遺跡、森の奥より

■ショートシナリオ


担当:MOB

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月02日〜09月07日

リプレイ公開日:2004年09月07日

●オープニング

 ぺたり、ぺたり。今日も冒険者ギルドに新しい依頼書が貼り出される。

 今回の依頼内容は新しく見つかった遺跡の調査。本格的な調査となると、今その依頼書に目を通している冒険者達には少し荷が重いが(専門的な学術知識が必要な為だ)、内容を読んでいく内に今回の調査は、その前段階の調査、いわば露払いのようなものだという事が分かる。
 興された村が発展し人口が増えてくれば、当然それを賄う為に既存の狩場だけでは手狭になってくる。地元の狩人達が狩場の範囲の広げるべく、数人で村周辺の森の中でもかなり奥まで立ち入った際にその遺跡は発見された。それはすぐに領主である貴族に報告され、数日して冒険者ギルドへと依頼が出される事になった。

 依頼の内容を纏める。
 達してもらう目的は、遺跡内を安全に調査が出来る状態にする事、もしくは安全である事を確認してくる事。つまりモンスターなどが棲みついていた場合はそれを撃退してもらう。狩人達が見つけた時に見た感じでは、特に何かしらが出入りしているようには見えなかったらしいので、棲みついている可能性は低いだろう。遺跡や村の周辺に、ゴブリンなどが出没したという話も聞かない。

「ん?おいギルドの人、この報酬額は間違いじゃないのか?貴族からの依頼なんだろ、これ」
「ああ、それはな・・・・」
 依頼書に明示されていた報酬額は、貴族の依頼にしては通常の相場より少なかった。その説明の為にギルドの者は言葉を続ける。
 見つかった遺跡は、どうやら一般的に遺跡と呼ばれているものの中ではかなり新しい部類に入るもののようで、その内部には今もまだ実用に耐える物が残っている可能性が高いそうだ。遺跡内で見つけた事を報告した後、特に重要そうでない物なら、それはそのまま冒険者達に持って行ってもらっても構わないという事らしい。
「もしモンスターを見つけた場合は、遺跡を傷つけないように気をつけろよ?」
 これまでの話からして居る可能性は低いのだが、何事にも備えは必要だろう。
 さて、何が出てくるのか、何が見つかるのか・・・・

●今回の参加者

 ea1241 ムーンリーズ・ノインレーヴェ(29歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea1803 ハルヒ・トコシエ(27歳・♀・ジプシー・人間・ノルマン王国)
 ea2954 ゲイル・バンガード(31歳・♂・神聖騎士・ドワーフ・ロシア王国)
 ea3852 マート・セレスティア(46歳・♂・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 ea4716 ランサー・レガイア(29歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea4795 ウォルフガング・ネベレスカ(43歳・♂・クレリック・人間・ロシア王国)
 ea5180 シャルロッテ・ブルームハルト(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea6056 トパッシュ・ロイス(33歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●当たるも八卦、当たらぬも八卦
「あの、ハルヒさん。一体何を・・・・?」
「うふふ、まあ任せてください〜。キレイにしてあげますよ〜」
 シャルロッテ・ブルームハルト(ea5180)はハルヒ・トコシエ(ea1803)に、半ば強制的にメイクを施されていた。ハルヒ曰く化粧占いとの事だ。彼女自身、まだまだ占いの事は学び始めたばかりで、試してみたい盛りなのだろう。
「えーと、これは・・・・危険はないが、思わぬ苦労があるでしょう。かな〜?」
 先に言っておくと、この占いは幸か不幸か的中していた。


●キノコ天国
 それは木々に半ば埋もれている遺跡。確かに遺跡としてはその年代は新しい物に間違いはないのだが、それでも、滅びてから少なくとも木々がこうして周りに生え揃うまでの年月は経過している。しっかりと保管されている形の物品ならば現在も使用に耐えるであろうが、さて、何が出てくるのか・・・・。
 なお、少しツッコんでおくと、道端に2mの長さの棒なんてまず落ちてはいないし、それが10mともなれば、一体何処で入手するつもりなのか。


「むぅ・・・・これは、多いぞ・・・・」
「アンデッドの類は居ないようですが、生命を持つものの方は多いのですか?」
 ウォルフガング・ネベレスカ(ea4795)がデティクトライフフォース、シャルロッテがデティクトアンデット、それぞれを使って遺跡内に何かしらの存在が居ないかを事前調査する。確かにこの遺跡に何かしらが出入りしているような形跡は無かったが、それは出入りする必要が無いだけなのかもしれない。いざ踏み込んでみたら敵に囲まれてしまいました、というのは洒落にならない。
 今回は、ウォルフガングのデティクトライフフォースに引っ掛かった、つまり通常の生命を持つ存在が遺跡内に居るという事だ。更に彼は分かった情報を皆に伝える為に言葉を続ける。
「大きさは50cmぐらいだろうか、しかし多くが固まって存在しているようだ」

「じゃあおいらが見てくるよ、何かあっても逃げるのは得意なほうだし」
 その言葉を受けて、先行する役目を勝手出たのはマート・セレスティア(ea3852)だった。ゆっくりと遺跡に近づき、気配を伺うが、相手は動いているような様子は無い。普通の生命体のはずなのに、寝てでもいるのか・・・・。何かあればすぐに引き返す心構えをしっかりと持ったまま、マートは右手にダガーを握り締めると、思い切って遺跡内に踏み込んでみた。そして、その瞬間――・・・・!


「キュイイイイイィィィィィッッッ!!!!」
「ひゃーぁぁぁっ!?!?」
 遺跡周辺に響き渡る二つの絶叫。

 耳をつんざく叫び声が目の前に現れたキノコから発せられると、マートも同様に叫び声を上げ、一目散に遺跡から逃げ出してきて仲間の後ろに隠れてしまった。震える彼を心配しながら、仲間は彼が出会った相手というのは何なのだろう?と首を傾げた。それにしてもとんでもない大きさの叫び声だった。おそらく半径100m程までには響き渡っていただろう。
 数分後、落ち着きを取り戻したマートから話を聞けるようになると、ムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241)はその内容から1体のモンスターの名前を挙げた。


「シュリーカー? あの、叫ぶ以外は人畜無害なあのシュリーカーか?」
 そう聞き返したのはトパッシュ・ロイス(ea6056)だった。植物かモンスターについて、少し知識をかじった事があるものなら、何処かで目か耳にしているだろう大きなキノコの事だ。自分が生えている周辺に菌糸を伸ばしており、そこに踏み入る者がいると大きな叫び声を上げる。だが、それ以外は全く何もしないただのキノコである。
「む・・・・という事はだ、相手は全て同じ大きさのように感知できていた。つまり遺跡内には・・・・」
 シュリーカーが沢山生えているという事。木々に半ば埋もれている上に、建築物の壁のおかげで風通しは悪く、更に空気は澱む。菌類にとっては好ましい生息状況だろうし、踏み入れたら叫び声がいくつもいくつも発せられるのだから、ゴブリン達などもわざわざこんな所に出入りしたくないだろう。

「なるほど。でも、こんなキノコが残ってたら調査どころじゃないですよね。ということは・・・・」
 シャルロッテが気づく。そう、このキノコは全て取り除かねばならないのだ。怪我をする可能性は無いが、その作業の工程を考えると気が滅入る。
 順番に挙げていくと、ムーンリーズのライトニングサンダーボルト、ハルヒのサンレーザー、ウォルフガングのミミクリー、シャルロッテのホーリーにトパッシュのオーラショット。間接的に攻撃を行える者が結構多かったので、シュリーカーの菌糸が生えている所まで踏み込まずに作業が出来たので少しは楽が出来たが、皆作業が終わる頃にはぐったりとしていた。下手なモンスターを相手どるより、よっぽど疲れたのではないかと思える。
 接近せざるを得なかったゲイル・バンガード(ea2954)、マート、ランサー・レガイア(ea4716)の惨状などは目も当てられない。何かソウル的なモノが、口から出ているように見えたり見えなかったり・・・・気のせいだろう、そうに違いない。


●罠の類はありませんでした
 遺跡内を歩き回ってシュリーカーの駆除が一通り完了させ、遺跡の調査は安全に行える状態にした冒険者達には、いよいよお楽しみの時間、お宝探索の時間の到来である。
 さて、遺跡に立ち入った時よりウォルフガングやトパッシュが行っていたマッピング、と言っても建築物間に木々が生えていたりと、どうにも全体像が掴みにくい為に位置関係や大体の構造しか記せなかったモノだが、それもシュリーカーを駆除している間に終わらせる事が出来ている。あとは途中で見つけた気になっている箇所を順番に探索していくだけ。
 それはそうと、彼等なりに必死なのだろうが、遺跡に使われている石材をじっと見入ったり、建築物の構造から重要な箇所は何処なのかの話し合い。微笑ましい姿ではあるが、残念ながらまだまだ彼等の知識では目的を達するのは不可能だろう。目の前にある、過去に存在した文明のその在り様を読み解くにはそれなりの知識が必要になる。だから依頼も安全の確認のみとされていたのだから。

 ・・・・まあ、この依頼を受けた冒険者としてはそうはいかない。あれだけ大変な思いをしてシュリーカーを遺跡から駆除したのだ、このまま手ぶらで帰るなんて冗談じゃない。マートが蜘蛛の巣をたいまつで払い、やや腕力のあるランサーを初めとした男性陣が瓦礫を除け、遺跡中を引っ掻き回す。
 ただし遺跡に傷をつけないように注意を払うのは忘れない。下手な箇所を傷つけてしまえば、報酬が無くなってしまうどころか、宝物を見つけてもそれを没収されてしまいかねない。
 途中、ハルヒがその用途範囲を確かめる為でもあったのだが、建物の中でも暗くなった先に陽の精霊魔法のライトで作り上げた光球を転がしてみたりもして、当然そういった陰気な箇所は菌類の天国で、見落としていたシュリーカーから、これで何回目か数えるのが嫌な叫び声が、遺跡から発せられる事もあったりした。見落としていたモノを駆除できたのだから、結果としては別に悪くないのだが。
 ちなみに余談だが、ライトで作られる光球は術者以外でも持ち運びが可能で、それどころかバックパックにもしまえる。これは神聖魔法のホーリーライトでも同じだ。

「おい、ここの部屋、少し狭くないか?」
 確信は無い、だが妙な違和感。最初にそう言ったのはランサーだったが、彼の言葉を受けて他の仲間達も口々にそう言われれば・・・・と声を揃える。残った箇所はもうここぐらい、他の箇所でも発見はあったが、これは持って行く訳にはいかないだろうと思える物だった。
 部屋中を隅から隅まで探し回り、冒険者達の全員同じ答えを出した。

「あの朽ちた本棚みたいなヤツが怪しい」

 ズズズズ・・・・っとその朽ちた本棚を横に除けると、その先には奥へと進める道があった。途端に皆の心が躍る。
 足を踏み入れてみると、そこはこじんまりとした倉庫だった。シュリーカー、つまり菌類が遺跡内に生えているという事は遺跡内は湿気が高い。保存状態は決して良くない為に、既にダメになってしまっている物も多かったが、リカバーポーションを始めとした壷に密封された物はしっかりと保存されており、今でも十分使えるだろう。
 不公平なく全員同じ物を依頼の報酬としようとしたので、この後にパリに戻った際に数と帳尻を合わせて全員にリカバーポーションという形になった。マジックアイテムやその他、結構な価値のある物を期待していた者は落胆を隠せなかったが、実質1Gの追加報酬である。


●シュリーカーは食べれます、むしろ生でいくのが通
「皆さん、できましたよ〜」
 シャルロッテが食事の準備が出来た事を皆に伝える。一日中を遺跡内の探索に充てたため、冒険者達は現地で一泊する事にした。パリから遺跡までの途中で野宿した時も気になったのだが、そろそろ季節の変わり目である。夏の間はまだ平気だったのかもしれないが、寝具を所持していない者はどことなくキツそうだ。
 さて、冒険者達の今日の晩餐は・・・・
 『シュリーカーづくし』
 いや、確かにシュリーカーを食べる事が出来るのは結構知られている。街から離れたこの様な地で、保存食でない暖かい食べ物が食べれるのは贅沢な話で、当然、美味しく感じるものだ。昼間に散々悩まされただけに、冒険者達も少し引っかかるような顔をしているが、これも実りの一つ。
 本格的な秋の実りはまだ少し先だ。それを先取りしたこの料理に、依頼の成功を祝いつつ、冒険者達は舌鼓を打ったのだった。