再会、決別? 朱と蒼 〜discipline blue〜
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:5〜9lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 8 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月24日〜06月02日
リプレイ公開日:2005年06月02日
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●オープニング
「お、お前等すげえな。俺は面食らっちまって動けなかったぜ」
「いえいえ‥。その、無我無中でしたから‥たまたまですよ」
「アタシもさ、まさか依頼の帰りにこんな奴に遭うなんて、思ってもみなかったぜ」
去年のいつしか。初めての依頼を受けた二人は、一体の獣を屠った。
「それにしても見事なもんだったな。結構いいコンビなれるんじゃないのか、お前等」
「お、そりゃいいな」
「い、いやコンビはちょっと‥遠慮したいかな‥って」
「何ぃ、こんな可憐な乙女を前に、男の方から下がるたぁどういう事だ」
「「乙女‥?」」
「‥な、なんだよ。ユアンもイグスも、声揃えて不思議そうな顔すんじゃねぇよ」
街への戻る彼等の背後には、槍と斧による攻撃を受けて絶命したブラウンベアが横たわっていた。
冒険者の方々にアドバイスを貰って少し経ち、自分に出来る事をもう一度見直してみました。
そうそう、コロッセオの試合は中々見応えがあるものが多かったですね。皆さん、自分の能力と予想される相手の能力、それに自分が取る戦法の選択と相手が取るであろう戦法の予測。特にあの試合ですよ、ああいった考え方もあるんだ‥と気づかされました。
そんな中、冒険者として初めて依頼を受けた時の事を思い出すような依頼を受けました。
「おおっ!? なんだ、ユアンじゃねぇかよ。お前もこの依頼受けんのか?」
‥いやあ、こんな予想外の不意打ち、デビルにだってそうそう真似出来ないですよ。
「この依頼の参加者二人目だな。この依頼、結構人数が必要だから、揃うまで待っててくれよ?」
すみませんギルド員さん。その一人目の参加、取り消せませんか、ダメですか、そうですか。
「くっく‥はははは! 見ない内に冗談の一つや二つ、言えるようになったみてぇだな。パリで別れる前のお前とは、結構雰囲気が変わったんじゃねぇか?」
「そりゃどうも。グラキさんも‥何か、良い事があったような顔してますよ?」
それに、前のバッサバサな髪と比べると、今は随分と状態が良くなっているように思えます。
「ん、まあな。今回お前と久しぶりに同じ依頼を受けれたのとは別で、ちょいとな」
「へえ‥、一体何ですか? ちょっと気になりますね」
「そいつはちょっと秘密だな。野暮ったい事は聞くんじゃねぇよ」
久しぶりの再会は、気分の良いものでした。グラキさんは、最近は遺跡の探索隊に仮入隊という形になったそうです。既に一箇所、探索を終えていて、その遺跡からは朽ちた魔法の物品が多数発見されたとか。あんなに愉しそうに話すグラキさんは、初めて見ました。
不謹慎ですが、今回の依頼は楽しい物になると思いました。でも‥。
パリから流れてきた噂話、それが真実のものであると分かり、寄付金を募っているという話。それがキッカケになって大喧嘩になりました。酒場の方達には、申し訳無い事をしてしまったと思います‥。
何故、グラキさんはあそこまで頑なに、話す事を嫌がったのでしょうか? もしかして、やはり?
結局、何の説明を貰う事のないまま、別れてしまったユアンとグラケルミィ。
「依頼に私情を持ち込むなんて、一番やっちゃいけない事ですよ。でも‥」
どうやら酔いが回ってきているようだ。ユアンは半泣きで、一番近くにいた者に縋り、絡む。‥ちょっと迷惑。
「僕はただ、グラキさんが何か悪い事をやってるんじゃないかって、それが心配なだけですよぉ‥」
●リプレイ本文
●憂いの蒼
「あら、ユアンさん。御自身の進むべき道は見付かりましたか?」
荒巻 美影(ea1747)は微笑ながら、ユアン・エトワードにそう言葉をかけたが、言葉をかけられた方は何だか慌てている。まあ、ちょっとした事故があったのだ。‥ちょっとした事故が。
「ともかく、グラキさんとは、この依頼が終わったら落ち着いて話し合ってくださいね」
「‥無個性が悩みだった、ね。全く、どうしようかオルス君?」
「‥はじめまして、か。貴方がユアンさんだな。報告書を読ませてもらった」
冒険者が冒険者に依頼をする、それもあのような事で依頼を行うのは稀な事だ。そのせいなのか、どうやらキース・レッド(ea3475)とオルステッド・ブライオン(ea2449)は、ユアンが以前悩んでいた事を知っているようだった。
「実際に参加していた者から、詳しい話も聞けたよ。‥なんでも、ちょっとした事故があったんだって?」
そう言いながら、チラリとだけ美影の方を見るキース。
「‥フッ。貴方と同じくとりえのない男だ、よろしく」
オルステッドはオルステッドで、慌てるユアンに対して意味深な笑みを浮かべて挨拶をした。
「と、ところで、ハルヒさんの持ってるそれは何なんですか?」
このままでは場の空気に耐えられないと思ったのか、何か話題を変えれそうな物を探してみると、ハルヒ・トコシエ(ea1803)が少し大きめの袋を、袋の口が良く閉じられているかを気にしながら持っていた。
「ふふふ〜、これはですね〜、強烈な匂いのする保存食が入っているんですよ〜」
この匂いのする保存食は、熊を退治する為に森の中へと分け入っていく時に罠を仕掛けるので、そこへと誘き寄せる為の餌とするようだ。
「こちらから打って出るには威力不足である以上、作戦として罠を訳だが‥現状ではベターか」
十字架のネックレスを弄びながらキースは、この作戦を選択する理由を、こちらの班の能力を考えると‥として推した。真正面から戦っては、ブラウンベアはともかくとして他の熊は厄介な相手である。
力押しも技法を凝らすのも、どんな状況でもどちらかが正解であり続けるという事は無い。正解かどうかを決めるのは、行動を行う者と選択される行動が相性が良いかどうか、その場に必要とされているかどうかなのだ。
●熊の戦法
「これなら、罠は必要無かったかもしれませんね」
「でも、ブラウンが来るかグレイが来るかは分からないですから」
ブラウンベアを難なく倒し、自分達の力量が決して低いものではない事を確認する冒険者達。
「うーん、でも、やっぱりというか一線を越えた攻撃じゃないと無理っぽいですね〜」
「全くだ。まさか剣で斬りつけたにも関わらず、ああも平然とされるとはな」
盾と一体となった刀身と、地に倒れているブラウンベアを交互に見ながら、オルステッドは溜息をつく。ハルヒも同じように困った表情を浮かべていた。やはり、こういった体力の高い相手では、ただ斬るだけだったり、初歩クラスの威力の魔法では効かない。
「まだグレイベアと、更にもう一頭居るという話だったな。‥本気でいくか」
「私もです〜。出来ればボルトさん、グッドラックをお願いします〜」
ハルヒの願いに頷くボルト・レイヴン(ea7906)。オルステッドはオルステッドで、ちょっと自分の荷物を見直してみた。今のままでは彼が持つには少々重すぎて、無駄に体力を奪われてしまっていたのだ。
「我が拳は、守りに秀でた羊拳です」
「! ダメだ美影さん! 熊を相手にそれは‥!」
対グレイベア戦。一撃を貰ってしまい、一時的にボルトの位置まで後退したオルステッドに代わりに美影が前に出たが、治療を受けつつ彼女の動きを見ていたオルステッドが叫んだ。
「そうか、しまった!」
慌ててユアンも前に出ると、キースと一緒にグレイベアに槍と刀を繰り出して、相手の注意をこちらに向けさせる。美影はあっけに取られていたが、直後のオルステットの言葉で味方の行動を理解した。
「熊は相手を抱え込もうとしてくる! 熊の攻撃は捌くか避けるかしないと危険だ!」
ヤン・ショウ・ファンは強力な威力軽減の技だが、攻撃が命中したという事実は残る。
(「『耐える』方法が違うと、有効では無い場合もあるのですね‥」)
このままではマズいと思ったのか、美影は一旦その場から退いて考えを練り直す。
「幾ら強敵でも、連携による時間差攻撃なら!」
慌てて飛び出たユアンやキースの援護をするかのように、深螺 藤咲(ea8218)が、その両の手で握り締めたロングスピアを思い切り突き出すと、深々とグレイベアの身へ飲み込まれていった。
「一撃分の怪我ならば、私が十分回復させれます。無理せず交代を繰り返して追い詰めましょう!」
藤咲もグレイベアから手痛い反撃を受けたが、一旦交代してボルトよりリカバーを受ける。それと同時にオルステッドが前線へと復帰していく。班が上手く機能して、グレイベアはどんどん追い詰められていく。
「じゃあ、これでトドメですよ〜」
ハルヒによって束ねられた光が襲うと、ついにグレイベアは大地へと崩れ落ちたのだった。
●その首元に在る模様は
「合流方法については、どうしたものか思っていたが‥」
「やっぱり、お互いの力を合わせた方が良いと思ってたのは、私達だけじゃなかったんですね」
もう一方の班に発見される形で合流を果たした二つの班。向こうはどうかは知らないが、こちらはグレイベア相手にも少々手こずった。この上、更に一回り大きな熊が相手となると厳しいのは明らかだ。
「貰っていいのは一撃だけ‥! でも、一撃だけなら私には効かない!」
相手に取って邪魔な位置であろう場所で、攻撃を待ち受ける美影。
「‥フッ、レディにばかり負担をかけるわけにはいかないな」
「フッ‥、そういう事だね、オルス君」
その近くにはオルステッドとキースが構える。そして、その3人から少しだけ離れた位置からは、藤咲とユアンがいつでも突きを繰り出せるように隙を窺っている。攻撃を受けた者は、後方に控えているボルトが治療してくれるだろう。
「それにしても‥まさしくモンスターだな」
「ジャイアントという名を冠しているだけの事はありますね」
向こうの班とこちらの班、何度も攻撃を受けているはずなのに、ジャイアントベアはさほど苦しんでいない。相手の攻撃回数に対して冒険者の数は多いので、時間はかかるが倒せそう‥ではあるのだが。
「そろそろトドメといきたいが‥!」
焦るわけにはいかない。ジャイアントベアの強靭な爪を下手に喰らえば、一気に状況が変わる可能性がある。冒険者達はこちらだけでなく、向こうの班とも動きを合わせ、じわじわと追い詰めていった。
「火の加護を受けし槍、これで終わりにします!」
「我、武の理の持て穿つ刃を放つ‥飛突!」
一つは飛ぶ刺突、もう一つは突き下ろされる槍。より狙いが鋭かったのは木々の間を縫って飛ばした方だ。
それらが動いた線を延ばすと、ジャイアントベアの内部で交わる。事前の打ち合わせや練習などはない、ただの偶然。だが、偶然の言葉通りに事は実際に起きても不思議ではない。
「藤咲さんもあちらの方も、やりますね‥」
「まさか、こんな倒し方になるなんて」
二名による打ち合わせ無しの同時攻撃。以前、同じ方法で倒されたブラウンベアが居たのだから。
「悠一郎さんという方でしたっけ‥あんな位置から狙えるなんて」
こちらが炎を纏った刺突であるとすれば、向こうは真空の刺突。藤咲は木々に隠された相手の方に視線を送りながら、感心したように呟いていた。
●もう一度離別、朱と蒼
冒険者仲間としてでなく、傍に居て欲しい人が居る。それも同性。グラケルミィから聞けた答えは、ユアンの予想の斜め上をいっていた。
(「‥フッ、レディとは難しいものだよ、ユアン」)
(「フッ‥余計な口出しは、美しくない」)
オルステッドとキースの言葉が、ユアンの胸の内に蘇る。もう、ガンガン蘇る。
「‥わ、分かりました。グラキさんは嘘を言う人だとは僕は思いません。と、とりあえず‥一般的に言われる犯罪の類でなくて安心しました」
ジーザス教の教義は絶対ではないが大きな力を持っている、それは良く知っている。だが同時に、冒険者であればもう一つの事も知っているはずだ。自身の道徳観に従って行動する者も、冒険者には多い。‥とは言うが、正直どう反応したらいいのか分からないのだろう。
(「エムロードを助けるのには反対ですか〜? 私は、彼女とは別のアサシンガールを組織から助けたいと思っています〜」)
それに、署名と募金の件についてはハルヒから詳しい事情を教えてもらった。
「それじゃ、ドレスタットに戻りましょうか。それにしても知らない内にお互い強くなったんですね、あの時倒したのはブラウンベアでしたし」
仲違いから班が別れてしまった熊退治依頼は、こうして無事に終わったのだった。
「待ったーーーーー!」
なんでしょうか先生。
「今回はオシャレさんが多いですからね〜、美影さんの黒髪なんてホント素敵ですし、藤咲さんもサラサラ。男性の方々も気を使ってそうですね〜」
「フッ‥お褒めに預かり光栄だね、レディ」
「こう見えて私の髪はデリケートなのでね、気を使ってはいるよ」
やる気ですか先生。
「もちろん! 今回もやりますよ〜。今回のターゲットは先程デリケートだと口を滑らせ‥いや、おっしゃてくれたオルステッドさんとユアンさん」
「え、僕は何も言ってな」
そんなこんなで、ドレスタットまでの帰路は賑やかなものだった。