【ただ、ひたすらに‥‥】鬼狩り

■ショートシナリオ


担当:BW

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 89 C

参加人数:12人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月28日〜07月10日

リプレイ公開日:2005年07月12日

●オープニング

 その日、ギルドに持ち込まれたのは、とある村の人々からの魔物退治の依頼だった。
 何でも、村の近くの森に、ゴブリンが大量に棲みついてしまったらしく、それを退治して欲しいとの事。
 まあ、そこまではいい。問題なのは敵のその数。
「数は全部でざっと五十‥‥いや、六十‥‥いや、もしかしたら百匹近く‥‥。確かオーガも何匹か棲んでいたな。そっちも頼む」
「それはまた‥‥」
 百匹近いゴブリンとオーガの群れを頭に思い浮かべて、係員もどうしたものかと頭を抱える。よくそこまで集まったものだと、感心すらしてしまいそうだ。
「まあ、さすがに一日や二日で片付けてくれとは言わない。森は広いし、時間もかかるだろうからな。代わりに、一匹残らず退治してくれ。特にしっかり働いてくれた奴には、それなりに報酬の上乗せはさせてもらうよ」
「まあ‥‥そういう事なら、何とかなるかもしれませんね」
 最終的に、現地での活動期間は四日間と決まった。それだけの時間があれば、百の魔物とて冒険者達なら残らず退治して見せてくれるだろうとの、ギルドの判断だった。
 もっとも、これだけ数が多ければ騎士団に要請が行っても不思議ではないのだが、向こうは準備に時間が掛かる。冒険者達は迅速に動けるといった利点があり、ギルドもその点を考慮したようだ。
 間もなく依頼書が張り出され、冒険者達への呼びかけが行われる事となった。

●今回の参加者

 ea2261 龍深 冬十郎(40歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea4989 フレア・レミクリス(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5755 安宅 莞爾(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea7228 ザンガ・ダンガ(45歳・♂・神聖騎士・ドワーフ・イギリス王国)
 ea7528 セオフィラス・ディラック(34歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb1144 グレリア・フォーラッド(34歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb1384 マレス・イースディン(25歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 eb1421 リアナ・レジーネス(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb1811 レイエス・サーク(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb2347 アステリア・オルテュクス(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2463 雷電 飛燕(32歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)

●サポート参加者

アルセイド・レイブライト(eb2934

●リプレイ本文

 その広大な森の中を彼らは駆けた。
 ある者は己の力を試すため‥‥。
 またある者は己の知恵を試すため‥‥。
 百にも及ぶ魔物達との長き戦いが、今始まろうとしていた。

 村への挨拶を済ませ、簡単な情報収集を終えると、冒険者達は三人ずつに分かれ、それぞれに担当区域を決めて魔物退治にかかる事にした。ちなみに表には出さないが、彼らの中には村からの特別報酬を争う様々な思いが渦巻いている。
 森に足を踏み入れると、早速、戦闘に入った者達がいる。
「いきなり、大物とはな‥‥。だが、相手にとって不足はない。私の力でどこまでできるか、試させてもらおう」
 ――ザシュッ!!
「ガァーーッ!!」
 漆黒の鎧を纏いし騎士の一撃が、オーガの身を切り裂いた。彼の名はセオフィラス・ディラック(ea7528)。
「向こうの方から三匹、近づいてくる魔物の呼吸を感じます」
 セオフィラスのすぐ後ろ、魔法による探査の結果をリアナ・レジーネス(eb1421)が伝える。
「くっ‥‥」
 だが、セオフィラスはオーガとの戦闘でそちらに気を払う余裕がない。
「任せて」
 ロープを手に素早く駆け出したのはレイエス・サーク(eb1811)。リアナに教えられた方向からこちらに向かってくる数匹のゴブリンの姿を確認すると、近くの木の周りをクルリと回り、生い茂った雑草の中にロープと自分の身を隠す。気づかずに向かって来たゴブリン達は、レイエスがクイッと引っ張ったロープに足を取られ、次々に転倒する。
「今だよ!」
「はい!」
 すかさず、転倒したゴブリン達をリアナの放った雷の閃光が襲う。
「よし、加勢するぞ」
 オーガとの戦闘を終えたセオフィラスも加わり、三人は見事な連携で瞬く間にその場の敵を殲滅した。
 彼らに限らず、今回の冒険者達は非常に連携を重視した組分けを行った。各組とも実力は拮抗していたと言っていい。その中で、初日に圧倒的な成果を上げた組がいる。
「百匹の魔物か‥‥一度の戦いで、どれだけ叩き伏せることが出来るか‥‥試してみるも、また一興」
 目の前に立ち塞がるゴブリンの群れ。その中に、龍深冬十郎(ea2261)は切り込んだ。一撃、一撃に剣の重量を載せ、眼前の敵を次々に切り伏せていく。
「さっすが龍深、やるなあ。俺も負けちゃいられねぇぜ。まずは、いっぴきー」
 後れを取るまいと、マレス・イースディン(eb1384)も剣を手に走る。
 敵の数は多く、あっと言う間に周囲は魔物の屍で覆われたが、その分、二人も敵の攻撃をその身に受けていった。だが、彼らが傷を負う度に、後方のザンガ・ダンガ(ea7228)が聖なる光によってその傷を癒す。
「やれやれ、お二人とも無理は禁物ですぞ」
 そう言って、ザンガは疲労したマレスを庇うように前に出た。これが彼らの戦い方。全員が攻撃を担当する事ができ、その攻撃力で正面から敵の群れを殲滅していく。
「へへっ、アンタ達二人と一緒ってのは、本当に心強いぜ」
 マレスの言葉はただのお世辞ではない。彼らは初日の戦いの結果、他の組に十匹以上の差をつける魔物の撃破を成し遂げている。
 逆に、最も成果が低かったのは、安宅莞爾(ea5755)、グレリア・フォーラッド(eb1144)、アステリア・オルテュクス(eb2347)の三人の組。
「くっ‥‥俺とした事が‥‥」
 莞爾が辛そうな表情で呟く。顔色は優れず、立っているのもかなり辛そうである。それというのも、彼は保存食を持って来ておらず、この森に来るまでのキャメロットからの四日間、一切の食事を口にしていないのだ。
「全く、困ったものね‥‥」
 グレリア・フォーラッド(eb1144)が目の前のホブゴブリン達に矢を射掛けながら、前衛として、ただの壁も同然の状態の莞爾を見ながらそう言い放った。実際、この組で敵のほとんどを倒しているのは彼女であり、莞爾の成果は無に等しかった。
「安宅さん、大丈夫?」
「余計な‥‥お世話だ‥‥」
 アステリアが声をかけた。莞爾の性分なのだろうか、彼は足手まといにはなるまいと必死だ。
 また、彼らは野営をするつもりで、荷物を莞爾の馬に載せて運んでいたが、馬を連れて移動するには些か森の中は不便きわまりなく、余計な回り道などをするはめになる事も多かった。加えて、その馬が魔物と遭遇する度に逃げ出そうとするものだから一苦労であった。
 このメンバーは直接戦闘よりも、魔法や弓矢、罠等による遠距離での戦闘を中心とする方針で動く事に決めていた。初日はその準備のための材料集めや周辺調査のために動き回る事になり、魔物退治そのものは二の次だったため他の組に比べて成果は低かったが、明日からの行動に期待したいところだ。
 最後の一組は雷電飛燕(eb2463)、ピノ・ノワール(ea9244)、フレア・レミクリス(ea4989)の三人。
「今回は、今まで自分なりに磨いてきた力を試す絶好の機会。しっかりとした結果を残せれば良いのですが‥‥」
「同感だ。これだけの数の敵と戦える機会はそうそう無いからな。己の腕を磨く良い機会でもある」
 ピノの放つ黒き光『ブラックホーリー』が立ち塞がるゴブリンを直撃し、そこに生まれた隙を見逃さず、飛燕が神速の蹴撃『鳥爪撃』を見舞う。
 二人は依頼としてというよりも、純粋に自分の腕を試すためにこの依頼に参加した節があった。冒険者の中には収益を得るためでなく自分の修行のために冒険者であらんとする者も多い。彼らは正にそういう冒険者なのだろう。
「あなた達、魔物の好きにはさせません」
 そのピノと飛燕を的確にサポートしたのが、フレアだ。回復魔法に加え、直接的な戦闘もある程度こなせる彼女は、状況に応じて盾と癒し手も二つの役割をこなし、このメンバーの中核的な役割を担った。
 彼らはこの初日の間、強敵のオーガとの戦闘を避け、ひたすらゴブリンのみを狩り続けるという特殊な戦い方を選んだ。結果としては、冬十郎達の組には及ばなかったものの、単純な成果としては彼らに続く二位につけていた。

 ――二日目。
「う〜ん‥‥良い場所が見つからないわ‥‥」
 罠を仕掛けるために、視界の良い平野か洞窟があれば‥‥と、森のあちこちを探し歩いたアステリアだったが、これが全く見当たらなかった。仕方なく、森の中で敵の逃げ道を塞ぐため油を引いて火を‥‥と考えたのだが、広範囲に渡って火の囲いを作るには、持って来た油の量が全く足りなかった。一応、油を巻いて火を付けられる範囲で試してみたが、アステリアの持ってきた弱燃性の油では、敵の逃げ道を塞げるほど激しい燃え方はしなかった。木々を集めて火の勢いを上げれば何とかなったかもしれないが、それでは周囲の木々に燃え移って森を全焼させてしまう可能性が高かったし、何より労力がかかり過ぎた。
 初日に用意した落とし穴の罠は上手くゴブリン達を引っ掛ける事もできたが、準備にかかった時間や手間を考えると、やや効率が悪かった。
「結局、こうなってしまうとはね‥‥」
 莞爾とアステリアを庇うようにグレリアが前に出る。出会った敵はオーガ。グレリアの身のこなしならそう簡単に攻撃を受ける事はないだろうが、油断はできない敵だ。
 結局、彼女達も魔法で探知した敵を地道に撃破していく事となった。
 この日、やはりグレリア達の組の成果は最下位のままだったが、他の組の間の差には変化があった。魔物の数が減ったためか、初日に最も多くの敵を屠ったマレス達は今ひとつ思うような成果が上げられず、他の二組が魔法による探査能力を用いてその差を縮める事となった。

 ――三日目。
「全力でいきます。‥‥滅せよ!」
 ピノ達の組は三日目にして、強敵のオーガやホブゴブリンを狙うようになった。敵の数が減れば、弱い魔物達は我先にと逃げ出して身を隠すはず。ならば、強い敵を後に残して‥‥と予想していた彼ら。他の組は逃げ出す魔物を探し出す事に労力を費やしていた事を思えば、この組の作戦は実に成功していたと言える。
 だが、探査に関しては『ブレスセンサー』を使うリアナとアステリアがいる。他の組との差を開けたかといえば、難しいかもしれない。また、初日に差をつけた冬十郎、マレス、ザンガの組との差をどこまで縮められたかも定かでは無い。最終的な結果は果たして‥‥。

 ――三日目の夜。
「‥‥し、食事‥‥」
 村に戻った時、今にも倒れそうな表情だった莞爾は、つい目の前に並べられた料理に目を奪われた。レイエスの罠にかかった森の動物達を、フレアや村人達も協力して調理したものだ。これはかなりの量があり、冒険者全員で分け合って食べる事ができた。
「さて、明日でいよいよこの依頼も終わりですな。最後の仕上げといきますかのう」
 ザンガの言葉に、他の冒険者達も気を引き締め直す。彼らは最終日に全員で協力しての掃討戦を約束していた。依頼の内容は一匹残らず魔物を駆除する事。それを成し遂げなくては、特別報酬も何もあったものではない。

 ――四日目。
 結論から言おう。冒険者達は無事に全ての魔物を駆逐した。
 二人の風の魔法使いによる探査から逃れきった魔物はおらず、歴戦の勇士達の振るう剣の前に魔物達は倒れ、慈悲の神の癒しの光が彼らの命を守った。
 ‥‥そして。
「よく頑張ってくれたな。約束の特別報酬だ。遠慮なく受け取ってくれ」
「お役に立てて何よりです」
 本来の報酬に加え、大量の金貨の詰まった袋を受け取ったのはリアナ、セオフィラス、レイエスの三人の組。直接戦闘、探査、罠のいずれの点でも、各自が確実に仕事をこなした彼らは、たった三人で全体の三分の一に及ぶ魔物を撃破していた。
 最終的な結果を言えば、二位がフレア達、三位が冬十郎達、そして四位がグレリア達の組という順になった。ただし、個人での成績はグレリアが最も良く、また、リアナ達とフレア達の組との差は僅差だった。もし冒険者達の組み合わせや作戦が少しでも違っていれば、結果はどう転んだか分からない。
 その後、無事に依頼を達成した冒険者達はキャメロットへと戻ったのである。