迷子と一緒に迷子探し?
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜4lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 20 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月03日〜01月08日
リプレイ公開日:2005年01月11日
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●オープニング
その事件は、二人のパラの少女がキャメロットを訪れた事から始まる。
「うわぁ〜。人がいっぱいいるよ〜。すごいね、スイ!」
「‥‥まったく、レンときたら田舎者丸出しですぅ。あんまりはしゃぐとみっともないですぅ」
「だってさ、ボク達の村じゃこんなに大勢の人を見る事なんて、全然ないじゃないか」
街道を行き交う大勢の人々を眺めて楽しそうに笑っているのは、茶色の髪を短めに整えたボーイッシュな少女。
一方、それとは対照的に、やれやれといった表情で隣にいる少女。こちらは、ゆったりとカールした茶色の長い髪を左右に軽く分けている。
パラの種族的な特徴ゆえ、ぱっと見は小さな子供にしか見えないが、よく見ればどちらも均整のとれた顔立ちの美少女だ。
髪の短い方が妹のレン。長い方が姉のスイ。
二人は双子の姉妹で、今回はちょっとした観光目的で、遠路はるばるキャメロットへとやってきたらしい。
「ねえ、せっかくキャメロットまで来たんだから、まずはキャメロット城を見に行こうよ」
「お城ですか? 悪くないですぅ。それじゃあ、毎日ただ突っ立ってるだけのクセに、庶民から巻き上げた税金でのうのうと生きているという兵士どものツラを拝みに行ってやるですぅ」
失礼極まりない事を平然と言い放つスイ。
「レン、しっかり私に付いてくるですぅ」
「あ、待ってよス‥‥え!?」
「キャ〜〜〜!?」
先ほど偉そうな事を言っていた割には、やはりスイの方も人ごみには慣れていなかったのだろう。
威勢だけは良かったのだが、容易く人の波に巻き込まれ、あっと言う間にレンとはぐれてしまった。
「レン〜〜! どこにいるですぅ〜〜!?」
「スイ〜〜〜! どこだい〜〜〜!?」
お互いに相手の声のする方へ移動しようとするものの、人波に邪魔されて思うように進めず、そのうち自分がどこにいるのかも分からなくなってしまう。
――数十分後。
「ひ、酷い目に遭ったですぅ‥‥って、ここはどこですぅ!?」
やっと人ごみから抜け出したと思いきや、全く見知らぬ場所に来てしまっていたスイ。
「あれ? どうしたのキミ? 迷子?」
「え?」
すぐ側にあった建物の中から、頑強な鎧を身に纏った女性が出てくる。
「こ‥‥ここは‥‥!?」
そう。スイはいつの間にか、冒険者ギルドの前まで来ていたのである。
「‥‥と、いうわけで。迷子になった妹のレンを一緒に探して欲しいのですぅ」
迷子になっているのは自分も同じだという事は秘密のまま、スイはギルドに依頼を出した。
「本当なら私一人でもそのうち見つけられるのですが、大勢で探した方が早く見つかるですぅ。報酬はタンマリ払ってやるから、しっかり働きやがれお前達、ですぅ」
もちろん、自分一人で探しに出かければ、今度はどこで迷子になるか分かったものではない‥‥というのが本音である。
依頼そのものよりも、この依頼人と行動を共にしなければならない事の方がよっぽど大変そうだ‥‥と、その場にいた冒険者全員が思ったという。
●リプレイ本文
冒険者の仕事というのは、実に様々である。
何も魔物と戦い、遺跡を探索するだけが冒険者の仕事ではない。
時には、近くの森へ薬草を取りに行って欲しいと頼まれたり、本当にいるかどうかも分からない幽霊の噂の真相を確かめさせられられたり‥‥。
そういう些細な事件もまた、冒険者達にとっては確かな経験になるのである。
今回のこの依頼も、そんなちょっとした事件だった。
しばらくの相談の後、冒険者達はスイを連れ、自分達が普段から頻繁に出入りしている『酒場』に向かった。
「やっぱり、情報収集には人が集まる場所が一番よね。運が良ければレンを見かけた人がいるかもしれないし」
「そうだよね。話を聞いた限りだと、賑やかなのが珍しいみたいだし、そういう意味でも人が多いところを探すのは損じゃないね」
ディーネ・ノート(ea1542)とカッツェ・ツァーン(ea0037)はそう言って、酒場の中を見渡した。
訪れたのが昼間だったので、思ったほど多くはなかったが、それでも話を聞くには十分なほど、酒場には人がいた。
「あぁ‥‥。こうしていると、何だかとても懐かしいです。昔はこうして娘の手を引いて、よく街を歩いたものですわ‥‥」
セシリー・レイウイング(ea9286)が穏やかな笑顔で、自分の手を握っているスイに微笑む。端から見れば、今の2人の様子は仲の良い親子のように見えなくもない。
「どうかしらスイさん。レンさんはここにいると思う?」
訊ねてみるものの、スイは少し返事に困った様子。
「う〜ん‥‥いないと思うですぅ。こんな酒臭い上に、昼間から働きもせずブラブラしてるようなダメ人間の溜まり場には、私もレンも来たことないですし‥‥」
「‥‥スイちゃん、言葉に遠慮がないわね‥‥」
側にいたチョコ・フォンス(ea5866)は、今のスイの言葉を聞いたと思われる周囲の人々から、自分達に鋭い視線が向けられているのを感じた。今ならまだ、子供の戯言と聞き流してもらえるだろうが、度を越すと危険かもしれない。
「それにしても、こんな時間だっていうのに、えらくたくさん人がいるですぅ。キャメロットには随分とダメ人間が多いですぅ」
「そ‥‥そんな事はありませんよ。キャメロットには、紳士淑女が多いですよ。家庭やお仕事の関係で、この時間にしか酒場を訪れられないという方もいらっしゃるでしょうし、私達のように、何か大切な用事があってここに来ていらっしゃるのかもしれませんし‥‥」
さらに続けられたスイの言葉に、より一層、周囲の視線が厳しくなったのを感じたショコラ・フォンス(ea4267)がフォローを入れる。
「まぁ、確かに愉快な方も多いですが‥‥」
「‥‥って、兄様、それは言っちゃいけない事でしょ!」
ショコラが周りに聞こえないくらいの声でボソッと口にした危険な本音は、チョコにだけはしっかり聞こえていたようだ。
「ま、あまり長居するわけにもいかないし、さっさと始めよう」
そう言って、酒場の奥の方へ進もうとしたところで、紅司(ea1547)はふっと足を止めた。
「‥‥にしても、結構人が多いなぁ。お、良い事考えた。なあ、スイ?」
「はい? 何です?」
「肩車してやろうか? スイの視界も広がるし、目立つからレンの方からも見つけ‥‥って、おい?」
「ふえぇ〜〜ん! 酷いですぅ〜〜!」
司の提案に対し、突然、セシリーに泣きついたスイ。
「あらあら、スイさんどうしたの?」
「あの人間ときたら、自分こそ『ちび』のくせに、スイの事を『ちび』呼ばわりしてイジめるんですぅ〜」
「なっ!? おい‥‥!!」
慌てて弁解しようとした司だが、
「まあ、本当に‥‥?」
「スイちゃん、可哀想に‥‥」
「申し訳ないです、レディ。彼もきっと悪気があったわけではないはずですから、どうか許してあげて下さい」
セシリーとチョコとショコラの三人が、揃って司に冷ややかな視線を送る。
「違うっ! 皆、誤解だっ! ‥‥ってか、『ちび』言うな!!」
必死に弁解する司。
特に、最後の方の台詞に特に気合が入っていたように感じるが、実はかなり気にしているのだろうか?
慌てふためく司の横で、カッツェは仲間達のそのやりとりを暖かく見守っていた。
「‥‥なんか、これくらいの子だと口が悪いのも背伸びな感じで可愛いよね〜」
「何、和んでるんだよ、そこ!」
相変わらず司は必死。
「きゃあ〜! 汚い唾液を飛ばすなですぅ!」
「ああもう、可愛らしいなぁ‥‥うふふふふ‥‥」
だんだんとスイを見るカッツェの視線が危なくなってきている気もするが、ここは気のせいという事にしておこう。
「‥‥もう、しょうがないわねぇ‥‥」
事態の収拾に当たったのはディーネ。
「ねえ、スイ? 司に肩車させてあげてくれないかなぁ? 後でキャメロットの美味しい物たくさん奢ってあげるから。ね?」
「そ‥‥そこまで言われちゃ仕方ないですぅ。‥‥ほら、何をグズグズしてるです人間? さっさとそこに跪けですぅ」
ディーネ、無事に説得成功。
「何かムカつくなぁ‥‥」
少し納得いかない部分もあったが、司はおとなしくスイの言葉に従った。
「うっ‥‥結構重い‥‥」
「失礼なヤツですぅ。お前の体力が無いだけですぅ」
「な‥‥何をぅ‥‥」
持っていた荷物を仲間達に預かってもらい、何とか司はスイを肩車する事に成功。
「それじゃ、皆で手分けして聞き込みを始めるわよ」
ディーネのその一言を合図に、冒険者達は酒場とその周辺のあちこちに散った。
「どうでした、皆さん?」
セシリーの問いに、全員が首を横に振ってしまった。
「多分、こっちの方には来てないって事だろうね。となると、やっぱり教会やお城の方へ行ったのかな?」
カッツェがそう推理すると、
「なら、ここからだと、お城に行く前に教会の前を通る事になるし、そっちに行ってみようか?」
ディーネのその一言で、次の目的地は教会に決定した。
‥‥教会に向かう道中の事。
「うぅ‥‥恥ずかしいですぅ‥‥」
「何言ってんだよ。皆、お前のためにやってるんだぞ」
「レンちゃ〜〜〜ん! スイちゃんが捜してるよぉ!」
「レンさーん。スイさんはココですよ〜。いらっしゃいませんか〜?」
大きな声で周囲に呼びかけるのは、チョコとショコラのフォンス兄妹。
他のメンバーはと言えば、カッツェは『リトルフライ』で人ごみの上を飛び回っており、セシリーは定期的に『ブレスセンサー』でそれらしい人影を探していた。
また、ディーネは司に肩車された状態のスイを見た通行人達に、良く似たパラの女の子を見かけていないかどうか訊いてまわっていた。
当然の事ながら、冒険者達はかなり目立っていた。それはもう、すれ違った人々が全員振り返るぐらいに。
大勢の人から注目される事に慣れていなかったスイは、すっかり小さくなっていた。
冒険者達は教会とその周辺での聞き込みを行ったが、ここでも有力な情報を得ることはできなかった。仕方なく、彼らはそのままキャメロット城の周辺に向かう事にした。
その途中での事。
「つ‥‥疲れた‥‥」
「では、今度は私が‥‥」
「「いいなぁ‥‥」」
「な、何ですか、2人とも‥‥?」
疲労が溜まった司に代わり、今度はショコラがスイを肩車する事になったのだが、カッツェとチョコがその様子を羨ましそうに見つめていた。
もっとも、カッツェの羨望の対象はショコラで、チョコの羨望の対象はスイだという違いはあったが‥‥。
事態が進展を見せたのは、冒険者達がそんなやりとりを交わした後だった。
「‥‥ん?」
冒険者達の近くを通りがかった少女が、スイの方を見て何やら言いたそうな顔をしているのに、ディーネが気づいた。
「ねえ、お姉ちゃん達、もしかして、そっちのお姉ちゃんにそっくりな人探してるの?」
少女の視線の先には、仲間達と戯れるスイの姿がある。
「ええ、そうよ。知ってるの?」
「うんとね、さっきね、港の近くで、冒険者ギルドはどこかなって訊かれたの」
「本当? 助かったわ。教えてくれてありがとう」
ディーネがお礼に頭を撫でてあげると、少女はちょっと照れた様子で手を振って去っていった。
冒険者達がギルドに戻ると、そこには髪型や服装こそ違うものの、スイそっくり顔をした女の子が待っていた。どうやら先ほどの少女の話は本当だったらしい。
「レン〜、会いたかったですぅ〜」
「うん、ボクもだよ。ほんと、スイが無事で良かった」
再会を喜び、手を取り合うスイとレン。
「あ、皆さんがスイと一緒にボクを探してくれていた冒険者の方々ですね。どうも、お手数をおかけしました」
ペコリと頭を下げるレン。
「え? どこで私達の事を?」
不思議そうな顔でカッツェが訊ねる。
「スイと分かれた後、ボクはエチゴヤさんの方に行ってしまったんです。そこから、聖夜祭の会場まで行って、そこで、通りがかった人達から皆さんの事を聞きました」
結局のところ、冒険者達は行き違いになってしまう順序でレンを探していたもよう。
だが、道中でかなり大っぴらにレンの名前を呼んだり、スイの姿を人々に見せていた事で、自分達が探している事を人伝にレンに知らせる事ができた‥‥と、そういうわけだった。
さて、本来ならここで依頼終了なのだが‥‥。
「あの、良かったらお二人にキャメロットの案内をして差し上げたいのだけれど、よろしいかしら?」
最初にそう申し出たのはセシリー。
「あ、だったら私も一緒に行きたいな〜♪」
「そう言えば、依頼の後で何か美味しい物を奢るって約束してたわね」
「仕方ない。付き合ってやるか‥‥」
「兄様、あたし達も行こっか?」
「そうですね。もう少しご一緒しましょう」
冒険者達の申し出にスイとレンは笑顔で応えた。
「それじゃあ‥‥」
「仕方ないから、お供させてやるですぅ」
その後、一同のキャメロット観光は日が沈むまで続いたとか‥‥。