森の中へと消えていった男
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 90 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月01日〜02月10日
リプレイ公開日:2005年02月08日
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●オープニング
「餌を下げるだけでは食いついてはくれんか‥」
(「しかし、餌に食いつく事のリスクを見抜ける‥それに応じた実力があるという事だ」)
「どうにかして動かしてやりたいところだが‥」
そう呟いた男は、ドラゴン騒動の最中だというのにローブを纏って林間を歩む。そして、今はもう使われておらず、半ば朽ちた砦へとその足を向けていった。
ドレスタットの街を歩き、冒険者ギルドへと向かう者が一人。この人物には見覚えがある、海戦騎士団の一人であるオルファ・スロイトだ。冒険者ギルド内に入った彼は、真っ直ぐに受付の所まで進んで依頼を行う。
「基本的には情報の真偽を確かめてもらう依頼になります。なにぶん、情報元の信頼性が低いので基本の報酬は少なめですが、情報が本当だった場合に対象の身柄を確保してもらえれば相応の上乗せがありますので‥」
そうやって切り出された依頼の内容は、ここ最近にドレスタット近郊の村に住む猟師に目撃されているローブの男を捜して欲しいというもの。一人ならともかく複数から情報が寄せられては、ダメ元で少し突っついてみるのも良いだろうという事だ。
「情報の真偽を確かめ、ローブの男を発見した場合はその身柄を確保して下さい」
「相変わらずだな、成果を挙げなきゃ報いは無し‥か?」
「この場合は、削れる部分は削る‥って言って下さいよ」
ギルド員の言葉に、苦笑しながら返すオルファ。
ドレスタットへと襲撃をかけてきたドラゴン達が、何故かローブを纏った者に過度の敵意を示すのは、ここ最近のドラゴン騒動の中で分かってきた事だ。理由ははっきりと判明していないが、無用の危険を冒す事もないので、ローブの着用を一時的に止めている人も多い。
「具体的な捜索範囲なんですけどね、目撃情報のあった付近の森の中に、今は使われていない砦があるみたいなんですよ。それで、その男もそこへ立ち寄った可能性が高いので、そこを中心に捜索してもらおうかと」
捜索という事で、依頼の期間は少し長めに申し込まれている。先に挙げたようにわざわざローブを着用して‥いや、これはあまり問題ではないか。それよりも、一人で森の中へと進んでいったというのは、ちょっと疑ってかかってみて良いだろう。
●リプレイ本文
●森の中へと歩みゆく者達
「ふむ、それでは最後に確認しておくが、まずは皆で砦に直行。そこで二つに別れて、挟み撃ちを狙うというので良いのだな?」
「ええ、そうなりますね」
ギム・ガジェット(ea8602)がティム・ヒルデブラント(ea5118)に今回の作戦の確認をする。
実はギムは船上よりシフールに頼んで依頼の受付を行ったので、同行する冒険者達と実際に面したのは出発の一日前。もし自分が考えている作戦と、皆が決めた作戦に食い違いがあってはならないので、念を入れて確認したのだ。
「しかし‥こんな状況で、森の中を一人で歩き回るとはな‥しかもローブを纏って、だ。確かに怪しいが、それと同時にかなりの腕を持ったウィザードであるという事か」
「腕の立つ者には違いないが、はたして本当にウィザードなのか‥気を引き締めねばな」
レオニール・グリューネバーグ(ea7211)は情報から推測される相手の力量を警戒し、また同様に警戒をしている月詠 閃(ea8498)は、それに加えて相手がウィザードではない可能性もある事を考えていた。
「では、そのローブの人を連れて来れるように頑張りますか」
ティムの言葉を合図に、冒険者達はドレスタットを発って砦を目指す。
●忘れられかけた砦には
「一人でドラゴンを誘う‥ですの。かなりの実力者ですわね。さて、彼が何をしたいのか‥聞いてみたいものですわ」
「ええ、もしかしたらドラゴンを捕えるつもりなのか‥。砦に行けば、何か分かるといいんですが‥」
キラ・ジェネシコフ(ea4100)とファング・ダイモス(ea7482)は森の中を進みながら、そう話し合っていた。表面的には二人の考えている事は同じに見えるが、中身は反対と言ってもいいぐらいに違う。
「む‥? 皆の者待つのじゃ、砦の中より音が聞こえおる」
事前に位置は聞いてはいたが、森の中にある目的地を目指すのはそれほど簡単でもなく、それでも、ドレスタットを発ってから数日後には、順調に話にあった砦近くまで歩みを進めてきた冒険者達。
「話通りに古い砦だな。こんなとこで何やってんのか‥」
ジェンナーロ・ガットゥーゾ(ea6905)が感じたように、なるほど、昔に使われなくなったと言われるだけあって、見れば寒さや風雨をしのぐ事は出来そうだが、砦の機能が残っているようにはとても思えない。
「ローブの男の仲間か?」
「そのように思えるが‥」
ギムの言葉に、はっきりとした返答を出来る材料は、冒険者達の手元には無い。砦から聞こえる音に気づいた閃も、その内容まではとても聞き取れない。
「こうしていても始まらない、とりあえず接近してみようぜ?」
ジェンナーロが提案する。確かに、このままではどうにもならない。木の陰から出て行けば、相手に何がしかの反応があるだろう。ジェンナーロやファングを先頭に、冒険者達は砦へと接近していく。
「冒険者‥か? 何をしに来た」
突如響く声、砦の上に立った者より放たれた言葉だ。冒険者達の間に緊張が走り、身を構えさせると同時に相手が何者であるかを考えるように頭を働かせる。
「いえ、人を捜しているんですが。それより貴方はここで何を?」
ティムの言葉に対し、相手はしばらく黙った後、口を開く。
「仲間が獣に襲われて怪我をした。下手に動かさなければ治る範囲だから、ここに宿を借りてるだけだ」
そして、そのまま言葉を続ける。
「数日間ここで過ごしているが、付近に人が来た事なんて無い‥というか、こんな所にわざわざ来る奴なんているのか?」
男の疑問に対して冒険者達は説明をする。この付近の森で、確かにローブを纏った男が目撃されていて、その男を捜す為に自分達は行動しているのだと。しかし、やはり男は自分達以外の人間を付近で見たことは無いと答えた。
「ローブの男は砦には来ていないって事になりますよね。となると、どこに居るんでしょう?」
「分からんのう‥」
冒険者達は頭をひねる。
「‥皆、待ってくれないか? 確かに怪我を治す為には安静にする必要があるが、わざわざこんな所よりも普通は村まで‥」
「一つ良い事を教えてやる。ローブの男はここに来た事があるし、俺達はあいつを邪魔に感じてる」
レオニールが気づいた違和感を事を小声で仲間に言いかけた時、突如として男はそう言い放ち、砦から逃げ出してゆく。
「なっ!?」
冒険者達が何が起きているのかを判断した時には、もう遅かった。
●木々の間をぬって駆けて
砦での一悶着の後、班を分けてローブの男を捜す冒険者達。冒険者の思考を惑わせる為にだろう、盗賊団ではと疑われる男が吐いた捨てゼリフは気になるが、とにかくローブの男を捜さないわけにもいかない。
しかし、カルナック・イクス(ea0144)は足跡を伝って捜すつもりだったが中々見つからず、やっとの事で見つけた足跡を追っても、その先にローブの男は居ないどころかどうも村へと向かっている、結局この足跡は付近の村の猟師のものだろうという結論になった。
そして他の冒険者達も、とにかく相手を挟撃する形にするとは考えていたが、具体的にどうやるのかを誰も考えておらず、結局‥‥
「何かな、君達は‥? まあ、身なりからして冒険者のようだが」
ローブの男と遭遇した時には、冒険者達の背の方向に砦があった。出会う前からちゃんと行動しておかなければ、出会った後の展開を自分達が望むようになど出来はしないのだ。
しかし相手はまだ逃げ出す素振りも見せておらず、上手くすればどうにか出来るかもしれない。当初の予定通りに、まずはファングが接触を試みる。
「最近この辺りで何をしていたのか、貴方の目的を聞かせて下さい」
その言葉を聞くと一瞬意表を突かれたような表情をし、男は肩を震わせた。
「くっくっく‥‥もう少し言葉を選んではどうだ? 一体、何処の誰が初対面の相手にそんな事を教えるのだ? ああ、そうか‥君はジャイアント、戦闘以外の行動は苦手かな?」
むっとしたファングを制して、キラが言葉を返す。
「まあそうおっしゃらずに。何かを変えようとする考えで行うのなら、わたくしは止めわしませんわ‥どうぞ御好きになさって下さいな。なんなら手を御貸ししますわよ?」
男は、更に肩を震わせる。
「くははっ、手を貸すときたか。まあ確かにそのような考えを持った者は嫌いではない、が‥君の立場にその言葉は不釣合いだ‥」
このやりとりの間に、自身にレジストマジックを掛け終えたレオニールが一歩前に出る。
「確たる証拠はないが、力ずくで身柄を確保してもよさそうだな」
陰より狙いを定めていたカルナックが放った矢を華麗に回避した男は、懐よりスクロールを取り出す。男がスクロールを読み上げると、ファングは眠りに落ちた。
その彼を起こすのをカルナックに任せ、相手に突き進むはレオニール。肉薄する頃に相手はもう一度スクロールを読み上げたようだが、それに構わずレオニールはクルスソードを振り下ろす。
「ほう、抵抗したか‥? 今のも基本は出来ているようだが、貴様一人では到底私には届かんな」
自分の魔法を全く意に介さずに振り下ろされたにも関わらず、咄嗟の反応のみでクルスソードを回避して、さっと踵を返して相手は逃走を開始する。冒険者達の中ではレオニールがそのまま追う事も出来たが、先程のやり取りからして力量は歴然。一対一となれば間違いなく返り討ちに遭うだけだ。
「くそっ‥!」
「そう嘆くものでもありませんわ」
悔しげ相手を見送るレオニールをキラがなだめ、四人は仲間と合流する為に砦へと向かった。ローブの男の様子は更なる疑いをかけるのに十分‥。いや、あの様子を見ると、自分の活動がその内に追われ、疑われるのは予期していたようだ。
●それは手がかりと成り得るか
一方、砦に残った冒険者達は、もう一班がローブの男を追い込んでくるまでを待つ間に、砦内の探索をしていた。
どうやら、逃げていった相手は盗賊団のようだ。価値のありそうな物はあまり残っていなかったが、持ち運ぶのに適さない比較的重い物など、あの状況で持ち出す事が出来なかったのであろう物が、いくつかまだ砦内に残っていた。
「うーむ、これってやっぱり盗品だよな‥」
「ちゃんと届け出た方が良いだろうな」
それらを発見したジェンナーロとギムは、互いに顔を見合わせる。
「幸い、この依頼をギルドに持ってきたのは海戦騎士団の人ですからね。彼に頼めばやってくれるんじゃないですか?」
「また検品する物が増えた‥って言われるかもな」
依頼主に頼めばいいというティム、それに返したジェンナーロの言葉にその場が和む。
「どうやら砦やその周囲には、特に罠は仕掛けられてないようじゃの。唯一、ここに居た者達が逃げていった方向にはあったのじゃが」
そこへ、砦の外周を見回りに行っていた閃が戻ってきた。
彼等は、後はローブの男が追い込まれてくるのを待つだけ。だが、しかし、長い時間が経過した後に彼等の元に戻ってきたのは、ローブを男に逃げられてしまった仲間達だった。
ドレスタットへと帰還した冒険者達から、ローブの男についての話を聞いたオルファ・スロイトは、まずは依頼を終えた冒険者達を労い、そしてやはり落胆の意を示す。
「ローブの男の身柄は確保出来ませんでしたか‥。いえ‥ここは、その男を追う価値が十分あると分かっただけでも良しとしましょう。ええと、それで一番接近出来たのはレオニールさんですか? では、その男の特徴を分かっただけ全部教えて下さい」
ドラゴン襲来より始まった事件は、ゆっくりとだが解決へと進んで行く‥。