【ドラゴン襲来】欲望の渦、中心に据わるD

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月09日〜12月14日

リプレイ公開日:2004年12月15日

●オープニング

「おい、そこのあんた! そう、あんただよ。ここに居るって事は冒険者なんだろ?」
 少しやつれた表情のギルド員が、冒険者に声をかける。ドレスタットのギルドは、ここのところゴタゴタ続きで、「働く方に身にもなってみろ」と言いたい状態だ。祭りの時期は祭りの時期で、それに応じた事件が発生するし。祭りが終わってホッとしたのも束の間、今度はドラゴンである。
「とにかく人手が足りないんだ、体が空いてるんだったら手伝ってくれ」
 そういって指し示された羊皮紙には、ドラゴン退治の依頼が書かれていた。

 内容はいたってシンプル。近くの村を襲い、そのままドレスタットに向かってきているフィールドドラゴンの退治。一体だけなので、それなりに数を揃えて当たれば、どうにかなる相手だろう。ドラゴンは確かにタフだが、それ以外はごく普通の依頼の部類に入るだろう。
「結構簡単そうな依頼だろ? ドラゴンと戦えるんだし、悪くないと思うんだがな」
 それだけ言うと、ギルド員は次の仕事に取り掛かり始めた。


 ――その襲われた村。
「ええ、はい、そうです。ドラゴンはドレスタットの方に向かったはずです」
「そうか‥よし、俺達に任せておきな。暴れるドラゴンを、しっかり仕留めてやるぜ!」
「おお、なんと心強いお言葉。しかし、村からは何もお出し出来ませんぞ。なにぶん、ドラゴンによる被害で‥」
「なあに、別に報酬なんていらねえよ」
(「ドラゴンスレイヤーの名誉だけでも十分だっての。このチャンス、絶対に逃がすもんかよ」)
「‥他人を蹴落としてでも、成り上がってやるさ」
 彼の呟きを、聞く事が出来た村人は居なかった。


 ――どこかの商人宅。
「いいな、なんとしてもフィールドドラゴンを生け捕りにしてこい」
「へえ、分かりやしたよ旦那。それで‥報酬の方は、ちゃんと話通りに払ってくれるんで?」
「当たり前だ。フォールドドラゴン一体に、どれほどの値がついているかは知っているだろう?」
「へへっ、知ってまさぁ。じゃあ、ゆったりと吉報をお待ちになっていてくだせぇ」
(「だが、真正面からぶつかるのは避けたいところだな。疲労した所を襲いかかれりゃ良いんだが‥」)
 ごろつき達は、どのタイミングでドラゴンの前に出てくるのだろうか。

●今回の参加者

 ea4847 エレーナ・コーネフ(28歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea5564 セイロム・デイバック(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6282 クレー・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea8252 ドロシー・ジュティーア(26歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8417 石動 悠一郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8498 月詠 閃(40歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9104 エルリオ・フォーディック(33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●再確認と予想の範疇
「またドラゴンですか‥。とりあえず、ドラゴンについてのお話をしておきますね」
 エレーナ・コーネフ(ea4847)が、フィールドドラゴンについて知っていることを話し、改めて今回の相手の情報を整理する。ブレスは吐かず、知性は獣とほぼ同等で人語は話せない。だが、いざ走るとなれば、巨躯であるにもかかわらず足は速い。
「そうですね‥。あれは自分でも良く止めれたな、と思います」
 自分の行動を振り返りながら、ファング・ダイモス(ea7482)が呟く。
「詳しい話を聞いてみたところ、フィールドドラゴンは道沿いに向かってきておるようじゃな。やはり、そちらの方が歩き易いんじゃろうなぁ‥」
 月詠 閃(ea8498)が、ドラゴンの現在の位置を調べてきた。ドラゴンを発見して、大慌てでドレスタットに逃げ帰ってきた人達に聞いたらしい。彼等が発見した日を考えると、今頃はここから半日程度の距離だろうか。

「そうそう、すぐ前に受けた依頼では、ドラゴンを捕獲してくれと難題を言われた。一体で居るような相手なら、もしかすると同じような考えの者がいるかもしれんぞ」
 石動 悠一郎(ea8417)が言うには、ドラゴンが向かってきている事を聞きつけた者が、その捕獲を狙ってきているかもしれない。その可能性は十分にあるという事だ。フィールドドラゴン一体に付けられた値は、普通に暮らしている人々には雲の上の更に上の金額なのだから。
「もし居たら、面倒な事になりそうだな‥」
 エルリオ・フォーディック(ea9104)が、心配そうに呟く。とはいえ、用心しておくに越した事はない。ある程度の力量を持った冒険者が八人も揃えば、いくらフィールドドラゴンが相手とはいえ、多少は周囲に注意を払えるぐらいの余裕はあるはずだ。
 そんな彼を、複雑な思いで見つめる者が居た。
(「考えたり、笑ったり、偶に泣いたり、そして自分に誇りがある者は例え種族が違っても、自分らと同じ者なんや‥。そうは思うんやが‥」)
 クレー・ブラト(ea6282)だ。エルリオの耳は、人より長く、エルフより短い。共に冒険者であるので、その中では殆ど何とも思われないが、その外になると話は別だ。
 ‥‥しかし、不思議な話だ。ローマ出身の神殿騎士が、ハーフエルフに好意的などと。いつ神殿騎士の資格を剥奪されても、何らおかしくない。冒険者という、ある種のグレーゾーンに居るからこそ芽生えた感覚だろうし、あまり表に出していないからこそ、ギリギリで見逃されてもいるのだろう。


●迎合、一時的な協力
「見えました。あの影は‥フィールドドラゴンに間違い無いと思います」
 冒険者達の中で一番目の効くエレーナが、最初に歩いていく先の影を見つけた。大きなトカゲにも見えるその姿は、まず間違いなくフィールドドラゴンだろう。尤も、腕の立つ熟練の者でなければ、大きなトカゲなどと思うのはおこがましい事ではあるのだが。
「今までを見る限り、ドラゴン達にも事情がありそうですが‥。止めねば危険が降り掛かりますし、どうあっても止めなければ」
 そう言いながらセイロム・デイバック(ea5564)は、両手に持ったロングスピアにオーラパワーを付与する。
「可哀想ですが、人とドラゴンなら、私は人を護りたいです」
 ドロシー・ジュティーア(ea8252)が、凛とした表情で言い放つ。
 噂の情報では、何かドラゴン達の『タカラモノ』や『ヤクソク』が持ち去られ、それがドレスタットに持ち込まれたからこそ、ドラゴン達はドレスタットの地へと現れているらしい。しかし、そうであっても降り掛かる火の粉は払う。目の前に居る誰かを助けるのに、別に理由など要らないはずだ。

「待て! 待ちやがれ! そいつは俺達の獲物だ!」
 フィールドドラゴンとの距離が次第に詰まっていき、いざ迎え撃とうというその直前、彼等は現れた。
「獲物って‥!?」
「ドラゴンスレイヤーの誉れは、冒険者なら分かるだ‥ろ、おお? もしかしてお前が、ファングって奴か!?」
 その彼等の先頭に立つ戦士は、冒険者一行の中の一人を見て、何かに気づいたようだ。
「確かにそうですが、私はあなたに会った覚えはありませんよ?」
 ファングには自覚が無いのかもしれないが、彼はそこそこに名が知られている。ましてや、2m50にも迫ろうかという巨体と、少し前に得たタイニースレイヤーの名誉は、同じくドラゴンスレイヤーの名誉を目指す者ならば、噂ぐらい聞きつけてもおかしくはない。
「その反応だと、あんたがその本人に違いないな。なぁ‥今回はこっちにトドメを譲ってくれよ、いいだろ?」
 既に持っているのだから、今回はこっちに譲れと、そういう事らしい。
「‥ふむ、人手はいるに越した事はなし、手を組んでみるかの?」
 仲間内に聞こえる程度の声で、相談を始める冒険者達。幸いに、フィールドドラゴンは相手の数が多すぎるので警戒しているのか、身を守るような体勢でこちらと向こうの様子を窺っている。少しではあるが、相談する時間はある。
「私は、ドレスタットの民を危険に落とし入れるかもしれないドラゴンが止められれば、それで良いと思いますが‥」
「噂には聞いておるけど、ドラゴンって頑丈なんやろ?」
「俺は称号等には興味がない、無事に依頼を済ませる‥つまり、ドラゴンをどうにかできればいい」
 話は決まったようだ、一時的に協力。ドラゴンの脅威を取り除く事が優先だと、冒険者達は判断したのだ。

「分かりました! 一時的に協力しましょう!」
「ほ! 話の分かる奴で助かったぜ! 無事に俺がドラゴンにトドメを刺したら、エールの一杯ぐらいは奢ってやるよ!」
 名誉欲に駆られた者に、別に奢って欲しくはないのだが。そう思う冒険者も多かったが、今はとにかくドラゴンをどうにかする事が先決だ。
 エレーナのアグラベイションが決まり、不可視の鎖が絡みつくような感じにフィールドドラゴンは襲われるが、それに気づいた時にはもう遅い。閃が、流れるような動きから瞬時に日本刀を振るって斬り裂き、ファングやエルリオが得物を叩きつけ、セイロムのロングスピアが穿つ。
 合計して十二名の‥‥回復や補助役として後方に待機していた者も居るので、実際に攻撃を加えた人数はそれより少ないが、冒険者達の一斉攻撃を受けたフィールドドラゴンは、あっという間に追い詰められていった。


●最後の勢力
「そこまでだ! 待ちなよ、そのドラゴンは俺達が捕まえさせてもらうぜ」
 このまま一気にドラゴンを倒してしまえるかという時に、彼等は現れた。風貌からして街のごろつきだろう。
「捕まえさせて‥? 拙者の予想が当たったか?」
「生け捕り!? 何を馬鹿な!!」
 その場に最後に現れた彼等の位置は、冒険者達の後方。おそらく、このタイミングを狙っていたのだろう。悠一郎は自分の悪い予想が当たったと思い、閃は明確な敵意をごろつき達に向ける。
 しかし、このままではドラゴンとごろつき達に挟み撃ちを受けてしまう。そうなれば、一番危険なのは後方に待機していた為に、ゴロツキ達に近い位置に居る術者達だ。エレーナのグラビティキャノンや、悠一郎のソニックブームという備えもあったが‥。
「両面での戦いは不利です、一旦退きましょう」
 ドロシーは一旦後退して、体勢を立て直す事を提案する。いくらドラゴンとはいえ、傷ついた体ではごろつき達が相手だとしても遅れをとる可能性はあるが、今は無理に戦えばこちらの被害が大きくなる。
「分かった、一旦下がろう!」
 不利を感じた場合は一旦後退して、体勢を立て直す事で主導権を握り直す。それが冒険者達の考えだった。
「お、おいちょっと待ちやがれ! 下がる? ふざけるんじゃ‥」
 彼等は一つ失念していた。自分達が下がれば、その場に圧倒的に不利な状態で取り残される者達の事を。ドラゴンとごろつき達に挟まれ、その数を四にまで減らした向こうの冒険者達は、その場に立ち往生する事になった。


●リスクを避けるだけでは、成功には繋がらない
「さぁってとぉ‥。後は適度にドラゴンを攻撃して、その次は戻ってくるだろう相手と戦ってもらおうか?」
 ごろつきのリーダー格が、その場に留まった方の冒険者達の三名に言い放つ。冒険者達が一旦後退した後、あっさりと向こうの冒険者達の一人が捕まって人質にされ、言うとおりに行動せざるを得なくなっていたのだ。冒険者達が戻ってきた時には、彼等はこちらに剣を向けていた。
「諦めて去りなさい、あくまでドラゴンを庇うのなら、私は貴方方を斬らねばなりません」
「そうはいくか。気に入らねぇが、こっちには仲間の命がかかってるんだよ」
 四名居たはずの彼等のもう一人は、ごろつきのリーダー格の後ろで、他のごろつきに羽交い絞めにされている。遠目からは良く見えないだろうが、十字架のアクセサリを身につけている事からして、クレリック‥彼等の回復役だった者だろうか。
「ど、どうしましょう‥。これでは‥」
 対応に困る冒険者の心情を、エレーナが代弁する。目の前に居る者を倒してまで、ドラゴンの退治を優先するか‥いや、あそこまで傷ついたドラゴンには、もう暴れる力は殆ど残っていないだろう。怪我が治った時にどうなるかは分からないが、一時的にはその脅威はなくなっている。
「仕方ない、ここはもう引き下がるしかないか‥」
 ‥‥不覚。冒険者達の胸の内は、セイロムの言葉に対する反応を見れば一目瞭然だった。