鬼が先か、人が先か
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:12人
冒険期間:08月05日〜08月12日
リプレイ公開日:2005年08月19日
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●オープニング
事の起こりは、ギルドの一角で起こった冒険者同士の喧嘩だった。
「てめえ、もう一回言ってみろ!!」
「ああ、何度だって言ってやるよ! 今回の依頼が失敗したのはお前のせいだ! あの時、お前が俺の指示通りに動いてりゃ‥‥!!」
お互いの胸倉を掴み、睨み合う二人の冒険者。
この二人、先日同じ魔物退治の依頼を受けたのだが、どうもその依頼で失敗してしまったらしい。
ボロボロになってギルドに帰ってきてみれば、今度は係員の見ている前で責任の擦り付け合いを始めてしまったのだ。
「偉そうな事ぬかしてんじゃねぇぞ!! オーク一匹まともに相手できなかったのはどこのどいつだ!!」
「馬鹿、あれはオーク戦士だ。格が違うっての!」
「どっちだって負けた事に大差ねぇだろうが!!」
周囲の冒険者達が経過を見守る中、二人の喧嘩はますます激しさを増すばかり。
そんな中、ふと二人の間に割って入ったのは一人の老冒険者だった。
「やれやれじゃな‥‥。お前達、そんなにどっちが悪かったか白黒つけたいか?」
――数時間後。
「‥‥で、随分と面倒な事になったな」
張り出された依頼書を見ながら、先の事の成り行きを見守っていた冒険者の一人が呟いた。
先ほど喧嘩をしていた二人。名は、レットとクリフと言うらしいのだが、張り出された依頼はなんと、この二人の救助依頼。
「いや、ワシはじゃな、あの二人に協力しあう事の大切さを教えるためにじゃな‥‥」
「そのために、あいつら一人ずつじゃ勝てなさそうな敵を紹介したと?」
「まあ、そういう事なのじゃが‥‥」
この老冒険者、喧嘩をしていたレットとクリフに向かってこう言ったのだ。
キャメロットから徒歩で東に3日ほど行ったところのとある山に、ちょうど最近オーガが一匹出るようになったらしい。どちらが正しかったかを証明したいのなら、二人で山に行って、先にこのオーガを倒した方が正しかった事にすればどうかと。
「ただな、オーガはオーガでもオーガ戦士なんじゃよ。じゃから、できれば少し仲間を集めて行った方が‥‥ん?」
‥‥と、この老冒険者が最後に大事な部分を付け足そうとした時には、すでに二人はギルドを急いで出た後だった。
「とにかく、このまま放っておくと二人揃ってオーガ戦士の餌食じゃろうて。それはさすがにワシも気分が悪いでの。ちょっと助けに行ってやってくれんか」
「あんたは行かないのか?」
「年寄りに山のぼりは辛いからのう。若い者に任せるわい」
●リプレイ本文
失敗するという事。
それは、何かの結果であると同時に、何かの始まりでもあるという。
失敗という経験の元に、新たな成功が生まれる事もある。
だが、失敗という後悔の元に、新たな失敗が生まれる事もある。
どんな物事も、受け止め方次第でその意味を変える。
では、今回の彼らは‥‥。
「よろしくお願いしますねー」
ギルドの前。アルフレッド・アルビオン(ea8583)は去り行く友人達の背に手を振っていた。彼は自分の力だけでは運べないほどの大量の荷物を持ってきていたので、それを出発前に冒険者向けの宿に預ける事にしたのだが、そこまで自力で運ぶ事自体が困難だったため、やむなく手伝いとして来ていた友人達の力を借りる事にしたのである。
「‥‥感心しないね」
光城白夜(eb2766)が素っ気なく言う。彼は今回の参加者の中でも、必要と思われる物以外は特に余計な荷物を持たず、比較的身軽な方だ。
「まあ、何とかなりましたし、大丈夫ですよ」
何とも楽天的な考えだが、実はこの時点でアルフレッドが損をした事が一つある。彼が預けた荷物は量が多い上に貴重品も色々とあり、宿側からしっかりと保管料を請求されてしまったのである。まあ、余談ではあるが。
しかしながら、そんなアルフレッドも別の面では他者の感心を受けていたりもする。
「助かった。恩に着るよ」
「すまない」
キャメロットを発ってしばらく。孫龍鈴(ea8387)とエイオス・ランカード(ea3045)の二人が日数分の保存食を用意していなかった事に気付いたその時に、アルフレッドは惜しげもなく自分が持ってきていた余剰分の保存食を提供したのだ。
「どういたしまして」
しっかりしているのか、いないのか。今一つハッキリしない男だが、憎めないタイプではある。
問題の山の麓まで辿り着いた時、クーラント・シェイキィ(ea9821)は辺りを見渡しつつ何やら考え込む様子を見せた。
「話は聞いていたが、高さは低いが範囲の広い山だな。緑も深い。二人は無事だろうか‥‥」
彼がギルドで聞いた限りでは、レットとクリフは、食料はともかく回復薬の類に関しては前の依頼で使い切ってしまっているらしい。山に出る魔物がオーガ戦士だけとは限らないし、単純に遭難してしまっている可能性もある。それらの点も含めて、救出を急いだ方が良いかもしれないと彼は思った。
「彼らが共に行動しているとは考え難い。ここは分かれて探してみようか」
エイオスが言うと、冒険者達は二手に分かれた。
山中の捜索を開始してしばらく。
片方の組に一つの発見があった。
「おお、ダイ。何か見つけて来たのかのぅ?」
山中に放されていた水琴亭花音(ea8311)の愛犬ダイが、何かの骨らしきものを咥えて主人の元に戻ってきた。よく見れば、それは自然に朽ちた物ではなく、まだ新しい感じがした。
「どこで拾ってきたんじゃ?」
花音はダイに訊ねてみたが、さすがに人語は理解してはもらえず、ダイは無反応。
「その犬が戻ってきたのは、あっちの方角からだったね。調べてみようか」
先ほどまでダイがうろついていたと思われる範囲を、龍鈴、アルフレッド、クーラントの三人も協力して調べてみたところ、少し開けた場所でキャンプの跡を見つける事ができた。
「まだ新しい跡だな。だが、ここにはもういないか‥‥」
クーラントが周囲を調べながら呟く。
「まあ、無事にこの山まで来てる事は間違いないみたいじゃな」
花音は再びダイを放し、再び周辺の様子を探らせてみる事にした。
一方、もう一つの組はというと。
「喧嘩なんてして‥‥面白いのかな‥‥」
「‥‥じ、自分は余り経験、ないですね‥‥。仲良く出来たら、良い、ですけど‥‥」
無表情に呟く夜光蝶黒妖(ea0163)と、暗い表情の壬鞳維(ea9098)がそんな他愛ない会話を交わした。
実はこの時、鞳維の脳裏には、修行時代に兄弟子達に殴る蹴るの暴力を一方的に受けた思い出が蘇っていたが、周囲の者達にしてみれば、現在の鞳維の立派な体格からはあまり想像がつかないかもしれない。あるいは彼もまたハーフエルフゆえの迫害を受けていたのだろうか。
白夜はそんな二人と距離を置きつつ周囲の様子を探っており、エイオスはエイオスで、静かに木々の立ち並ぶなだらかな山の斜面に視線を走らせている。
しかし、こちらの組の調査にはなかなか進展はない。あまり山歩きに慣れていない者が多いのも少し辛いところではあった。
そうこうしているうちに、その時は来てしまった。
――ドオォーーンッ!!!
「い、今の音‥‥」
遠くから聞こえた、何かが爆発ような音を耳にした時、鞳維は嫌な予感がした。周囲の仲間達も、おそらくは同じ事を思ったはずだ。
彼らは急ぎ、音の聞こえた方へと走った。
先にその場に到着したのはクーラント達の方だった。見つけたのはオーガ戦士と、深い傷を負ったレットの姿。龍鈴、クーラント、花音がすぐさまオーガ戦士の前に飛び出し、アルフレッドはレットに駆け寄って、治癒の魔法の詠唱を開始する。
「お前‥‥達は‥‥?」
「あなたを助けに来たんですよ。しばらく、動かないで下さいね」
レットの傷は見た目より酷かった。おそらくはオーガ戦士が持っている槍をまともに受けたのだろう。だが、アルフレッドの力ならば何とか治療できそうだ。
だが、そう安心したのも束の間。
「くっ‥‥」
「さすがに強いね‥‥」
クーラントが放った矢はオーガ戦士に直撃したように見えたが、少し動きを鈍らせた程度で、相手は構わず前へと突き進んでくる。続いて龍鈴が両腕と頭突きによる同時攻撃を繰り出したものの、オーガ戦士はそれらの直撃を受けてもまったく動じた様子はなく、逆に龍鈴は手痛い槍の反撃を受けてしまう。
「こっちじゃ、こっちじゃ。どこを見て‥‥ぐっ」
花音は何とかオーガ戦士の気を引いて、アルフレッド達の方へ行かさないようにしたが、オーガ戦士の槍は疾走の術によって倍加した彼女の回避能力でも避け難く、かろうじて一撃をかわしたが、続く二撃目を受けて傷を負う。状況は好ましいとは言えない方向へ進んでいた。
そこへ‥‥。
――バシュ!!
「グガアッーーー!!」
突如、雷の閃光がオーガ戦士を襲った。
「間に合ったか‥‥」
放ったのはエイオス。ようやく彼らもここに辿りついたようだ。
「俺が‥‥代わるから‥‥」
「く‥‥すまぬのぅ」
傷を負った花音の前には、黒妖が。彼女もまた身のこなしに優れた忍者だ。オーガ戦士相手に油断はできないが、そう簡単には攻撃は受けないだけの技量はある。
「治療終了‥‥っと。もう、大丈夫ですよ」
「すまない。助かった」
少し手間どったが、アルフレッドの治療で何とかレットは回復。
「良かった。じゃあ皆、ここは一度下がって態勢を‥‥」
「知るか‥‥」
「ボクも断る」
「‥‥え?」
龍鈴の言葉に異を唱えたのは、鞳維と白夜。
「悪いけど、ボクの目的は最初からこいつでね。逃げるなら皆で勝手にどうぞ。ボクの知った事じゃない。まあ、そこの人もやる気みたいだけど」
「殺‥‥す。殺して‥‥やる」
それまでほとんど無口だった白夜が、いかにも楽しそうな笑顔を浮かべて饒舌になっている。戦闘狂という言葉があるが、彼はその類なのだろう。方や、鞳維も人が変わったようになっているが、こちらの変化の理由は、その血走った目を見ただけでも分かる。狂化だ。どうやらオーガ戦士の持つ槍が、彼に影響を与えたようだ。
「さあ、始めようか!」
剣を構え、遠慮なくオーガ戦士の懐へ飛び込んでいく白夜。繰り出した剣撃は戦士に傷を負わせる事に成功するが、続く敵の反撃もまた白夜を捉える。互いに傷を受けるが、より深い傷を受けたのは白夜。
「これだよ‥‥これ‥‥。さあ、もっと楽しませてよ!」
その白夜の横から、今度は鞳維が飛び出す。
「死‥‥ね‥‥」
まず拳で二撃。そして、常人の目には映らぬほどの速度での蹴撃が一つ。拳撃には動じなかったオーガ戦士も最後の蹴撃は効いたらしく、怯んで後方に後ずさりする。本来であれば華麗な武人の連撃であろうそれは、今の鞳維の狂化した姿と合間って、まるで獣が鬼を喰らわんとするかのよう。
「‥‥どうしよう‥‥か?」
「どうも、こうもない。やるしかないだろう」
無表情のままの黒妖にクーラントが言う。
他の仲間達も困惑しながらも、順に攻撃を仕掛け始める。
「余計な事をしなくてもいいのに‥‥。けど、化物が苦しむ様を見るのも楽しいねぇ‥‥。だいぶ弱ってきたみたいだし」
少しずつダメージを負っておくオーガ戦士の姿を眺め、自身も血を流しながら笑みを浮かべる白夜。だが彼の視界の先、さらなる事態の変化が起きる。
「‥‥ん?」
「‥‥貰った!!」
茂みの中からオーガ戦士の背後を狙い、飛び出してきた人影。剣を構えたままの戦士。
「ガアアッーーーーー!!!」
見舞われた渾身の一撃。今まで冒険者達の攻撃によってかなりの傷を受けていたオーガ戦士は、その一撃でついに倒れた。
「あ‥‥れ‥‥?」
その途端、正気に戻っていく鞳維。
「俺の勝ちだな、レット。あんた達もどこの誰だか知らないが、ご苦労さんだったな。おかげで仕事がしやすかったぜ」
「クリフ‥‥!?」
倒れたオーガ戦士を踏みつけるように、勝ち誇った表情のクリフ。呆然とする仲間達の中で、いかにも気にいらないという表情なのがやはり白夜。
「他人の獲物を横取りなんて、随分な真似をしてくれるじゃないか」
「はっ、こいつはずっと俺が狙ってたんだよ」
険悪な雰囲気で向かい合う二人。
「ちょっと、やめなよ白夜。私達の依頼、忘れたわけじゃないよね」
すぐさま、龍鈴が間に入って止めると、白夜は無言のままクリフをしばらく睨んで、そして引いた。
依頼は無事に終わった。
だが、冒険者達の何人かはすっきりしないままキャメロットに戻る事になる。
最後には、レットとクリフに連携の大切さ、仲間の大切さを説こうと、そう思っていた者もいた。しかし、今回の戦いは、そんなものとは無縁に終わってしまった。
それもまた、彼らにとっては一つの経験だったが。