【その剣にかけて‥‥】Side―B
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:9人
サポート参加人数:2人
冒険期間:08月17日〜08月28日
リプレイ公開日:2005年09月09日
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●オープニング
徒党を組んだ盗賊達に、その村は突然に襲われた。
何一つ抵抗する術を持たぬ村人達は、ただ怯えるばかりだった。
「ど‥‥どうか、命だけは‥‥」
一人の老人が額を地面にこすリながら、必死に賊の一人に命乞いを繰り返していた。
「分かった、分かった。爺さん、ほら、顔を上げろよ」
その言葉に、老人がおそるおそる顔を上げると‥‥、
「嘘に決まってんだろうが。とっとと死ね」
――ザクッ!!
‥‥絶望を突きつけられたまま、老人は首をはねられた。
「悪いけど、外に助けを呼びにでもいかれちゃ面倒だからねぇ‥‥。一人も逃がすんじゃないよ、お前達!!」
「分かってらぁ!! せっかくだ。おい、誰が何人殺せるか勝負しねえか」
「いいねえ、その勝負のったぜ」
‥‥抵抗の意志のない村人達を、盗賊達は容赦なく虐殺していく。
女も子供も例外なく‥‥。まるで、尊い命を弄ぶ事を楽しむかのように‥‥。
「さあ、奪え!! 殺せ!! ここにある物は、全て俺達の物だ!!」
――数日後、冒険者ギルド。
一人の娘が、今にも倒れそうな様子でギルドへ駆け込んできた。
「おい、大丈夫か!! しっかりしろ!!」
すぐに近くにいた冒険者の何人かが駆け寄り、娘に手を貸す。
「た‥‥す‥‥け‥‥‥‥」
おそらく、無理をして何日も走ってここまで来たのだろう。汚れた服や、疲れきった表情から誰の目にもそれは明らかだった。
――しばらくして。
冒険者やギルドの係員達の助けを受け、娘は何とか落ち着きを取り戻した。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です‥‥」
「いったい、何があったんだ?」
「村が‥‥盗賊達に襲われて‥‥」
娘は、自分の村が盗賊達によって襲われ、村人達が虐殺された事を冒険者達に語った。
「‥‥そうか。よく、無事だったな」
「父が‥‥助けてくれたんです‥‥」
盗賊達が襲って来た日、父親が彼女を庇って囮となり、そのおかげで彼女は逃げ延びる事ができたのだという。
「災難だったわねぇ。‥‥村一つ潰すような盗賊団となると、騎士団に報告した方がいいかしら。でも、今はあちこち戦乱の影響でごたついたままでしょうから‥‥」
首を捻るギルドの女性係員に、周囲にいた冒険者達の視線が集まる。その場にいた皆が、その先の言葉を待っているのは明らかだった。
「分かったわ。ギルドからの依頼としましょう。ただ、問題は報酬だけど‥‥」
今回の場合、盗賊を退治した後に彼らから得た戦利品を換金するのが妥当だろうか‥‥と、係員は思案を巡らせたが、そこで思いも寄らぬ提案が出た。
「あの‥‥。この剣では駄目でしょうか‥‥」
逃げ延びてきた娘が、護身用に持っていたらしい剣をギルド員に見せた。
「逃げだした時、父が持たせてくれた物なのですが‥‥」
「う〜ん、剣一振りじゃ‥‥‥‥ん? ちょっと、見せてくれない」
そう言うと、係員は娘から剣を預かり、鞘から引き抜いてその刀身を確かめた。
「やっぱり‥‥。これ、無銘の業物ってやつだわ。これなら‥‥」
新たな依頼が出された。
内容は盗賊団の討伐。敵の人数や、現在彼らが潜伏している村の地形などを考慮し、冒険者を二つの部隊に分けて盗賊団を襲撃するのが妥当ではないか、というのがギルドの判断だった。
ただし、その中で報酬が与えられるのはただ一人だけ。
しかし、その報酬は‥‥魔法の力を秘めた剣との事だった。
●リプレイ本文
「あんた身寄りはあるのか?」
依頼人を気遣うレンジャーのクーラント・シェイキィ(ea9821)。
「つか、俺としては剣よりもお嬢さんの方がいいんで、永久就職しないか?」
などと依頼人を口説き始める自称・愛の伝道師、浪人の鹿堂威(eb2674)。少しでも早く立ち直れるようにという、彼なりの配慮である。
「か、考えておきます‥‥」
返答に窮した依頼人に、
「もし、キャメロットで暮らすのなら‥‥」
街の案内役を買って出たのはレーヴェだった。
「‥‥ま、やれるだけの事は‥‥するよ‥‥」
そう約束する忍者の夜光蝶黒妖(ea0163)。
別働隊との打ち合わせの後、出発。馬やセブンリーグブーツ、韋駄天の草履を利用して、早めに目的地へ到着した冒険者達は、交代で仮眠を取り、作戦に備える。
その景色が語る最後の村の姿は、略奪、暴力、死‥‥。
惨劇の後には、もう何も、かつての村の姿を残すものはなく、そこにあったのは、ただ己が欲望を満たすために力を振るう邪な心を持った者達の姿。
それは、けして許してはならない者達の姿‥‥。
夜明け前。
「既に生きている価値の無い連中だ。一人残らず生かしては帰さん」
レンジャーのケヴィン・グレイヴ(ea8773)。隠密行動を得意とする彼は、すでに偵察を済ませ、得た情報は仲間達に伝えてある。
「さって、いってみようか?」
『SCROLLofリトルフライ』と『SCROLLofインビジブル』を使い、川を渡るウィザードのイオン・アギト(ea7393)。
黒妖に借りた『フライングブルーム』に、危険を承知で二人乗りして渡るウィザードのラフィス・クローシス(ea0219)と、ジークリンデ・ケリン(eb3225)。
ジークリンデの『インフラビジョン』のおかげで、灯りを点けずとも視界を確保している。シフールのバード、アーシャ・レイレン(ea1755)も一緒だ。
こうして、先行組は橋を渡った所で潜伏したのである。
夜明けと共に行動を起こす冒険者達。
「騎士道‥‥それが私の道だ」
『オーラボディ』と『オーラパワー』を発動させておくナイトのシルビィア・マクガーレン(ea1759)。
彼女の他、黒妖、クーラント、鹿堂らが囮役となって橋を渡り、戦闘を仕掛ける手筈になっているのだ。
まず、見張りの盗賊を、クーラントが長弓「鳴弦の弓」で射撃。
「ぐあっ‥‥し、襲撃だ!」
見張りが叫ぶと、十人ほどの盗賊達が現れる。
「朝っぱらからなんだ? はっ、たった四人で来るとはこっちの戦力を知らねぇらしいな」
中弓を持ったヤツと、ウィザード風のヤツの指示の元、重装・軽装の盗賊達が前衛となって橋を固める。
だが、盗賊達の戦力は偵察で承知済みなのだ。
盗賊達の前衛を引きつけ、磨き抜いた回避術で翻弄する黒妖。乱戦になれば、リーダー格と思われる弓使いやウィザードの魔法の標的にはなりにくい。
ライトシールドでの防戦を中心に、隙あらばレイピアでの突きを入れていくシルビィア。敵前衛の体を利用し、なるべく敵後衛の死角に居るよう心がけている。
同じく、ミドルシールドでの防御と『デッドorアライブ』を駆使する鹿堂。
「こっちは倍以上居るんだ。防ぐので精一杯みてぇだな!」
調子に乗って攻撃してくる盗賊達。
「‥‥くっ」
完全に敵の動きを見切っていた黒妖も、一撃を受け、後退する。
盾を構え、後退を援護するシルビィア。
「へへ、逃げ切れると思うなよ!」
チャンスとばかりに追撃する盗賊達!
だが、それは罠だったのだ。
すでに川を渡って潜伏していた先行組も行動を起こしている。
『フレイムエリベイション』を発動させておくラフィス。
『インフラビジョン』を先行組全員に掛けておくジークリンデ。
敵の前衛は、囮と知らずに深追いし、弓使い・ウィザードとの距離があいたその時。
傍らに矢を準備しておき、長弓「鳴弦の弓」の射程距離を活かせる位置で、独自に潜伏していたケヴィン。『シューティングPA』で弓使いを狙撃!
「どこから‥‥くそ、あんなに遠くちゃ、こっちは届かないぞ!」
弓使いが吐き捨てる。
「‥‥スモークフィールド!」
そこで、ジークリンデの魔法によって、敵の弓使い・ウィザードが煙に包まれる!
「‥‥ファイヤーボム!」
更に、ラフィスの攻撃魔法が炸裂!
「‥‥ムーンアロー!」
アーシャの放った光の矢は対象指定さえしっかりしていれば確実に命中するのだ。
魔法の煙によって、奇襲はかなりの成果を上げている。
「今度は何だってんだチキショウ!」
「おい、おまえら! 後ろにも敵が居る! こっちに戻ってこい!」
「んな事言われても、こっちも何がなんだか!」
敵の弓使い・ウィザードが口々に叫ぶが、前衛の盗賊達も突然発生した魔法の煙によって浮き足立っている。
先行組の奇襲に合わせ、囮組もまた攻撃を開始した。
狼狽えている盗賊に、すかさず『チャージング』を仕掛けるシルビィア。
一気に『デッドorアライブ+カウンターアタック』で敵前衛を倒しに掛かる鹿堂。
隙を見つけて攻撃を仕掛けている黒妖だが、どちらかと言えば、引き続き囮役として敵の攻撃を引きつける事に専念している。
「くそ、まさか挟み撃ちに遭うとは‥‥」
少しして、敵ウィザードが、戻ってきた軽装の盗賊達と共に煙を抜けてくる。
「どうやら、後ろに居るのは魔法や弓を使うヤツばかり、オレが魔法を撃ったら突撃‥‥」
そう作戦を立案する敵ウィザードだが、すでに『SCROLLofインビジブル』で透明化したイオンが、密かに煙のギリギリのラインへと接近していたのだ。
(「‥‥これは賭けだけど‥‥やるっきゃないっしょ‥‥!」)
透明化が解けると同時に『SCROLLofローリンググラビティー』を発動させる!
「なんだと!?」
不意を突かれ、反転した重力に逆らうことも出来ず、舞い上がり、そして橋に叩きつけられる敵ウィザードと盗賊達。
体勢を立て直される前に後退するイオン。それを援護するように、仲間達の放った攻撃魔法と矢が敵ウィザード達に降り注ぐ。
その間に、攻撃に転じていた囮組も敵前衛を突破しつつあった。
『バーストアタック』で武器を破壊し、敵前衛を無力化していくシルビィア。
受けたダメージをポーションで回復し、弓使いに迫る鹿堂。
長弓「鳴弦の弓」の射程を活かし、『シューティングPA』で射撃するクーラント。
橋を横方向から見渡せる位置のケヴィンは、重装備の敵には『シューティングPAEX』、敵ウィザードには『ダブルシューティングEX』と、敵の特性に合わせた援護射撃をしている。
「もらったぁ!!」
イオンの『ライトニングサンダーボルト』、ジークリンデとラフィスの『ファイヤーボム』、アーシャの『ムーンアロー』によって、敵ウィザードを始めとする後方部隊が全滅。
孤立した敵の弓使いも、敵前衛を突破した囮組によって討ち取られた。
「これで少しは死んだ連中の弔いになれば‥‥」
村に向かって黙祷するケヴィンであった。
戦いを終え、キャメロットへの帰路に着く冒険者達。
(「‥‥っていうか俺、何で誕生日に仕事してるの」)
帰路の途中、誕生日を迎えたクーラント。それを知った仲間達は、ささやかながらお祝いをしてくれた。
それと、余談かもしれないが、倒した盗賊達の装備から何とか売り払えそうな物を幾つか回収してきており、それによって若干ではあるが冒険者達に収入があった。
なお、魔法の剣の受け取り手には、奇襲を成功に導いたジークリンデが選ばれた。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来る事を願っている。
(代筆:紅茶えす)