【D or A】凶賊狩り
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 20 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月06日〜01月13日
リプレイ公開日:2005年01月13日
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●オープニング
闇に身を潜め、人々を恐怖に陥れる犯罪者や魔物達‥‥。
彼らは時として、賞金首として指定される事がある。
そしてその中でも、一部の賞金にはこういった条件が付く。
『生死を問わず』
それは、対象の罪の重さを示す証。
だが時にそれは、対象の実力を‥‥その対象を追う事がいかに危険かを示す証でもある。
‥‥その日、とある冒険者達が訪れた森の中で、悲劇は起こった。
「頼む‥‥た‥‥助けて‥‥くれ‥‥」
男には、もはや立ち上がるだけの力すら残されてはいなかった。
武器を持っていたはずの右腕は既に肘から先が無く、傷口からはとめどなく血が流れ出している。左足はあらぬ方向に曲がっており、逃げる事もできない。
「あぁ? もう降参かよ? ちっ、もっと楽しませてくれると思ったのによ〜?」
そう言って、重厚な鎧に身を包んだそのジャイアントは、倒れている男の折れた足を平然と足蹴にした。
「‥‥や、やめ‥‥ぐああああっ!!」
「どうした〜? もっといい声を聞かせてくれよ〜?」
激痛に顔を歪め叫びを上げる男を、そのジャイアントは下卑た笑いを浮かべながら弄び続ける。
「やれやれ‥‥。期待はずれにも程があります。グドル、いつまでも遊んでないで、そんな虫けら、さっさと殺してしまいなさい」
「そう言うなよ、シャグマ〜。これが俺の楽しみの一つなんだからよ〜」
「ふっ‥‥私には理解できませんね、その趣向は。私なら‥‥」
シャグマと呼ばれたハーフエルフの男が、ほんの一瞬何かを呟いくと、黒い帯状の光がまっすぐに何かを目指して放たれる。
「キャアアアーーーーッ!!」
周囲に響いたのは、若い女の悲鳴。
「ふっ‥‥やはり、悲鳴というものは、命が散る瞬間のものが一番美しい‥‥」
恍惚とした表情を浮かべながら、シャグマはそう呟いた。
「お? なんでぇ‥‥、まだ息のある奴がいやがったのかよ」
「あなたもまだまだ甘いという事ですねぇ、グドル?」
「う‥‥ぐぅ‥‥」
こんなはずでは無かった‥‥。
ギルドからの依頼を無事に終え、後はキャメロットに帰る‥‥ただそれだけだったはずだ。
ここにいた8人の冒険者達は、けして弱くはなかったはずだ‥‥。
それが‥‥、それがたった2人の襲撃者相手に全滅なんて‥‥。
「けっ、胸くそ悪ぃ!!」
「あ‥‥がぁっ‥‥」
「うっせぇんだよ! 死ね、クズが!」
忌々しそうに吐き捨てると、グドルは己が身の丈ほどもある大剣を、足下に転がる男の顔目掛けて振り下ろした。
絶命した男を見下ろし、シャグマが呟く。
「おやおや、勿体無い‥‥。そんな殺し方では、せっかくの悲鳴が聞けないじゃないですか‥‥クックック‥‥」
‥‥その後すぐ、2人の凶賊はその場から姿を消した。
――数日後、冒険者ギルド。
「キャメロットから3日ほど行ったところにある森の中で、ギルドから依頼を受けた冒険者の一団が死体で発見されました。いづれの死体も損傷が酷く、剣や魔法で攻撃されたと思われる傷が多数あり、おそらく盗賊か何かに襲われたものと思います。」
深刻な表情で、係員の女性は言った。
「皆さんには、彼らを殺したその犯人を捕まえていただきたいのです。ただし、相手が相手ですので‥‥」
続けて口にされたのは、『生死を問わず』の言葉。
さて、いかなる冒険者達がこの依頼を引き受けてくれるのだろうか‥‥。
●リプレイ本文
冒険者。
幾多の魔物を打ち倒し、隠された世界の謎を解き、多くの人々を救う者。
だが、その彼らに牙を向ける者も、この世界にはいる。
深い森の奥深く、八人の冒険者を殺害した凶賊達。
一人は、己が前に立ち塞がる全てを薙ぎ払う豪腕の戦士。
もう一人は、己が快楽のために大いなる地の力を悪用し、尊き命を奪い去る冷酷な魔法使い。
果たして、冒険者達は彼らに打ち勝つ事ができるのだろうか‥‥。
「‥‥許せない」
折れた木々と、えぐられた大地と、飛び散った血の後。
未だ戦いの傷跡を残すその場所に辿り着いた時、レムリィ・リセルナート(ea6870)は怒りを抑えきれなかった。
殺されたのは、自分と同じ冒険者の仲間達。
その仲間達がどのような無惨な殺され方をしたかをギルドで聞かされた時、彼女は迷う事無くこの依頼への参加を決意した。
だが、そんな彼女とは対照的な考えを持つ者もいた。
重厚な鎧を身に纏いし冷徹なる戦士、コロス・ロフキシモ(ea9515)だ。
「ふん‥‥。襲撃されたとはいえ、八人もいて賊に遅れを取るとは、まったく弱い奴らだ」
「何も、そんな言い方は‥‥」
「黙れ混血種。俺は混ざり物の出来損ないと話をするつもりはない」
「何ですって‥‥!」
コロスの言葉を耳にし、イドラ・エス・ツェペリ(ea8807)は反論を口にしようとしたが、それさえもコロスは拒否した。それも、イドラがもっとも嫌いな、彼女がハーフエルフだからという、ただそれだけの理由で。
冒険者の間に、険悪な雰囲気が漂い始めたその時、イオン・アギト(ea7393)は草木をかきわけ、自分達に近づいてくる足音がある事に気がついた。
「何者だ!!」
その呼びかけに応え、姿を現したのはジャイアントとハーフエルフの二人の男。
「ハッハーーッ! おい、シャグマ、お前の言った通りだな。ここで待ってれば、活きがいい獲物がかかるってのはよーー!!」
「やれやれ‥‥。もう少し待てなかったのですか、グドル?」
「目の前の獲物が自分達で喰いあっちまったら、俺が楽しめる分が減っちまうだろうが!!」
「まったく、貴方という人は‥‥」
危険な言葉を交わす謎の男達に、メイトヒース・グリズウッド(ea5307)は、返ってくる答えをほぼ確信しつつも訊ねた。
「‥‥ここで、彼らを殺害したのは貴方達ですか?」
「ああ、そうさ」
平然と答えたグドルの言葉に、冒険者達はそれぞれの得物に手をのばす。
「仕掛けるなら、お先にどうぞ。私達は少し待ってあげますから」
明らかな挑発の姿勢を見せるシャグマに、最初に動いてみせたのはマルト・ミシェ(ea7511)だった。
「魔法を扱う者は、分別と理性を手放さず、道理をわきまえなきゃいけないもんなんじゃ。それを、のぅ‥‥」
怒りと悲しみに満ちた言葉の後、呟かれた一瞬の呪文、『アグラベイション』。
「うおっ!?」
目に見えない力に、体を押さえ込まれるグドル。
「もらうッ!」
コロスを先頭に、レムリィと鳳萌華(eb0142)の二人が続き、動きを鈍らせられたグドルとの距離を一気に詰める。
「ほう‥‥」
感心した風に呟くシャグマに、マルトは躊躇う事無く『グラビティーキャノン』を放つ。
‥‥いや、マルトだけではない。
「シャグマさんでしたっけ? 貴方とは気が合いそうですが、これも仕事ですのでねぇ。どちらが死んでも恨みっこなしですよ」
「そりゃ〜〜〜〜!!」
メイトヒースの『ファイーアーボム』と、イオンの『ライトニングサンダーボルト』。
重力と炎と雷。その全てがシャグマを同時に襲う。
それは、並みの魔物であれば、ほぼ確実に重傷を負わせられるであろう攻撃。
冒険者達の誰もが、決定的なダメージを与えられたと確信していた。
だが‥‥。
「‥‥冗談‥‥でしょう?」
魔法による一斉攻撃でできた隙をつき、一気にトドメを刺しにかかるつもりであったトリア・サテッレウス(ea1716)は目の前の出来事に驚愕していた。
「それで終わりですか? 今回も期待外れですかねぇ‥‥」
そう、目の前の男、シャグマは確かに先ほどの魔法全ての直撃を受けたはずだった。
だが、シャグマは『グラビティーキャノン』の効果で転倒させられはしていたものの、ほとんどダメージを受けた様子もなく、未だに平然とした態度を保っていたのである。
「くっ‥‥!」
左手にロッドを、右手に短刀を携え、イドラはシャグマ目指して駆け出した。
「イドラさん!? ‥‥神よ‥‥どうか、お守り下さい!」
短槍を手に、トリアも後に続く。
「やれやれ‥‥」
向かって来る二人に対しても、相変わらずの余裕を見せるシャグマ。
「同族の者として‥‥、貴方のような存在を恥ずかしく思います‥‥!」
『ダブルアタック』をしかけるイドラ。
「人の道を外れし者達に、裁きを‥‥!!」
トリアも同時にその槍でシャグマの身を貫こうとする。
シャグマを襲う三つの直接攻撃。
――ガン!!
しかし、まるで硬い岩にでも攻撃したかのように、いづれの攻撃もシャグマには全く通じた様子がない。
「これは‥‥!?」
その時、トリアは気づいた。シャグマの身につけた皮鎧の下、彼の表面を覆う岩状の皮膚に。
「効きませんよ。そんな攻撃ではね!!」
一瞬の輝きと共に、放たれるは漆黒の重力波。
「しまっ‥‥」
「何じゃと‥‥!?」
イドラ達が反応するより早く、まさに一瞬で紡がれた『グラビティーキャノン』が、イドラ、トリア、さらにはその後方にいたマルトまでをも巻き込み、三人をまとめて吹き飛ばした。
「さて‥‥。次はどなたがお相手して下さいますか?」
身構えるイオンとメイトヒースに、シャグマは冷酷に言い放った。
一方、グドルと交戦中のコロス達もまた苦戦していた。
「くそっ! たった一人相手に向こうは何を手間取ってやがる!」
「はっ! 他人を気にしてる余裕があるのか!」
「ムウ‥‥ッ!!」
迫り来るラージクレイモアの一撃を、コロスは盾で受け止める。
「いい加減、しつっこいのよ!!」
その隙を見逃さず、レムリィは背後からグドルに攻撃をしかける。
「ぐおっ! てっめえーーっ!」
しかし、その攻撃は『バーニングソード』を付与されていてなお、頑強な鎧の前にさしたるダメージを与える事ができない。
冒険者達は皆、共通してある決定的な弱点を抱えていた。攻撃力不足だ。
今回の依頼であれば、敵は大勢の冒険者を撃破し、それでいて、自分達はさしたる被害も出さずに済んでいるという事が、事前の情報から明らかであった。
群に対して個で挑む時、もっとも重要な要素は何か?
それは、防御や回避に優れているか否かである。
たとえば、今回の冒険者達の中でいえば、そういった戦いで最後まで生き残る可能性が最も高いのがコロスだ。彼は極めて高い防御の能力を持っており、並大抵の攻撃では、彼にカスリ傷ひとつ負わせる事はできない。レムリィがグドルの攻撃を受け、離れての回復を余儀なくされるほどの傷を負うのに比べて、コロスが同じ攻撃を受けても、彼は軽傷程度のダメージで済んでいる。
冒険者達の苦戦は、この防御の点において相手の実力を見誤ったがために起こっていたといえる。
このまま一方的な消耗戦を続けていけば、冒険者達は確実に負けるだろう。
だが、たった一人だけ、この状況を打破する力を持った者がいた。
「‥‥仕方ないか」
ただ静かに、この戦いを冷静に判断する事に重きを置いていた萌華が、ここにきて大きく戦局を動かす。
「な‥‥何だぁ!?」
グドルは、突如己が手に握られていたラージクレイモアが瞬く間に錆びてゆくのに動揺を隠せなかった。
物品錆化の魔法、『クィックラスト』である。
「‥‥その武器、もう壊れる」
「ムオオオオッ!」
気合一閃、コロスが刃を交えると、グドルのラージクレイモアは信じられない程に容易く折れた。
「‥‥次、その鎧」
「てやあぁ!!」
萌華の言葉に従い、レムリィが鎧の上からグドルを攻撃してみると、今度は幾度となく彼女の攻撃を受け流した頑強な鎧が脆くも崩れさる。
「じ‥‥冗談じゃねえぞ! おい、シャグマ!!」
追い詰められ、助けを呼ぶグドル。
「馬鹿な、あのグドルが‥‥!?」
地に膝をつき、立つのもやっとの状態にまで冒険者達を追い詰めていたシャグマ。
圧倒的なまでの余裕を見せていた彼が、気を逸らすその一瞬を待ち受けていた者がいた。
「だああぁっ!!」
「何!?」
背後から襲い掛かったのは、トリアの『スマッシュ』。通常ならば、今のトリアの腕では使いこなすのが難しい技の一つ。だが、今はこの方法以外に、シャグマの防御を上回る攻撃の術は無かった。
そして、それは見事にシャグマの岩状の皮膚を突破したのである。
「があぁっ!? ‥‥くそっ!」
だが、それでもまだ決定的なダメージを与えるには至っていなかった。
すぐさま放たれる重力波の反撃に、トリアはまたしても後方へと弾き飛ばされる。
「ちいっ! これ以上は、付き合ってられませんね!!」
駆け出すシャグマ。
「て‥‥てめえ、俺を見捨てるつもりか!?」
「は! こっちは元からお前なんぞ仲間だと思っちゃいないんですよ!!」
訴えるグドルの言葉に、冷たく言い放たれた言葉。
「お前のようなハーフエルフがいるから‥‥ッ!」
逃亡を企てるシャグマの前に、立ち塞がるイドラ。
さらには、残っていた力を振り絞り、マルト、イオン、メイトヒースが同時魔法攻撃を放つ。
「邪魔なんですよっ!!」
だが、それらの一斉攻撃はいまだシャグマの『ストーンアーマー』の防御を超えられない。
結果、シャグマは冒険者達の包囲を抜けてしまう。
その一方で、グドルが最期の時を迎えていた。
「「「はあああっっ!!」」」
コロス、レムリィ、そして萌華。
三人の刃は深々とグドルの身体に突き刺さった。
「ぐ‥‥があ‥‥く‥‥そ‥‥」
グドルの瞳から、生気が失われていく様を、彼らはしかと見届けた。
冒険者達はこの戦いに勝った。それが、完全とは言えない勝利でも‥‥。
そして、彼らはしばしの休息の後、キャメロットへと戻ったのである。