【狩人の宴】結末
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■シリーズシナリオ
担当:BW
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 44 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月21日〜10月28日
リプレイ公開日:2005年11月01日
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●オープニング
その情報がギルドに入ったのは、今から三ヶ月程前の事だった。
近いうちに、ケンブリッジに大規模な襲撃をかけようと計画している者達がいる‥‥と。
‥‥だが、それから一週間が過ぎ、半月が経過し、ついには一ヶ月経ってもそんな事件は起きなかった。
単純に情報が偽であったのかもしれないが、あるいは計画を立てていた者達の間で何らかの不都合が生じたのかもしれない。
もしかしたら、実際に襲撃は行われたのかもしれない。ただ、何らかの理由でそれが公に知られる事はなく、ケンブリッジの側で秘密裏に処理されただけとも‥‥。
憶測だけはどのようにでも考えられたが、それを裏付けるものは何一つなく、ただ、時の経過と共に、情報を得たギルドからも、そして、その情報を得た冒険者達の記憶からも、この件は忘れ去られようとしていた。
‥‥その依頼がギルドに入るまでは。
「依頼は地方の自警団からのものです。とある賊の一団を捕らえるのに協力して欲しいとの事で‥‥」
それだけ聞けば、単純な内容の依頼に思える。
しかし、依頼を紹介するギルド員の表情は暗い。何かあるのだろうかと気になって、その場にいた冒険者の一人が尋ねてみると、
「正当性はあるのですが、どうにも含みのある依頼でして。この依頼を受けた方は、その過程で起きた一切の事を口外しないように、お願いしたいそうです」
賊の始末に冒険者の力を借りようというのだ。それは、自警団だけでは手に負えないほどの相手だという事を意味する。それだけでなく、この件には何らかの裏の事情があるらしい。
さらに聞けば、どうやら依頼主の自警団は、以前、ギルドの冒険者達との間で色々とあったらしく、依頼を出しては来たものの、あまり友好的な様子ではないらしい。
「その賊について分かっている事は?」
「現状、こちらに伝えられている情報は余りありません。ただ、厄介な相手は三人だけと聞いています。大剣を振るうファイターと、ハーフエルフと人間のウィザードが一人ずつ。そのうち、二人は名前が判明していて‥‥」
‥‥そして、伝えられた名に何人かの冒険者が反応を示す。
「一人はジェイラム。もう一人はシャグマ‥‥との事です」
●リプレイ本文
彼らは覚えているだろうか。
唐突に舞い込んだ依頼に、ギルドを飛び出したあの日を‥‥。
辿り着いた森で、胸に刻まれた苦い思い出を‥‥。
もう一度、彼らにその機会が巡ってきたのは偶然か、必然か‥‥。
ただ一つ、はっきりと言えるのは、この日を彼らが待ち望んでいたという事。
「お願いします。‥‥あの時の借りを、返したいのです」
トリア・サテッレウス(ea1716)は、そう言って目の前の自警団の男達に頭を下げた。
「‥‥仕事をする上で必要な情報なら教えてやる。ただし、余計な事は話してやれない。‥‥分かったな?」
「ええ。十分です」
互いの目的のために協力はする。けれど、必要以上の馴れ合いは不要。今は、それでいいとトリアは思っていた。さしあたって、自警団が行おうとしている今回の作戦に関する内容と、周辺の地理に関する情報が冒険者達には与えられた。
「さて‥‥」
呟くエイス・カルトヘーゲル(ea1143)の視線の先には、武器の手入れに励む自警団員達の姿があった。
今回の依頼に関して思うところは多い。敵の中にシャグマとジェイラムの姿があったという。自分達にとっても、この自警団にとっても、因縁の相手。自分達の与り知らぬところで、自警団が独自に動いていたのも想像がつく。
だが、いつどこで、どのような争いがあり、彼らが今の睨み合いの状態にまで辿り着いたのかは全くの謎だ。
けれど、それを無理に聞く気はエイスには無かった。どのような経緯があったにせよ、それが簡単なものでなかったのは何となく分かる。団員達の表情には鬼気迫るものがあったし、よく見れば、以前より団員の人数が減っているようにも思えた。ただの興味本位で話を聞くには、ここの空気は重すぎた。
まあ、そんな中でも、一部の例外はあった。
「う〜ん‥‥」
「‥‥どうかしたんですか?」
「あ、マリアさん。あのね、シオンがこの餌を食べてくれなくて〜」
張り詰めた空気の中で、独自のペースを保っていたのがこの二人。太郎丸紫苑(ea0616)とマリア・ゲイル(ea7975)。
紫苑が愛犬のシオンに、何やら珍しい干し肉を与えようとしていたのだが、肝心のシオンはお腹が空いていないのか、あるいは臭いが気に入らなかったのか、差し出された干し肉を鼻で嗅いだ後、顔を背けてしまった。
「たまたま調子が悪いのかもしれませんし、無理に食べさせるのはやめた方がいいと思いますよ」
「は〜い」
マリアにそう言われ、紫苑は干し肉を荷物入れにしまった。
「また今度あげるから、その時は食べてね」
言われたシオンは円らな瞳で、飼い主の紫苑の顔を見つめるばかりだった。
そして、そんな二人と一匹の微笑ましいやり取りを眺めつつ、言葉を交わす冒険者が、また二人。
「‥‥あの話って本当だったのかなぁ?」
「あの話‥‥と言われますと?」
「ケンブリッジで暴れようとしてる人達がいるって話だよ。結局、今のケンブリジには特別には何も起こってないでしょ。それに本当にいたとして、どうしてそんな事しようと思ったんだろうなぁ‥‥って」
フィアッセ・クリステラ(ea7174)はセレナ・ザーン(ea9951)にそう尋ねてみた。
「‥‥申し訳ありません。わたくしには分かりません」
「あ、ううん、いいの‥‥!」
深刻な顔で頭を下げて真面目に謝るセレナに、フィアッセは慌てて取り繕う。
「わたくしには分かりませんが、ただ‥‥」
「‥‥ただ‥‥?」
「ただ、本当にわたくし達の大切な場所を奪おうとする人がいるなら、それがどんな方であっても戦います。‥‥騎士の誇りにかけて」
顔を上げて、セレナは言った。僅か十歳の少女にはやや不似合いな、けれど力強い言葉。
「‥‥うん! 私も、もし本当にそんな人達がいたとしても、フリーウィルの皆の事、必ず守るよ」
そのためにも今は‥‥と、決意をあらたに、フィアッセは傍に置いていた弓に手をのばした。
――数刻後、賊の方に動きがあった。
「奴らが動いたぞ! 二手に分かれやがった!」
足場も悪く移動できるルートの限られた山岳地帯。賊はそのどこかに中心となる陣を置き、あちこちに見張りを配して自警団の動きを見ていたらしい。当然、自警団の方もそれは分かっていて、先に動いた方が不利になると考え、包囲を維持したまま睨み合いを続けていた。
「痺れを切らしたか‥‥」
自警団の男達が慌しく動き始める。
「シャグマとジェイラムは?」
「西側のルートだ。‥‥この道を行けば、今からなら先回りできる」
尋ねたフィアッセに、自警団員が地図を見せて答える。
「では、わたくし達はそちらに‥‥」
セレナが言った。
「念のために、こちらからも何人か向かわせる。いいな?」
「手伝ってくれるんですか〜。ありがとうございます〜」
紫苑は素直に礼を述べた。自分達だけで戦う事に不安が無かったと言えば嘘になる。
「‥‥では、行きましょう。決着をつけに‥‥」
己が剣にオーラの力を宿らせ、トリアは駆け出した。
その場を整えるまでが、冒険者達にとっての一番の問題だった。
敵の到来を待ち伏せ、その瞬間までじっと息を潜める。後は、トリアが合図して、全員が一斉に奇襲をかけた。
混戦となった中で、素早く抜け出したのがやはりシャグマとジェイラムだった。だが当然、冒険者達はそれを見逃さない。他の賊を自警団に任せ、シャグマ達を追った。逃げ場のない方向へと、追い詰めるように。
――そして、戦いの時は来る。
エルフとヒトの混血よ
狂気を秘める異端の子よ
人の罪がそなたを生み
神の罰でそなたは死す
内なる闇を解き放て
狂気を秘める異端の子よ
‥‥パチパチ。
歌い終えたマリアに向けて、シャグマの小さな拍手の音が、虚しく響いた。
「詩の内容は、なかなかですねぇ。後は、もう少し歌い方のお勉強をされれば、それなりの吟遊詩人にもなれるんじゃないですか? しかし‥‥こういう喧嘩の売られ方をしたのは初めてですよ」
「そう上手くはいきませんか‥‥」
シャグマを意図的に狂化させ、冷静な判断を失わせる事がマリアの狙いだったのだが、そうはならなかった。
「さて、つまらない余興はお終りか? ‥‥なら、とっとと前をあけな!!」
クレイモアを手に、ジェイラムが先陣を切る。
「前はあっさりとかわされちゃったけど、今度こそは!」
「何っ!?」
ほんの僅かの差で、フィアッセの矢がジェイラムの胴を掠める。あと少しジェイラムの反応が遅れていれば、間違いなく当たっていた。
「いける!」
百発百中とはいかないまでも、何度か撃てば捉えられると、フィアッセはそう確信した。
「ちっ! 調子に乗るなよ、そこの女ぁ!!」
ジェイラムがフィアッセに向かって走ったのと時を同じくして、トリアも剣を手にシャグマに走った。
「今日こそ越えさせてもらいますよ、シャグマ!!」
「戯言を!!」
――ズンッ!!
漆黒の重力波が大地を抉りながら、トリアを飲み込んだ。
――バシャ‥‥。
「あぁ、何だ!?」
フィアッセの矢に翻弄される中で、足元に触れた水溜りに不自然なものを感じ、ジャエイラムはその場を飛び退いた。
「‥‥気づかれ‥‥たか」
エイスの仕業だ。『ウォーターコントロール』で動かした水で狙っていた事が彼にはあった。だが、動かせる水の速度はけして速くはない。あわよくば水の中でジェイラムを窒息させられないかとエイスは考えたが、完全に相手の動きを停止させでもしない限りは、無理があった。
「はっ、何を考えてるか知らねぇが、その前に潰してやるよ!!」
「‥‥な‥‥!?」
エイスの目の前で、ジェイラムは愛用のクレイモアを手放した。不意をつかれた形になり、エイスは一気に距離を詰められる。
――ドゴッ!!
胴に拳一閃。受けたエイスは地に倒れたが‥‥その顔は笑っていた。
「‥‥め‥‥な‥‥にを‥‥」
攻撃を受けるのを覚悟の上で、彼は一つの呪文を自分にかけていた。自分に触れた者に電撃の制裁を与える『ライトニングアーマー』を。彼はあえて、ジェイラムに自分を攻撃させたのだ。
「‥‥おわ‥‥り‥‥だ」
次の瞬間。
「動きが鈍った‥‥? 今! 貫けぇっ!」
「ち‥‥くしょ‥‥があっーーーー!?」
フィアッセの放った矢が、そのジェイラムの背を射抜いた。
――ドンッ!!
「くっ‥‥!」
重力波の直撃に、セレナは後方へと弾き飛ばされる。
「もう、分かったでしょう? 届かぬ剣に意味などないんですよ」
シャグマには、トリアとセレナの二人がかりであたっていたが、上手く立ち回りを読まれているのか、どうしても一撃が届かない。
「それでも‥‥!!」
何度も魔法の直撃を受け、ボロボロになった身体でなお、トリアは立ち上がった。
「まだ諦めないと? まあいいでしょう、どうせ次で‥‥な!?」
ズンッと身体が急に重くなったのを感じ、シャグマは焦りを覚える。
「今です!」
叫んだのは、岩の物陰から姿を現した紫苑。彼は自警団と共に他の賊の対処に回っていたのだが‥‥。
「これは‥‥」
シャグマの動きが鈍ったのと同時に、セレナの身体を眩い光が包む。マリアの『リカバー』だ。
「向こうは終わったようですね。あとは、彼だけです」
そして‥‥。
「立ち塞がる壁は‥‥ただ、突き崩すのみ!!」
トリアの全てを掛けた一撃が、ついに、シャグマに届いた。
――ザシュ!!
「この‥‥私が‥‥こんな‥‥」
‥‥それが、シャグマの最期だった。
戦いの後、冒険者達は自警団と合流した。聞けば、別の方向に逃げた賊の一団も、無事に倒されたとの話だった。ただ、捕縛された者が一人としていなかったのは、意図的なものを感じなくはなかったが。
「こいつは礼だ。‥‥安心しろ、他意はない」
自警団員の手から冒険者達に小さな箱が渡された。中には装飾品の類が幾つか入っていた。
キャメロットへの帰り道。冒険者達は色々な事を思った。
結局、彼らが何を目的に動いていたのか。それは彼を倒してしまった今となっては分からない。だが、彼らは確かに勝ったのだ。
彼らは、また次の冒険へと進むだろう。今回の戦いを、その胸に確かに刻んで‥‥。