【バースの戦乱】盗賊団を迎え撃て!
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:4
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:02月22日〜03月06日
リプレイ公開日:2005年03月04日
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●オープニング
「民衆が反旗を翻しただと!?」
城の片隅でラスカリタ伯爵家の領主代行、サンカッセラが驚愕に満ちた声を上げた。
キャメロットの西185km先にバースという地域がある。エイヴォン川の河畔にある街『バース』の北、俗にバース北方領土と呼ばれる地域は現在領主代行が掲げる霞のような理想論によって統治され、ジワジワと破滅の道を歩んでいた。
虐げられた民衆は叫んでいる。
新たな領主を迎えよう、民草の事を理解せぬ非道な領主代行をうち倒せ。
民衆達には希望の光があった。死んだと思われていた第一夫人の娘が現れたのだ。
よって民は新たな『王』を求める。
「自ら妖しい薬に手を出して自滅した莫迦者共めが。今この北方領土がいかに危険な均衡の上にいるのか欠片も理解していないと見える。大体民衆達が新たな領主にと掲げる者は」
‥‥一部の貴族だけが知っていた。
民衆の掲げる新領主の候補者が六年前にバースを恐怖に陥れた大盗賊の頭領であることを。そして正当な後継者であることも。
民も、領主も、助けの手を求めた。
暴動を起こした愚かな民衆を鎮圧せよ、慈悲すらたれぬ領主をうち倒す手伝いをと。領土に住まう多くの若者が、騎士が、魔法使いが始まろうとしている内乱のために招集された。強力なモンスターの徘徊していた北の森からは警備が消え、モンスターや盗賊達が村や町へあふれ出す。
かくして戦は始まる。
自堕落や失態を棚に上げて都合の良いときに助けを求める虐げられた民衆と。
物事に厳正過ぎるあまり人として慈悲に欠けた誠実な領主の間で。
戦乱が始まってすぐの事だった。
領内各地に伝令が走り、男達は戦力として徴兵され、領土の村々からは勇ましい若者の姿も、家族を守る父親の姿も消えてなくなった。
「必ず生きて帰る」
男達はそう言って、愛する家族を残して村を去った。
残された女や子供、老人達はただひたすら、精霊に、神に、そして天に、愛する者達の帰りを祈った。
‥‥だが、彼らの願いが叶うその前に、戦乱の中で、いくつもの悲劇は起こっていた。
「お願いです。どうか‥‥どうか、命だけは‥‥」
「な‥‥何が欲しいんですか? お、お金ですか? そ、それとも食べ物ですか?」
目の前の男に怯え、肩を寄せ合い震える母娘。
「あぁ? 何寝ぼけた事言ってんだ、てめぇら?」
下卑た笑みを浮かべ、男はこう言い放った。
「俺達が欲しいのはこの村の『全て』だよ」
村のあちこちから声が聞こえる。
泣き叫ぶ子供の声。
追い回され、逃げ惑う若い女の声。
地べたを這いずり、命乞いをする老人の声。
そして‥‥全てを奪っていく盗賊達の声が‥‥。
「まったく、戦ってのは最高だな。これだけ暴れても、誰一人俺達を捕まえになんて来やしねえ。酒、金、女。欲しい物は何だって手に入る。ここの馬鹿な領主様と領民どもに感謝しなきゃなぁ!!」
戦乱に紛れ、盗賊達が活動を始めたのは、村々から男達が消えてすぐの事だった。
徒党を組んだ盗賊達の手によって、いくつもの村々が蹂躙され、多くの命が弄ばれ消えていった。
戦乱の中、盗賊達の噂はバース中に知れ渡った。
しかし、それはバース全体で見れば局地的な出来事に過ぎず、また、戦乱の中心となっている領主側、民衆側、共にそれらに対して戦力を割ける余裕は無かった。
結果、盗賊達は誰にも止められる事なく、暴虐の限りを尽くしていた。
だが、その盗賊達を止めるために動き出した者達がいた。
戦乱の噂を聞きつけ、バースを訪れた冒険者達。
彼らは急いだ。
盗賊達の暴挙を止めるために。
これ以上の悲劇を生み出さないために‥‥。
●リプレイ本文
争いが争いを生み、憎しみが憎しみを呼び、流される血によって、バースの大地は紅く染まっていった‥‥。
どうすればこの戦いを終わらせられるのか‥‥。
答えは見えず、それでもなお、幾多の冒険者達がこの地に足を踏み入れた。
今、彼らに出来る事を、彼らの持てる全ての力をもって成し遂げるために‥‥。
「村の皆さんの避難ですが〜、何とか無事に終わりました〜」
トテトテと仲間達の下へ駆け寄り、シェリル・シンクレア(ea7263)はそう報告した。
「これで一応、準備の方は‥‥はぅ!?」
「ご苦労様‥‥って、大丈夫?」
急いで走ってきたせいか、仲間達の目の前で盛大に転んでしまったシェリルに、梁明峰(ea8234)は手を差し出す。
「ううっ‥‥ちょっと痛かったです〜」
「幸い、怪我はないみたいね‥‥」
服についた泥を軽く手でたたいて落とす元気そうなシェリルの様子を見て、グレリア・フォーラッド(eb1144)は胸を撫で下ろした。
村人達の避難が終了してから、わずか数分後。
最初に敵の動きに気づいたのは、村の周辺の様子を探っていたサクラ・キドウ(ea6159)。
「どうやら、村の周囲を完全に包囲してから襲撃するつもりのようです。誰一人、逃がすつもりは無い‥‥という事でしょう‥‥」
「盗賊団‥‥か。人の敵は人、と言うがな‥‥」
名無野如月(ea1003)が、その身を包んでいた防寒着を脱ぎ、日本刀を腰に挿し直して戦闘準備を整える。
「私の馬も怯えている‥‥。分かるのだろうな‥‥奴らが敵だという事が‥‥」
ドルフィネス・デリアス(ea5997)は、乗っていた馬から降りた。可能なら乗馬したまま敵の背後に回り込もうとも考えていたが、今の馬の精神状態から、それは危険と判断した。馬を村の適当な場所に繋いだ後で、彼女は己が身に『オーラエリベイション』を付与し、自身の士気を高めておいた。
「余裕があれば、殺したりしないで捕縛で済ませたいところなのだけれど‥‥」
「盗賊相手にも随分と優しいのね。でも、それで済ませるのは無理でしょうね‥‥」
明峰の言葉に苦笑するグレリアの視線の先には、日本刀とロッドという二つの武器を両の手に構えたイドラ・エス・ツェペリ(ea8807)の姿。
「こういう戦いの中でこそ‥‥私はもっと強くなれるはずなのですよ」
全身に殺気をみなぎらせ、彼女は今か今かと盗賊達が動く時を待っていた。
――そして、その時は来た。
「何だ姉ちゃん? 俺達と遊んでくれるってのか? あぁん?」
「ええ。そのつもりよ」
村への侵入を始めた盗賊達の前に、龍叱爪を構えた明峰が立ち塞がった。
「面白れぇ。たっぷり可愛がってやるぜ」
品の無い笑いを浮かべ、我先にと明峰に殺到する盗賊達。
「はああっ‥‥!!」
「ぬおっ!?」
「がはぁ!?」
だが、明峰は持ち前の格闘力で次々と盗賊達に攻撃を当てていく。
「何やってんだ! 敵は一人だぞ。さっさと片付けろ!!」
「残念ながら、お前達の相手は一人では無いのだがな‥‥」
「な‥‥があっ!?」
村に入り込んだ盗賊達を、民家の影から背後をつく形で襲撃したのは、如月。振り下ろした刀の一撃は盗賊の身を切り裂き、深い傷を負わせる。
「てめぇら!! 俺達に喧嘩を売ってただで済むと思うな!!」
「ほう‥‥。盗賊風情が偉そうな口を利くではないか。どうただで済まないのか教えて欲しいものだな?」
言うが早いか、即座に駆け出す如月。一対一であれば盗賊風情に遅れをとらない自信のある彼女だったが、それでも集団に囲まれようものなら無事には済まない事を分かっていた。一箇所に止まるのは得策ではないとの判断だ。
「おっと、どこに逃げるつもりだ姉ちゃん?」
だが、村の周囲は既に盗賊に包囲され、どこへ移動しようにも、そこには盗賊がいるという状況。
「おら! 後ろがガラ空きだぜ!!」
「ちっ‥‥」
背後から迫る敵の攻撃に、如月の反応が遅れたその瞬間。
――ゴオウッ!!
「っつ、熱っ!?」
突如、その盗賊を襲ったのは燃え盛る炎。
「悪い事する人はメ、です! 火遁、業火の術を受けるです!」
吹き出す炎は、霧隠孤影(ea1010)の手から放たれたもの。
「くっ‥‥てめぇ!!」
近くにいた盗賊が、孤影に手を伸ばす。
「わっ! あ、危なかったです‥‥」
間一髪でその手を回避すると、孤影は素早く盗賊達の包囲を掻い潜って距離を取る。
彼女は『疾走の術』を発動させていた。これにより、こと移動力に関しては、彼女は仲間の中で最も優れた存在となっていた。機動力を活かした後方支援は盗賊達にとって厄介極まりなかった。
「くそっ、調子に乗りやがって‥‥!」
盗賊の一人が長弓に矢を番え、孤影に狙いを定める。
「そうはいかないのですよ!!」
間一髪、物陰から飛び出したイドラがロッドで盗賊の手を払い、それを妨害。
「この女共、次から次へと‥‥まさか、冒険者か? へっ! 俺達を捕まえに来たつもりかもしれねぇが、そうはいかねぇ。俺達を敵に回すとどんな目に遭うか、今からゆっくりとその体に教えてやるぜ」
「勘違いをしているようですね。誰もあなた達を『捕まえに』など来ませんよ‥‥ッ!!」
下卑た笑いを浮かべる盗賊に、感情を高ぶらせたイドラは、ハーフエルフの証である狂化を発現させていた。
「くらえ‥‥っ!!」
理性を失ったその目に映るのは、倒すべき敵の姿のみ。
「できそこないの半端種族が、人間様をなめるんじゃねぇ!!」
ぶつかり合う刃の音。
‥‥戦いはまだ、始まったばかりだった‥‥。
一方、村人達の避難所となった村長宅付近でも、戦いは既に始まっていた。
圧倒的な数を武器に前線の冒険者達の包囲を無視して村の中心まで攻め入った盗賊達も、そこで待っていた冒険者達の手によって、行く手を阻まれていた。
――キンッ!
「ふん!」
――ブンッ!。
「ぐおあっ!?」
一人の盗賊が振るった剣を、そのドワーフの男は容易く受け流すと、お返しとばかりに『スマッシュ』を見舞う。
「どうした?ワシャまだまだじゃぞ。何ぞワシに喧嘩を売って来たのじゃ。最後まで掛かってこんか」
「何なんだこの爺は!? 化け物かよ!!」
圧倒的な強さを盗賊達に見せつけた男の名は、ガフガート・スペラニアス(ea1254)。
その豪腕を持って、彼は全ての敵を寄せ付けぬ壁となって、盗賊達の襲撃から村人達の避難所を守っていた。彼一人の手により、すでに五人もの盗賊が倒されていた。
「さあ、遠慮せずにもっと掛かってこい小僧共。まとめて返り討ちにしてくれるわ」
「いい気になってんじゃねぇぞ!」
「むう!?」
突如、ガフガードの肩を敵の魔法使いの『アイスチャクラ』が切り裂いた。こと格闘に関しては優れた資質を備えるガフガードも、遠距離からの攻撃や魔法には弱い面があった。
「へっ、思い知っ‥‥ぐあっ!!」
「それ以上は駄目なのです〜」
帰ってきた『アイスチャクラ』を受け止めようとした魔法使いを、シェリルの『ライトニングサンダーボルト』が襲う。
「村の人達は、私達が絶対に守り抜いてみせるのです〜」
「ちいっ、だがこの隙に‥‥ぐっ!?」
負傷したガフガードを一気に潰してしまおうと弓を構えた盗賊達を、グレリアによって同時に放たれた三本の矢が牽制する。
「全く、よってたかって怪我人を攻撃するなどという美しくない行為を、このわたくしが見過ごすとでも思ったのですか? これだから、野蛮な盗賊は‥‥」
「しばらくは私達だけで食い止めてみせます。ガフガードさんは後ろに‥‥」
「小娘共が、どこまでも俺達の邪魔を‥‥!」
ガフガードを庇うように前に出たサクラに、斧を構えた盗賊が迫る。
「女だと思って甘く見ないでくださいね。手加減なんてしませんよ‥‥。あなた達のような人には‥‥」
聖なるメイスを振るい、サクラはかろうじて敵の攻撃を受け流す。
ガフガードが後方に下がると、待っていたのは一人の神聖騎士。
「大丈夫ですか? 今、治療します」
ルイーゼ・ハイデヴァルト(ea7235)が、ガフガードの肩の傷を『リカバー』で治療する。彼女の癒しの力は冒険者達の戦力を維持するための支えであり、全体の要でもあった。
「勇敢なる戦士に、神の祝福のあらん事を‥‥」
続けてルイーゼが発動したのは『グットラック』の魔法。
聖なる祝福を受け、ガフガードは急ぎ戦線へと戻った。
「くっ‥‥まだまだっ!!」
ドルフィネスは必死にその剣を振るい続けていた。彼女は一人、仲間達から先行して敵の後方へ回り込もうとしたのだが、重装備によって機動力が半減した事が災いし、そこで敵に囲まれた。
予想に反し、仲間達から離れた孤独な闘いを強いられる事となった彼女だが、いつしか目の前の敵は最後の一人に‥‥。
「民を守れずして何が騎士だっ! このくらいの事‥‥耐えてみせる!」
「がっ‥‥はっ‥‥」
一瞬の隙をつき、彼女の剣は敵の腹部を切り裂いていた。
「か‥‥勝った‥‥?」
ギリギリの勝利。
長時間に及ぶ戦闘の疲労により、彼女の体力は限界に達していた。
そして、それは他の仲間達も同じ。
「無事かい、ガフ翁?」
「ワシは大丈夫じゃ。じゃが‥‥」
如月とガフガードのすぐ横では、ルイーゼが『リカバー』でイドラの傷を療しているところだった。
「くっ‥‥。私もまだまだ修行が足りないのです‥‥」
「大丈夫ですよ。それほど大した傷ではありませんから」
周囲の状況を見回してみる。
破壊された家屋はいくつかあったが、冒険者達の活躍により人的な被害は無く、結果だけを見れば今回の戦いは成功であったと言えた。
「村の皆さんのおうち、全部守りきれなかったです‥‥」
孤影が残念そうに呟く。
「これでとりあえず殲滅はしましたが‥‥。ここでの動乱が収束しない限り、きっとまた‥‥」
大きく姿を変えてしまった村の姿を目の当たりにし、サクラはこの地の未来を憂いた‥‥。
冒険者達は、無事に盗賊達を打ち倒した。
だが、それはまだ、このバースという地で起きている戦乱の、ほんの一部分を解決したに過ぎない。
果たして‥‥この戦乱の結末は‥‥。