ケンブリッジ狩りを探し出せ!
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月14日〜11月19日
リプレイ公開日:2004年11月22日
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●オープニング
その日、ケンブリッジギルドの片隅では、冒険者達が深刻な表情で集まっていた。
「またケンブリッジ狩りが出たんだってさ‥‥」
「これで何人目だ?」
「詳しくは知らないが、少なくとも、10人は超えてるらしい‥‥」
最近、キャメロットの方で、複数の男達にケンブリッジの学生ばかりが連続して襲われるという事件が多発していた。
ターゲットとなる者に共通項はなく、女性や小さな子供であろうと、ケンブリッジに通う学生というだけで無差別に襲われているという事だ。
学生達はこれを『ケンブリッジ狩り』と呼び、恐れていた。
当然、ケンブリッジ側としてもこれを放置しておくわけにはいかない。
生徒会や教師達が慎重な話し合いを重ねた結果、ケンブリッジギルドから、この件に関する依頼が出される運びとなった。
その依頼書が出されると、ケンブリッジ狩りに注意を払っていた冒険者達はすぐに内容を確認しに集まったが、そこに書かれた内容に皆、少し戸惑った表情を見せる。
「ケンブリッジ狩りを探し出せ? 捕まえるのではなくて‥‥?」
依頼書にはそう書かれている。
その疑問には、依頼を貼り出した係員の女性がすぐに答えてくれた。
「襲われた学生の中には、部活の部員章や、学校の制服など、明らかにケンブリッジの学生だと分かる物を身につけていなかったにも関わらず、被害に遭った人がいるそうなんです‥‥」
彼女の言いたい事の意味が今ひとつ分からず、集まった冒険者達の何人かは首を傾げる。
「彼らは、学生達の顔を知っている。つまり、このケンブリッジに出入りしているはずの人間‥‥。それなのに、学生達が襲われるのはキャメロットの街の中だけ‥‥。つまり‥‥」
そこで彼女は一呼吸置いた。
何か重要な事を告げようとしていると、集まった冒険者達は直感で理解する。
「学生達を襲っている実行犯とは別に、その裏で密かに糸を引いている者が、このケンブリッジの中にいる可能性があります‥‥」
その言葉に、どよめき立つ冒険者達。
「学生や教師の皆さんを疑いたくはありませんが、可能性がある以上は調べておいた方がいいでしょう。どちらにせよ、このケンブリッジの学校に出入りしている者が事件に関わっているのは、ほぼ間違いないかと‥‥」
そう。今この場にいる冒険者の中にも、ケンブリッジ狩りを行っている男達の仲間がいないとは限らないのである。
「犯人が誰かによっては、このケンブリッジ全体の名誉にも関わってきますので、敢えて、今回の依頼は調査のみを目的としていただきます。難しい仕事になるとは思いますが、どうかよろしくお願いします」
そう言って、彼女は集まった冒険者達に頭を下げた。
●リプレイ本文
ケンブリッジ。
勇敢なる冒険者を、稀代の魔術師を、あるいはまた別の何かを目指し、人々が集まる場所。
その胸に多くの夢と希望を抱く学生達。
それを恐怖させた者達――ケンブリッジ狩り。
何故、ケンブリッジの学生達ばかりを狙うのか?
また、彼らはどうやって、被害者がケンブリッジの学生である事を知ったのか?
今だに多くの謎が残るこの事件‥‥果たして、犯人の正体とは‥‥?
調査開始初日。
依頼を引き受けた冒険者達は、各々の調査の後、一度ギルドに集まって、互いの集めた情報の交換をする事にした。
この時点で、早くも少しばかり行き詰った冒険者達がいる。
「シフール便と停車場‥‥。そのどちらからも、怪しい人物や集団、不審な郵便物等の出入りに関する情報は得られなかったわ‥‥」
深刻な顔で、ヴァージニア・レヴィン(ea2765)が仲間達に報告する。
「ついでに言っておくと、あたい達があちこち調査をしている間、こっちを監視しているような奴も一人もいなかった。まあ、今日はまだ気づかれていないだけかもしれないが‥‥」
そう言ったのはミケーラ・クイン(ea5619)。
彼女はヴァージニアと行動を共にしている。
二人は人や情報の出入りする場所を中心に捜査をしていた。
「停車場に関してだが、利用者に関する名簿などはないし、何より利用者の数が多すぎて、御者自身も全部の利用者を事細かに把握してはいないそうだ。犯人の肖像画でも持っていかなければ、まともな情報は得られそうになかった」
言いながら、ミケーラはお手上げのポーズ。
「シフール便も、手紙が誰から誰に送られたかの記録なんかはなかったし、当然の事だけど、それぞれの手紙の内容を確認してるって事も無くて‥‥」
ヴァージニアは最後にこう付け足す。
「もし、『パースト』が場所ではなく物を対象にできる魔法だったらなぁ‥‥」
彼女には対象とした場所の過去を見る魔法、『パースト』があった。
だが、これはあくまでも空間を対象にとる魔法。人や物を対象にする事はできない。
「あたい達は、今後は自分達の目で停車場の監視を続けてみようと思う。怪しい人物の出入りや、頻繁に利用する人の把握に努めるよ」
聞き込みで駄目なら、自分達の手でやるしかない。
「さて、次は僕達の報告ですね」
言ったのは御山映二(ea6565)。
彼は被害者に関する聞き込みを行っていた。
「下は十歳から、上は三十歳近くまで、年齢はバラバラ。所属している学校も皆それぞれ違っていて、おまけに性別、種族、出身国のいずれも問わず‥‥。特定の誰かに恨みを買っていた覚えがある人もいたし、無い人もいました。けど、そういう覚えがあった人でも、やっぱり相手はバラバラで、共通点は全く見られませんでした」
映二に同行したフィアッセ・クリステラ(ea7174)も情報を捕捉する。
「確か、背格好や服装なんかにも共通点は無かったと思うな‥‥」
続けて、ユージ・シギスマンド(ea0765)の報告。
彼女は双子の弟、スタール・シギスマンド(ea0778)と共に映二達とは別行動で被害者への聞き込みを行っていた。
「こちらの調査結果も似たような感じです。襲われた時にしても、ちょうどキャメロットのギルドの依頼で5日間かけて遠方から戻って来た帰りだったり、たまたま友達の家に行く途中だったりで、まるで共通点がありませんでした。犯人さん達についても、今のところは特に新しい情報はありません」
さらにスタールが加えて言うには、
「こっちも監視だの何だのされてる気配は全くなかった。本当に気づかれていないのか、それとも相手に泳がされているのかは分からないが‥‥」
との事。
だが、彼らの調査はまだ始まったばかり。ここから先は明日以降に期待するとしよう。
最後は太郎丸紫苑(ea0616)。
「キャメロットにいるっていう犯人達の中には魔法を使う人もいるって聞いてるし、恐らく魔法学校の生徒達が関係してるんじゃないかと思うんだ〜」
紫苑はこの自分の推理に基づき、自らも所属しているケンブリッジ魔法学校を徹底的に調べる事にした。
だが、彼の調査は、まだほとんど進んでいない。
と言うのも、あくまでも内密に‥‥という方針であったので、まずは情報を得るための相手を選ぶところから始めなくてはならなかったからだ。
犯人は生徒の誰かだと予想してはいるものの、現段階では、容疑者には教師達のような職員も含まれている。となれば、普段からケンブリッジの外に出る事なく、手紙などもほとんど出さない者を把握する必要が出てくる。
彼は、初日のほとんど全ての時間をこの作業に費やす事となった。
それ以外の行動として、購買部の方に、最近何か大量に、あるいは頻繁に物を売りに来た学生はいないかと訊ねに行ったが、特にそういうので目立った学生はいなかったと言われた。
全体的に見て、各自の調査はいずれも難航していた。
「まだまだ私達の調査は始まったばかりです。皆さん、頑張って犯人さんの目星をつけましょうね!」
グッと拳を握りしめるユージ。そう、調査は始まったばかりなのだ。
一方、これを聞いたスタール、ちょっと肩を落として、ボソッと呟く。
「犯人に『さん』付けしなくてもいいって、何度も言ってるのに‥‥」
やれやれといった表情。
もっとも、スタールはユージのこういう一風変わったところには慣れていたし、今回行動を共にしているのも、やはりユージの事が心配だったからだろう。
ちなみに本人曰く、自分は『お守り役』との事。
明日こそ、彼らは情報を得る事ができるだろうか‥‥?
二日目。
「犯人に関する情報ですが、少し気になる点が出てきました」
それは映二達の報告だった。
フィアッセが続ける。
「被害にあった人達の中で、犯人達のうちの何人かを、ずっと前にケンブリッジのどこかで見かけたような気がするっていう人がいたんだ」
二人は聞き込みの方針として、事件の調査としてだけでなく、同じケンブリッジで学ぶ学生の仲間として、友人として、被害者の愚痴にもとことん付き合った。
その結果が意外な成果となって返ってきたのである。
「ですが、どこでいつ見たかという事まではハッキリとは思い出せないそうです。何でも、随分と前に見たような気がするというだけでしたし‥‥」
不確定な情報ではあるが、進展には違いなかった。
三日目。
この日、調査は新たな局面を迎える事となる
「キャメロットの方で活動していた犯人達が、昨日捕まったそうよ」
ギルドから得た情報を笑顔で仲間達に伝えるヴァージニア。
この情報に、一同は安堵の表情を浮かべる。
特に、紫苑や映二など、知人がその依頼に参加していた事を知る者達は大変喜んだ。
「だが、一人だけ逃がしてしまったらしい。金色の髪で、紅い瞳の若い男だという事だ。昨日から停車場を監視しているが、あたい達の方では見かけていない」
ミケーラが残念そうに言う。
「犯人達について、詳しい事はまだ取り調べ中だと聞いているわ。彼らに関する情報がいつ入ってくるかは分からないし、今は私達もできるだけの事をしておかないと‥‥」
ヴァージニアのその言葉に頷く一同。
‥‥残された時間は多くはない。
四日目。
「良かったですね。皆さんに酷い事をした人達、捕まったそうですよ」
ユージはこの報告も兼ねて、もう一度、事件の被害者達の元を訪れていた。
彼女の笑顔に、そしてその報告に、被害者達は皆、どれだけ心を癒されただろうか‥‥。
「相変わらず、怪しい奴はいない‥‥か」
ユージの護衛を続けるスタールは、心のどこかで、自分達を監視する敵の登場を期待していた。
それが例え自分に‥‥、そして、自分の大切な姉にとって危険な状況になるという事を意味するのだとしても、そこから事態を進展させる事に繋がるのなら‥‥と、期待せずにはいられなかったのだ。
目の前にいるのは、全身に酷い傷を負ったケンブリッジ狩りの被害者。
自分の知らぬ間に、もしユージが何者かに襲われ、こんな目に遭わされる事があったら‥‥。
そう考えると、彼は心配で堪らなかった。
「せめて、こちらから打って出る方法があれば‥‥」
見えない敵に苛立ちを覚える。
‥‥この日、各自の調査に進展は無かった。
五日目。
ついに最終日である。
「う〜ん‥‥困ったなぁ‥‥」
紫苑はからキャメロットのケンブリッジ狩りの実行犯達が捕まったという報告を聞いてから、毎日調査の開始前に一度はギルドに訪れ、何か情報が入ってきていないかを係員に訊ねていた。
だが、未だ新しい情報は入ってこない。
仕方なく、魔法学校の内部で地道に調査を続ける。
しかし、特に目新しい情報はなく、大きな進展はないまま終わってしまった。
紫苑の調査方法はけして間違った方法ではない。こうして地道に調査する間にも、外部との関わりを一切持たない者達を容疑者から外し、確実に候補となる者を絞っていっているのだから‥‥。
問題はたった一つ。
それは、紫苑一人の手で行える調査には限界があったという事だ。
もし、何人かが彼と行動を共にしていれば、何らかの発展はあったかもしれない。
最後に紫苑は、駄目元で、あちこちの植物に『グリーンワード』の魔法を使い、話を聞いてみる。
「怪しい人達がケンブリッジを徘徊したりはしていないかな〜?」
植物達の返答は、
『分からない』
どんな人間が怪しくて、どんな人間が怪しくないのかといった判断は、植物の認識できる範囲を超えた質問であった。
ついに最後の集合。
「他の人たちは何か情報を得られたかな?」
フィアッセは仲間達に訊ねる。
全員が首を横に振ってしまった。
「私達二人でずっと停車場を監視していたのだけれど、これといって怪しい人達の出入りは無かったわ」
「キャメロットで逃げたっていう金髪の男は、結局ケンブリッジには来なかったみたいだ」
ヴァージニアとミケーラが、それだけ報告してくれた。
その後、各自の調査結果をギルドに報告し、解散となった。
「結局、情報らしい情報は、犯人達をずっと前にケンブリッジで見かけたような気がする人がいるってだけですか‥‥」
だが、映二の報告したこの不確定な情報が、意外な事実の早期発見に繋がる。
その後、ギルドの手によって一つの真相が明らかになった。
ケンブリッジ狩りを行っていた男達は、いずれも以前ケンブリッジに通う学生であった事が判明したのだ。
だが同時に、彼らは長い間ケンブリッジを訪れておらず、現在の学生達を自分達だけで把握していた可能性が極めて低い事も明らかになった。
これにより、何者かが裏で糸を引いているのでは‥‥という一部で囁かれていた仮説は、より現実味を帯びる事となる。
残念ながら、その件に関しては依然として調査中との事だ。