【後方支援】武器を輸送せよ

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月16日〜08月21日

リプレイ公開日:2004年08月19日

●オープニング

 冒険者ギルドに傷だらけの男が入ってくる。彼がここまで乗ってきたのであろう馬も傷だらけで、冒険者ギルドのすぐ外の所に半ば乗り捨てられる感じで置かれていた。その状態から察するに、一刻の猶予も無い事態が起っているのだろう。一体何が・・・・
「おい、どうしたんだ! 確かお前は、数日前に仲間達と共に依頼を受けて・・・・まさか?!」
 冒険者ギルドの者が声をかける。彼はどうやら数日前に依頼を受け、仲間達と共に現場へと赴いていったらしい。だが、何故か彼だけが、それも傷だらけの状態で帰ってきた。依頼に失敗したのだろうか?いや、失敗したのだとしても、これほどまでに急いで帰ってくる理由は?
「失敗みたいなものだ・・・・ウィザードがやられて・・・・打つ手が無くなった、それで・・・・」
「おい、しっかりしろ!」
「俺なら大丈夫だ。これぐらいなら死にはしない・・・・が、仲間達にヤツを討つ手立てを・・・・。はやくしないと、あの村の人達が・・・・」
「く・・・・こんな怪我を負ったまま、あの村からここまで馬を飛ばしてきたってのか」
「違う、この傷は・・・・道中で、やられた。ホブゴブリンだ・・・・急いで無理に突破したから・・・・」

 少し整理しよう。
 新しく開拓した村にモンスターが現れたので、冒険者ギルドはそのモンスターの排除の依頼を出した。それを受けたのは彼とその仲間数人である。モンスターの中には通常の武器の効かないモノが存在する、そういった相手には銀製の武器や魔法などでしか傷をつける事が出来ない。そして、彼等の対抗手段であった頼みの綱、ウィザードがやられてしまった(この後の彼の話で、重傷は負ったが一命は取り留めているそうだ)為に、なんとか相手を撃退する方法を手に入れるべく、馬を飛ばしてパリに戻ってきたそうだ。そしてその道中、ホブゴブリンに襲われた、と。

 件のモンスターはウィザードが重傷と引き換えに一旦退けたが、傷が癒え次第また村を襲いに来る事は明白だった。村までの距離を考えると、一刻も早く出発したほうがいい。村を領地としている貴族の元に掛け合いに行き、銀製の武器を貸し出してもらう事の許可を得た冒険者ギルドは、その武器の村までの輸送を依頼として出した。
 熟練の冒険者がその場に居れば、撃退まで依頼したかったが、残念ながら不在。時間の猶予が無い中であるので、今居る者に出来る依頼をするしかない。輸送のみで決してモンスターに手は出さないように、と、冒険者ギルドの者は依頼を受けようとする者に念を押すのであった・・・・。

●今回の参加者

 ea2049 カルロス・ポルザンパルク(41歳・♂・ファイター・ドワーフ・フランク王国)
 ea2774 ミカロ・ウルス(28歳・♂・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 ea3110 ターニャ・ブローディア(17歳・♀・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4641 鞘継 匡(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4662 ティーナ・ラスティア(30歳・♀・バード・人間・フランク王国)
 ea4716 ランサー・レガイア(29歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea4778 割波戸 黒兵衛(65歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●数日間の強行軍
「おやっさん、一刻の猶予も無い事は承知済みなんだろ? だから協力してくれ!」
 第一声を放ったのはランサー・レガイア(ea4716)だった、熱血漢という言葉が彼を見るに真っ先に頭に浮かぶ。村までの距離は、普通に徒歩で向かうとすると数日かかる。荷馬車を借り、それに乗って進めるならば、一行が移動にかかる時間は短縮出来る。これには他の冒険者達も同意見で、少し無理な申し出かもしれないとは思いつつ、なんとかして借りられないかと頼み込んでみたのだが・・・・
「荷馬車? あー・・・・すまない、言い忘れていたな、ちょっと事情があってな。かわりにホブゴブリンが出現した位置ならしっかり聞いておいた、それで勘弁してくれ」
 ホブゴブリンが出現した位置というのは、もちろん傷だらけで駆け込んできたあの冒険者からの情報だ。位置としてはモンスターに襲われた村から約半日、これは馬で飛ばしていた時のものだから徒歩に直すと、約一日程度の距離の所で現れたらしい。
 荷馬車が借りられない理由については、村の位置によるものだ。新しく開拓した村のため、まだ荷馬車等がちゃんと通行できるように街道が整備されていないのだ。なんとか通れない事もないが、荷馬車を傷つけないように進んでいこうと思うと、逆に進む速度が落ちてしまうかららしい。

 荷馬車は借りられなかった場合も冒険者達は想定していたので、申し出が断わられてもすぐに頭を切り替えて、今ある輸送手段を使う事にした。今回の依頼を受けた冒険者の中で、馬を連れているのは3名。薊 鬼十郎(ea4004)と鞘継 匡(ea4641)とランサーだ。
 だが・・・・鬼十郎は輸送する武器を自分の馬と匡の馬、その2頭に分けて積むつもりだったし、匡は自分の馬だけに積むつもりだった。更に、ランサーは7:3で3の割合の分だけ自分の馬に積むつもりだった。肝心の輸送を担う役の意見がバラバラなのだ。
「彼がかけた命と傷の痛み、無駄にするわけにはいくまい」
 言葉が満足に通じない状態での意見の調整は困難を極めた。ここに時間の猶予が無い事が、悪い要素として更に加わる。匡がなんとか他の二人の間を取り持ち、結局武器は3等分して積む事になった。ここで時間を取られて間に合わなくなれば、村と仲間を助けるべく馬で駆けた冒険者の意を汲む事は出来ない。

 村までの道中、とりあえずホブゴブリンが出てくるまでは概ね順調だった。約一名を除いて。その一名というのはミカロ・ウルス(ea2774)の事だ。最初の野営の際、夜通しで警戒するという無理をしたため、足取りが他の者に比べて明らかに重い。その女性のようにも見える容姿が、更に彼を頼りなさげに映らせる。
 ホブゴブリンが現れた位置の情報を考えると、幸いにして次に野営した後で遭遇する事になるだろう。彼は野外で活動するのは他者より少し得意としていたが、眠らずに行動するのは決して得意ではない。


●「不覚」と「行き違い」の結果
 情報通りの位置でホブゴブリンは現れた。ターニャ・ブローディア(ea3110)の左右で色の違う瞳にホブゴブリンが映る、距離にして1、2kmは離れているだろうか。そう、テレスコープを用いて前方を警戒していたため、奇襲を受けるという事もない。むしろこちらが先手を打つ事が可能だろう。
 視認できてホブゴブリンの数は4体、決して多い数ではないが、どの相手も右手に斧、左手に盾としっかりと身を固めている。そして、馬に積まれた荷物を指差し何事か言い合っている。彼等に荷物の正確な価値は到底分からないだろうが、奪う価値があるものとは認識しているのだろう。

「邪魔だ、どけぇ!」
 いきなり突っ込んでいったのはランサーだった。急いで村に向かわねばならない、それが彼を焦らせたのか・・・・これと全く同じ方法で突破しようとした者が、それもたった数日前に存在する。ホブゴブリンにも知能というものは存在するし、彼は数日前の者より一回り以上実力は劣る。
 初撃は確かな打撃を与えたが、あっという間に取り囲まれ、彼ではなく彼の馬が集中攻撃を受ける。前回は逃がした獲物を、今度は逃がさないためだ。慌てて後退し、自分の馬にリカバーポーションを使用して彼は一息をつく。

「常なら、薄いところを突破すべきだろうが・・・・言ってはいられないか。済まないが、借りる」
 匡は自分の馬に武器の他にも自分の荷物を積み、鬼十郎の馬に自分が乗ってこの場を離脱しようとした。この行動は打ち合わせ通りだし、他の仲間も承知済みだ。しかし、自身が乗った馬の他にもう1頭を引き連れての騎乗を彼の技量は可能にはしなかった。
 いや、可能ではあったが明らかに速度が遅い、歩きよりも少し早い程度だ。ロングクラブで薙ぎ払って路を開こうとするが、それは盾によってガシリと防がれた。これでは突破は不可能だ。

「当ったれ〜ぃ!」
 だったら少しでも数を減らせば突破も可能になるはず。ミカロの放った矢はホブゴブリンの1体に突き刺さり、その注意を向けさせた。続いて、ターニャが詠唱を行いながらくるくると空を舞うと、サンレーザーがもう1体のホブゴブリンを焼く。ティーナ・ラスティア(ea4662)が同じように詠唱と共に楽器を奏でると、更にもう1体のホブゴブリンを眠りに落とす。こづけば起きる眠りなので、すぐに他のホブゴブリンに起こされてしまうが、その間に他の冒険者達が間合いを詰める。

「どうだ、驚いたじゃ・・・・ぐぅ?!」
 最初に間合いを詰めきったのは割波戸 黒兵衛(ea4778)。両の腕から繰り出される攻撃は、相手の盾を殆ど機能させなかった。忍者刀の威力も素晴らしい、見事な攻撃だ。だが、彼はその攻に反してなのか守が足りない。ホブゴブリンからの反撃の斧をその身にマトモに受け、大きく仰け反る。
 逆に、守に反して攻が足りなかったのがカルロス・ポルザンパルク(ea2049)だ。その身は皮で作られた兜と鎧それにマントでしっかりと固め、両腕には剣と盾を持ち、更に予備の武器としてダガーまで携帯している。彼がドワーフという事も相まって、実に頼りがいのある姿だ。しかし振り下ろされる斧を、素早く横ステップで回避したまではいい、だがその後に反撃を行うには彼の装備は重すぎだ。折角身を固めた利点を生かさず、盾ではなく回避を優先して選択した彼のミスだ。
 最後に記するは鬼十郎、彼女の剣が鞘より放たれるたびに敵は切り裂かれた。ホブゴブリンはその剣に反応する事が出来ず、盾で身を守る事が出来なったのだ。手数は少ないものの、威力はその得物である日本刀が保障してくれるし、彼女の身のこなしは一行の中では頭一つ抜けていた。相手の斧はむなしく空を斬るばかり、つまり前衛の中で彼女が一番奮闘した。苦労性だと言うのも頷ける話しだ。

 結局、相手の数を減らす為に匡もランサーも再び戦闘に加わる事になり、村へは一行全員で揃って向かう事になってしまった。前衛の数が負けている状態のまま戦っていれば、おそらく3名は無視出来ない程の怪我を負って居た事だろう。正面から挑んでくる相手だけならばともかく2方向以上から襲い掛かられれば、それに応えるには相手を少し大きめに上回る実力が必要だ。
 やや手間取ってしまった事が気がかりだったが、どうやらギリギリ間に合うタイミングだったらしい。ともあれ先に村へと来ていた冒険者達に武器を渡す事を無事に終え、これで彼等の依頼は完了だ。


●己一人では成し得ずとも
 銀や魔法などでしか傷つける事が出来ず、またこれだけの短期間の内に傷を癒して再度の襲撃が可能。この条件を満たすモンスターと言えば、ビーストマン(獣人)と呼ばれる種族のモンスターである。そして、冒険者達が村について程なく現れた。
 盾を前面に押し出して一人のファイターが前に出る。相手は少し周りを見渡し、対している者達の中に自分に痛手を負わせたウィザードの姿が居ない事を確認すると、口元を歪ませて踊りかかってきた。その両腕の爪が振るわれる。
 一撃、盾が止める。二撃、剣が受ける。三撃、剣が受ける。
 バカな、あれでは自分から攻撃どころか満足に動くことさえ出来ない。だがそれでも何も問題などないのだ、この間に既に別の者が背後に回り込んでいる。
 ビーストマンの方にも油断があったのは確かだろう、だが自身に満足に傷をつける事の出来ない者に何の注意を払う必要があるだろうか、数日前はそれで良かったのだ。背後からの強烈な一撃、普段なら回避するのに苦労はしないだろう大振りの一撃、だがそれで流れは完全に決まった。

 二組の冒険者達の違いは力の差もあるが、己の力を出し切る方法を知っているかいないか、それを実際に活用出来るか出来ないか、経験の差、それが一番の差なのだろう。今はまだそれほど必要ないかもしれない、だが冒険者としての高みを目指すならば、いずれ身に付けなければならない事なのだろう。
 最後に、今回の依頼を受けた冒険者達は、村へと先に赴いていた冒険者達のリーダーのウィザードから一つの言葉を受けた。
「確かにモンスターを倒したの私の仲間だ。だが忘れないで欲しい、君達が居なくてもあの敵を倒す事は出来なかった。愛馬と共にパリへと駆けていった仲間の意を汲んでくれた事に、深く感謝するよ」
 冒険者達は成長する。いつか逆の立場になって、新米の冒険者達にこの言葉をかける日も来るだろう。