大鼠退治、出来高払い
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月28日〜08月04日
リプレイ公開日:2004年08月02日
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●オープニング
パリから徒歩で3日、少し遠めのその村は一つ問題を抱えていた。
鼠、ジャイアントラットである。鼠算、という言葉もあるように、繁殖力が旺盛である鼠は、追い払っても追い払っても、また少し日にちが経過した頃には村はずれの洞窟や廃墟に現れるものだ。その為、度々冒険者ギルドにはジャイアントラット退治の依頼が舞い込む。今回の依頼も例に洩れず、村はずれの洞窟に住み着いた鼠退治だ。
ジャイアントラットも駆け出しの冒険者の稼ぎ口の一つなのだが、イマイチ人気は無い。それもそのはず、洞窟内や廃墟など、陰気な場所でちょこまか動く鼠を追い回す。なんというか‥‥面倒なのだ。牙の一撃には油断は出来ないものの、ジャイアントラットは決して強いモンスターではない為、爽快な達成感は得られず、その手間に見合った報酬が貰えるかというとそうでもない。
村にしてみても一度の依頼で出来るだけ多くの鼠を退治してもらい、次に退治を考える程に鼠の数が増えてしまうまでの期間を長くしたい。村の資産には当然限りがあるのだ。そこで村長は冒険者への報酬額に対して一案してみた。
「鼠退治か。報酬は・・出来高払い?」
壁に貼られた依頼書にはそう書かれていた。倒せば倒しただけ、報酬が増えるのだ。普段は敬遠しがちな依頼でもこれならば、特に多くの鼠を退治する自信のある者なら、こぞって受けてみたがるかもしれない。更に、鼠全滅など成果次第ではパリまでの帰路分の保存食を用意致します、との一文もあった。
相手は鼠だが数は十分、自分がどこまで戦えるのか、試してみるのもいいかもしれない。
●リプレイ本文
●先行部隊
ノーマルホースを飼っている薊 鬼十郎(ea4004)とルクス・シュラウヴェル(ea5001)、それに自身の小柄さを活かして同乗したピチュア・リティ(ea5038)、以上の3名は他の5名に先んじて村に赴いた。相談の結果、やはり全滅は狙ってみようとの事になったからである。普通に戦ったのでは到底それは望めないため、何かしらの策を打つ必要があり、彼ら3名はその準備の為に先行したのだ。
「おお、お早いお着きで。しかし、たった3名とは。え?なるほど・・・・そういった事情がありましたか」
その彼らを出迎えてくれたのは、代がわりしたばかりなのだろうか、比較的若い部類に入るであろう村長だった。冒険者達の事情を聞くとその少数の理由には納得してくれ、鼠が巣食う洞窟の場所を教えてくれた。どうやら度々住み着かれるらしいのだが、入り口を塞いでも野盗やゴブリンが(「何か隠してあるに違いない」)とでも思うのか勝手に開けてしまうため、村としても放置するしかないらしい。
ともかく、後続の冒険者達が村に着くまでに彼らは予定している罠の準備を行わなければならない。毒草の探索に、穴を塞いだりジャイアントラットが逃げにくいようにする為の杭などの木材の加工。どちらも村人の手を借りるつもりだったが、普通の村人が毒草の知識は持っていない。仕方がないので、木材の加工のみを手伝ってもらう事にした。
余談だが、道中ピチュアは食料を他の二名から分けて貰っていた。彼女は自身の体力を考慮してなのか、保存食を持ち歩かない主義らしいが、これは今回のようにやや離れた所に向かう場合には危険である。満足に食事を取れない状況では、普段通りの実力は出せなくなる場合もある。
●二つの策、毒餌と燻し
後続の5名は、先行した3名に一日弱遅れて村に到着した。予定よりえらく早いが、これには事情がある。ともかくもこれにより、先行した者が準備に割り当てれた時間はあまり無かったという事になってしまった。毒草がそうそう何処にでも生えているわけもなく、また生えていたとしても一日足らずで見つけるのは容易な事ではない。
毒草知識を持っていたのはルクスだけなので分かれて探索するわけにもいかず、成果を挙げれたとはとても言えなかった。同じく毒草知識をもったリズ・シュプリメン(ea2600)や以心 伝助(ea4744)がその場に居れば、また話は変わっていたのだろうけれど。
その伝助だが、代わりに道中に毒草を探しながら来るつもりだった。だが、パリを出発した後の最初の野宿時に、自分ぐらいしか満足に食料を持ってきていない事に気づかされた。まさかパリに戻るワケにもいかないので、急いで村に向かう事になった。後続組が予定より早く村に着いたのにはこういった事情があったのだ。依頼に必要な物をあらかじめ準備しておくのは冒険者としての基本である。
次は洞窟を煙で燻す策だ。猟師達も獲物を煙で燻す事はあるし、不思議な事ではない。それに、今回はルクスが村長に説明したように火と水、両方のウィザードが冒険者の中に居たため山火事の心配もないだろう。燻す為に洞窟の入り口を塞ぐ木材の加工も、村人達は快く引き受けてくれていた。あとは予定通り、ジャイアントラット達が休息しているであろう時間を見計らい、入り口より10m程奥に燃やすものを積み上げて火をつけ、入り口を塞いで待つだけだ。
村人の木材の加工をお願いしていたので毒餌の作戦よりもこちらを優先する事になり、合流した後続組も合わせて、冒険者達は燻す為に燃やす草木を集める事に専念した。
●黒き濁流、大鼠の群れ
ピチュアの助言により、ジャイアントラット達が活動をしていない時間帯を見計らって、冒険者一行は洞窟に向かう。下準備は万全だ。入り口から少し入ったところに燃やす予定の植物を積み上げ、火をつける。アクシデントは丁度その時に起こった。
確かにジャイアントラットが活動せずに休息を取っている時間帯はある、そしてピチュアが言った時間帯と大きなズレもない。だが、巣にいるジャイアントラット全てが深い眠りについているという保障はない。何に注意を払うでもなく洞窟に入り込めば彼等に気づかれてしまう。
自分達の棲家に勝手に入り込んできた者を排除すべく、数匹のジャイアントラットが最初に動いた。それを感じ取って仲間を動き出す。洞窟は案外に奥が深いのか、音の発生している地点が遠い為、それは小さな音ではあったが5・・・・いや10に近い大鼠の足音が劉 深川(ea2058)と伝助の耳に入った。それ以外にもリズ、鬼十郎、ドロテー・ペロー(ea4324)、ルクスらは、奥より外敵を排すべく迫ってくるモノの気配を感じていた。
「こ、ここから早く逃げるぞ!そして早く入り口を塞いでしまおう!」
とっさにその場の誰かが口走った。このままここに居れば、間違いなく全員ジャイアントラットの餌になってしまう。慌てふためきながら一行は洞窟を飛び出ると、すぐさま用意しておいた木材で入り口を塞いだ。しばらく時間が経過しても、入り口を塞いだ木材に何事も起こらない事に冒険者達は胸を撫で下ろし、ジャイアントラット達が燻されるのを待てる事になった。入り口近くまできたジャイアントラットは、大量に発生し始めた煙を嫌い、奥の方に戻っていってしまったのだ。
十分に時間が経過した後、おそるおそる塞いでいた木材を外す。あとは弱ったジャイアントラットを倒して終わりだ。冒険者達は逃さず倒せるように、洞窟の入り口を包囲する。そして数分後、ジャイアントラット達が洞窟から出てきた、次から次へとどんどんと。煙で燻されたのが原因なのか、彼等はここが棲家として不適切だと判断したようだ、ジャイアントラット達の行動は逃げの一手であった。ただ、やはりというべきかその足元はおぼつかない。
クリス・ハザード(ea3188)は既にアイスチャクラの魔法を成就させ、氷の円盤を手にしていた。彼女はこういった射撃武器の扱いは決して得意ではない、むしろ苦手な部類に入る。だが、今の相手なら最低限度の命中力さえあれば、あとは威力が高ければ高いほど良い。彼女の手から放たれる円盤はジャイアントラットを切り裂き、そして手元に戻ってきた。
その威力という点なら鬼十郎が放つ大技は飛びぬけていた。
(「入った!・・・・ですが、このような相手では。もっとちゃんとした実戦を積まないと・・・・)」)
ブラインドアタック+ポイントアタックEXを合成した大技で、ジャイアントラットの首を刎ね飛ばす。その威力相応に、普段なら命中させるのが非常に難しいが、今の相手ならば話は別である。
彼女達二人が一撃の威力を見せるなら、こちらの二人は素早い連撃を見せた。伝助とピチュアの二人である。
伝助は両の手にナイフを持ち、ダブルアタックによる攻撃を予定していたが、相手が逃げの一手で攻撃してこない事が分かると、更にその攻撃を増やした。ダブルアタックEX、陸奥流を修めている彼はその両の腕に構えたナイフと蹴り、そして頭突きを駆使して次々と攻撃をジャイアントラットに叩き込んでいった。普段からでも命中率の高いこの攻撃は、今の相手ならほぼ必中の域だ。
「紅蓮の火蝶ピチュア、いっくよ〜♪」
伝助が三連撃ならピチュアは四連撃だ。ファイヤーバードによって魔法の炎を纏った彼女は、その小柄な体格に見合わない威力の体当たりを繰り返した。継続時間が10秒しかないため何度も掛け直す必要があり、少々効率が悪いのが少し残念ではあった。
深川は一人出遅れてしまった。最初、ブラインドアタックによる攻撃を予定していた彼だが、このCOは通常よりも動作を多く必要とするため、彼の武装では動きがついてこない。それに、今の相手ならブラインドアタックはあまり必要ではない。少し悪い事が重なった為に不運とも言えるが、彼の戦果は微々たるものだった。
「待ちなさい!逃がさないわよ〜。私しつこいんだから!」
倒せば倒しただけ報酬は増える。結果的に数に任せて包囲網を突破していくジャイアントラットの一部を、ルクスがコアギュレイトで動きを封じて、ドロテーが矢で射止める。煙に燻され、ある程度傷を負わされていたジャイアントラットにその矢は致命傷となった。
●全滅はならず
「皆さん大きな怪我もなくて何よりです」
逃げの一手、と先に表記したが逃げる道が塞がれていた場合は、ジャイアントラットも力付くで道を開けようとした。普段からすれば避けるのに苦労はしないような攻撃だったが、何度も攻撃されれば一、二撃はもらう事もある。それらの軽傷は、リズがリカバーで治してくれた。駆け出しの冒険者にはちょっとお高いリカバーポーションを使わずにすむのは、かなりありがたい。
「華国では鼠も食べるんですけど、あんまり、美味しそうじゃないですよねぇ」
ジャイアントラット体長は約1m、量としては十分だが深川の呟いた事は尤もだ。
「火の用心♪」
最後にクリスとピチュアがしっかりと消火を行い、冒険者達は洞窟を後にしたのだった。
成果の方だが、残念ながら全滅とはいかなかった。冒険者の数に比べて一度に逃げようとするジャイアントラットの数が多かった為、いくらかの数を取り逃がしてしまったのだ。しかし、これでしばらくの間村がジャイアントラットの脅威に晒される事は無くなるだろう。村人からの感謝の言葉を受けながら、冒険者達はパリへの帰路に着いたのだった。