【後方支援】払われし者より村を守れ

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月21日〜08月26日

リプレイ公開日:2004年08月24日

●オープニング

「おお、いい所に来てくれた。実はギルドに、やや大きめの依頼が来てな」
 やや規模の大きな盗賊団の始末依頼。アジトの情報を入手し移動される前に叩く、それが普通の対処方なのだが、こうして少し規模を大きくした盗賊団は、それを可能にした頭の切れるリーダーと、始末される前に不利を察知し、各々逃げる事の出来る部下で構成されている。
 捉われぬ事、それが盗賊の生き残る道なのだから。
 冒険者達も、今回の話に上っている盗賊団の事は噂で聞いていた。被害は決して大きいというわけではないが、各地を転々としているため被害の範囲が広く、アジトの位置もコロコロ変わるために中々掴めない。被害を見かねた貴族達が、共同して追い詰める依頼をギルドに出すつもりらしいとかどうとか。治安の維持は貴族が果たすべき義務である、その代わりに彼等は領地より税を徴収しているのだ。

「それで、お前達に請け負ってもらいたい依頼はこいつだ」
 内容は村の防衛。依頼は滞りなく進行し、盗賊団の包囲網が完成した。このまま包囲網を狭め、一気に壊滅を図る予定だが、相手も自分達の状況は理解している事だろう。当然、誰一人逃がす事なく捕らえるつもりではあるが、何事にも備えは必要だ。そのため、一番近い位置にある村への道に向かってもらい、そちらの方向に逃げてくる盗賊団の者達を残らず始末してほしい、数はごく少数のはずだから可能だろう。件の盗賊団は、使い捨ての手下として、少数のゴブリンやコボルトを使っている事も確認されているのを追記しておく。

「既に別件の依頼で包囲は終わってるのか。・・・・って、この依頼、俺達が面と向かって盗賊団と戦うんじゃないのか?」
 その場に居た冒険者の一人が、そう呟いた。
「・・・・まぁな。って、おい待て帰るな、はいそこ他の依頼書を読み始めるんじゃない!」
 村人には戦う術を持った者はまず居ない、彼等を守るのも立派な仕事である。追い散らされた盗賊達がその先に村を見つければ、馬なり食料なりを奪って逃げとおしてしまう事だろう。包囲は確かに滞りなく進んだが、予定の位置より村に近くなってしまったために、今回の依頼が急遽発生してしまったのだ。
「不満か? まあ分からんでもないが、こっちとしても冒険者を死にに行かせるような真似は出来ないんだ」
 請け負う者の実力に応じて、ギルドは依頼を斡旋する。
「裏方の仕事ではあるが、相手を一人も通さないとなると思いの他難しいだろうな。結構、やりがいのある仕事かもしれないぞ?」

●今回の参加者

 ea1793 河崎 丈治(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2185 ギィ・タイラー(33歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea2448 相馬 ちとせ(26歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2792 サビーネ・メッテルニヒ(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea4169 響 清十郎(40歳・♂・浪人・パラ・ジャパン)
 ea4778 割波戸 黒兵衛(65歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5215 ベガ・カルブアラクラブ(24歳・♂・レンジャー・人間・エジプト)
 ea5225 レイ・ファラン(35歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●気づかれた伏兵
「始まったようだのう。どれ、ちょっとわしが少し先へ偵察しに行こう」
 割波戸 黒兵衛(ea4778)は仲間達にそう告げ、村とは反対の方向へと道を駆けていった。適当な所で林の中へと入り、逃げてくる敵をいち早く察知すべく目を凝らす。
 彼以外の仲間も、向こうより聞こえてくる音により盗賊団の包囲作戦の最終段階、包囲網を狭めての殲滅が始まったのだろう事は理解出来た。時折聞こえる一際大きな音は魔法によるものだろうか? 注意しなければ聞き取れないが、それは確かに自分達の出番が来た事を告げる音であった。

 問題など無いはずだ。パリより村まで急いで向かい、殲滅作戦開始の予定時間までに出来る限りの準備は行った。自分達の後方にある柵は、敵を止めるのは難しいだろうが、敵の進む方向を特定させる事は出来るはずだ。
 そして、先行し林の中より偵察を行っている黒兵衛の瞳に、盗賊の姿が映る。体の各所に深いとは決して言えないが傷を負っている、命からがら逃げ出して来るというのが良く分かる。そして彼は仲間に敵の発見を伝えた。獣の声色を真似て、やや遠くへと情報を伝える為に吠える。遠吠えというやつだ。
 だがその直後・・・・
「・・・・! 違う!こいつは獣の声じゃねぇ!、待ち構えてる奴等が居やがるぞ!」
 バレた。黒兵衛が獣の声色を真似出来なかったのではない、ただの素人が聞いても怪しまれる可能性は低いだろう。答えは簡単だ、黒兵衛がこういった活動を他者より少し得意とするように、盗賊もまた、こういった活動は他者より少し得意としていたのである。
 自分達が出来る事は相手も出来る。相手が自らと同じ存在というのは、そういう事だ。


●立ち塞がるならば
 退路を立たれ、最早狩りだされる事を待つしか無くなってしまった者が、決死の思いで活路を開き逃げ延びる。その逃げ延びた先にさえ、自らを追い詰める者が居た時、その追い詰めた者は彼等にどう映るのだろうか。

「相手も必死だろう、いくら消耗していても気は抜けないな」
 レイ・ファラン(ea5225)。それに河崎 丈治(ea1793)に相馬 ちとせ(ea2448)と響 清十郎(ea4169)、以上の4名が逃げ延びる者の前に立ち塞がった。更にそのやや後方にサビーネ・メッテルニヒ(ea2792)が控える。彼女は柵を障害物として有効に使う為に、柵の後方より味方を支援しようとしたが、予定している魔法のビカムワースもロブライフも射程が3mと短い。どう考えても相手に届かない。
 黒兵衛は今、必死に仲間達の元へと林の中を駆けている。道に出たら、おそらく盗賊やモンスターからの集中攻撃の的になるだけだろう。林間を駆けるのは、平坦な道を駆けるのに比べればやはり速度が出ない、彼が他者より得意としてもだ。
 最後に残ったギィ・タイラー(ea2185)とベガ・カルブアラクラブ(ea5215)は、左右の林の中にそれぞれ伏せている。矢による援護だけでなく彼等は、道ではなく林の中を突っ切ろうとする相手に対しての保険でもある。

 この場において、一番最初の攻撃となったのは清十郎の放つソニックブームだった。彼の日本刀が振るわれると、その刀身より衝撃波が放たれ、それは空を斬り、こちらへと駆けてくる者を切り裂いた。盗賊の二の腕がバックリと裂け、鮮血がほどばしる。
「ここは通すわけには行かないよ。包囲網は万全だ。おとなしく投降したほうがいい」
 盗賊達の動きは、その言葉を受けても何一つ鈍らない。ここを突破すれば、また彼等には奪って騒げる未来が待っているのだ。浅ましいと言えばそれまでだが、彼等はその生活を望んでいる。だから自分達の前に立ち塞がる者達を抜く為に、その者達の中での穴を探し、動きに硬さのある者に狙いをつけた。
 ダガーによるポイントアタック、速いが軽い短刀の威力を技によって補う盗賊らしい戦い方だ。狙い澄まれたその一撃はちとせに深々と・・・・突き刺さらない。盗賊が驚愕の声を上げる、服の下に何か仕込んででもいなければ、刃が止まるなど考えられない。仕込まれていたのは魔法、ストーンアーマーだった。対象者の皮膚を覆うように効果の発揮されるこの魔法は、ポイントアタックが突く事の出来る『隙間』というものをなくす。
「ここは、通しません・・・・!!」
 毅然として彼女はそう言い放つ。人と戦うという行為を始めて行うがゆえに極度の緊張に襲われていて、攻撃を甘んじて受ける事になったが、ダガーが身に刺さる痛みが彼女に平常心を取り戻させた。盗賊は自分の不覚に顔を歪ませるが、踏み込んでしまった事の取り返しはつかない。彼はその直後、丈治のスピア、レイのロングソードにその身を襲われ、地に伏せることになった。

 向こうより逃げ出してくる者は、ぱらぱらと断続的に駆けてきた。戦いが終わった後に思い返し、モンスターも合わせると総数は決して少ないと言える数では無かったが、一度に応対する数は決して多くなく、中央に立ちはだかった者は良く戦った。左右より放たれる矢も、確かな援護となっていただろう。


●完璧は最高難度
 コボルトの得物が振るわれる。毒を受ける事を嫌ったレイは素早く横にステップを踏み、その一撃を華麗にかわす。だが、その為に突破する為の道が開けてしまった。
「くそ、逃がすか!」
 もちろん道自体は一瞬の小さな隙間だ。無理に駆け抜けようとしたコボルトに一撃を加え、更にダガーを投擲する。これが運良く命中しコボルトは倒れてくれたが、その動きが乱れたの察知して盗賊の一人が冒険者達をパスした。
 駆け抜ける先には柵があるが、不自然に隙間が空いている。村へと逃げるならその隙間に飛び込まざるを得ないが、ならばなぜそこで待ち受けている者が居ないのだろう。止める者が居ないならば、道を狭める意味がない。という事はつまり・・・・
「はっ! バレバレなんだよ、こんなのに引っかかる間抜けがいるか!」
 柵の間に仕掛けられた罠を察知し、大きく跳んで回避すると、盗賊はそのまま逃げていってしまった。丈治が咄嗟にスピアを投擲するが、距離も遠く当たらない。追撃をかけようにも、どさくさに紛れて抜けようとしたゴブリンが柵の間のロープに足を引っ掛け転び、その場でもがいている。まったく、間抜けで邪魔な奴だ。

 ギィとベガに手により左右から放たれる矢は、清十郎の放つソニックブームと共に、前衛が接敵するまでに相手の体力を確実に削っていった。元より怪我を負っている事に加えてこのような攻撃を受ければ、ゴブリンなど倒される者も居た。
 林の中を駆けてくる者はやはり居た。ギィもベガもその接近には気づいたが、両名とも接近しての戦闘は得意とはしていない。
「血をもって罪を許そう、安らかな眠りを・・・・ふぅ」
 ギィの方は上手く身を隠す事が出来たが、林の中ではチャージングによる奇襲をかける為の助走距離を確保する事が出来なかった。なんとか一人打ち倒したが、もう一人、いや次にくるのがゴブリンだとしてもやられるのは彼だろう。
「それで隠れてるつもりか?丸見えなんだよ、小僧!」
 ベガの方は更に分が悪かった。身を隠したつもりが発見されて蹴り飛ばされ、相手は怪我を負っているにも関わらず、接近戦闘においては自分よりも僅かとはいえ動きが良い。ベガがやられる事を意識したその時、盗賊の体が吹っ飛んだ。
「ふー、待たせたの」
 体長3mはあろうかという蛙が、鈍い音と共に盗賊を殴りとばしたのだ。逃げ出してくるまでに負っていた怪我に加えてのその一撃で、相手は重傷を負った。盗賊にやられる寸前のベガを助けたのは黒兵衛、いや彼が作り出した大ガマのガマ助だった。


●これも冒険者の仕事
「みなさんご苦労様、これで村の人達も安心でしょう」
 サビーネがちとせにメタボリズムをかけ、その傷を癒す。この魔法は対象者のMPを全て失わせてしまう代わりに、重傷さえも癒す事が出来る。だがそれゆえに、戦闘中に使ってしまうと、ちとせはストーンアーマーをかけ直す事が出来なくなってしまう。代わりに他の魔法でサビーネは支援を行っていたものの、内心はもどかしかっただろう。
「みなさん・・・・強いのですね・・・・」
 倒した、或いは捕縛した相手より装備を取っている(逃げ出してきた相手は大したものは所持しておらず、村の被害の穴埋め程度になっただけだった)他の冒険者達を見ながら、ちとせはそう呟いた。手の振るえが止まらない、それは剣の血糊を拭き取っていた時からずっと続いている。
「気に病む必要はありません」
 サビーネはそうきっぱりと言った。ジーザス教〈黒〉の教義において、盗賊のような愚かな者が淘汰されるのは至極当然の事と考えられている。対となる〈白〉の教義が存在する以上、それを尤も正しいと信じるのかは人それぞれだが、今回のような依頼もまた冒険者の仕事だ。彼等がこの依頼を果たさないでいたら、村の被害は深刻なものになっていただろう。