たな」
 怪我を負ったオーク族が逃げ出してきた。ただそれだけを簡潔に、ライエルが皆に伝える。まだだ、このまま後少し‥。後少し待てば、何もしなくとも相手が勝手に罠にかかってくれる。
 追手が来ていない事の確認だろうか、駆けているゴブリンが後ろを振り返った瞬間、そのゴブリンはフッと姿をかき消すように地面に沈み、中に仕込まれた木の槍の洗礼を受ける。上げた悲鳴はそのまま、冒険者達が草陰から飛び出す合図となる。

「グアアァッ‥‥!」
 もう一つの村の方でも、ほぼ同じ展開が繰り広げられていた。違う点を挙げるとすれば、こちらはホブゴブリンが逃げ込んで来ていた。
「‥掛かったな‥飛斬!!」
 落とし穴から這い出たホブゴブリンを、真空刃と矢が襲う。怪我を負っているところに、こうも立て続けに打撃を受けては、戦闘能力の保持など出来ようはずもない。倒れ伏した相手はまだ生きてはいるようだが、最早逃げる事もままならない。
「多くを残せば、後々村に被害が出るやもしれません」
 その為には少しでも退治したいところ。しかし、紗江香の行動は空回りしていた。彼女は、確実に相手を仕留める為に自分の間合いで戦おうとし、超近接状態にまで持ち込んだのはいいのだが、実はその状態は彼女の間合いではない。
 忍者刀は思っているよりも長く、肌と肌が触れ合う程の密着状態では、まともに振るう事は困難なのだ。この密着状態の間合いは肘や拳などによる格闘、あるいは武器を用いるならば短刀の間合いである。


●この機を逃す手はなし
 村の入り口に立ち塞がるドロシーの姿を見ると、即座に方向を変えてゴブリン達は逃げて行く。その慌てぶりからも負っている傷からも、オーク討伐を請け負った冒険者達から、よっぽど手痛い目に遭ったのだろうという事が分かる。
「悪いな、逃がさねえよ!」
「疾く、去ね‥」
 この好機に、出来る限りオーク族の数を減らしておきたい。逃がせば、その内に相手は何処かでまた集まり、近くの村を襲うのだ。レオンが勢いよく槍を突き降ろし、ライエルが相手を逃がさぬようにその足を狙う。だから、また一体、倒れ伏すオーク族の数が増える。
 惜しむらくは、レオンが持っているスピアは格闘武器の中では軽い部類に入り、得物の重量を生かした攻撃方法‥スマッシュには向いていなかった事だろうか? 攻撃を受けた相手の反応からすると、使っても使わなくてもあまり大差が無かったかもしれない。
 
「ここから先は‥通さぬ!」
 鎧袖一触。既に相手は手負いだったとはいえ、ただの一振りでそれは終わった。さすがに命を奪うまでには至ってはいないが、自らの名の如く閃に振るわれた一太刀はホブゴブリンを深く鋭く斬り裂き、瀕死に追い込んで行動不能に陥らせる。
「(我、武の理を持て斬を飛ばす)‥飛斬!」
 更に、追撃の矢が二本突き刺さり、ゴブリンはその場に倒れる。悠一郎が少し辺りを見回すと、どうやら村から少し離れてしまったようだ。林の中からでは木々が邪魔で村が見えない。先程の矢を放ったフォリーが、矢の回収と、事前に悠一郎がひどい方向音痴だと聞いていたので心配して、その場に駆けてきた。
「ええっと、村の方向は‥‥」
「「こっち」」
 二人が指した方向はキレイに垂直に交わっていた。もちろん、正しいのはフォリーの指した方向だ。
「ありゃ、そっちだったか?」
 そーです、そーなのです。


●手が多ければ二兎は追える
 逃げてくる敵が途切れて小一時間ほど経過する。どうやら討伐作戦の方は終了して、これ以上逃げてくるオーク族は居ないだろう。後は掘った落とし穴を埋め、ドレスタットに戻って報告を終えれば依頼終了だ。
 なお、冒険者達が仕掛けた落とし穴の罠だが、最初だけは相手も良く引っ掛かってくれた。しかし、落ちたオーク族を倒す為に動いた事で冒険者達の姿は、それ以降のこちらに向かって来ていたオーク族に確認される事もしばしば。その為、知らない間に逃げ出されてしまった数は少なくないが、今回の相手の性質上、村を守る事を優先していればそれは仕方のない事だ。
「無事に終わったか‥」
 ライエルが落とし穴を埋める作業を始める前に、深く息を吐いた。以前に同じようなケースで、その時には村人の立場だった彼にとって、今回の依頼は特別な依頼だったのだ。

 村人から感謝の言葉と共に、帰り道に食べてもらえるようお弁当まで貰った冒険者達は、二つの村を守りきった成果もあり、実に晴々とした気分でドレスタットへの帰路についたのだった。