ローブの男を捕縛せよ

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:04月14日〜04月21日

リプレイ公開日:2005年04月22日

●オープニング

「ようやくここまでこぎつけれましたよ」
 オルファ・スロイトは今一度冒険者ギルドに足を運んできていた。既に二度逃してしまったローブの男の足取りが、ようやく掴めたのだ。相手はどうやら地方の村を転々としているようで、向かう先を予測してそちらへ向かってもらい、今度こそ捕獲してもらいたいというのが今回の依頼のようだ。
「冒険者の皆さんが集まってくれる頃の相手の位置、これはこちらの予測で間違いないはずです」
 そのオルファの言葉に、ギルド員は少し納得の行かない部分を感じる。いくらなんでも、こちらの予測に間違いないとは、どうして言い切れるのだろう。それを感じ取ったのか、オルファは言葉を続けた。
「‥一定のルートを巡回しているようなんですよ。また、こちらの目を引く気だとは思うのですが」
 前回、かなり追い込まれたはずだというのに、まだ懲りないというのか。ローブの男はスクロールを巧みに使用して戦闘を行うが、使える回数が限られ威力も低い。あとは身のこなしは中々の物ではあるが、数人でかかれば全く当たらないというわけでもない。
「相手も何か考えてはいるはずです。とにかくローブの男の捕獲を最優先に行動して下さい」
 
 ――数日前、某所
「ソルフの実は貴重なんだ、これ以上はお前に回せないな。」
 その言葉を受け、ローブの男は自分の手元に残った一個の木の実を見る。
「仕方ありませんね。では、またモンスターの力を借りるとしますかね」
(「また‥? あれで借りたつもりだったのか‥?」)
 ローブの男と対面している者は、目の前に居る者から聞いた報告を思い返す。聞けば、モンスターを村近くまで誘き寄せ、その襲撃に乗じてとある館に盗みに入ったらしい。もちろん、その企みが失敗してしまった事も聞いたが、当の本人は「注意を引きつけれたらからいいでしょう」などと言う始末。
「まあ、いい。だが、あまり個人的な目的に走られては困るな」
 どうやら、前回の月道渡りの壷に関しては、ローブの男の個人的な目的だったようだ。
「分かっていますよ。だから今回はこうして、村々を一定のルートで歩き回っているのです」
(「確かに、目を引きつけておくには、こういう奴はお誂え向きかもしれんが‥」)
「それに、この私を痛めつけてくれた人達が来てくれるなら、お返しもしませんとね」
(「これ以上は危険だろう。ここらで、こいつには退場してもらうか‥」)
 目の前に居る男の胸の内を知らず、ローブの男は後の展開を想像し、笑みを漏らしていた‥。

●今回の参加者

 ea2181 ディアルト・ヘレス(31歳・♂・テンプルナイト・人間・ノルマン王国)
 ea4847 エレーナ・コーネフ(28歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea7211 レオニール・グリューネバーグ(30歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ea7400 リセット・マーベリック(22歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0763 セシル・クライト(21歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1259 マスク・ド・フンドーシ(40歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

セリオス・ムーンライト(eb1993

●リプレイ本文

●奇襲の失敗
「むはァ! ど〜して我輩が隠れていた事を見抜いたのだ〜!?」
 ‥じゃない。簡単に言えば、囮が囮とバレてしまっては、誰もそっちに注意なんて払わないのである。わざと見つかるのはいいが、隠れる気があったと思えない格好と対応で、一体どうしようというのか。
 ともかく今は、大きなリアクションを取っているマスク・ド・フンドーシ(eb1259)と、いつでもイリュージョンを唱えれるように身構えているエヴァリィ・スゥ(ea8851)、最後に、その二人から目を逸らしながら溜息をつくレオニール・グリューネバーグ(ea7211)、以上の3人がローブの男と対峙していた。
「おやおや、今回はお仲間に恵まれなかったようですねぇ?」
「今度こそは、貴様の知っている事を洗い浚い喋ってもらうつもりだったんだがな」
 ニヤニヤ笑いながらレオニールに言葉を投げかけるローブの男。それを黙って聞いているレオニールは苛立っていたが、一応相手が油断してくれているのは確か。この状態を活かす手を、頭の中で巡らせていた。

「必殺ポージングが一‥んごー‥‥」
「ちょっと黙ってて下さいよ」
 マスクがスリープのスクロールの効果で眠らされた。
「いやぁ、今日は何と良い日なのでしょう! 前回受けた痛み、貴方に返してあげたいとずっと思っていたのですよ!」
 ローブの男が二本目のスクロールを懐から取り出す。本命の待ち伏せ班が攻撃を仕掛け易いように、レオニールとエヴァリィが間合いを詰められないのが災いして、このタイミングでは相手を止められそうにない。
「‥! やはり残りが隠れてましたか!」
 自分の二の腕を掠めていった矢、それが放たれたと思われる位置に目を向けながら、ローブの男はスクロールの種類を変えていた。その動きに淀みはなく、完全に他に伏せている者が居ると見抜いていたようだ。
「避けられた‥!? 話通りに見事な体捌きね‥」
 先程使ったロングボウを地に置き、アイスチャクラのスクロールを用意しながら、リセット・マーベリック(ea7400)は相手の身のこなしに感心していた。自分も身のこなしに自信があるゆえか、どちらの実力が勝っているか‥なども、ふと考えてしまう。
「「外れた‥!?」」
 更に黒い帯と光の束が交差する。エレーナ・コーネフ(ea4847)のグラビティキャノンと、ルメリア・アドミナル(ea8594)のライトニングサンダーボルトだ。交差した地点の上空には、炎に包まれたローブの男が居た。
 これは運が悪かったと言うべきだろう、避けた結果になったローブの男も驚いていた。
「ハハハッ! どうやら神様も私の味方をしてくれているようですよ」
 飛び去っていくローブの男が向かう先には、確かオーガ族の塒跡があったはずだ。
「少々マズい展開になったが、予想の範疇ではあるな」
 苦い顔をしながらも何か案を思いついたのか、レオニールは他の冒険者達に小声で話しかけた。この間にエヴァリィがマスクを起こし、冒険者達は揃って相手の誘いに乗っていく。


●名誉の負傷
「この先にはオーガの塒跡‥。いや、やはりまた棲みついていて、おびき寄せるつもりなのでしょうね」
「バレバレですわね。やはり自己陶酔型の二流以下、あまり大したものが用意されているとも思えませんわ」
「そうだな、とりあえず目立ってオーガの注意を引いていてくれればいい。マスク、頼めるか?」
 軽く駆けながら話をするエレーナとリセット。それを受けてレオニールは、マスクにモンスターを任せるように提案する。
「オーガ達を引きつけておくのだな? よし、我輩に任せるのだ! スゥ嬢、BGMは頼んだである!」
 快くそれを承諾し、前方へと出るマスク。エヴァリィも頼まれてNOとは言えず、彼に続いて前に出る。
「これで厄介払いが出来たな‥」
「エヴァリィちゃんには、ちょっと悪い事してしまいましたかしら‥」
 小声で呟かれた声は、マスクやエヴァリィにはやはり届いてはいないようだ。

「これ以上スクロールは使用させませんよ!」
 今までの遅れを取り戻すかのように飛び出したセシル・クライト(eb0763)は、両の手に持ったダガーで相手の腕を狙った。
「ちっ‥! 小癪な真似を!」
 立て続けに繰り出されるダガーすらローブの男は回避したが、スクロール発動は邪魔をされた。
「残念でしたわね。まさか、スクロールを操るのが自分だけだと思っていたのですか?」
 リセットは、ローブの男を切り裂いて手元へと返ってきた氷のチャクラムを受け止めた。
 彼女が得意げにそう言うのも無理もない。オーガ達の下へと冒険者達を誘おうとしたローブの男の目論見は、オーガ達がマスクとエヴァリィのイリュージョンによって数が減り、エレーナのアグラベイションで動きを鈍らされて、冒険者達を多少の戦闘の後に突破させてしまった。最後に、陰に隠れていたローブの男は、リセットのムーンアローであぶり出されたのだ。
「小娘が‥!」
「風の怒りよ、光となって敵を撃て、ライトニングサンダーボルト」
 苛立つローブの男の吐く科白などお構いなしに、ルメリアが周囲のオーガ族を雷撃で撃ち抜いていった。彼女の後ろでは、ディアルト・ヘレス(ea2181)が残ったオーガ族にトドメを刺していく。

「今度こそ!」
「魔法が効かんのは分かっているはずだな!」
 再びセシルが両のダガーを、またレジストマジックを付与したレオニールがGパニッシャーを繰り出す。
「頭に乗らないで下さいませんかね、それで全部が防げるわけじゃないんですよ!」
 ローブの男がスクロールを発動させると竜巻が起こり、セシルとレオニールは巻き上げられた。
「うわっ!?」
「なんだと‥!?」
 魔法は一切効かないはず、それが油断となったのか。レジストマジックは、確かに自分に対する魔法は全て無効化するが、自分以外に魔法が働きかけた結果引き起こされるものは無効化出来ない。案外防げない魔法は多いのだ。
「でも、そこまでです」
「集いし不可視の力よ、眼前のものを抑制せしめよ」
 周囲を一旦吹き飛ばした為に、ポッカリと射線が空いてしまった。
 氷のチャクラムでまたも切り裂かれ、アグラベイションで動きまで鈍らされた。最早逃げられぬと悟ったのか、ローブの男は情報をやるから見逃してくれと叫ぶが、その言葉に如何ほどの信用する価値があるのか。
「ふざける‥‥ぅ、ぐ‥!?」
「レオニールさん!?」
 ローブの男の言葉に耳を貸す事なく、一気に取り押さえてしまう為に接近した冒険者の内、レオニールの背に2本の矢が唐突に突き刺さる。
「どこから!?」
「いや、その前に!」
 騒然となるその場の中で、ディアルトが冷静にスタンアタックでローブの男を気絶させた。
「‥い、居ない? もう周囲には居ないというの?」
 大急ぎでルメリアがブレスセンサーを唱えたが、周囲には自分達以外の呼吸はない。少し離れたところで感じられた反応は、おそらくエヴァリィとマスクとオーガ族達だろう。
「狙いはローブの男だったようにも思える。まさか口封‥」
「もう魔法使えないし、保たないよー!」
 言いかけられた言葉は、エヴァリィの叫びに掻き消された。何かのはずみで、オーガ族に折角捕らえたローブの男を殺されるわけにはいかない。冒険者達は、今はオーガ族と戦う事は諦め、ドレスタットへの帰路を急ぐ事にした。


●罪人の末路
「はい、確かにこちらが情報を掴んでいた男のようですね」
 日は数日流れ、今は場所もドレスタット。ローブの男の身柄を受け取り、オルファ・スロイトは深く礼をした。そのまま彼は一度ローブの男を他の騎士団員に任せ、冒険者と話をする為に戻って来る。
「あの者の命も持ち物も情報も、余さず犠牲者のために使い尽くしてください。元海賊の方も多いそうですから、効果的な『説得』手段を知っているでしょうし」
 リセットは強い口調でそう言った。おそらくこのローブの男はなんらかの形で、ドレスタットをドラゴンに襲撃させた者のグループと関わっている。ドレスタット周辺への影響を考えると、到底許せるものではない。
「ええ、あの人にはちょっと覚悟しておいて貰わないといけませんね。ところで、レオニールさんの容態の方は‥? 見たところ、結構な深手に見えるのですが‥」
 オルファの視線の先には、セシルに支えられたレオニールが居た。
「え? ああ‥、ローブの男を無事捕らえれたのも、レオニールさんのおかげなんですよ」
 その視線に気づいたのか、セシルはレオニールが負傷するに至った経緯と、その時に影より矢を放った何者かがいる事を説明する。それまでに一度スクロールによる魔法の攻撃を受けていたとはいえ、たった一度の攻撃で結構な怪我を負わされた。
「腕の立つ射手ですよね。一難去って、また一難とでも言いましょうか‥」
 ルメリアがそう言った後に溜息を漏らす。
「ともあれお疲れ様です。事情が事情ですので、レオニールさんには治療代補助として少し出るように掛け合っておきますよ。あと、今回の成果を受けて、騎士団の方へ皆さんの名前をお伝えしておきます。とりあえず仮入団資格を得る候補の段階ということで」
「そういえば、事件解決までに成果を挙げれば、海戦騎士団に入れるかもしれないという話もあったな」
「エイリーク伯の人物像を考えると、なかなか現実味のある話ですよね」
 それに、オルファは今回の冒険者達の事は忘れないだろう。