ゴブリン退治、愛を取り戻せ

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月11日〜01月18日

リプレイ公開日:2005年01月19日

●オープニング

「ん? ああ‥依頼を受けるのか、どの依頼だ?」
 冒険者ギルド内の日常。依頼書が張り出され、それを自分ならこなせると思った冒険者が受け、同行する仲間と共にギルドを発っていく。そして、数日後には依頼の結果が、報告書という形をとってギルド内で管理される。
「まだあんまり慣れてなさそうだな、依頼を受けるのはまだ2、3回目かい?」
「いや、これが初めてだ」
 新しく冒険者になる者が現れるのも、また日常。
「そうか、初めてか。色々と分からない事もあると思うが、頑張ってな」
「あぁ‥ありがとうギルドの人。‥で、これでいいのかい?」
 依頼を受ける為の手続きを終え、同じ依頼を受ける仲間の元へ向かう冒険者。小さいが、何よりも大事な一歩は今踏み出されたのだ。この数日後、彼は仲間達と共に目的の村へと辿り着く。依頼内容にあったゴブリンの退治の為に。


 冒険者達が村へと到着すると、一人の女性が急いで駆け寄って来た。何か伝えたい事があるようだ。
「依頼を受けてくれた冒険者さん達よね? お願い‥盗まれた物の中に、彼に貰ったアクセサリーがあるの」
 愛の囁きと共に渡されたそれは、街へと出て行けば少しはありふれた物なのかもしれないが、こんな村ではそうそう見る事で出来ないような綺麗な装飾が施されたもの。無造作に掴んで袋の中に放りこまれたので、今も無事であるとは言い切れないが、出来るかぎり綺麗なまま取り返して欲しい、と。
 そう言葉を告げると、彼女は家屋の方へと戻っていく。この後に、村の村長から詳しい話を聞いた冒険者達は、「一人だけ怪我を負った若者が寝ている」のがあの家だ‥‥という事を知ったのだった。

●今回の参加者

 ea8546 ノルディ・クスタリアス(23歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea9452 ルチル・クォーツ(15歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9568 ミスト・フロール(25歳・♂・バード・パラ・フランク王国)
 ea9912 ヴァレリー・リヴェラ(39歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb0253 キエルアメン・モルノ(16歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 eb0353 タケチ・インジャスタ(33歳・♂・バード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb0511 チェリー・ブロッサム(29歳・♀・レンジャー・パラ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●ありふれていて、一つしか無い物
「依頼を受けてくれた冒険者さん達よね? お願い‥盗まれた物の中に、彼に貰ったアクセサリーがあるの」
 そう言って冒険者を呼び止めた村の女性を、今度はミスト・フロール(ea9568)が呼び止めた。
「ちょっと待って。出来ればもう少し詳しい内容を聞かせてくれないかな? アクセサリーって言われても、結構色々あるわけだし‥」
 ちょっと照れながら村の女性は質問に答えてくれた。アクセサリーは髪留めで、結構細やかな装飾がされていると自分は思ったが、贈ってくれた彼の話によると、街の方ではそれほど珍しい物ではないのだと言う。ただ、一介の村人ではそうそう買える金額の物では無いというのは、贈られた女性にもミストにも容易に想像出来た。
「うん、わかった。私たちに任せてよ、ぜーったい取り戻してくるから! ね?」
 チェリー・ブロッサム(eb0511)の言葉を受け、村の女性は軽く会釈した後に家屋の方へと再び足を向けた。

「それにしても‥アクセサリーを盗むとは、ゴブリンも身を飾りたいと思うものなのだろうか?」
「いや‥どうなのだろうな? 正確な所は分からないが、価値があるものとして奪ってはいきそうだが‥」
 燻し作戦用の木材を少し村人に分けてもらいながら、ヴァレリー・リヴェラ(ea9912)とノルディ・クスタリアス(ea8546)はゴブリンがアクセサリーを奪っていった事について話し合っていた。
「案外、何だか知らないけど綺麗で気に入ったとか、そんな感じなんじゃないのか?」
「たまたま目に入ったからか? まあ、ゴブリンの考える事は良く分からんな」
 季節柄、暖を取る為の薪は結構貴重なので少しだけ分けてもらう事にして、残りは道中でミストが率先して集めていたような枯れ草を、予定している燻し作戦に使う。ちなみに、ミストは薪を拾うつもりでいたそうだが、流石にそれは落ちてない。

「いやあ、お手伝い出来なくて申し訳無いです」
 村で情報収集と作戦の為の準備を終え、ゴブリンの棲家へと向かう冒険者達の元へ、更に二名の冒険者が合流してきた。ルチル・クォーツ(ea9452)とタケチ・インジャスタ(eb0353)、どちらもハーフエルフでドレスタットのような街中ならまだしも、地方の村へと移ってくれば彼等への風当たりは強い。
『代わりに、ここからゴブリンの棲家までは燃やす物持ちますからぁ』
 思っていたより来てくれた冒険者が少なかった事に村長は不安を感じていたので、もう二人の仲間は枯れ草を集めていると説明しておいたのだが‥
「へ? タケチ、今なんて言ったんだ?」
『え? ヴァレリーさん今なんて言ったんですか‥?』
 その場に流れる沈黙。少しの後に、「あれ、どこの言葉?」とか「知らない‥」とか「もしかしたらラテン語って言葉かも‥?」とか。幸い事前にシフール通訳の下で大体の作戦は話し合えていたので、何となくお互いの意思は通じたらしく、この後タケチは荷物を抱えていた。


●「あったかいゴブ〜」とでも言っていたのかも知れない
 森へと入り、枯れ草をかき分け進んでいくと、程なくしてゴブリン達が棲家としているのであろう穴倉が見えてきた。
「皆、荷物を抱えて疲労は無いか? 少し休んでから仕掛けても良いが‥」
 ノルディが後ろを振り返りながら仲間を気づかう。とは言っても、ここに辿り着くまでに道を、荷物を背負いながらでもスムーズに進めるように、彼女が枝を追ったり枯れ草をしっかりと踏み倒したりして、道を作りながら先導をしてきたので、冒険者達にそれほど疲労は無かった。

「今見張りは居ないみたいだし、早速やっちゃいますか」
 チェリーの言葉を受けて、ルチルとタケチが背負っていた分とヴァレリーの馬に積まれた分、それら燻し作戦用の枯れ草などを穴倉の前に置き、ミストが火打ち石で火をつける。しばらくすると火は大きくなって多量の煙を吐き出し始め、さあこれを扇いで煙を穴倉の中に、となったその時、その場に居る人影が増えている事に冒険者達は気づいた。
 この依頼に参加した冒険者の数は七人で、ここにある人影も七つ。しかし、内二人が少し離れた位置に居るから、ここにある人影は五つじゃないとダメなわけで。つまり、今そこで火に両手をかざしているのは‥
「「ごっ、ゴブリンがいるーーー!?」」
 奥行きのある洞窟なら大丈夫だけど、単純な穴倉の前でこんな事されてたら出てきます。

 大慌てで扇いで相手の方に煙を流してやると、少し苦しそうにしながらゴブリンは唸り声を上げて、まだ穴倉の中にいる残りのゴブリン達をこの場に呼び寄せた。しかし、冒険者達に相手が全員出揃うのを待つ理由もなく、二体居るゴブリンへと攻撃を加えていく。
「そぉーれ!」
 遠方より飛来した矢が、ドスッと音を立ててゴブリンの目に突き刺さる。
「あんたの相手は私だ」
 もう片方のゴブリンには、自慢の銀髪をなびかせながらノルディが肉薄してダガーを突き刺し、ミストが両手に嵌めたナックルでタコ殴りにする。ミストの細腕ではダメージになっているのかは少し怪しかったが、ゴブリンにとっては堪ったものじゃないだろう。
 相手の残りが穴倉から出てきた時にも、戦闘は不得手ながらもタケチが前に出て前衛が囲まれないようにし、更に馬が戦闘に怯えた為に出遅れていたヴァレリーも加わったので、戦いは終始冒険者優勢で進んでいった。全体的に優位を保っていれば、ルチルやチェリーといった後衛も安心して攻撃に専念する事が出来、一層効果的にウインドスラッシュや矢を撃ち込めるというものだ。

「ヤケにでもなったか?」
 大振りの攻撃をノルディが華麗に回避する。その横では、遅れを取り戻すかのようにヴァレリーがロングソードを振り回し、また、二人が複数のゴブリンと対峙しないようにタケチが脇を固め、ミストは相変わらずゴブリンをぼっこんぼっこん殴っている。
 少し場が混雑してきたので、チェリーは矢を打ち難そうにしていたが、ルチルの方はお構いなしにどんどんとウインドスラッシュを撃ち込む。必中という利点を持った、対象を取る魔法の強みだ。
 最後、背を向けて逃げ出そうとしていたゴブリンに、ヴァレリーがその背後よりロングソードを振り下ろして決着はついた。どうにもゴブリン達はオーガ族の中でも、比較的軽い怪我(あくまで比較的だが)で逃げ出し始めるので全部を倒せたわけではないが、あれだけの目に遭えばこの付近に戻ってくる事も無いだろう。
 作戦は相手に気づかれてしまったものの、相手がゴブリンだった事もあってなのか上手い具合に全員が出てくる前に戦闘を開始。少しは怪我を負わされたものの、冒険者にとってはこれぐらいでは大した怪我ではない。わざわざリカバーポーション等を、使ったりする必要も無いだろう。


●山ほどの荷物を抱えて
 冒険者達は無事にゴブリン達の退治を終え、穴倉の奥に雑多に積まれていた‥村から盗まれた物の数々を無事に取り返して村へと帰還した。
 しかし、やはりと言うべきか、ハーフエルフのルチルとタケチは村の中へと入っては行けないし、また二人も行こうとしない。同行した冒険者にエルフが居なければ‥、もしくは自分の耳を不自然なく隠す手段を講じていれば、入って行けただろうが‥。
「皆で一緒に届けたかったんだけどなぁ‥」
『皆で一緒に届けたかったんだけどなぁ‥』
 待ってる間の時間を潰す為に話をしようにも、お互いに言葉が通じない。だから二人が気づく事は無かったが、ぼんやりと空を眺めながら呟いた言葉は、実は隣で呟かれたそれと同じ意味だった。

「約束したよね? はいこれ、大事にしてね」
「ちょっと汚れちゃってて、ごめんなさいね」
「あ、ありがとうございます! これぐらいなら、全然平気です‥。ゴブリンに盗まれてしまった時は、もうこんな状態で手元に戻ってくるなんて思えませんでしたから」
 チェリーから髪留めを渡してもらい、もう一度「ありがとうございます」とお礼を言った後で彼女は再び家屋の方へと足を向け、軽く駆け出していく。
 今彼女を追うのは野暮というものだろう。そう思った冒険者達は、残りの仕事‥村の村長の所に報告と奪い返してきた荷物を引き渡しに向かう。村長も村長で、村の女性に負けず劣らずの礼を冒険者達に述べてくれた。村から奪われた物は金品というよりも食料ばかりだったが、まだ冬の抜けきらぬ時期に蓄えを奪われるのは、村としてかなり困る。

 こうして、冒険者達は初めての依頼を無事に終え、ドレスタットへの帰路についたのだが、今回は街道沿いに歩いていける村で、宿も途中にある村で借りられたので何も問題は無かったけれども、そうはいかない場合の依頼もこれから受ける事になるだろう。
 ともあれ、冒険者として歩き始めた彼等の行く先に栄光あれ。