くれりっく と どーる

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 36 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月18日〜02月23日

リプレイ公開日:2005年02月26日

●オープニング

「ねえ、やっぱり不安よ‥」
「しかしだな、子供達の話ではよくお話も聞かせてくれる良い人だと‥」
 ひそひそ。
「それに、少し前からあの家屋で変な音がするようになったんだろ?」
「それの調査を引き受けてくれたのは良いんだけど‥」
 ひそひそひそ。
「でも、やっぱり不安よ‥。いくらなんでも時間がかかり過ぎてない‥?」
「いやいや、これぐらの期間はかかるのが当然なのかもしれないぞ」
「機嫌を損ねて、好意で無料でやってくれているのがフイになったらどうする」
「でも、何の説明も無いのも怪しくないか?」
「そうよ、この前子供達が、盗み見した時に何か人形に向かって話しかけてたように見えたって言ってたわ」
 ひそひー‥あれ、なんか今、変な内容があった気がする。
「うーむ、ここはやっぱり依頼してみるのは‥」
「しかし、依頼するのもタダじゃないぞ。ましてや身の危険があるとなれば‥」
「話を聞いてきてもらうだけにしたらどうかしら? 何か変な所があれば、気づいてもらえるんじゃない?」
「少しズルい気もするが、うーむ‥‥」
 後日、一風変わった依頼が冒険者ギルドに舞い込む事になった。


 ――数日後の冒険者ギルド
 依頼の内容は、村外れにある家屋で起こっている事を調べてきて欲しいというもの。
 その家屋だが、少し前から変な物音がするようになり、時には物が宙に浮いているようにすら見えたらしい。そこを、偶々通りがかった壮年のクレリックが調査してくれるというので、村人達は是非にもとお願いしたのだが、結構調査は長引いてしまっているようだ。
 その壮年のクレリックは善意でやっているので、村としては金銭面は全く問題無いのだが、実はその家屋は数年前に住む者が居なくなってから子供達の遊び場となっていたので、その壮年のクレリックの元に子供達が良く出かけて行ってしまうそうだ。
 調査の合間の休憩中などに壮年のクレリックも子供達に良く応対してくれ、色々と旅先で起きた話を聞かせてくれるらしい。もちろん、調査を再開する際にはちゃんと子供達に危険が及ばないよう、家屋から離れるようにしてくれている。
 しかし、調査にしてはやけに長い期間をやっている。いや、自分達には知識も無いし、これぐらいの期間を要するのは当たり前なのかもしれないが‥。それともまさか、何か変な事でもしているのだろうか‥。不安を覚えた村人達は、村長に頼んで依頼をしにいってもらったというわけだ。

 具体的には、家屋の調査がどれぐらい進んでいるのかという事と今何をやっているのかという事、それに人形は何に使っているのか等を壮年のクレリックに話を聞いてきてもらい、自分達に分かるように説明してもらいたいという。
 一応結果次第ではあるのだが、家屋の調査は引き続き壮年のクレリックにしてもらうつもりなので(だって無料だし)、冒険者達には別段調査をしてもらう必要は無いとの事。
「まあ、ちゃんと説明してもらって不安を取り除いて欲しいっていう依頼か?」
「クレリックの人もちゃんと説明すればいいのに‥」
「単に面倒だからなのか、それとも言えない理由があるのか‥」
 依頼書を読む冒険者達の感想は様々だった。

●今回の参加者

 ea2792 サビーネ・メッテルニヒ(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea7107 ノーテ・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7211 レオニール・グリューネバーグ(30歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ea7906 ボルト・レイヴン(54歳・♂・クレリック・人間・フランク王国)
 ea7935 ファル・ディア(41歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea8210 ゾナハ・ゾナカーセ(59歳・♂・レンジャー・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●村人達の話
「人形‥美少女とかだったらやだなぁ‥ブツブツ独り言って、アブないよね」
「あの人、前は普通にズゥンビと一緒に過ごしてましたからね‥。アブないといえば、アブない人です」
「そういえば、ノーテさんは以前にモリスンさんにお会いした事があるのですよね。どんな方でした?」
 ドレスタットを発ち、雑談でもしながら目的の村を目指して歩いていく冒険者達。そんな中で、エヴァリィ・スゥ(ea8851)の呟きに対して、少し苦笑を浮かべながらノーテ・ブラト(ea7107)が返すと、サビーネ・メッテルニヒ(ea2792)が今回の依頼の中心にいる壮年のクレリックについて聞き返した。
「有り体に言えば、意志の固い人‥でしょうかね?」
 ノーテの知っているモリスン・ブライトという人物は、以前はなんと村の墓地より遺体を持ち出して研究をしていたのだという。これが穏便に済んだのは、その村人達の好意のおかげ‥‥つまり、行き過ぎる面のある人物だが、親しかった村人から好かれていた。
「なるほどな。退治にしてはえらく時間が掛かっているのでは、という今回の依頼。そういう人物が行っているのだとしたら、ノーテ殿の言うようにいつの間にか研究をしてしまっているのかもしれん」
 合点がいったレオニール・グリューネバーグ(ea7211)が言葉を漏らすと、ノーテと同じように苦笑を浮かべたファル・ディア(ea7935)が、そのクレリックの人物像に対して感想を述べる。
「しかし、まあ‥求道的な姿勢は褒められますが‥。少々、視野狭窄気味なのでは」
「研究者というのはそういうものだろう。熱中すれば、周りはもちろん自分の事も見えなくなる‥私もそうだ」
 最後に言葉を放ったのは、ゾナハ・ゾナカーセ(ea8210)。
 とはいえ、ここに居る冒険者達の複数が感じているように、最低限度は村人へと説明して理解を求めるのが筋なのではないだろうか。ただ、ノーテが更に説明を付け加えるには、どうにもそういった部分が抜けてしまってる人物らしいのだが。

 それから二日後、村へと到着したのはその日の昼前頃。冒険者達は村長から、依頼を出してから冒険者が村に着くまでの間の状況を聞き、ルメリア・アドミナル(ea8594)などは、モリスンへの差し入れとして昼食を用意してもらっていた。
「一緒に食事をしながらの方が、お話もしやすいと思いますしね」
 そうして休憩も兼ねて、差し入れの昼食が出来るのを待っている間、村人達から気になる話が耳に入った。
「子供達が言ってたんだがね、人形が喋ったって言うんだよ」
「ああ、それならウチの子も言ってたな」
 子供の言う事‥ではあるが、少しだけ不安を覚えながら冒険者達は村の外れへと向かう。
「まさか‥、相手はポルターガイストだけでは無かったとか?」
 ボルト・レイヴン(ea7906)が呟いた事が、本当ではない事を願いつつ‥。


●噂通りの頑固者?
「冒険者‥か? 見たところ怪我人が居るわけでも無し。私に何用かな?」
 モリスンも丁度昼食を取るつもりだったのか、村の外れにある家屋からこちらに向かって来ていた。そこを呼び止めた所、返ってきたのがこの言葉だ。
「どう切り出したものかな‥。とりあえず、自分達はギルドから依頼を受けて、この村に来たのだ」
「ギルドから依頼だと‥? どういう事だ。村外れの家屋の件だとは思うが、あの件は私が‥」
「まあまあ‥落ち着いて。確かに貴重な研究材料でしょう、ですからこちらが受けた依頼も、その辺りの事情は考慮されてまして」
「村の皆さんから昼食も預かってきました。お互いに話が長くなりそうですし、ご一緒にどうですか?」
 レオニールが話を切り出すと、やはりと言うべきか相手は怪訝な顔をしたが、そこをすかさずファルとルメリアが口を挟んで、相手を話を聞いてみようかと思うように持っていく。自分の事情について多少の理解があって、丁度取ろうとしていた昼食を持ってきてくれている。モリスンにこの申し出を断る理由はない。

「お久しぶりです。えーと、自分のことを憶えていますか?」
「‥すまん。何処で会ったかな?」
「以前、ズゥンビを使って研究されてた時に、今回と似たような感じでお会いしたのですが‥」
「おお、あの時の神聖騎士か。あれ以来、なかなか研究対象に困っていてな、この村の家屋の話を聞いた時には‥」
 話を聞きながら冒険者達は思う、何か根本的な部分が分かってないというか何というか。結局、前回も今回も村人に迷惑を掛けているという点では同じなのだ。ゾナハが言ったように、それが研究者の性なのかもしれないが‥
(「根元は善人だけに、余計に始末が悪いよね」)
 エヴァリィの思っている通りである。
「それで、こちらが受けた依頼の内容なのですけどね」
 相手の話が一旦切れた所を見計らって、サビーネが自分達が受けた依頼の内容をモリスンに伝える。まず、この依頼が冒険者ギルドに出されたのは、村人達が不安を感じたからだという事から。
「村人達は貴方の事を信頼してるのと同時に不安がっています。話を聞くに、確かに貴方の研究は有意義な事だと思いますが、何も事情を説明されぬままにされている村人達の心情も、考慮していただけますか?」
 その次にはファルが、何故村人達が不安を感じているのかという事を。
「新たな退魔法の確立は、人々の為に為ると思いますが、その為に村の方々に迷惑を掛ければ本末転倒では無いでしょうか」
 更にルメリアが、言葉を繋げて。
「他者との軋轢を防ぐためにも、自らの規範・当面の行動については理解を求めるのが筋かと思うが‥違うであろうか」
 最後にレオニールが、村人への説明をモリスンに促した。
「う、ううむ‥」
 見事なまでに、モリスンは言葉に詰まってしまった。何しろ、似たような事を以前にもやってしまっているので、自分で同じような失敗をしている事に気がついたのだろう。
「分かった、村人に説明はしよう。ただ、研究自体は続けるが」
 やはりモリスンは、この研究を止める気は全く無さそうだ。もし、強行な手段をもって研究の中止をさせようとしたり、土台無理な話として研究の否定をしていれば、モリスンは大きく反発をしていただろう。


●行き詰まりと転機
「それで、研究がどの位進んでいるのですか?」
 村外れの家屋の方へと視線を移しながら、ノーテが研究の進展度合いを問うと、モリスンは一転して小難しい顔になる。
「実を言うと行き詰まっている。‥何か、何かが欠けているような感覚はするのだが」
 何か、とは別に周囲への気配りでは無しに。
 アンデットの憑依を強制的に解く、考えてみればかなりの力技である。もし研究が成功したとしても、一部の‥修行に修行を重ねた、実力ある者にしか行使出来なくなるのではないか、いや‥未だ成功に繋がるキッカケすら見えない状態でそれを考えるのは、おかしな事か‥。
「魔法も万能ではありませんからね‥」
「あまり根を詰め過ぎるのも、良くないと思いますし」
 モリスンの言葉をかけるルメリアとファルの頭の中に、フッとよぎるものがあった。冒険者なら一度や二度は耳に入っているだろう、魔法のアイテムだ。しかし、魔法のアイテムもかなり希少な物である。果たしてその要素は、モリスンが感じている欠けた部分を埋めるピースになるのだろうか‥。

「な、なんか‥空気重いね‥」
「そうだ。村で子供達が人形が喋るとかどうとか言っていたのだが、どういう事なんだ?」
 エヴァリィが思わず呟いてしまうぐらいに落ち込んだ空気を変える為に、ゾナハが話題を変えようとした。そうでなくとも、この話はちょっと真偽を確かめておきたい。今までのモリスンの態度から、ボルトが心配したような事は無いだろうが‥。
「ああ、その事か。それなら‥」
 そう言いながら、モリスンは懐から人形を取り出した。どうやら肌身離さず持ち歩いているらしい。‥この時点で思わず何人かの冒険者は後退った。
「こういう事よ」
 なんか裏声が聞こえた。冒険者達はモロ引きである。
「なんだ、ノリの悪い者達だな。子供達は喜んでくれたぞ?」
 不思議そうにモリスンは頭を捻るが、特にエヴァリィなんかは先程までより明らかに距離を置いている。
「な、なるほど‥。なかなかお上手だったけれど、なにかコツみたいなものはあるのか?」
 あ、ゾナハが食いついた。微妙な位置でセーフっぽいが、行ったら戻って来られなくなるかもしれないよ。


●あそこは子供達の秘密基地
「では、モリスンさんの方から村の人達に説明をお願いしますね」
 サビーネに促されて、モリスンは村人達へと現在の状況の説明を始める。サビーネだけでなく、他の冒険者達も半数以上がモリスン自身が説明したほうが余計な誤解も招かず、また村人達の不安感もより取り除けるのではないかと考えていたのだ。
「どんなに時間が掛かろうとも‥あの方なら必ずやり遂げますよ」
 ファルがそう呟いた。説明の途中、自分の研究についてを語る際にちょっと熱くなり過ぎたのか、慌ててノーテやルメリアがフォローに入ることもあった。しかしそれは、モリスンが真摯にこの研究に打ち込んでいる事の表れなのだろう。

 そして、村人達への説明が終わった後、モリスンから一つ提案を冒険者達は受けた。
「一緒にポルターガイストを退治してくれないか。思いついたの方法は殆ど試し終えたし、何よりこの人数で一気を仕留めてしまえば、家屋も殆ど傷つけずに終わらせる事が出来る。‥ですって」
「どうする?」
 見れば、物陰からいくつかの小さな瞳がこちらを伺っているのが分かる。
「もう答えは出てるんじゃないですか?」
 この後、冒険者達はこの村に宿を取って疲れを癒し、ドレスタットへと帰っていく事になる。