【ドラゴン襲来】混迷より抜け出す為に

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月30日〜12月05日

リプレイ公開日:2004年12月06日

●オープニング

(「一体、何が起きている‥!? これはどういう事なんだ‥!?」)
 それに答えられる者は居ない。このような事態にドレスタットが晒される事‥‥いや、ドレスタットだけで考える必要は無い。人の住まう地に、これほどまでに多くのドラゴンが現れるなど‥。一体ドラゴン達に何が起きていて、どういう意図でもって襲撃をかけてきているのか。
 ドラゴン‥‥このジ・アースにおいて最古にして最強と目されている種族。その認識に間違いは無く、無力な住人達は恐怖を感じる事しか許されず、迫る冬の寒さも相まって、ただただ震え耐え忍ぶのみ。

 ここ数日、ドレスタット周辺に複数のドラゴンが散発的に襲撃をかけてきている。確認されているドラゴンは、主にフィールドドラゴン又はリバードラゴンと呼ばれている種で、熟練の冒険者であればそれなりにどうにかなる相手だ。だがこの時点で二つおかしい。
 ドラゴンは普通個体のみで行動し、散発的とはいえ他のドラゴンと同じ行動をする事は稀であるという事。二体、三体ならまだしも、確認された数を考えると異常な事態だと言える。もう一つは、これらドラゴンは竜族の中でも比較的おとなしい部類に入るドラゴンだという事。その彼等がこうも積極的に街を襲う事など、ドラゴン達に何かが起こっているとしか考えられない。
「それが‥何が起きているのかさっぱりなんだよな。しかし、街を守らないわけにもいかないからな」
 ギルド員の表情は優れない。開港祭の喧騒も一段落した時に、突如発生したドラゴン達によるドレスタット襲撃。襲撃される理由が判明していれば、少しは気も楽になったかもしれないが、現時点では全くの不明。
「ともかく、これ以上ドラゴン達による被害を広げるわけにはいかない」
 申し訳無いが、最悪の場合殺害という手段を取る事になっても構わない。そういって示された依頼は、二体のフィールドドラゴンの撃退。一体が先行して街に接近してきていて、それを追う様にもう一体がきているらしい。
 街を襲うという目的自体は同じのようだが、ドラゴン達が積極的に集まって行動しているという報告は聞かない。しかし、このまま放っておいたら結果的に二体が合流してしまう事になる。そうなると、個別に相手をするよりも対処が難しくなってしまう。

 兎にも角にも理由が不明、ドラゴンの性質を思い返せば腑に落ちない事ばかり。それでも、降り掛かる火の粉は払わねばならず、そして払える力を持っている者は限られる。これからドレスタットはどうなるのか‥‥誰にも予想はつかなかった。

●今回の参加者

 ea1579 ジン・クロイツ(32歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea4847 エレーナ・コーネフ(28歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea7400 リセット・マーベリック(22歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8203 紅峠 美鹿(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8474 五木 奏元(50歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea8498 月詠 閃(40歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●基本は等価交換だと思うのですよ
「ええっと、まずは五木さんに太刀とライトシールドを‥」
「かたじけない、ありがたく借りさせていただく」
「それからジンさんには、このスクロールを‥貸すんじゃなくてプレゼントで」
「い、いえ。貸していただけるのはありがたいですが、さすがに貰ってしまうのは‥」
 最強種ドラゴンとの戦闘に備え、冒険者達は手持ちの手段を突き合わせ、各自がその実力をフルに発揮出来るように準備を整える。祭りの時期に販売された福袋の恩恵は大きいらしく、ファング・ダイモス(ea7482)のように予備の武器を所持し、一時的に他者に貸し与える余裕のある者も居るぐらいだ。
 しかし、それで金銭感覚をマヒさせるような事があってはならない。魔法が書き込まれたスクロールは、基本的に15Gぐらいという高い値段で取引されている。この依頼の報酬金額の10倍を越える金額である。五木 奏元(ea8474)のように借りるならばともかく、貰ってしまうのはジン・クロイツ(ea1579)も気が引ける。

「ドラゴンについてなら、多少は知識を持ち合わせています。手助けになるよう、お教えしておきますね」
 エレーナ・コーネフ(ea4847)が言葉を紡ぐ。『タイニー』などの分類は、人間達がドラゴンの強さの目安としてつけたもので、分けるに際して彼等の持っている能力で判断している。彼女はタイニー以上のドラゴンについてはあまり詳しくないが、タイニーの大体の実力は把握している。
 タイニーはブレスも吐かず、知性も低く獣並、また人語を介する事もない。実力ある冒険者ならば、「タイニークラスなら、大きなトカゲと大差ない」と豪語する事も出来るだろう。ただ、やはりと言うべきか、他のモンスターに比べて一回りタフである。
「つーか、竜ってのは無闇に人間を襲うものなのか?」
「戦いとは己を賭ける行為‥それに出向くには相応の訳があるはず‥ヤツラには如何な訳があるのか‥」
 紅峠 美鹿(ea8203)が問い掛け、月詠 閃(ea8498)が呟く。そう、そして今回の相手のフィールドドラゴンは、ギルド員もいぶかしんでいたように本来は温厚なドラゴンのはずである。好んで他の生物を襲ったりする事は、あまり考えられない。
「‥‥今回の事件、おおもとの原因は人災の気がします」
 リセット・マーベリック(ea7400)が憶測を述べる。確かに、ドラゴンが襲撃をかけているのはドレスタットを中心とした、人の住まう土地。となれば、人側に何かしらの原因があるだろうとは思える。しかし、それは一体何なのか‥。


●迫り来る二つの巨躯
「竜なんて滅多に拝めるもんじゃねぇからな、燃えるぜっ!! ‥どうだ、リセット。そろそろ相手は見えたか?」
「うーん、まだ見えないですね。情報からするとそろそろ見えても‥‥! ‥あれかな」
 前方に大きなトカゲのような影が見える。近づいていくと、それは六つの足で大地を踏みしめ、悠然とドレスタットの地へと向かうフィールドドラゴン、間違いなくその一体であると確認されていく。
「ドラゴンか、いつかは出会えるかもと思ってたけどこんなに早くとはな」
 吟遊詩人の詠う、英雄譚の中ぐらいでしかドラゴンの存在は知らない。と、レオン・バーナード(ea8029)は思う。だが、冒険者としての道を歩み始めた時から、いつかは必ず出会うだろうという事は分かっていた。
 しかし、勝てるのか? 迫り来る巨躯はジャイアントと呼ばれる種族の者よりも大きく、それでいてエレーナが事前に教えてくれたように歩みは速い。身体の能力は、明らかにこちらを上回っている。

「ここから先には、行かせません!」
 長大な射程による、先制攻撃。彼方より飛来する歓迎をその身に受けたフィールドドラゴンは、その眼に五つの影を確認すると、先程までよりも強く大地を踏み抜き、地鳴りを上げながら突進していった。
「グルゥ‥‥!」
 いい度胸だ、とでも思っているのだろうか、僅かにフィールドドラゴンの口元が歪んだように見えた。
「こ、これでは一体どうすれば‥!? くっ、ぬぐぅ‥‥!」
 相手の進行を遮るべく、レオンは相手の全面に立ちはだかったが、それで止まってくれるような相手ではない。突進の勢いを衰えさせる事もなく、レオンを噛み砕こうとした強靭な顎は、彼の持ったロングソードが寸での所で向きを逸らした。
「喰らいやがれっ! ソォォドボンバァァァッ!!」
 フィールドドラゴンの開かれた口が、ガチンッと音を立てて閉じられると同時、その巨躯のどてっ腹に衝撃が叩き込まれる。巨躯が揺れ、僅かに衝撃と反対側によろめくが、六つの足によって支えられている胴体は、すぐに落ち着きを取り戻す。
「ちっ、話通りにタフな野郎だぜ」
 だったらもう一発‥と、美鹿はニ撃目を放つが‥
「跳んだ‥!?」
 なんとフィールドドラゴンは、その巨躯に見合わない軽やか動きで、攻撃を避わしたのだ。だが、そこへ、その着地地点へと一筋の閃光が走る。その場に居る者が、何がを起こったのか分かったのは、フィールドドラゴンより多量の血が噴き出した後だった。
「見えぬ攻撃を避けることは敵わず‥竜よ、我が太刀が見えたか!!」
 それで、勝負は決まったかのように思えた。確かにドラゴンはタフで、これまでの攻撃で命を落とすという事は考えられないが、かといって満足な戦闘能力が残っているようには思えない。
「まだ、戦う気なのか‥!? 一体、何故‥」
 だが、未だ鋭い眼差しで、冒険者達を睨みつけるフィールドドラゴン。前足が大地を踏みしめ、近くに居るレオンに再び攻撃を仕掛けるべく、口を大きく開く。
「お前達も思うところがあったのだろうが‥この一撃で、しばらく眠っていてくれ!」
 奏元の一撃は、骨ごと叩き斬ってしまえたようにも見える深い深い傷をドラゴンに残し、動く力を奪い去った。

 眠るのはしばらくで済むだろうか。しかし、動く力が残っているならば、このドラゴンは人間を襲うだろう。普段は温厚なはずなのに、何故ここまでもの敵意を剥き出しにしてくるのか‥。
「向こうの足止めは上手くいっているようです。でも、早く合流しないと心配ですね‥」
 そうだ、まだもう一体ドラゴンは残っている。


●タイニードラゴンスレイヤー
 地響きを上げながら巨躯が迫る、こちらのドラゴンも同じく駆けてきているのだ。
「集いし不可視の力よ、眼前にものを抑制せしめよ」
 アグラベイション‥! カクンとドラゴンの速度が落ちる。そこをジンはスリングで目を狙おうとするが、上手く狙えない。動く相手の特定の箇所を狙えるようになるには、その為の修練を積まないと無理なのである。
「このっ‥! ここで食い止めさせてもらうぜ!」
 ミドルシールドを構え、ドラゴンの眼前に立ちはだかるファング。そのまま盾でドラゴンを押さえ込み、突進を食い止める。アグラベイションの効果を受け、動きを鈍らせているはずであるのに、土煙を上げながらの後退を強制される。
 流石はドラゴンと言うべきだろうか? しかし、それを言うならば、数mの後退を余儀なくされたものの、ドラゴンの前進を止めてしまったファングもファングである。恵まれた体格が産んだ結果だろう。
「お返しだぜ、食らえ!」
 返しの一撃は強烈だった、ドラゴンも堪らずに数歩よろよろと引き下がる。攻撃を放ったファングも、自身の攻撃力の大きさに驚いているだろう。そして、そこにエレーナのグラビティーキャノンが追撃で入る。
「効いてない‥抵抗された!?」
 しかし、有効打にはならず。また、六つの足で支えられた体は、そうそう転倒することもない。ジンがスリングで石をぶつけるが、これもあまり効いているように思えない。

 ファングの攻撃は有効に効くようだが、先の一撃で相手に警戒されてしまっている。足止めが目的な以上、下手に攻撃を繰り返すよりも、防御を優先した方がいい。怪我とアグラベイションの効果で、相手の動きは目に見えて鈍っている。後は仲間を待って‥
 ズドッ!
 遠くの影より、矢が飛来する。
「皆さん、お待たせしました!」
「武具を貸してもらった借りは、働きでもって返すぞファング!」
「先程のドラゴンには無理だった。おぬしには、我が太刀筋が見えるか!」
 そう、一斉に攻撃してしまえば良い。
「俺から行かせてもらうぜ!!」
 ドラゴンを襲う剣圧の衝撃、その直後に魔力の衝撃、更にスピアを携えての突撃。立て続けの攻撃に、さしものドラゴンもよろめき、慌てて体勢を整えようとするが、続く三つの斬撃がそれを許してはくれない。
「これで止めだ、フルバーストォッ!!」
 噴き出す血によって作られる池、そして‥咆哮。
 冒険者達の集中攻撃を浴びたドラゴンは地に倒れ伏し、生命の活動を終えて眠りについた。


●混迷より抜け出す為に
 ギルドへと戻った冒険者達に、新たな情報がもたらされる。
「ガセ情報や、ただの噂も多すぎる程にあるんだが‥。魔法を用いて話を試みた者達から、ある程度共通した情報が出てきてくれた」
 ドラゴン達は、何者かによって奪い去られドレスタットに持ち込まれたと思われる、自分達の宝を探し取り戻す為にやってきているらしい。
「だったら、その宝ってのを探し出して、ドラゴンに返せば事件は解決するんじゃないのか?」
「そうですね。その内に、捜索依頼でも出るんじゃないでしょうか?」
「ん‥? ちょっと待って下さい。探し出すと言っても、ドレスタットは‥」
 交易の要の都市。ドレスタットに流れ込んでくる物も、同時に流れ出していく物も、途方も無い量が毎日動いている。それに、事情を考えると、裏のルートによって運び込まれた可能性が高いだろう。
「こ、これじゃあ、一体どうやって探し出すっていうんだよ‥」

 混迷より抜け出す為の一歩、その方向は決まった。しかし‥。
 これからドレスタットは一体どうなるのか。未だ、その問いに答えられる者は居ない。