私の試験を手伝って!
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや易
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月24日〜11月29日
リプレイ公開日:2004年12月01日
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●オープニング
冒険者ギルドに入って来たのは、何やら挙動不審なエルフの少女だった。そう言うと大げさかもしれないが、実際そうなのだ。フォローを含めた目で見ると、初めて依頼を受けようとする冒険者に見えなくもないが‥、いや、やはりそれにしても少しおかしい。辺りを必要以上にキョロキョロ見回して、受付へと歩いていく。
長く煌びやかな髪は後ろで軽く左右に分けられ、そしてやはり軽く編まれており、濃緑の衣服に包まれた体は‥まあエルフらしくスレンダーな体型に見える。ロッドを持っている事からして、ウィザードだろうか?
「はい、こちらは依頼の受付ですが‥何かご依頼でしょうか?」
この手の人は、ここが冒険者ギルドで合っているのか不安なのだ、と受付嬢は予想した。案の定、エルフの少女は助け舟とばかりに、こくこくと頷く。
「ご依頼でしたら、依頼内容を言っていただければこちらで内容をまとめます。まずは、どうぞそちらにお掛けになって下さい」
おずおずと示された椅子に腰掛け、依頼する内容を話し始める。
「あ、あのっ、私の試験を手伝って欲しいんです!」
この後、依頼内容がまとめられるのには少々時間を要した。
依頼内容は、とある洞窟の奥から一枚の羊皮紙を持ち帰る事。
その羊皮紙は、彼女の師匠が箱に入れて洞窟内に置いたもので、これを持ち帰ると新しい魔法を教えてもらえるそうだ。しかし、洞窟に向かったところ辺りには野犬が数匹徘徊していたらしい。たかが野犬ではあるが、たった一人では結構な危険を伴う。そこで、この試験を手伝って欲しいそうだ。
ただ、依頼内容がまとめられるのに時間がかかったように、エルフの少女は引っ込み思案が過ぎるというか‥‥。そういえば、まだ自分の名前を名乗っていないような。
「はい、ではこの内容で。それで、依頼主‥貴女のお名前はなんと申されるのですか?」
「え?私の名前ですか? えっと、その、私は‥‥」
その頃、冒険者ギルドとは別の場所。
「引っ込み思案を直すために、他人の力を借りる必要のある試験を出したはいいが、ちゃんと冒険者ギルドに依頼出来てるだろうか‥心配だなぁ‥。もしかして、自分の名前を言うのも忘れてたりしてな」
どうやら、彼が彼女の師匠らしい。
●リプレイ本文
●濃緑のウィザード、シルキー
「あれ‥おかしいな? 依頼者のエルフの少女は、この辺りで待ってるはずなんだけど」
「依頼主様‥では呼びづらいですし、道中不都合も多いでしょうし‥。早い内にお名前を伺いたいところですのに‥」
今回の依頼主であるエルフの少女は、先に準備を終えて待っているというので、その場所まで冒険者達は来たのだが、肝心のそのエルフの少女が居ない。イコン・シュターライゼン(ea7891)やシュヴァーン・ツァーン(ea5506)が辺りを見回すが、影も形もない。
「一体、どちらに行かれたのでしょうね‥?」
ロミルフォウ・ルクアレイス(ea5227)が不安そうに呟く。まさかオドオドした様子の彼女を、絶好のカモだと思った悪漢に騙されて連れられ‥。いや、いくらなんでもそれはないだろうが、依頼者である彼女が居てくれないと、これからどうしたらいいのか。
と、その時‥
「‥ぷはっ。あ、あの、ここです‥」
地面から真っ赤になった顔が一つ、浮かんできた。
「うをわっ?!」
「え? え? なにっ?」
面白くなさげに冷静に説明すると、アースダイブの魔法で地面に沈み込んでいたエルフの少女が、単に首から上だけを地上に出すようにして、浮かんできたのである。魔法というものに理解のある冒険者達ならともかく、何も知らない一般人がこうやって話しかけられたら、腰の一つや二つは抜かしているかもしれない。
「すっすみません。あの、私‥‥緊張しちゃうと、こうやって地面に潜っちゃう癖があるんです。それでそれで、お師匠さんにも、この魔法を早い内に教えたのは失敗だったかな〜って呆れられちゃってるし、でも潜るとかなり落ち着くから助‥」
「わわっ、ちょっとお待ちになって。とりあえず、完全に地上に出てみませんか?」
「ええ‥‥お話でしたら、その後でゆっくりお聞き致しますから、ね?」
マミ・キスリング(ea7468)やシュヴァーンに促され、エルフの少女は慌てて返答をすると、おずおずと地面から出てくる。その小動物を思わせるようなその雰囲気と仕草を、じっ‥と見つめる影が居た。
(「かわええ‥」)
ローサ・アルヴィート(ea5766)だ。自分が持つには結構厳しい量の荷物を背負っている事も忘れ、ぽやーんとして表情で同族の少女を見つめている。姉さん、折角の美貌がお崩れになっております。せめて、その口から流れる汗だけはお拭きになられるよう、謹んで申しあげる次第であります。
「イコン・シュターライゼンと申します、イコンと呼んで下さい」
「シュヴァーン・ツァーンです」
「ぶらいあん・せっつというのですよー」
「ロミルフォウ・ルクアレイスです」
「磨魅・キスリングです、よろしくお願いします」
『ローサ・アルヴィートよ』
ピタリ。そして、その場の皆の頭の上に?マークが発生。いや、名前だけはなんとなく分かったのだけれども。
『あれ? ローサ・アルヴィートっていうのよ』
無意識の内に使っているので気づかないのかもしれないが、ローサの母国語であるスペイン語は彼女以外のメンバーは全く分からなかった。仕方がないのでラテン語を使い、更にこれをイコンがゲルマン語に訳す事でなんとか皆と話が通じるようになったのだ。
「えと‥私の名前は‥シルキー・トライセン、です」
ようやく落ち着いたのか、エルフの少女はようやく自分の名前を冒険者達に伝える事が出来た。そういえば、今回の依頼の依頼書を書き上げた受付係も、結局名前を聞けたのは最後の最後だったような気がする。
●仲が深まれば、ある程度は平気
目的の洞窟までの道のりは、今まで冒険者達が経験してきたような事に比べれば、危険など全くないと言ってもいいほどに穏やかだろう。この季節になってくると「寒さ」という脅威が襲ってくるが、冒険者達は十二分過ぎるほどのテントや寝袋を持ってきていたので、全く問題にならなかった。
野営の時は、同行者同士で仲を深めるのに適した時間だ。焚き火にくべる木の枝を拾い集めたり、テントの設営を協力して行ったり‥
「保存食をただ食べるだけではつまらないので、簡単にできる野営料理をお教えしますわね」
こういう事も良いだろう。素っ気のない保存食をそのまま食べるよりも、一手間加える事によって実際の味も、また自分が作ったという事で気分的にも美味しく食べる事が出来る。皆で話をしながらならば、なおさらだろう。
ロミルフォウは、あまり料理に手馴れていないシルキーが、自分が教えた手順を一生懸命こなして追いついてくるのを、微笑みながら待った。自分と同じ状態まで進んできたら、また次の手順を実際に示しながら教えるのだ。
「魔法を教えてもらうための試験、ですか。懐かしいですね、修行時代というものは‥」
「今は難しいかもしれませんが、少しずつでも良いから人と話をしていけば、きっと恥ずかしがらずに人と話せる様になりますよ」
「それで、話の基本は聞く事と思います。言う事は独り言でも出来ますが、人の言っている事を意味を含め聞き取る事は一人では出来ない事ですから」
「聞く、ですか? ええっと‥、それじゃあ‥‥シュヴァーンさんは、どんな試験だったんですか?」
「私が受けた試験ですか? そうですね‥」
少し時間が前後するが、往復の日程の間、シルキーの話を良く聞いていたシュヴァーンやイコンは、最初は彼女の話が良く分からなかったりもしたが、そう慌てず堅くならずに‥‥と根気良く勧めた。そのおかげでか、依頼が終わって別れる頃には、やや赤面するぐらいで問題無く話せるぐらいになった。
「今から、くりえいと・えあーの魔法をつかいますよー」
ブライアン・セッツ(ea7738)はそう言うと、買ってきておいた発泡酒をコップについで、泡が消えるのを待つ。泡が消えたら木の箸を挿し込み、再び泡が出てくるのを待つ。確かに泡は再び出てきたのだが‥
(「えっと‥クリエイト・エアーって確か‥あれ?違う‥よね? こういう時はどういう反応するのが良いのかしら?」)
シルキーはあまり外出をせず、一日の殆どを魔法の勉強に充てる生活をしてきているので、魔法‥特に自身が携わる精霊魔法についての知識は十分過ぎるほどにある。だから、ブライアンの行っている事が、クリエイト・エアーを使っているのでは無い事はすぐに分かった。
「ですから、そう‥深く考える必要はありませんわ。ブライアン様も、場を和ませる為にして下さったのですから、ね?」
苦笑しながらシュヴァーンが助け舟を出す、折角の他人の好意を無下にするのも悪い。ていうか誰だ、10歳の子供に発泡酒の豆知識を教えたのは。
ちなみに、どう反応していいのか分からずにおろおろするシルキーを、またも「かわええ‥」と思いつつ、ぽやーんとした表情で見ていた冒険者が居たのは秘密だ。
●力を持つという事
目的の洞窟前にまで来た時に、ガサガサと周囲の枯れ草を揺らし、やや大きなを音を立てながら相手は現れた。話にあった野犬だ。シルキーが一人で来た時は、アースダイブで早々に地面に潜って逃げる事で難を逃れたが、今回は追い払って洞窟内に進まないといけない。
「わたくし達の戦い、しっかりと見ていてくださいね。そしてこれからも多くを学んでくださいませ。貴方の成長を楽しみにしていらっしゃる、貴方の先生の元で」
ロミルフォウとマミが前に出て、イコンがシルキーをすぐに守れる位置につく。じりじりと向かってきていた野犬達が飛び掛ってくると、ロミルフォウは剣で斬り裂くのではなく、剣の腹で叩き伏せた。試験の障害とはいえ、野犬を殺してしまうのは依頼主に刺激が強いと思ったのだ。
「ろーさ殿、これを使うですよー」
「アイスチャクラ? へー、スクロールで作‥重っ! なにこれ、重っ!?」
アイスチャクラで作られるチャクラムは、飛び道具としては高い威力を持っているが、なんと重さが3kg程度もあり、ローサが扱うにはいささか重い。それだけを持って使用したとしても、戻ってくるチャクラムを受け取れないだろう。
「きゃうん!」
そうしている内に、ロミルフォウやマミによって野犬達の大半は追い払われ、残りのなおも襲いかかろうとしてくる野犬は、ローサが足元に矢を数本同時に打ち込んで脅しをかけたり、シュヴァーンが竪琴を奏でてスリープを使い、眠らせた。洞窟はただの穴倉なので、効果時間中に羊皮紙を取って帰ってこれるだろう。
イコンが松明を持って先頭に立ち、進んでいった先にあった箱の中には、「よくできました」と書かれた羊皮紙が一枚、素っ気なく入っていた。隅の方にシルキーの師匠の名前が書かれているらしく、これに間違いないだろう。
「ホントにありがとうございました。それに‥‥師匠が言ってた事が分かった気がするんです」
引っ込み思案を直せる手助けになるような試験にしておいた‥‥とは別に、もう一つ言い含められていたらしい。シルキーは、まだ補助用の魔法しか習っておらず、この試験を終えた後に初めて攻撃用の魔法を習うようだ。
モンスターを退けれる力、仲間を守れる力、言い換えれば誰かを傷つけれる力‥冒険者ならば必ず持っているから、その使い方を見てくるように、と。
「良いお師匠様なのですね‥‥」
シルヴァーンは微笑むと、彼女を優しく撫でたのだった。彼女以外の五人も同じ思いだったろう。
「ここで会ったのも何かの縁です、またお会いする事もあるでしょうし‥お友達として仲良くしたいものですね」
パリに戻り、見知らぬ人が増えてしまうと、まだ結構おどおどしてしまうようだが、最初に出会った時に比べれば、かなりマシになったものだ。「皆さんとはお友達ですー」と、別れを告げて去っていく彼女を、冒険者達は暖かい目で見送ったのだった。