遺跡保護、土蜘蛛退治

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月10日〜08月17日

リプレイ公開日:2004年08月16日

●オープニング

「お、いい所に来たな、丁度遺跡関連の依頼が入ったとこなんだ」
 遺跡。過去に何らかの理由で滅んでしまった古代の文明の遺産であり、時折これらから発見されるものがある。このジ・アースにおいて、年月も定まらぬほど古き時代にあったその文明が創り上げたとされている、強力な魔法の物品である。それらを手にしてみたい、手にする事を目標としている、そんな冒険者達も居るであろう。
 また、新しい遺跡が発見されたとしたら、そこはその文明が滅んで以降、正しく前人未踏の未知の領域である。そこへ最初に足を踏み入れる事が出来るとしたら・・・・
「まあ、結構前に発見されて、調査も終わってる遺跡なんだがな。で、その遺跡にモンスターが・・・・って、おい待て待て、回れ右して帰るなって。平時に遺跡の管理を任されているのは、そこを領地に含んでいる貴族達だからな、報酬はいいぜ。しかも、そこまでの往復の食費も向こう持ちだ」
 調査は終わっているとは言っても、現段階で分かっている情報だけではこれ以上解明出来ない、といった状況になっている事もままあるし、他の場所で新しく発見された事との関連性を検証する必要もあるだろう。そういった必要な時に、モンスターの巣窟になっていました、では困る。
「遺跡を傷つけてしまうような派手な戦闘は控えろよ? 依頼内容にはちゃんと、遺跡は傷つけないようにと書いてある、下手な所壊したら報酬は無しだとさ」

●今回の参加者

 ea2058 劉 深川(30歳・♂・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea2185 ギィ・タイラー(33歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea4567 サラ・コーウィン(30歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5001 ルクス・シュラウヴェル(31歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea5215 ベガ・カルブアラクラブ(24歳・♂・レンジャー・人間・エジプト)
 ea5688 フィリア・シェーンハイト(22歳・♀・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea5779 エリア・スチール(19歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●遺跡の形容
 「おお、受けてくれるか。・・・・何? 遺跡の情報? ああ、それならもちろん教えてやるさ」
 まず、冒険者達は遺跡についての情報を希望した。今回、念を押されているように遺跡への損害はそのまま報酬から差っ引かれる。遺跡がどんなものなのか知っておけば、被害を抑えた戦い方も容易に出来よう。その意を受け、ギルド員はどんな遺跡であるのか快く教えてくれた。もちろん、情報源は依頼主の貴族だ。
 遺跡は緑の少ない荒れた地に、半分近く埋没した形で建物が点在しており、表層部分はやや風化の進んだ状態であるとの事。また、遺跡の中で特に重要と思われる部分は、厳重に閉ざされており、そこが開かれた形跡はないとの事。簡単に言うと、グランドスパイダ(土蜘蛛)は遺跡の敷地内というべき場所に出没しているだけで、遺跡の建築物内部には居ないのだ。
 ここまで話が進んで、フィリア・シェーンハイト(ea5688)はどうも納得がいかなかった。遺跡についての情報を聞き出すのに一番熱心だったのも彼女だ。貴族が遺跡の管理を行っているはずなのだから、蜘蛛が出たとて、わざわざ冒険者ギルドに依頼しなくても、自分達で片づけてしまえばよい。話からすれば遺跡内部の事ではないので、冒険者達に任せてしまってもよいのだろうが、何か少し事情あるのではないかと、彼女は勘ぐるのであった。


●遺跡に着いて、戦える地を
「遺跡ですか。先人の残した遺産とは興味深いものですねぇ。」
 先人の残した物に興味を覚える劉 深川(ea2058)はそうもらした。
「これ、無駄になっちゃったっすねぇ・・・・」
 逆に、蜘蛛の巣を絡め取る為にスタッフを購入してきていた以心 伝助(ea4744)はそうもらした。
 そう、グランドスパイダの巣は地面に長い縦穴を掘ったそれである。獲物を捕獲するのにも麻痺毒をもった牙を使う。

 さて、冒険者達は遺跡につくと、まずは戦うに適した地を探し始めた。相手とはまだ遭遇しないようにしなければならないので、少し手間取ったが遺跡敷地内に広場的な箇所(文明が滅ぶ前には、建造物の配置からしてきっと広場として使われていたのであろう)を見つけ、そこに決めた。あとは囮役として出て行ったサラ・コーウィン(ea4567)とフィリアの2名のどちらか、または両方がグランドスパイダを引っ張ってくれば、戦うだけだ。周囲に被害を出してしまいかねないCOや魔法を使う者も居ないので、いざ戦闘に入ってしまえば気兼ねなく戦えるだろう。
「結局、あんまり上手くいかなかったね」
 ベガ・カルブアラクラブ(ea5215)、エリア・スチール(ea5779)の2名の予定なら、ここに捕獲した野鳥をつないで生餌とし、これにグランドスパイダが気を取られている内に倒してしまうつまりだった。しかし、野鳥を捕まえるための罠に使う餌が無かった。蛙やミミズを捕まえて使う気であったが、蛙は水気のある地帯以外にはまず生息していない。ミミズにしても、短時間で大量に用意するのは至難の技だ。結局、数匹の野鳥がその場につながれているだけだ。・・・・分からない、自分達に攻撃してくる冒険者達を差し置いて、こちらに気を取られるという事があるだろうか?グランドスパイダ達が餌と思うのは、このつながれた野鳥ではなく冒険者達の方だろう。


●囮の資格、戦う資格
 グランドスパイダを巣から戦う予定の地点まで引き連れてくる、囮役をしたのはサラとフィリアの2名。
 まずはフィリアの方だが、遺跡の各所を回りながら地面を足で踏みつけて、音を鳴らしていた。巣の近くでの異変に対し、グランドスパイダ達はスルスルと巣穴から這い出してきた。それを見てフィリアは自分の作戦が上手くいったと確信して、仲間達の元へと駆け出す。後は合流して叩くだけだ。
 だが、相手の足が速い。というよりも自分の足が遅い。このままでは仲間達が待つ地点に向かう前に捕まってしまうだろう、自分の体力の低さが恨めしく思える。身のこなしには多少の自信を持つ彼女だが、麻痺毒を持った相手に周りを囲まれてしまっては非常に危険だ。仕方がないので、彼女は飛行して逃げる事にした。もちろん飛行速度は相手の速度に合わせて・・・・だが、グランドスパイダ達はその姿を見て巣の方に戻っていってしまった。彼等の牙は飛行する者には届かない、取れない餌を追い続ける事はしないだろう。

 次にサラの方だ。彼女もフィリアと同じ様にして、グランドスパイダ達を巣穴から誘いだすのに成功していた。今は武器などはバックパックに入れて仲間達の元に置いてきているため、彼女のほうがグランドスパイダ達よりも足が速い。
「蜘蛛なんて嫌いよ〜!」
 だが、数匹の蜘蛛に追い回されるのは、気分の良いものではないだろう。大抵の人間は蜘蛛か蛇のどちらかに、個人差もあるが生理的な嫌悪感を示すそうだ。しかも今回の場合、相手は麻痺毒持ちだ。もし捕まって一撃貰えば、そこから一気に窮地に追い込まれる。
 囮とは、行けばなれるというものでは決してない。相手が自分達と同じくある程度の知性を持っていたとしたら、下手に囮っぽいものを出せば逆効果で、策を見抜かれて逃げ出されたり、また伏せている者達が窮地に陥るなどザラにある。

 結果からいうと、戦闘はかなりの混戦になってしまった。
 サラが仲間達の元に辿り着くと、グランドスパイダ達にはまず矢の洗礼が浴びせられた、ベガの手によるものだ。ただしハズレだ。この彼の一撃は、シューティングPAでグランドスパイダの急所を狙ったものだが、彼の技量ではそれは到底望めない。十回撃って一回当たるか当たらないかだ。ともかくこれが戦闘開始の合図になったのだが、彼の矢はこれで切れてしまった。ベガは矢をたったの一本しか持ってきていなかったのだ。仕方がないので彼は弓を置き、ダガーに持ち替えて接近戦を挑む事になってしまった。
 その他に、前面に出てグランドスパイダ達と対峙したのは深川、サラ、伝助。予定外のベガを含めての4名でようやく相手の数と同数だ、誰かが牙の一撃を受けてほぼ行動不可の状態に陥れば、それだけで相手の数が上回る。どれだけ一対多にならないように気をつけようが、前衛の数が同じならば前衛の負担はさして変わらぬままだ。

 耐えたのはサラと伝助。相手の攻撃に当たるわけにはいかない場合、最も簡単なのは回避する事だが、それ以外の手段もある、自分の武器で相手の攻撃を受け止める事だ。ただ、攻撃を受け止めるという動作を行う必要があるので、サラは自分から中々攻撃出来なかったし、伝助もダブルアタックは出せずにいた。
 耐えれなかったのは深川とベガ。深川もベガは回避技能は上の二人とそう差はないが、深川のナックルでは相手の牙を受けれないし、ベガのダガーはただでさえ苦手な接近戦において、受ける事を可能にはしなかった。
 この前衛の半壊により、後衛の行動も大きく崩れる事になった。ルクス・シュラウヴェル(ea5001)はコアギュレイトで敵の呪縛を、エリアはアンチドートにより解毒を、それぞれ予定していたが、これらの魔法は3mに接触と射程が短い。前衛が崩れればそのまま自分達が狙われるような位置まで接近しておかないと、対象をとって詠唱を開始する事も、詠唱が終わった際に効果を発揮させる事も出来ない。
「あれぇ、なんで発動しないのぉ?」
 更に悪い事は重なった、エリアは武装をしすぎていて魔法を発動させるのに十分な行動が取れなかったのだ。ルクスの方はなんとか間に合い、目前まで迫っていた一体のグランドスパイダを呪縛したが、エリアの方は魔法が発動せず味方を復帰させる事が出来なかった。慌てて装備を投げ捨てるが到底間に合わない、グランドスパイダは彼女に牙の一撃を与えたのち、次の獲物であるルクスへと向かっていった。
 フィリアは戦闘中は周囲の警戒をしていたが、蜘蛛の獲物を捕食するための基本的な動きは『待ち』である。今目の前にいるグランドスパイダも、わざわざ巣の近くで音を立てて誘い出してきたものだ。ただ、彼女の腕力では大して相手にダメージを与えられないので、それぐらいならばこちらの方がいいのかもしれない。

 麻痺状態になった者が、なんとか手を動かして薬を飲んで立ち上がりなおし、ルクスがコアギュレイトで2体目のグランドスパイダの動きを封じたのをキッカケに、流れは冒険者達の方に傾いた。麻痺毒はもっているものの牙の攻撃力は決して大きくはないので、大きな怪我を負った者は居なかったし、それ以外の傷は後でルクスとエリアがリカバーで治してくれた。


●成功には違いない
 最後のグランドスパイダにトドメをさし、冒険者達は一息つく。インセクトに分類されるモンスターは基本的に、例え大きな傷を負っても倒れるまで向かってくるので少々面倒だ。反面、確実に倒す事が出来るという利点もあるわけなのだが。
 毒の中和剤を使わずに済んだのは3名程度。ベストとは言い難いが、この結果ですらエリアがアンチドートを使う事が出来たからだ。ただし、戦闘する場所を選んだので遺跡については全く損傷していない。これは評価されるべき点だろう。
 この結果を受けてか、事前に申し込んでおいておいた事が認められ、希望者数名は日程を一日遅らせて作った余暇で遺跡の見学を行った。今はすっかり調査も終わってしまっているが、この場所は確かに前人未踏の地であったはずだ。いつか、この遺跡に最初に足を踏み入れた者と同じ事を何処かの遺跡で成す者が、目の前に居る者達の中から現れるのだろうか?