【花形の務め】川上のオーガ族討伐

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 72 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月14日〜08月21日

リプレイ公開日:2005年08月22日

●オープニング

 経験を積めばそれは確かな力となる、力が増せば成せる事も大きくなる、成せる事が大きくなれば周囲の評価も高くなる、評価が高くなれば期待される働きも変わる。成長とは、そういう事だ。

「オーガ族の退治依頼か」
 冒険者ギルドに貼られた二枚の依頼書。一枚には新人向け、後方支援を担当してもらうと書かれており、もう一枚にはオーガ族の群れに向かい、倒せるだけのオーガ族を討ってもらいたいと書かれている。
「ああ、こんな依頼もあったよなぁ」
「懐かしいな、冒険者になってすぐは後方支援の方を受けたんだよな」
 依頼だけを見れば、オーガ族の群れに向かう依頼、その後方支援に回る依頼、共に少しばかり留意しなければならない点があるとはいえ、ただ単にオーガ族の群れと戦うだけの単純な依頼である。
 川沿いに伸びる道、その川の上流にこの夏の暑さからなのか一つのオーガ族の群れが移り住んできた。交易路というわけではないが、この川沿いに暮らす人々からすれば村と村を繋ぐ大事な道である。そして、それ以上に、水を手に入れる事の出来る箇所は貴重なものだ。

 川沿いの障害物の無い平坦な地、不意を打つには不向き、相手の棲家は分からないので川に来た所で戦う他無い。つまり、一見すれば真正面より戦う以外に手段が無い。しかし、それでは討ち漏らしも増え、後方に控える者の負担は増すだろう。

●今回の参加者

 ea2369 バスカ・テリオス(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea4591 ミネア・ウェルロッド(21歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea8029 レオン・バーナード(25歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea9907 エイジス・レーヴァティン(33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●成長の痕
「確かあの時は多く倒したら追加報酬がある依頼内容だったな。新人さんには傷を負ったのが逃げ来てくれたほうが報酬上がるチャンスが増えてお得だったりして」
 以前‥と言っても、もう何ヶ月も前に受けた依頼を思い返して、そんな事を呟くレオン・バーナード(ea8029)。
「でも、ま、あんまり取り逃がしちゃっても、新人さん達に迷惑になっちゃうよね」
 とはいえ、普通のコボルトならばともかく、戦士としての経験を積んだコボルトが何匹も逃げてくるようでは、いくら相手が手負いとはいえ新人の冒険者には厳しい。ただ、ミネア・ウェルロッド(ea4591)は、それとはちょっと違う考えから先の言葉を発したようだ。
「‥確かにいろんな依頼受けてきたけど、あんまり成長した気しないのよねぇ」
 そんな事を嘯くフォーリィ・クライト(eb0754)。内心、そういった事を考えている冒険者は、他にも多いのだろうか。
「そろそろ、単純に力に頼るわけにはいかなくなってきたって事なのかな?」
 自分の能力、実力が伸びる事、それは非常に愉しく思える事だと思う。しかし、今ある能力を活かしきる事こそ、冒険者にとっては何よりの実力なのかもしれない。

「一日‥時間をくれないか?」
 コボルトの討ち洩らしがないように、自分達の後方支援を行ってくれる新人達の元で、バスカ・テリオス(ea2369)は今回のコボルト掃討依頼の決行日を一日調整するように頼んでいた。
「川に来るとなると、その目的はやはり水でしょう。毎日、だいたい同じ時間に来ると思われますわ」
 今回の依頼では、事前の情報が多くないにも関わらず、多くのコボルトを確実に仕留める事が要求されている。バスカやルメリア・アドミナル(ea8594)が考えているように、割ける時間があるのならば、出来る限り相手の情報を入手しておきたい。

「そうそう、忘れるところだった。ほい、おいらからの先お裾分け」
 先お裾分け、とはまた変わった言葉だが、そう言いながらレオンは新人冒険者達に解毒剤[鉱物]を2個、手渡していた。
 コボルトは毒を塗った得物を用いるが、そのせいか大抵解毒剤も携帯している。レオンが渡した2個ぐらいは、戦闘が終わればまた手に入る量だ。新人達は、その解毒剤[鉱物]を川沿いの道の上に行く班と下に行く班で分けた。
「何にせよ、命は大事にね」
 その言葉に反応して振り向く新人の数人が、自分の耳に視線を移していたのを感じ、フォーリィは少し苦笑していた。


●雷を纏う川
 目的の川に着き、一日目は打ち合わせ通りにコボルト達の様子を窺う事に終始する。どうやら、昼前ぐらいの時間にこの川へとコボルト達は来るようだ。それが分かると、翌日の朝から冒険者達は迎え撃つ為の準備を始めた。
「皆さん、ライトニングトラップの位置は大丈夫ですね?」
 ルメリア・アドミナル(ea8594)が念を押すように周囲に確認を行う。
「大丈夫‥って言いたいところだけど」
「完全に正確な位置はちょっと。誘導するにしても、少し大回りしないと危ないと思う」
 初歩的なライトニングトラップの範囲は1m。一つ二つならばともかく、全てのライトニングトラップの有効範囲を正確に覚えるのは、それを仕掛けた術者でも難しい。
「それで十分です。自分達が引っ掛からずにある程度誘導出来れば、それで十分ですから」

「来たようだね」
「あたしにも見えてるわ。‥にしても、結構数が多そうねえ」
「ミネアも見えたよ〜」
 ライトニングトラップが敷かれて30分程の後、丁度お昼頃時間でもあるし、事前の打ち合わせ通りに保存食を広げている冒険者達。そんな状況で、エイジス・レーヴァティン(ea9907)の視界に犬の顔を持った人間大の影が現れた。その言葉に応じてそちらを見ると、フォーリィやミネアにもその姿は確認出来る。
「では、打ち合わせ通りにいくとするか‥」
「ふぁんふぁりまひゅか〜」
「ああ、待って、これだけ食べとく!」
 相手を誘う班と、誘った相手を囲む班に分かれる冒険者達。勿体ないので口の中に詰めれるだけの保存食を頬張りながらだったり、好物を急いで食べてしまう者も居たりして。

 そして数分後、冒険者達が広げていた保存食の残りに誘われてか、それとも、その場に残った冒険者そのものを餌とでも思ったか、向かって来たコボルト達はまずは雷の洗礼を受ける。その雷音はそれと同時、冒険者達とコボルト達の戦闘開始を告げる合図となった。


●花形の務め
「さあ、かかってこい!」
 未だ青い瞳のままのエイジスが前面に踊り出る。一斉に襲いかかってくるコボルト達の攻撃は、その身を固めている武具が全て弾いていく。カスリ傷にすらならず、当に無傷。コボルト達の得物に塗られた毒も、これでは効果を発揮しない。
「‥む!?」
「こいつはちょっとまずいかも知んないぞ!」
 だが、コボルト達は一撃を打ち込むとそれで無駄だと悟ったのか、エイジスへの攻撃を止めて周囲へとその足を向ける。
「あれがコボルトの族長、群れの長を張っているだけはあるって事ね!」
 大急ぎで包囲を完成させるべく駆け出すフォーリィ。彼女が言ったように、一匹だけ纏った武具や雰囲気の違うコボルトが、何か周囲に指示しているように見える。野生の勘が危険を感じ取ったのか、その指示のせいでライトニングトラップは弱いコボルト達しか効果を発揮せずに設置された全てを使い尽くす事になっていたのだ。

「このままではトラップが間に合いませんわね‥バスカさん、サンダーボルトに切り替えます!」
 ルメリアは高速詠唱を持っていない。一度混戦になれば、射程の短いライトニングトラップを、効果的な場所に置く事は不可能だ。彼女は即座に頭を切り替えて、ライトニングサンダーボルトの詠唱を開始する。
「そーいうわけで、バスカ兄ちゃんお願いね!」
 両手に持ったナイフを立て続けに投擲するミネア。その攻撃は威力も無く、精度も低いものであったが、見事な牽制となり、足を止めたコボルト達はバスカの目前に留まる事になる。
「纏めて吹き飛んでもらう!」
 放たれるソードボンバー。その衝撃は、多くのコボルト達へと一斉に襲い掛かる。数多くの獣の悲鳴が聞こえ、そして体勢を整え直してバスカへと向き直り駆け出してくるが、彼等に次は雷の洗礼が浴びせられる事になる。

「そろそろ族長をやっつけちゃって構わないよな!」
 コボルト戦士の斬撃をライトシールドで受け止め、お返しとばかりにノーマルソードで逆袈裟に斬って捨てるレオン。
 既に数匹のコボルトが逃げ出し始めている。どうやら戦士クラスのコボルトはまだ残り、族長の指揮の下で戦っているようだが‥。
「一体追加だ」
 そうこうしている内に、エイジスがまた一体、コボルト戦士を地に這い蹲らせる。形勢は決定的なものになりつつあり、そろそろ相手が尻尾を捲いて一斉に逃げ出してもおかしくない。
「おお、すっげぇなエイジスさん。よっし、じゃあおいらも本気でいくぜ!」
 ある程度までは力加減をして、相手に逃げる気を起こさせずに戦っていたレオンは、ここで一気に追い詰める。
「逃がさないわ」
 予想通りバラバラと逃げ出し始めるコボルト達の中からフォーリィは、族長の姿を見据えるとその脚を狙ってソニックブームを放つ。片足から急速に力が抜けていく感覚のまま、コボルトの族長は転倒して地を滑る。
「さ、今の内に他のコボルト戦士の脚も止め‥」
 エイジスの朱槍がコボルトの族長に突き立てられる。
「あらん? セッカチねぇ‥」
「あっちはあっちで押さえているからな」
 瞳を朱に染めた二人。普段とは、違う雰囲気の二人。ちょっとエロいのは気のせいです、多分。

 逃げ出していくコボルト戦士達は、バスカがミネアの援護を受けながらある程度押さえ、抜けていく相手にはルメリアのライトニングサンダーボルトが撃ち込まれた。それでも、数匹のコボルト戦士に抜けられてしまったが、手負い状態でたった数匹だ。あの程度の数ならば新人達でも十分対処出来るだろう。


●依頼を終えて
「‥ふぅ」
 リカバーポーションと飲み干し終え、一息をつくバスカ。その隣では、同じように鉱物毒用の解毒剤を飲んでいるミネアが居た。
「お二人とも、あれはちょっと無茶ですわ」
「え〜。でも、コボルトさん達は大体解毒剤を持ってるし、フォーリィさんもいっぱい持って来てたし〜」
「戦士クラスのコボルトを、あまり後方に流すわけにはいかなかったからな」
「まあ、そりゃそうだけどさ」
 バスカもミネアも、どうやら無事に怪我を癒し終えたようで、その様子を窺っていたルメリアやレオンの顔には安心の表情が戻る。バスカとミネアは最後のコボルト達が逃亡する際、前に立ちはだかってカウンターアタックで相手を仕留めていた。
 相手の攻撃を受ければ毒も貰う可能性がある以上、良い戦闘方法とは言えないが、それで最後であったり、逃がせば後方の負担も増えるという事で、これはこれで良かったのかもしれないが。

「ところで、この川‥魚獲っちゃってもいいのかな?」
「うーん、どうなんだろ?」
 約一名、川の近くに来た時からずっとそわそわしている。
「あ、でも釣り道具持って来てないや‥」 
「それならあたしが持ってるけど、今から釣るの?」
 フォーリィから釣り道具を貸してもらい、さっと駆け出していくレオン。
 時間も無かったので、釣れたのは小さな川魚が一尾だけだったが、それを冒険者達は昼食の締めくくりとして全員で分けた。そして、後方支援に当たっていた新人冒険者達と合流し、冒険者達はドレスタットへの帰路に着いたのだった。