薬草採取、探索付き
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:1 G 10 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月02日〜08月14日
リプレイ公開日:2004年08月07日
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●オープニング
「それにしても増えたなぁ・・冒険者」
今回の依頼主がボソリと呟く。増えた、確かに増えた。依頼からあぶれてしまう冒険者もそれに連れて増大してしまっており、働き盛りの年齢である彼等が、昼間から酒場に入り浸っている姿を見るのは、なんとも言えない感情が込み上げてくる。とは言っても彼等が頼むのは、もっぱら古ワインなのだが。
「まあそんなこんなで、今回の依頼なわけなんだけどさ」
依頼主が依頼の話に話題を戻し、説明を続ける。人が集まればその分物も消費される。冒険者が増えれば、当然、冒険に必要な物の消費量は増える。多少、冒険者が増えたところで問題無い量ぐらいの備蓄はあるのだが、切らしてしまうわけにはいかない物もある、直接命に関わってくる物、治療用品の類である。
「今は全然問題無いんだけどさ、多めに確保しておこうって話らしくて。 あと、少しだけ遠出するよ。今分かっている群生地帯だけからあんまり採り過ぎると、後々困る事になりかねないからね。そう遠くない所で、原材料の採れそうな所がないか、探せるなら探しておきたいから」
依頼内容は治療用品の原材料となる薬草の群生地帯までの往復、新しく薬草を摘める場所がないかどうかの探索、そこまでの往復の経路の護衛、そして採った薬草の荷物持ち。どの草をどの程度採取すればいいかは、目の前の青年が同行し、指示するそうだ。
「よろしく頼むよ。あ、報酬の払いはもちろん無事に必要量採って帰ってきてからね」
そうして冒険者ギルドの依頼受付を済まし青年が一旦帰った後、冒険者ギルドの壁面に新しく依頼書が張り出された。危険度の低い地域を探索範囲に選んでいるので依頼内容としては易しいが、拘束期間が長い事が目を引く。あとは、新しく摘める箇所を見つけれた場合は追加報酬が出るそうである。
●リプレイ本文
●荷物持ちとスペシャリスト
「うわ、こりゃまた豪勢な・・・・かなり楽が出来そうで助かるよ」
今回同行してくれる事になった冒険者達を見て、依頼主の青年は満面の笑みと共にそう洩らした。それもそのはず、ノーマルホース4頭にドンキー1頭、荷物持ちとしては十分過ぎるほどの数だ。道中で摘む予定の薬草は、この5頭に全部積んでしまえることだろう。また、シフールのアルフレッド・アーツ(ea2100)は行動し易いように、既にバニス・グレイ(ea4815)の馬にバックパックを積ませてもらっていた。
「荷物を増やした状態で探索するのは苦労しますから、予定の群生地は後回しですよね?」
ソフィア・ファーリーフ(ea3972)が依頼主に確認するように、分かっている群生地に向かうのは後半の日程で、まずは少し遠出をして新しく摘める場所がないかの探索を行う。なお、依頼主の青年は、豪勢な荷物持ちについてが一回目、彼女についてが二回目、それぞれ驚かされた。ソフィアの薬草についての、いや正確には植物全般に対する知識なのだが、それは依頼主の青年を大きく上回っていたのだ。
●ベースキャンプ
探索予定の地域は、既に分かっている群生地よりもパリから遠くになるので、そこに向かうまでにまず一箇所だけ群生地に寄り、薬草を採取する。ルート上から少し逸れれば行けるので、日程中の限られた時間を効率良く使うためにも寄っておいたほうがいいし、薬草がどんな形をしているのか、どんなふうに生えているのか、実際に実物を見るほうが、冒険者達も探索を行うのに都合がいいだろう。
「ふむふむ、なるほど、なるほど」
シャルロッテ・ブルームハルト(ea5180)をはじめとして、冒険者達は薬草に関する説明を良く聞いていた。また、ソフィアは摘んだ薬草を少し分けてもらっていた。何か彼女に考えがあるようだが・・・・
「じゃあシナモン、最後の日までお願いね」
そう言って彼女は自分のドンキーに何かを積んだ、どうやら依頼最終日までの秘密らしい。
道中の先頭に立ったのは長渡 泰斗(ea1984)とバニスの2名。馬達の近くで荷物や依頼主、他の戦闘が不得手そうに思える者を護衛したのがマリウス・ドゥースウィント(ea1681)と天薙 龍真(ea4391)。少し遠出するとはいえ、今後、依頼主の青年のような者達だけでも向かえるような場所、基本的に危険度の低い場所を探索範囲として選んでいたため、モンスターと呼ばれる類の生物が襲ってくる事は無かった。多少野生の獣と遭遇する事はあったが、全く問題無く探索予定の地に到着できたのだ。
探索予定の地に着いた冒険者達は、ベースキャンプ張り、そこを拠点として周囲の探索を提案した。毛布や寝袋でベースキャンプを張るというのも・・・・と依頼主の青年は思ったが、龍真は二人用、バニスは四人用、それぞれ簡易テントを用意していた。依頼主の青年が驚かされたのは、これで三回目だ。
二人用のテントは丁度2名居た女性達が使い、四人用のテントは依頼主の青年と他に3人が使う事にした。残り3人は毛布を被りながらの見張りだが、時間ごとにテントの中の者と交代する。テントの中は毛布や寝袋よりもかなり快適だったし、獣が寄ってきた場合もバニスがホーリーフィールド、多少の傷を負ってしまってもシャルロッテがリカバーを唱えてくれた。おかげで冒険者達は、数日間の探索の間もしっかりと疲れを取る事ができた。
また、朝には決して上手とはいえないものの、マリウスの笛の音が皆の目を覚まさせてくれた。最初は着いてすぐの夜に吹こうとしたが、これは余計な危険を招きかねないので皆に止められた。野宿だというのに、あまり悪くない生活である。惜しむらくは探索予定地域に川や池が無かったので、割波戸 黒兵衛(ea4778)が持ってきていた釣り道具一式が使えない事だった。
これは余談だが、最初に獣が接近してきた際、バニスはホーリーフィールドで彼等を囲おうとした。これは非常に難しい事で、案の定失敗してしまった。第一に射程が3mと短い、そんな距離まで接近されていれば発動の前に襲われる。また、確かにホーリーフィールドは直径3mの球状の結界を設置し、その出入りを妨害するので、獣達を中心にすれば囲う形には出来るが、その場合、効果範囲内に効果を嫌う者がいるため、相手の抵抗を考慮しなければならない。
●探索の成果と予定外の成果
結論から言えば探索の成果は上々だった。期間中、疲れを蓄積する事もなく探索をする事が出来た為、新しく薬草を摘めそうな場所も何箇所か見つかった。残念ながら、冒険者ではない普通の人間が向かうには少々厳しい箇所は諦める他無かったが、それでも今後行けそうな箇所は複数が候補として残っていたのだ。
薬草探しと平行して、泰斗や龍真はお茶として使えそうな香草の類を探していた。東洋では茶は庶民にもある程度親しまれているが、ここノルマンでは茶に関しては殆ど月道による輸入のみに頼っている為、貴族用の嗜好品といって過言ではない。両名ともお茶好きであるので、この地でも多少は気軽に茶を楽しみたいのであろう、どんなものだったら使えそうかはソフィアから聞いてはいたが、残念ながら殆ど見つからなかった。
「いや、酒場で古ワインばかり飲むのは飽きてきてたとこなんだがな、仕方ないか?」
それでも数杯分にはなんとかなるかもしれない。味などは保障出来ないものの、毒が含まれている事はないため、個人的に愉しむ分に問題はないだろう。あとは既に分かっている群生地を回って、パリに無事帰還すれば依頼終了だ。
「そっちは何か見つけられたか?」
「ううん、やっぱり上からじゃ良く見えないよ」
アルフレッドは一人浮かない顔をしていた。無用の危険を避ける為に、探索中は二人以上でチームを組んでいた。彼は方針の似ていた黒兵衛と一緒に探索したが、上から見渡しても地に生えている薬草は木々が邪魔をして分からない。季節は夏、鮮やかな緑の葉が少々恨めしく思えるが、二人のチームだけが新しく摘めそうな箇所を見つけれなかったのだ。
黒兵衛は多少なりと出来る調理の技能を活かし、シャルロッテと共に依頼中の食卓を僅かながらに賑わせたし、獣が出てきた時もそつなく対処していた。だがアルフレッドは、書こうとしていた群生地までの地図は既に依頼主の青年が持っていたから自分の練習にしかならなかったし、皆の晩御飯にしようと思って獣にダーツを投げつけ挑発し、誘き寄せようとしたが彼の腕力では挑発にもならなかった。
自分だけが・・・・そういう思いが彼を駆りたたせたのか、日程の最終日の前日、彼は茂った木々の先にあるものを見つけた。ソフィアがプラントコントロールでシフール以外でも通れる道を確保すると、その先には・・・・
「これは・・・・パリの近くに薬草が群生している箇所が、他にもまだあったなんて」
依頼主の青年がそう呟いた。パリから近く、冒険者達のように戦闘技術を持たない一般人でも容易に採取しに来れる地点で発見された、新しい薬草の群生地。プラントコントロールを使える冒険者を毎回雇うわけにもいかないので、多少は木々を伐採するなどして道を作る必要はあるが、今後を考えるとこれ以上無い予定外で幸運な成果だった。
●冒険者達の特権
依頼の日程の最終日、パリが肉眼で確認できるようになった頃、ソフィアは依頼中ずっと秘密にしていた物を今回の参加者全員と依頼主の青年に振舞った。あらかじめ持ってきていたワインに薬草を浸した、にわか薬草酒である。全員に分けたので一人分は酔うには程遠い、味を愉しむ程度だ。依頼主の青年も、それぐらいならと認め、自分も受け取っていた。
「お疲れ様でしたー」
地点はパリが臨める少し大きめの木陰、そこで一行は少し休憩をする事にした。パリに到着するまで、との事であったので依頼終了には少し早いが、シャルロッテの言葉を口切りに今回の参加者達は互いに労い合い、自分達しか味わう事の出来ない薬草酒の味を、ゆっくりと愉しんだのだった。