蝶の毒、蛙の毒
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■ショートシナリオ
担当:MOB
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月27日〜09月01日
リプレイ公開日:2004年09月01日
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●オープニング
「やあ、また来る事になっちゃったよ」
冒険者ギルドの依頼受付に来た青年はそう言った。また・・・・? ああ、思い出した。確か、やや期間の長い依頼、薬草の採取と探索の依頼をもってきた青年だ。今度は何の依頼だろうか。
「実はね、新しく近場で見つかったのはいいんだけど、ちょっとマズい事になってね」
新しく近場で見つかった薬草の群生地。確か木々に囲まれた先にあったために今まで見つけられず、先の依頼においてシフールの少年が幸運にも見つけたものだ。
「・・・・というワケさ、今回も宜しく頼むよ」
彼の依頼は以下のものだった。
新しく近場で見つかった薬草の群生地の、更に奥へと進んでみると解毒作用のある種類の草が見つかったそうだ。幸運とは続くものらしい、と喜んで採取をしようとしたところ、草木の影から蝶の姿が覗いた。
パピヨン、毒の燐粉をもった蝶だ。
毒といっても致死性の強い毒ではない(とはいっても浴び続ければ当然死に至る)ので、冒険者達にとってはそれほど脅威ではないが、こんなものが飛び回っていては落ち着いて採取などしていられない。どれぐらい数がいるのか調べるだけでもと思い、更に奥を覗いてみると木々に囲まれたその地形からか、その先は小さな湿地帯になっていて蛙の鳴き声が聞こえてきた。
ポイゾン・トード、毒の消化液をもった蛙だ。
こちらの毒は強い、下手をすれば1時間足らずで毒を受けた者を死に至らしめる。不運とは続くものらしい、と青年の上司は沈んで、冒険者ギルドに今回の依頼を行う事に決めたそうだ。
ちょっと数が多いのと、ポイゾン・トード達と群生地の位置は微妙に距離が離れているので、まずパピヨンを優先して退治してもらい、余裕があればポイゾン・トードも、との事らしい。もちろんポイゾン・トードも退治出来ればその分報酬は増える。
(「増えるって言ったって、解毒剤使ってまで退治したら赤字だよなぁ・・・・」)
そんな事を思いつつ、冒険者ギルドの者は依頼書を壁に貼り付けるのだった。
●リプレイ本文
●依頼主は『青年』、シフールは『少年』
「あらぁん? 依頼主って、シフールの子じゃないのぉん?」
なんだかガッカリしたような表情でギルド員に話しかけているのはエリー・エル(ea5970)だ。彼女は勘違いしてしまっているようだが、依頼主は『青年』で、その青年が前回持ってきた依頼中に、今回向かう薬草の群生地を見つけるという手柄を立てたのが、冒険者のシフールの『少年』である。
「ま、まぁ気持ちは分からなくもないけどね、はい、目的地までの地図」
・・・・そうか、分からなくもないのか。
そのやりとりが一段落した後、イェレミーアス・アーヴァイン(ea2850)はパピヨンの数を聞いていた。依頼主の話では少ないとも言い難いが見た限り10は超えない、おそらく8匹前後だろうとの事。
他の冒険者達もそれぞれ、依頼の目的地に向かうための準備を行っていた。長渡 泰斗(ea1984)、ルクス・シュラウヴェル(ea5001)の2人は、熟れすぎて売り物にならなくなった果物をなんとか頼み込んでタダで分けて貰っていた。タダ、冒険者にとってはこれはかなり大事である。冒険者が一番多く注文する物はなんですか?と酒場で聞いたら、古ワインと即答されるだろう。彼等は日々、モンスターだけでなく貧乏とも戦い続けているのだ。
●蝶の毒
目的地に着くと、ヒラヒラと蝶が舞っているのが見える。草木を分けて進んだ先でのこの光景は、幾ばくか心が和むかもしれない。それは彼等の燐粉に毒が含まれていなければ、の話ではあるのだが。
「薬草の採取が安心して出来る様に、蝶々さん達を退治することになりました・・・・ごめんなさい、平和に暮らしていたのに」
アイネイス・フルーレ(ea2262)がそう呟く。彼女が感じているように、彼等を払うのは人間達の都合でしかない。思えば、この群生地に解毒作用のある薬草が生えているというのは、彼等がこの地に生息していたからなのかもしれない。が、これが冒険者達の仕事ではある。
「蝶々さんたち、固まっちゃってますね」
ラテリカ・ラートベル(ea1641)がそう言ったように、8匹前後のパピヨン達は一箇所に固まっていた。寄せ餌の効果ではあるのだが、最初に数匹が寄ってきた際にラテリカがスリープの詠唱を始めたが、それが終わるのを待っている間に、全部が集まってきてしまったのだ。しかもスリープは効かなかった。インセクトに分類されるモンスターには、精神に作用する魔法は神聖魔法[黒]のデスを除いて基本的に効果を発揮しないのだ。
「しっかたないわねぇ」
パシィッ、と乾いた音と共にエリーはパピヨンの群れにホイップを打ち据えた。この武器のリーチの長さならば、燐粉の効果範囲から外れるか外れないかのギリギリの所から攻撃出来る、初撃としては申し分ない。
予定とは少し違ってしまったものの、前面に出る冒険者達は皆、燐粉を吸い込まないように布などで口元を覆っている。それに、リカバー、アンチドートを使用できるルクスが後方で待機している、心配など無用だろう。
唯一の心配点のようなものは、こちらも少し固まってしまっている事だろうか? 相手の燐粉は『振り撒く』という動作であるため、単一の攻撃対象を取るものではない。固まってしまっているために、相手の攻撃の範囲内に複数の味方が入ってしまっているのだ。木々に囲まれた地形であるため風は決して強くなく、風上から接近してもどうしても相手の攻撃範囲に入ってしまう。『集結』するよりも『散開』するほうが良い場合も、往々にしてあるのだ。
「う・・・・むぅ?」
そんな中、少し困ったような表情をしているのはバニス・グレイ(ea4815)だった。彼が10秒の詠唱の後に発動させたビカムワースは、確かに相手を弱らせたのだが・・・・
ズパッ、ズパッ!
泰斗、五十嵐 ふう(ea6128)が刀を振るうたび、それは確実に相手を捉えた。斬り下ろし、返す刀で斬り上げると、それだけでパピヨンは絶命した。小型で生命力の低い部類に入る相手では、こうやって単に斬り裂いたほうが効率がいい。とは言っても、パピヨンはその耐久力の低さに反して回避能力に長けた相手である、ここは素直に泰斗とふうの腕を褒めたいところだ。
「えー、そんな面倒な事すんのぉ? また発生してくれた方がいいじゃん、依頼が増えて・・・・」
ふうは一人乗り気では無かったが、パピヨン退治が一段落した後、冒険者達は討ち漏らしがないか、幼虫などがいないかを探しまわり、見つけたものは仕留めたパピヨンと共にさっさかさっさか袋に詰め込んでいった。あとで纏めて焼却してしまうつもりらしい。今後を考えたこの行動は、依頼主が後にギルドより報告を受けた際、大変有難がられた。
●蛙の毒
正しき心と猛き力をその身に備えた勇者達よ
誰よりも優しきその瞳に映るは毒持つ者
されど戸惑うな 恐るるな 汝の力を疑うな
信じる者にこそ 輝く勝利は訪れる
パピヨンの駆除を終えた後、冒険者達は次の目標に目を向ける。どうやら居心地がいいのか、ポイゾン・トード達は一向に湿地帯から出てくる気配がない。仕方ないので泰斗が石を放り込んでみると、手前に居た数匹がこちらを振り向き、毒々しい極彩色の皮膚をもったその蛙達は飛び跳ねながら近づいてきた。
ラテリカがスリープを放ち、蝶の時とは違い今度は相手を眠りに落とす事に成功するが、接近してくる相手はまだ複数。他の冒険者より一歩だけ前に出ていたふうを目掛けて、蛙達はさらに接近してくる。
「ふう様に最も近いポイゾン・トードを月の光よ、貫けっ!」
高速詠唱を生かして、咄嗟にアイネイスがムーンアローを使用するが発動しない。失敗だ。気をとりなおして通常の詠唱を始めるが、この時点で何か嫌な予感に襲われた。10秒後にそれは現実のものとなり、目標を見失ってUターンしてきたムーンアローがアイネイスに命中してしまった。
『最も近い』というのはこの場合の、ムーンアローを使用する上での単一の対象をとる為には、適切な言葉ではない。どんな状況でも確実に一つのモノを指定出来る言葉でなければ、あまり有効ではないのだ。実際、今回の場合は、ふうより等しく3m程の距離にポイゾントードが複数居た。
さて、何故ポイゾン・トードが3m程度の距離に居たのかと言うと、この距離が彼等の攻撃である毒の消化液を射程距離なのだ。このように、格闘ではなく射撃に分類される攻撃に対しての防御行動は、通常よりもその難度を上げる。ポイゾン・トードも獲物を狙うのは決して得意とは言い難いのだが、それでも回避するのも防御するのも中々難しい。イェレミーアスも、最初からマントで射線を遮っていれば話は変わっていただろう。
しかし、元よりスリープによって数が1体減っているし、消化液を受けてしまったとしても、それで毎回毒を受けるというわけではない。間合いを詰めきり、叩く事さえ出来れば、耐久力も回避能力も高くないポイゾン・トードを倒すのはそれほど苦労を伴わない。だが・・・・
「そろそろ唱えれる回数が心許ない、この辺りで切り上げないと危険だ」
ルクスが皆にそう告げた。魔法というものは実に様々な効果を及ぼしてくれるが、必ずしも発動するものではない。ラテリカのようにその道にある程度以上の能力を得ていれば、初歩的な効果は確実に発動させれるが、ルクスのように文武両道の者にその要求はまだ厳しい。
今居る場所から最寄の手当ての出来る村に頭を巡らしてみると、どう考えても1時間で辿り着くのは不可能だ。万が一を起こして誰かを死なせるわけにはいかないので、冒険者達はここでポイゾン・トードの駆除を打ち切る事にした。
全てを倒せたわけではないが、パピヨンに関する処置はしっかりと行われている。依頼としては十二分に成功した事になるだろう。
●一応、毒のある部位を判別出来る知識と、その部位を取り除いて調理する技術が必要です(営業スマイル)
「泰斗・・・・お前、ラテリカに避けられていないか?」
「ん? ああ・・・・ちょっと、なぁ・・・・失言だったか」
「いや、あれはマズいだろう」
帰りの道中、イェレミーアスとバニスに泰斗はそう話しかけられていた。蛙退治を切り上げて帰る直前の事が原因なのだろう。確か、日本刀で1体のポイゾン・トードを突き刺しながら
「そー言えばラテリカ殿。前に同道した蛙退治で肉は食わないと言ったが、先日ジャパンの従弟からシフール便が届いてな・・・・毒の有る所をきちっと取除けば食えるそうだ」
いや、泰斗も冗談というかちょっとした談話のつもりだったのだが、その次の言葉を繋げる前にズザザザザっと、ラテリカに後退されてしまった。
「ラテリカは要らない、ラテリカは要らない・・・・」
一方、ラテリカはそうぽそぽそ呟きつつ歩いており、ルクスやエリーに少し心配されていたとか、アイネイスにメロディーで沈んだ気分を持ち直させてもらったとかどうとか。冒険者ギルドへ今回の報告をする頃には、すっかり元に戻っていたので大丈夫なのは間違いないのだが。